白山ジオトレイル 2016 -prologue-

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250kmを7日間にわたって走るステージレース「サハラレース」。今年の30代優勝は日本人の若岡拓也さんでした。

ジャングルマラソンやアタカマ沙漠マラソンなどステージレースを愛好する若岡さん。サハラレースの次は石川県の白山麓エリアを舞台とした7日間250kmのアドベンチャーロングトレイルステージレース「第三回白山ジオトレイル」に参加。

まだまだトレイルランナーには知られていないステージレース。ご本人に許可をいただき、個人的にSNSにアップされていた参戦記を転載させていただきます。元新聞記者でライターである若岡さんならではの臨場感溢れる参戦記。まずはプロローグからスタート。
 

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白山ジオトレイル 2016 -prologue-

背中に担いだのはザック。の、はずなのに、山を越えるたびに、何を背負って挑んでいるのかと問われるのが、この大会「白山ジオトレイル」。
真夏の暑さ、筋肉疲労、マメや靴擦れだらけになった足や膝の痛みに選手は耐え続ける。1日のゴールは、翌日の痛みへのカウントダウン。シャワーも浴びれずに横になり、浅い眠りから覚めると、筋肉痛でこわばった体を無理矢理起こさなくてはいけない。

唯一の楽しみはわずかばかりの食事。辺りを見回すと、手に持っているのは、ほとんどがアルファ米とカップラーメン。これから山を上り下りして40kmを走るには心もとない食事量である。かといって、食料を持ち込みすぎると肩に食い込むザックが重くなる。空腹と重さのせめぎ合いの象徴がザックなのだ。

とぼしい食料。それでも気持ちは満たされる。1食ごとに背中の荷物が減っていく。
身も心も軽くなったはずなのに、スタートしてしばらくすると、体が重くて仕方ない。どうしちまったんだ、いったい。悲しいぐらい一歩一歩しか前には進まない。小さな困惑がじわじわと浸食してきて、希望が削がれる。確実にゴールは近づいているのに、一歩の小ささを悲観するようになる。

いつまでこんな日々が続くのか。溜め息を漏らす。午前中のうちに気温は30℃をとうに超えていた。ぬぐっても、ぬぐっても汗がしたたる。やがて、ぬぐいきれなくなった困惑は諦めに変わりはじめる。

「もうリタイアしようか」

弱気が脳裏をよぎる。もう足の痛みが限界なんだ。食事が合わない。調子が悪かった。諦めというやつは、言い訳を探してきては列挙して、僕を言いくるめようとする。

急な上り坂に差しかかった。足も背中もずしりと重い。よろめきながらも体勢を立て直す。踏みとどまって前に踏み出す。一歩、また一歩と。その連続性でしか坂を上りきることはできない。何度も苦しさに負ける、弱気になる。負けたっていい、弱気なままでもいい、そのたびに乗り越えるだけだ。

だから、また一歩を踏み出す。たとえわずかだとしても。

ということで、しばらく白山ジオレポートです。夏休みの宿題的な。
 

-TO BE CONTINUED-
 

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若岡 拓也

1984年生まれ、石川県金沢市出身。
新聞記者として現場を走り回っていたが、2014年に思い立ってランニングを始め、ステージレースに出場するようになる。現在は福岡県東端の上毛町でライター、地域おこし協力隊として活動中。11月には上毛町でトレランの大会(https://www.facebook.com/SyugendoTrail/)を開催予定。戦績はジャングルマラソン3位(2014、ブラジル)、サハラレース4位(2016、ナミビア)、白山ジオトレイル優勝(2016、日本)など。