冬支度

img_4776
久しぶりの更新になりました。

レースシーズンが終わり、まったりと過ごしてしています。レースシーズンなんて言ってますが、今年出たのは3つだけ。奥三河、富士登山競走(雨天打ち切り)、UTMB。いつもレースに出てるイメージがあるようですが、トレイルランニングを始めて最もレースに出なかった年でした。その分これに加えてT.D.Tを春と秋の2回参加しました。1年に3回も100mileを走り、結果的には練習も含めていままでで最も走り、ロングディスタンスの虜になった年になりました。

さて、今年は雪がたっぷり降るんじゃないかと、目を輝かせる山仲間の荒い鼻息がそこかしこから聞こえてきます。昨年は雪が少なかったので、今年の雪には皆すごく期待しているのだと思います。冬期の登山は4年目になりますが、まだ経験が浅く技術もあまりに乏しいので、もう少しレベルアップしたい今シーズン。冬山経験が豊富な方の繋がりを色々と探しては学ぶ場を広げねばと考えています。どうかたっぷり降ってほしいものです。

そんななか、まさに今日、立山で雪崩事故がありました。
ここ数日立て続けに立山での雪崩の情報が出ていて気になっていたのですが、ついに人が巻き込まれてしまったのだそう。たとえば雷鳥沢と言えば夏山では楽しいテント場ですが付近では雪崩が度々起きているそうです。今回の事故は室堂から一ノ越間で起きたと言われていて、トレイルランナーならTJARなどでお馴染みの一ノ越。石がひかれて整備されていて、夏のシーズンは室堂のホテルからスニーカーで上がってくる人までいるようなところです。そこで、6人のパーティーのうちの3人が雪崩に巻き込まれました。夏は歩きやすい場所だけれど、木もなにもない大きな斜面です。

【立山雪崩情報】 http://toyamaken-sotaikyo.jp/avalanche
ここにも記載されていますが、3年目前の11月に真砂岳で発生した雪崩事故(7名死亡)と似たような状況、だそうです。このページの表現は初心者のわたしでもわかりやすい。行くわけではないですが、ふむふむと読んでいます。数日前にUPされていた、『しばらくは雷鳥沢などの大きな斜面には立ち入らない方がよいでしょう。もし立ち入る場合には、比較的安全な斜面で積雪状態を詳しく調べ、自身や他人に対するリスクの回避や万が一の救助方法などについて、仲間同士でよく話し合ってください。現在、積雪層内には不安定な積雪が存在していることを忘れずに、くれぐれも慎重な行動判断を。』という言葉が強く心に響きます。

先々週は富士山で2km(標高にして900m)もの滑落で2名が亡くなりました。ちょうど富士山の事故が起きた日、わたしは仲間と沼津アルプスを走っていて、徳倉山から富士山を眺めて『雨の後のこんな暑い日には危なすぎてだれも登らないだろう』と話していたところでした。
15224547_906981466068772_319638206_o
もちろん視界良好である必要は絶対あるのだと思いますが、単純に晴れていればすべて良しというわけでなく、雪が多けりゃいいというわけでもなく・・・じゃあどうであればいいのか?つくづく冬山のコンディションには悩まされます。富士山の事故に遭った方は、1人は山岳会所属の登山歴40年、もう1人は大学山岳部。どちらもきっと経験豊富な方だと思います。一体何が正しいのか、まだわたしには知識が足りなくてわかりません。ただ、まだ今はシーズン初頭。自分がまだ登るべきではないだろうというエリアや状況の判断は、慎重すぎるくらいがちょうど良いと思っています。

***
11月に入り、この時期だからできる冬支度から始めました。まずはギアチェックです。冬場しか使わない装備を引っ張り出してきて、突然使って万が一劣化していて途中で使えなくなってしまったら、雪山ではそれは死に一歩近くなることです。

アイゼンを分解してチェック。うわ、ちゃんと錆落として油も塗ったのに錆びてる・・・磨き直し。わかんも同じく。冬靴に合わせて装着。(久々だと、え~っとどっちから通すんだっけな?となる)
15239302_906989072734678_181391032_n

グローブ類がペアで揃っていて劣化していないことの確認。手先足先は低山でも簡単に凍傷に・・・。ジャケットの劣化チェックと防水洗濯+アイロンで熱をかけておく。アウターもしっとり濡れて身体が冷えたら最後。

そして、今年は新アイテムを投入。冬用登山靴を一足、UTMBの時にシャモニーのスポーツショップの閉店セールで新調しました。SALOMONのS-LABX ALP Carbon GTXです。
15225160_906982092735376_796940637_o
女性サイズだからか激安で、レース前に見つけてレース後までに売り切れたらどうしよう!と思っていたけれど、真夏のシャモニーではそんな心配無用でした(笑) ローカット+シューレース、ゲイター一体型で、アイゼン対応。軽くて動きやすい。どのくらいの山まで行けるかはまだわからないけれど、現地でも若い欧州の登山家達が結構履いていました。

新しい靴でいきなりフィールドに出て足が痛くなったら同行者にも迷惑がかかる。しかも雪が深い場合、時には靴にアイゼンを付けてさらにわかんを付けたりもして、ヘビー級になります。そんなわけでアイゼンとの相性チェックのためにあえて岩が多少ある【雪と岩が混じった状態の低山】へ日帰りフィールドテストに行ってきました。3時間程度の山行で行ける場所です。

