あの山の記憶―YNMC120k vol.1

2ヶ月ぶりです。
夏山シーズン、ちょっぴりブログをお休みしていました。大会でお会いした方に『最近更新されていないから、どうされたかなと思って』なんて言っていただいたりもして、わたしみたいなもんのブログでも読んでいただいている方がいるんだなぁと思うと嬉しいかぎりです。

この夏は本当に色んな経験をしました。
書くこといっぱいです。
まずは、その締めくくり(集大成?)としてチャレンジした、上州武尊スカイビュー・ウルトラトレイルのことを書こうと思います。自分へ書き残すためにも細かく数回にわけて記そうと思います。

*

みんな、正直、無謀だと思ったかもしれません。

トレラン歴2年未満
体育会系でもないし
フルマラソンだって1回しか出たことがないし
アスリート体系でもないし
ロングの経験は信越とSTYだけ
スピードだって速いわけじゃない
のほほん楽天家のわたしが、正直、120kmだなんて、無謀だと思ったかもしれません。

ゴールのあと、こんな言葉をもらいました。

「正直ね、もしかしたら、もしかしたら完走しちゃうかもしれないなぁと思っていたよ」

また、レース前、facebookのコメント欄にはたくさんのメッセージをもらいました。

「かなり厳しいかもしれないけどがんばって!」
「チャレンジするだけで十分えらいよ!」
「無理せず楽しんでね!」
「無理しないでね!」

“無理しないように” 一番多い言葉でした。
もちろん、わかってたんです。普通に考えたら無理があると思うって。先輩方の言うとおりだと、十分わかってたんです。でも、だからこそ、それがまた、わたしの原動力になったんです。みんなをびっくりさせちゃおう。わたしにだってできる。足が遅くたって、ちびっこだって、みんなより経験が浅くたって、ゴールを掴めるのだと。

そして無事、上州武尊スカイビュー・ウルトラトレイル
第1回川場村 山田昇メモリアルカップの部
無事、完走しました。

*

 

<エントリーからレース当日まで>

上州武尊スカイビュー・ウルトラトレイルの中でも120kmのコース、第1回川場村 山田昇メモリアルカップにエントリーしたのは5月。信越五岳トレイルが今年から抽選になったことで、クジ運の悪い私は、信越に外れたら今年の大きな目標がないなと思い、思い切ってエントリーしたのがきっかけです。
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 誰に言っても「わー!武尊?!」と言われるほど、事前大会説明会から過酷なレースだと言われていた本大会。かなりチャレンジなエントリーだったのは確かだけれど、最初からできないなんて決めつけていたら一歩も前に進まない。今の私にはかなり完走は厳しい。じゃあ、できるようには何をすればいいのか、それを必死に考えて考えて自分なりの方法で挑んで完走を掴もうと考えました。

レース前夜、『これは決して無謀なチャレンジじゃない、必ず完走できる』と自分に言い聞かせるだけの理由はありました。わずかながらこれまでの経験に加え、普段は一緒に走らないような速い方々にくっついて走ってみたり、総合力を上げようと色んなタイプの山やナイトトレイルを走り、さらにせめてもと上級救急救命講習を受けたりもしました。しかし、もっとも重要視したのは、高山登り。練習方法は、そのまんま。アルプス登山です。

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甲斐駒ヶ岳、黒部、立山、焼岳、西穂、槍ヶ岳、白峰三山などの南北アルプスのほか、丹沢、雲取、富士山、レースでは安達太良山にも行きました。

標高が高く岩場も多い、まさに「山岳」である剣ヶ峰や武尊山の攻略を想定して、夏は標高2000m以上の登りがあるアルプスの山々に、繰り返し繰り返し登りました。じっくり登山が基本でしたが、時にはスピードハイク、時にはトレランスタイル。そしてそれなりの重さを背負って数日かけての縦走。これは本当にものすごく効きました。また、夏に富士登山競走にもエントリーしていたので、試走含め、近くの奥武蔵エリアでの舗装路峠走なども独りこっそりやりました。

また、大会開催1週間前にはやっと制限時間が発表となり、急いでコース研究とペース配分表も作りました。第一回なので参考にするタイムもない。大会提供の地図だけでなく地形図に線でコースを繋いだり、登山コースタイムと照らし合わせたりして舗装路と林道、トレイルなどの状態を一生懸命調べて独自のマップを作りました。正直、これまで参加したレースでここまでしたのは初めてです。それだけ、完走の可能性はギリギリのラインだと思っていたし、それでもどうしてもできることは全部やって完走したかったのです。今思えばそれは、「山に入る」準備としては当たり前のことだったようにも思います。こんな風に、5月から9月まで、少しずつ不安要素を消し込むように夏を過ごしました。

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<レース前日>

まわりの親しい知り合いには120kmに出るという人が少なく、独りで行かねばと思っていたら、トレイル鳥羽ちゃんで60kmに参加するメンバーに同乗させてもらえることに。実は、上州武尊スカイビュー・ウルトラトレイルは30km、60km、120kmでそれぞれスタート地点が異なるため、宿泊先エリアも前夜祭会場も異なり、その距離は車で約1時間。複数のエリアをまたぐ壮大なレースです。60kmのスタートエリア宝台樹に行く途中にある川場に落としてもらって、そこでバイバイです。