まず、もともと持っている冬用登山靴よりも一回りスマートなので、アイゼンのベルトが余る。いままでの靴に合うように焼切ってあるので長いのです。ちゃんとたたんで絡めておかないとうっかり引っかけ兼ねない。(写真では適当だけどこのあとたたみ直し) そして致命的だったのが靴擦れです。チェーンスパイクで歩いたときには調子が良かったのに、アイゼンを付けると歩いているうちにかかとが痛くなってくる。シューレースで締めるタイプの靴なので、どうやらアイゼンの重みでかかとが若干浮いてしまうらしい。
15224604_906980412735544_1140011959_o
カポカポとかかとが浮くうちに靴が擦れてしまって痛い。替えの靴下に履き替えたり、靴擦れ用のジェルパッドやニューハレで肌を保護したり、コードやアイゼンを締め直したりしたけれどイマイチ。これじゃダメだ。メーカー曰く『アイゼンとの互換性は、GRIVELとPETZL両社の協力体制のもと開発。指定モデルのみに適合いたします。』だそうで、いちおう私のも“指定”のGRIVELのAIR TECH LIGHTなんだけどな~。古いモデルだから重いのか?ともかく、テストしておいてよかった~!これが本格的な雪山の山行中だったら思うとゾッとします。

わたしの使っているアイゼンは重くて爪も長く、安心・安定感はあるけれど、もう少し軽いものにすべきか。そのそもこのシューズは-7度/+20度なので厳冬期には向かないか。残雪期向きか?などなど。これを履く時はもう少し軽量な10本前爪くらいのアイゼンとのセットにして、雪深い場所や標高の高い場所に行く時には、もともと持っているゴツイ冬靴が良いのかもしれない。

***

先日行った山で、『せめてピッケルがあったらよかったのに・・・・・・!』と心底思った出来事がありました。その時期のその山では、経験者でもなかなかピッケルを持って行く選択肢を取らないような状況でした。なにせ、その日は山の中で15人くらいに会いましたが、私達以外は1人もチェーンスパイクや軽アイゼンすらしていませんでした。(ザックに入っていたかもしれない) 冬山をやらない人が初冬に登るタイプの山ではないので、おそらくほとんどが登り慣れた地元の方なのかもしれません。明かに上は雪だろうと読んでいた私達は、チェーンスパイクと軽アイゼンを履いていて、それがとても大切な役割を果たしました。私達には身の危険はありませんでしたが、もっと気を引き締めなければ、とシーズンイン早々に痛感しました。

持っていかず後悔するくらいなら持って行ったほうが良い、でも持ちすぎて重くなっても体力を奪う。まだまだ初心者レベルのわたし。経験者から教わったり、仲間と共に経験を積んでいくしかない。夏山にも増して厳しい冬山。ギアの準備だけでなく、知識も、こころも、冬支度をはじめなければならない季節が今年もまたやってきています。雪山が、心奪われる素敵なものであること、多くの登山愛好家を魅了するものであることは違いないのだけれど。

img_4728

立山で雪崩に遭った方々が、どうか無事でありますように。


謹賀新年―青空と雪の西穂高より

あけましておめでとうございます!

2016_01_04_08_53_17
2015年から2016年への年越しは冬の北アルプス、西穂山荘へ標高2,637mの贅沢宴会に行ってきました。去年、入笠山のマナスル山荘で過ごした年末年始がとても良く、すっかり山小屋年越しにハマってしまったのです。テントも好きだけど、特別な日の小屋も好き。今年は山仲間と共に、天気が荒れたら小屋で飲んだくれて過ごすのもいいか〜なんてのんびり計画で。

2016_01_03_14_23_05 (640x291)
お昼頃に着いた西穂山荘はすでに山好きで満員、昼間から大宴会。なんだか荷物が大きい人が多いなぁと思っていたら、ベテラン山屋さん達は一升瓶などを担ぎ上げ、御節料理や酒のつまみをどデカイタッパーにいくつも詰め込んで、周りに振舞っています。さすが年越しが楽しいと有名な小屋、規模が違いました(笑)みんな楽しそうで微笑ましくって、こっちまで嬉しくなっちゃう。

2016_01_04_08_59_22大晦日はあいにくの天気で、小屋に入ったきりそのまま、お酒飲んだり、お昼寝したり、漫画を読んだりと、標高2000m以上で外はマイナス10度以下と思えないくらい、ぬくぬくのんびり。そんなの山の上じゃなくてもできるって?たしかに(笑)でも普段の仕事のがむしゃらな忙しさから解放されて、時計を気にせずすこず贅沢な時間。しかも、山の上という大好きな場所で。

2016_01_04_08_58_51
漫画部屋も充実していて、呑みの合間に山の漫画を黙々と読んだりもして(笑)

食事も特別メニュー。日本酒、大雪渓の振る舞い酒や年越しそばもありました。積雪前にまとめて荷揚げするのかな?山小屋らしさのなかにもきっとこだわりがあって、豪華でなくてもとっても美味しかった〜。
2016_01_03_14_23_19

特別営業のこの日は消灯が0時半。ご飯のあとも夜が更けるまで同じ部屋の方や周りの人達と山話に花が咲き、食べものやお酒を振る舞い合っては色んな話をして過ごしました。
2016_01_04_08_58_38
みんな山好き。楽しくないわけがない。

カウントダウンは小屋の方々総出で大盛り上がり。なぜか支配人は白鳥姿(笑)、スタッフのみなさんも被り物や仮装?して、お客さんにも被り物を配り、もうカオスです。
2016_01_03_14_24_21 2016_01_03_14_26_03
ゆく年くる年が流れるテレビの前でゲームで盛り上がり、10秒前からカウントダウン!みんなはじめましてだけど、みんなでおめでとうを言い合ました。

西穂山荘はものすごくホスピタリティにあふれていて、スタッフの方がみんな優しくて笑顔で感じが良く、だからこそ楽しくてますます大好きになりました。心地が良い人達に囲まれている状態ってとってもHAPPY。

そして嬉しいことは小屋の楽しさだけにとどまらず・・・眠い目をこすって起きた元旦は、西穂山荘の支配人で気象予報士でもある粟澤さんが『こんな北アルプスの元旦は10年に1度』だと言うくらいの快晴に!朝まで降り続いた雪、真っ白だったガスが奇跡的に晴れ、西高東低の気圧配置と言われた中で北アルプス付近では等圧線の間隔が広いため、影響は少なく快晴になったのだそう。

10409_722933261140261_6893395731409531568_n

西穂高岳独標へ向かう稜線は、青空と雪のコントラストがまぶしいほどで、景色が本当に美しくて美しくて涙がうるむほど感動しました。ふかふかの雪に足をくぐらせながら、ぐるっと景色を味わってはまた少し進む。

2016_01_03_14_26_45 (640x480)
2016_01_03_14_29_31 (640x480)
2016_01_03_14_29_59 (640x480)
2016_01_03_14_30_07 (640x480)
2016_01_04_08_57_38 (640x480)
10574430_722930801140507_2653398565809292093_n (640x480)
1914513_722933284473592_4793132980325606076_n (640x480)
2016_01_03_14_30_53 (640x480)

今年は例年に比べ雪が1m以上も少ないらしく、サラサラの雪の下には岩。ハイマツが出ているところもあり、うっかりアイゼンを引っ掛けそうなほど。ピッケルのきかない雪と岩肌の出た独標直下では渋滞して凍えそうだったけど、独標では真っ白な穂高連峰が顔を出し、雪に太陽の光が当たって見える光の柱(おじさんはダイアモンドピラーと呼んでいた)という幻想的な現象も見ることができました。わたしの経験と実力では今回は独標まで。また次の機会には西穂高山頂まで行こう。楽しみはすこしずつ。

2016_01_04_08_55_07 (640x480)
笠ヶ岳~抜戸岳~弓折岳の稜線

2016_01_04_08_55_40 (640x480)
小さく槍ヶ岳も見えた

憧れの雪の北アルプス。遠いようで意外と近い。エイヤッと思いきって行ってよかった。1年のはじまりに青空の山で過ごせるなんて、なんて幸せなんだろう。

人との出会いも仕事も、山を通じて恵まれた2015年。楽あれば苦ありの充実した年でした。2年前に会社員を辞めて独立して以来、振り返れば仕事もプライベートもトレイルランニングも『やっと自分らしくいられるようになってきた』そんな感触をなんとなく得た1年でした。自由気ままなようで、まだまだ未熟で精一杯で、すべてを独りでやらなければならないことの自分への重責に苛まれる毎日だけど、しあわせのバランスの取り方を覚えてきたのかもしれない。

“為せば成る”がわたしの合言葉。1歩を踏み出さなきゃはじまらない。1歩を踏み出せば、何かが変わる。失敗も成功への布石。そう信じて、つらい時期にとにかく一生懸命になって培ってきたものが、次のチャンスへと導いてくれるという出来事がたくさんありました。そうだ、とにかく経験だ。積み重ねだ。だけど運や偶然も味方につけて。そんなふうに、なんでも自分次第なんだと再確認することができました。

あとは、なんでも、楽しまなきゃね。2016年も初心忘れず、仕事も遊びもたくさんチャレンジするぞっ。唯一のチャームポイント?といえば(笑)、フットワークの軽さ。全国に飛んでゆくので、みなさん今年もたくさん遊んでください!

“幸先いい”ってこういう時に使うんだなぁ。なんか、呼ばれた気がした。
The mountains are calling and I “want” to go.

―そして、こんな自由なわたしを許して受け入れてくれる、すべての人に感謝して。恩返しする1年にしよう。

 


photo by:naoさん


“ask me how to run happy”

たいして英語出来ないのにまた英語タイトルですいません。カッコつけたいわけじゃありません、たまたまです(笑)

昨日は最高の夜でした。
あの伝説のウルトラランナー、Scott Jurek(スコット・ジュレク)がULTRA LUNCHに来てくれたのです!わたしは普段、たまにULTRA LUNCHのお店に立ったり、PRまわりをお手伝いしています。昨夜もキッチンスタッフとしてお手伝いしてきました。BROOKSのイベントで、抽選に当たって集まった方は年齢性別様々でした。

ヴィーガンパワーフードの『ULTRA LUNCH』(http://www.ultralunch.com/)は、自身もウルトラランナーでもあるDomingoさんが、書籍「BORN TO RUN」を読んで、その中の登場人物であるScot Jurekに感銘を受けて始めたものです。そんな背景があるだけに、Domingoさん本人の感動ったら計り知れません。トークショーでは隣に並び、直接「あなたはわたしの人生を大きく変えました」と伝えるところを見て、わたしも感動しました。そんなことって、なかなかないじゃないですか!本の中の登場人物が隣にいるわけですから(笑)

12140839_697514553682132_7151286936055179209_n
夢が実現するって、すごい!