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見送られる120kのふたり。

受付を済ませ、コースガイダンスを聞こうと思ったけど、開会式会場は別のエリア片品村。バスで1時間乗って向かったけれど、遠すぎて着いた頃には終わってました(笑)結局宿へ向かうことに。宿では女性は1人だということで、異国感漂う土壁(!)の1人用小屋で宿泊。田舎料理は唸るほど美味しく、居間でみんなでつつきながら食べるスタイルも前夜の不安を払拭してくれました。とても優しくしてくださった山の家のご夫婦に感謝です。

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<スタート~A1>

当日朝はなんと寝坊からのスタート。実は1ヶ月ほど前から全身の湿疹に悩まされてアレルギーの薬を飲んでいて、あまりに効きすぎてたまに目が覚めないのです。出発15分前に目が覚めて慌てて準備。でも結果的には予定より1時間多く寝たことが眠気に襲われずに済んだような気もするので結果オーライ!(笑)宿泊者みんなで車で送っていただいて会場へ。近隣にコンビニは1つしかなく、パンやおにぎりは売り切れていたので事前に買っておくのが良いですね。

バタバタと宿を出たため、体育館でテーピングや荷物の整理。1人というのは案外緊張しないものなのかもしれません。淡々と準備をしてリラックスした気分で過ごせました。荷物は体育館に残し、あれこれたくさん詰めたドロップバッグをスタート地点に預けます。そう、今回はサポートなし。すべてのことを1人でやるのです。それもまた、わたしにとっては試練でした。

スタート地点では、信越五岳のボランティアで一緒だった方やIBUKIのナベさんに会うことができ、握手で互いの健闘を祈ります。

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そしてゆるやかにスタート。暗いけれど、ヘッドライトなしでもまぁ、大丈夫。始めのロードは道路規制がされていないので歩道をゾロゾロ。後ろの方からスタートしたのでゆっくり。第一回開催のためエイドの様子もわからず、ドロップバッグのある60kmまでの食料と水を入れたザックが重い。

まもなくトレイルのシングルトラックになると少しだけ渋滞。最近のレースではボリュームゾーンの前の方に入ることでペースの速い渋滞の流れに身を任せることにしていたけれど、今回は120km。ボリュームゾーンの後ろの方でまたもゾロゾロ。渋滞が途切れたと思ったら周囲が結構なスピードで走る。前後が詰まっていてシングルトラックだから走るしかない。かなり走りました。
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なんだかこのあたりの記憶は曖昧。薬でぼーっとしながら動かない身体で必死で走って先に進む。120kmのレースなのにこんなに走らされるのかと思いながらA1へ。A1にトイレが2つだけあって並んで入ったけど、エイドを出た先にも仮設トイレ、その先にもトイレがあってとにかく序盤はトイレ豊富でした(笑)


<A1~A2>

A1を出ると一つ目の大きな登り、剣ヶ峰へ。
朝っぱらから標高2000m(笑)こちらも記憶はぼんやりだけど、周囲のスピードに身を任せながら登る。多少並んだかな?ロングだからってのんびりしていられない。急がないと間に合わない。ちょっぴりもどかしさを感じながら樹林帯を超えたそこには絶景!
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美しい剣ヶ峰と、そこへ向かうランナー。偽ピークで「え~っ、ここじゃないの~(笑)」なんていう声もありながら、その様子はみんなどこか嬉しそう。選手がみんなその美しい景色に癒されていたように見えました。こんな景色の中を走れるなんて最高、ぜったい武尊山にだけは行ってみせると心に決めて先へ進みました。

剣ヶ峰からの下りは滑りやすく狭い、急な岩場下りが続き、ヒヤッとする場面が何度かありました。山頂から数100m下ったところで大きな声が聞こえました。コースには人が連なっていたので、何が起きたのかわからず前後の選手と顔を見合わせていると下から「スタッフを呼んでください!」との伝言。皆口々に大きな声で山頂のスタッフまで伝言を続けながらゆっくりと進みます。

数10m下ったところで、脚をすべらせて怪我をしてしまった方がトレイル脇に横になっています。すでに3人のランナーが怪我をした方をすこし安定した場所で横に寝かせ、本人を安心させるように声をかけていました。スタッフの配置場所が少し遠かったため、上下に続く列に伝言ゲームで「スタッフの方を呼んでください。」「岩で怪我をして少し出血しています。」「意識あります」など的確に伝えていました。周りのランナーもすごく冷静で、素晴らしい対応でした。(その後救護にあたった方は自身のレースは捨てて、付き添って下山されたそうです。)

A1からA2までの区間で特にキツかったのは、剣ヶ峰よりも、そのあとのスキー場裏手の登り。たった標高300mの登りだけれど、日陰がなく太陽が照りつける中でジワジワ足に負担をかける急で単調な登り。かと思いきや、転げ落ちそうなスキー場のゲレンデ下り。きっと冬のゲレンデでは中級か上級コースだろうという傾斜。まだたった27kmなのに、つまずいて転がって怪我するか膝が壊れるかという下りをおそるおそる下ってA2へ。意外と時間がかかってしまって誤算でした。

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vol.2へ続く