 

彼の言葉は、とても自然で優しく、いい意味で「ごくごく普通」であることに感動しました。むずかしいことを言うわけでもなく、聞きなれないワードを使うわけでもなく、そりゃーあなただからできるわけでわたしにはムリだななんて思うことを言うわけでもなく。数行では書ききれないくらいすごいアスリートで、いまも世界を飛び回っている人であるはずなのに、そんなことは全然感じさせない、 “ぼくもきみもみんな一緒だよ” という雰囲気というかスタンスが素敵でした。

BORN TO RUNの中で、スコットは100マイルレースで優勝したあと、会場を去らずゴール近くで寝袋に入って、最後まで寝ずにランナーを迎え、きみはひとりじゃないと応援するという話がありましたね。まさに、そんな人柄がにじみ出ていました。

12140547_697514533682134_2486920801321355302_n
Domingoさんの言葉も、とてもわかりやすくてみんなウンウンと頷いて聞き入っていました

わたしが彼を見つめすぎていたのかもしれませんが(笑)、イベント前から帰って行くときまで、目がちらりと合うたびににっこり微笑んでくれました。あまりにも気さくすぎて、自然体すぎて、ごく普通に接してしまったのを後悔・・・いや、後悔はしていませんが、冷静になって考えてみればめちゃすごいアスリートで、わたしにとっても本の中の人なのに、ヤベー、なんだかスミマセン!という気持ちです(笑)

家に帰って改めて本棚から「EAT&RUN」を手に取り、まじまじと見て、もっとなんか話したいこととか聞いてみたいこといっぱいあったし、もっとがっちり握手したりしてパワーもらっておくべきだった!なんてどうしようもないことをぐるぐる考えたりして(笑)(WS100を7連覇・・・など数々の記録をもつ・・・人ですもん・・・ね・・・神か・・・)

***

ベジタリアンのなかでもヴィーガンは完全菜食と言われ、厳格なイメージもありますが、彼の話を聞いていると不思議なことに『あぁ、この人は食べることがすごく好きなのかもしれない』と感じました。もちろん厳しいトレーニングを積んでいるのだとは思うけれど、食も含めて自分なりのライフスタイルを楽しんでいる、そんな空気が流れていました。トークショー中も、ULTRA LUNCHのこの日のスペシャルメニューをもりもり食べていました!

11219712_697514517015469_2091026016250912326_n
Domingoさんの作ったごはんをもりもりと食べる

日本に来たら、日本食を食べに行くのが楽しいそうで、今回は湯葉や銀杏を試してみたよ、と言っていました。Domingoさんが再現した彼のレシピは思った以上に味が濃くしっかりとしていてご飯がススムものばかり。色んな食材がたっぷり入っていて、インパクトもあって、なんだか意外でした。

わたしは両親共に京都で素材の味重視というか比較的薄味をヨシする文化・習慣で育てられてきたものの、それでもどうしても菜食というと味が薄めで、質素で、というイメージを抱きがちです。だけどそれはあくまで思い込みであり、彼の味覚はきっとすごく豊かで、料理が好きというだけに色んな食材を使って工夫して食を楽しんでいるんだと感じました。ビールを片手に、美味しい、とニコニコしていました。

そういえば、「勉強を続けること、変わり続けよう、新しいことにチャレンジしようと思うことが大事」と言っていました。楽しいだけでなく、やはり好きなことだからこそ楽しいからこそ追求し続ける努力家でもあるんですよね、きっと。だけどなぜか我慢とか制限とかいう言葉は感じられず、自由で柔軟。いろいろ難しく考えすぎず、失敗恐れず、もっと自然体でいいのかもしれない。だってわたしも、ずっと長く続けていきたいと思うくらい走ることが好きで、そして食べることも好きだから。

12115605_697514460348808_2532951997311051641_n
スコットのレシピとDomingoさんのオリジナルレシピがワンプレートに盛られました

スタッフとしての仕事を終え、BROOKSの方のご厚意でわたしもサインを書いてもらえることになり、その時に日本のロングトレイルの話をしてみました。彼は最近、アメリカの有名なロングトレイルのアパラチアントレイル(AT)で世界最速踏破記録を樹立したばかり。どこか日本のロングトレイルで行ってみたいところはありますか、と聞くと鏑木さんは熊野古道を勧めていたと言っていました。日本らしいしっとりしたトレイルで、苔が好きならきっと好きだと思うと伝えてみました。

12106765_697571773676410_7670522855783869291_n店内のボードにもサイン!ぜひ見にきてください!

さらに、『日本だとどこのトレイルが長いの?』と言われたので東海自然歩道かな?とお勧めすると、周りから「あれはロードが多いよね?」言われて、「じゃあトレイル率の高さと美しい森なら信越トレイルの80kmもいい」と勧めてみたけれど、しきりに『TO・・・?』『TOKAI・・・?』と通訳さんに聞き直してメモをしていました。1,700kmという距離が響いたのか、東京から大阪までというところが響いたのかはわかりません(笑)ロードも多い東海自然歩道だけど、40年も前に開通した、東京から大阪まで1都2府8県にまたがる日本の古くからの長距離歩道。

いつか、田んぼが広がる日本の田舎道を笹などに包まれた“にぎりめし”なんかを食べながら、おじいちゃんおばあちゃんが農作業する横をスコット・ジュレクがニコニコ走り抜ける日が来るかもしれないなんて想像するとワクワクします。彼はきっとまた日本に来てくれるはず・・・!いつか彼と日本のロングトレイルを歩けたりなんかしたらなぁ。なーんて妄想しちゃうな(笑)妄想は自由です・・・よね。

「わたしはトレイルランニングも好きだけど、ロングトレイルを歩くのが好きでそのうちATを歩きにいきたい」と伝えたら、直々に色々教えてくれました!ほんのすこしの時間だったけれど、ATやPCTのことについてスコット・ジュレクと話せるなんて思いもしなかった。ぜひ、チャレンジしてね!と背中を押してくれて、サインと共にATのマークを書き入れてくれました。

12118955_697514337015487_910026056559718546_n

最後のお見送りの時に、前を歩くBROOKSの方のポロシャツの背中には

“ask me how to run happy”

と書いてありました。スコット・ジュレクは、その姿をキッチンのカウンター越しに見ているだけで(笑)、わたしに楽しく走ることを改めて気付かせてくれました。彼はレースのことを【冒険】と呼ぶ。彼のように速くなりたい、ではなく、彼のように、もっと楽しむことや新しい冒険に貪欲に、自分なりの豊かで素敵なランニングライフにしていきたいものです。

12122577_697514410348813_7301377345669928647_n

How happy I am! He came to the vegan cafe “ULTRA LUNCH” in Japan! I talked with him about the Japanese Long Trail. I did recommend the Kumano old trail, the Shinetsu trail and the Tokaido nature trail. He wrote his sign and the emblem of Appalachian Trail for me. I hope that I walk the Japanese Long Trail with him someday…

(翻訳アプリ頼りの英語、あってるのかな?笑)


The important thing is not to stop questioning.

みなさんご存じトレイルランニング/ランニングショップ Run boys! Run girls!のブログに投稿された、RBRGカナダ支局のケロちゃんの新しい記事が興味深かったのでそれについて。ケロちゃんのブログはいつもすごく面白いので読んだことなければぜひ遡ってみてください。

さて、今回はこんな内容。

山やぎはゆで卵を走って温める Tip of the iceberg News Paper #11
http://rb-rg.jp/?p=3456

要約して紹介すると彼女の言葉や考え方から逸れてしまいそう&読んだ人も結構いると思うのでリンクそのまま紹介。周りの仲間が次々にシェアしていて、記事の「Like!」もたくさんついていて、「共感した!」「最高!」「考えさせられた」「そのとおり!」と反響が大きいみたい。

わたしは、 ひとことに共感という言葉で表せない=こういうマインドでいたいと思いつつわりと逆行しているから耳がいたい というのが率直な感想。そして、それを経験と共に本当に実行していることとか、こうやって文字にして伝える勇気、そしてそれを載せるお店もまた素敵だと思ったのでシェアしてみました。わたしも、正直ぜんぶはむずかしいけど、少しでもそういう部分を持っていたいという思いに偽りはない。

また、ケロちゃんのこの話と、最近ATやPCTなんかのことを調べたり、例の映画から情報も増えて目にしていたアメリカのロングトレイル経験者の話にもまた、なんだか共通することがあるように感じている。

TRAILSのこの記事、
Pacific Crest Trail #03/14人のPCTハイカー

それと、友人の友人で、もうすぐ友人になりそうな、つい最近PCTを踏破したこの方のブログなど。
いわしっく トレイル 〜 Pacific Crest Trail 

読んでいるとロングトレイルに挑戦するきっかけは様々で、ハイカーでもトレイルランナーでも山屋でもない人も多く、そもそもアメリカではそういう分類がほとんど関係なさそうで、みんないい意味で自由で(格好も、パッキングも、寝方も、良く言えば型にハマっていない、えらく拍子抜けする写真もよく見る。そういえばシャモニーの山でもそうだった)、自分に責任を持っているけれど、まわりとゆるく繋がっていて助け合っていて、そういった環境をもとになりたっているのが面白いし、いまの日本のいろいろに重ねあわせて考えると、何が一体違っているのだろうなんてことも思う。決してどちらが良くてどちらが悪いという意味ではなく。

***

さて、ケロちゃんのブログにも出てくる「フリーボックス」と「消費」の話。
ロングトレイルの話の中でも日本との違いとして印象的なのが、トレイルエンジェル、トレイルマジック、ハイカーボックス。うーん、説明は超敏腕ライターの根津さんが書いている超読みやすいTRAILSの記事に任せよう(笑)(Pacific Crest Trail #01/PCTを歩くということ) 要は、ボランティアでトレイル周辺の人が、もしくはハイカー同志が、ハイカーを支える環境があるらしい。

そういえば、昨日から家の片付けをしながら思ったのだけど、日本にもハイカーやトレイルランナーが集まる各所に、ハイカーボックス的なフリーボックスが欲しい。上でBlogを紹介した友人の友人がPCTから帰ってきてそのまま信越トレイルを歩きたいんだけどシューズがない、だけどアウトドアショップに行く時間がないと言っていて、一方で友人がトレランギアを手放そうかなとfacebookに投稿していた。手放そうと投稿していたものはきっとまだ使えると「一般的に感じる」キレイなものだけだと思うんだけど、ハイカーの彼にとってはそんな新品のようでなくてボロくても多少の穴が開いてるものでも問題なく履けるものならきっとタダで引き取りたい!と思ったに違いないない。(私の勝手な想像)

片付け中、もう今のわたしには不要だと思うものを前にして、どうしようかと考えたけれど、それをヤフオクで売るのもなんか違う。ネットのオークションじゃよっぽど“世間一般的な価値”があるものでないと、そもそも手間ばかりかかってたいして値がつかないこともしばしば。でもだからと言ってただただ焼却してダイオキシンや二酸化炭素を発生させる“燃やすゴミ”としてゴミ袋に入れるのもまたなんだか複雑な気持ち。

たまに大量に古着屋さんやリサイクルショップに持ち込むけれど、少なからず何か思い入れのある洋服達が重量単位や激安の値付けをされることになんとなく悲しい気持ちになる。いや、きっと、誰か同じようにこれが素敵だと思ってくれる人の手に渡ってまた活躍してくれるだろうと思うしかない。

わたしは海外でフリーボックスを実体験していないから実情はわからないものの、もし日本にあれば、迷わず入れにいきたいものがあれこれある。試しに『日本 ハイカーボックス』でgoogle検索してみたら、それらしきものは出てこなかった。唯一、信越トレイルで関田峠にハイカー用に無料の水が置いてあるというブログを見つけた。あとはたまに大型家電やソファなんかが粗大ゴミシールなししマンション前に置いてあることがある。最近、近所で『ご自由にお持ちください』と張り紙のしてあるベッドの“一部”らしき巨大な木板が2枚置いてあったことがある。いやこれは誰もいらんでしょうと笑ったけど、翌朝にはなくなっていた。価値ってわからないもんだ。

だからこそ、コミュニティや信念、スタイルをもって顧客との関係を大事にしていると感じる、わたしの大好きなトレラン・アウトドアショップやスペース、何か関連したイベントでもいいかもしれない。そんな場所にハイカーボックスあったらなぁ、なんて思ったり。もしかして全国でそんな動きがあったなら、そのうちあっちにあったものが、誰かが使ってそのまま旅先で次のところに入れるなんていう循環があるかもしれない。そういうところに来る人の手に届くなら、ヤフオクで1000円で売るよりもタダでもそこに入れる方がずっと価値がある。ものを買う場所として人が集うだけでなく、「経験」や「知識」やその他お金で変えることのできない何かがたくさん集まるコミュニティスペースだったら素敵だな。

いやいやとはいえ商売、ショップとなると途端にそう簡単なことではないのも重々承知。自分がやると考えただけでも、じゃあ洗濯していないものはどうなんだとか、安全性はどうなんだとか、几帳面な日本人の「ルール」や「注意書き」を想像しただけでちょっと気が遠くなる。言うのはタダ、自分でやってみろと言われそうだ(笑)すみません!う~ん、簡単なはずなのだけど、むずかしいなぁ。なにかいい方法はないものか。

関係ないけど、結構アインシュタインが好きなわたしは、ケロちゃんのブログからこの言葉を思い出した。当たり前に消費していく毎日。昨日は何回財布を口を開けたかな。何回ゴミ箱にものを入れたかな。よし、とりあえず、その前にちょっと手を止めて考えることから始めてみよう。

Learn from yesterday, live for today, hope for tomorrow. The important thing is not to stop questioning.

- Albert Einstein (アインシュタイン) -

過去から学び、今日のために生き、未来に対して希望をもつ。大切なことは、何も疑問を持たない状態に陥らないことである。

P1280024 (640x427)

photo:水切れに苦しんだ高島の単独スルーハイク。ハイカーボックス的なものを夢見つつ、ボックスどころかほぼ人に会うこともなく、オタマジャクシの泳ぐ水たまりの水をてぬぐいで濾してから浄水して飲んだ。(そしてこの時絶賛道迷い中)


やっぱり山が好きだ。

唐突だけど、ごくごく、シンプルに、ただそれだけのことなんだ。

それだけのことなのに、こんなにも心揺さぶられる、山が、やっぱり好き。それはもうどうしようもないことなんだ。山に登ると、壮大な景色を前に足を止めて、鼻から口から全身の毛穴から、めいっぱい美味しい空気を吸って、目を閉じて、両手を広げて、大自然を感じるのが好き。

“美しさの中に身を置く”

アメリカのロングトレイル、パシフィック・クレスト・トレイル(PCT)を歩いた女性の映画、『わたしに会うまでの1600キロ』の一節。信越五岳でわたしの今年のトレイルランニングレースの連戦はひとまず落ち着き、なんだかほっとした。好きで大会に出ているし、レースでも山を楽しんでいるし、だいたい自分らしくいるのだけれど、やっぱり不安や緊張があるもので、自由気ままだと言われるわたしもさすがにちょっと力が入っていたのかもしれない。先週、所用で北アルプスに出かけて、美しさの中にゆっくりと身を置いて、「やっぱり山が好きだなぁ。なんだかなぁ、好きなんだよなぁ、なんなんだろうなぁ。しょうがないよなぁ、好きなんだもんなぁ。」と、レースの興奮状態からユルい自分モードに戻れて、うれしい気持ちになった。

前回の信越五岳のBlog記事は、ちょっとネタっぽく、笑って読んでほしいななんて思ってストーリー仕立てで書いたんだけど、思いのほか『ラブレターのようだ』とか『(アンディさんのことを知らなければ)かっこよくて好きになりそう』とか『だいぶ惚れたな』とか、敢えて際立てて書いたペーサーとのちょっぴり熱いやりとりの方に注目されてしまった。4000以上のいいね!がついているMMAのfacebookでも紹介していただいて、やけに記事にもいいね!をもらって、自分で書いておきながらこっぱずかしいような複雑な気分になり(笑)、とりあえずまぁ、早々に次の記事でも書いてごまかしておこう、そんな感じでキーボードを叩いているところ。

IMG_5099
トレランザックをハイクのザックに背負い替えて。パンパンだけど、気分は軽いし、だいたい大好きなものばかりが入っているから、重くなんてない。

IMG_5110
北アルプスの玄関口、上高地からのんびり歩く。横尾山荘前で友人と遭遇。お母さんと2人で涸沢の紅葉を見に来たんだって。素敵な親孝行だなぁ。

IMG_5114 (640x255)
涸沢は紅葉のピーク。上高地から涸沢への道は、人でいっぱい!だけど上高地からはコースタイムで休まず歩いて6時間はかかる道のり。観光地気分で安易に行く場所ではないことを伝えるのはなかなか難しいことなのかもしれない。ちょっと心配になるような格好の人もいた。日帰りでピストンしたいけど無理なもんですかね?と周りに聞いてやめたほうがいいと言われているカップルもいた。すっかりバテて暗くなる頃に到着している子供連れの親子もいた。日本でも指折りの紅葉スポットだけど、高山であることには違いない。

IMG_5335 (640x480)
実は涸沢ははじめてだった。人が少ないところでのんびりするのが好きだということもあり、他に“行きたい!”場所も多く、優先順位的には下のほうだったからか、なかなか行かずにいた場所でもある。だけどやっぱり噂通りの紅葉には感動した。景色も素晴らしい。平日ということもあって、テントは思ったよりも少なかった。

IMG_5120
だけど、涸沢ヒュッテと涸沢小屋は紅葉を見に来た方々でそれぞれにものすごい混雑で、ピーク時にはトイレに行くにも2時間待つというのも納得した。涸沢小屋で数百、涸沢ヒュッテは数千の人が1日で訪れるのだと言っていた。食事も30分ずつ4回転以上、テラスは満席だった。荷揚げヘリが朝から暗くなるまでひっきりなしに飛んでいた。運んでも運んでも、食べ物や飲み物がすぐなるなると言っていた。

IMG_5154 (640x480)
涸沢から先は、多く人が目指す百名山の「奥穂高岳」ではなく、あえての北穂高岳だった。百名山ハイカーの人には興味がないのかもしれない。おとなりをつなぐ縦走路も難易度が高い。それにしてはピストンするにはコースタイムも長く、急登、激登が続き、岩場も多く鎖場もあって、それはいいとしてもとにかくなかなか長くて、ピークに着く頃にはすっかりバテバテになった。岩場が大好きだからテンションは高かったけれど。一緒に行った方に速すぎる速すぎると言われた。おなじように、「さっきまでえらい辛そうやったのに、岩場になったとたん水を得た魚みたいに登って、もう!」と仲間に言われている女性がいて笑った。そうそう、そうなんだよね。

IMG_5378
北穂高岳山頂、直前の岩壁。岩が結構もろい。落石事故も多いかもしれない。

IMG_5376
北穂高岳山頂から望む槍ヶ岳。北穂高岳北陵から槍ヶ岳のルートは、飛騨泣き、長谷川ピーク、大キレット、南岳、中岳、大喰(おおばみ)岳とコースタイムも長く道が険しい。鎖、梯子、ナイフリッジ、すれ違いにくい場所、切れた落ちた場所、痩せた岩稜やガレ・ザレが続き、ほとんどが岩だ。事故も少なくない。高所恐怖症の人にはとてもじゃない。(そもそも来ないか) わたしももっと技術力を上げて、経験者とともに歩きにいきたい場所だ。

IMG_5193 (640x224)
天気に恵まれて、朝にはいわゆるMorgenrot(モルゲンロート)、山肌に朝陽が当たって染まる現象が見られた。左から前穂高岳、吊尾根を経て、奥穂高岳、涸沢岳・涸沢槍を経て、一番右が北穂高岳。山が好きな人なら誰もが知っていてきっと多くが憧れる山だけれど、決して容易に行ける場所ではない。

岩場を通過する技術力問題だけじゃないのだろう、落石による滑落事故も良く聞く。遭難も多い。熟練者でも命を落とす。「涸沢の紅葉」というメジャーな響きで、上高地という観光地のような場所から、歩いて来て快適な小屋で宿泊のできる涸沢。そこから誰でも登ろうとすることができるからこそ、怖いものだと感じた。百名山を制覇することに特にこだわってもおらず、自由気ままに山を歩いているわけだから、奥穂や前穂はまたこんど、いつか、そのうち来よう。

IMG_5377
みんな穂高連峰側のモルゲンロートばかりにカメラを向けるけれど、振り返れば格好いい岩がどーんと構えている。クライミングと言えばやはり屏風岩だろう。熟練者が一緒だったので、ぴょこんと尖っている屏風の耳、その左隣の屏風の頭まで、破線のパノラマ新道経由で歩いた。パノラマ新道はその入り口にも小屋にも繰り返し注意が促されている。事故が多いらしい。難しいかどうかというよりも(わたしにレベルを語るほどの技量はない)、繰り返しの急登やカラカラという音に背筋凍る落石が多そうな斜面のトラバースが多かった。稜線も細く、慎重に歩いた。

IMG_5386
屏風の頭からは、見たこともない角度で青空に浮き上がる穂高連峰の全貌が見えた。振り返れば槍ヶ岳に燕岳、大天井、常念岳、蝶ヶ岳といった表銀座~常念山脈が見えた。秋の雲と紅葉が美しく、なんども足を止めて深呼吸をして、そのありがたい景色と空気を全身で満喫した。

やっぱり山が好きだ。

もちろんトレイルランニングも好きだし、ハイクも好きだし、ちょっとハードな登山も好き。どんな山の表情も好き。その美しさの中に身を置くのが好き。できることならずっとそこに居たいくらいだけれど、そうもいかないわけで、また街に戻って働いては、山に“もどる”。そうして山を楽しむことに夢中なんだ。

山は決して逃げない。噴火してしまったり、登山道が崩れてしまったり、登れなくなることもあるけれど、それでも山はそこにある。急ぐことなんてない、健康な身体あってこそ、命あってこそ。過酷なレースの後だったからこそ、余計にそんなことを考えた。そんなのまったく知る由もなくただただ遠くまで広がる柔らかな秋の空の下、これからも大好きな山を色んな方向からゆっくりたんまり楽しんで行きたいと改めて感じた、いい日だった。

IMG_5303 (640x480)
エディさんや釘さんなど数人でこの夏に行こうと計画していた奥穂~西穂のルート。ジャンダルムが見える。天気が悪くて中止にした。短いシーズン中に条件が揃うことって、なかなか貴重。来年、また。

 


南アルプスの“南”へ(南アルプス縦走 後篇)

前篇はこちら

2日目、早朝に薄暗い中、高山裏避難小屋を出る。

「もう行くのかい」

早起きのおやじさんに挨拶するとそう声を掛けられた。しばらくはトラバース道。薄暗くヘッドランプが必要なのはその間くらい、2日目の行程を考えて少し早出することにした。感謝の気持ちをノートの端切れに書いたのだけれど、ゴミか何かだと思ったのか、なんだこれ?というおやじさん反応に ちょっと恥ずかしくなってバレンタインチョコでも渡す女の子のように、半ば投げるように渡してペコっとおじぎをしたらそそくさと小屋を出た。夜に降り続いた雨はすっかり止んでいた。

木の根や濡れた岩に足を滑らせないように気を付けながら、ゴーゴーを音を立てる沢の音を聞きながら思ったよりも長いトラバース道を行く。しだいに木が低くなりはじめ、いきなりの急登をストック片手に登る。足が重い。だけどこれはあくまで序章にすぎない。突然視界が広くなったと思ったら大きな岩石の斜面に出た。

高山裏のおやじさんが言った“ここからが本番”、あぁここのことかとすぐに分かった。荒川前岳に向かうガレの大カール。ゴロゴロと足場は不安定。ルートを誤ってズルッといくと転げ落ちそうな角度。しっかりと目を見開いて、斜面を一歩一歩登る。

IMG_1085 (640x281)
高山裏はもうこのずっとずっと下の方

P1280645 (640x480)
空が次第に明るくなってくる

IMG_1087 (480x640)
しるしが少ないので集中して登る

IMG_1088 (640x480)
稜線へ出て、斜面を振り返る。ルートはやや不明瞭。

稜線まで出たと思えば、右側がごっそりこそげ落ちている。すぐにGPSと地図とコンパスで現在位置を確認しても、たしかにルートは間違っていない。岩場のトラバースよりも鎖場よりもなんだかよっぽど怖い。今回の縦走で一番緊張が走った瞬間だった。下の方でカラコロ小石が落ちる音が聞こえて背筋が凍る。できるだけ崖の方に足をつかないように、そっと歩く。

IMG_1094 (480x640)
雪山でいう雪庇のような状態。こういうのを何て言うんだろう?

IMG_1095 (640x480)
こりゃ危ない

IMG_1096 (640x369)
山頂手前はさらに危険

IMG_1099 (640x480)
斜面側を巻くハイマツの道が新設されていた

P1280661 (640x480)
山頂はあそこ

P1280657 (640x480)
富士山

天気が良いとは言えなかったけれど、これから好転する様子で遠くには富士山が見えた。あとから小屋の方から聞いた話では、この稜線の崩れは年々削れているらしく、今年の天候不良でさらに崩れたそうだ。山頂手前のハイマツの巻き道はわりと最近新設したものらしい。衝撃を与えないようにそっと歩いてほしいと言っていた。崖側を歩かないよう看板なりを立てたいが、看板を立てること自体が難しく、また風で印などもすぐ飛んでしまう。山がもろい上にえぐれているからいつ崩れるかわからないのだと言っていた。そのうち、この稜線を歩かず斜面を通る道ができるかもしれない。

次に向かうは荒川岳(東岳)手前の中岳。荒川岳で3つのピークがあるので、 きっとなかなかつかないと思う人も多いはず。中岳山頂から下に中岳避難小屋が見えた。

『無線で高山裏から聞いてるよ~』と迎えてくれた中岳避難小屋に挨拶をして荷物を小屋外にデポさせてもらい、いざ荒川岳へ。荒川岳は別名「悪沢岳」と呼ばれていて、その名のとおり?荒々しく男らしい雰囲気漂う岩の稜線を辿っていく。うっすらガスのかかる薄暗い雰囲気がさらに拍車をかけた。岩の多い山でも、つるんと丸い岩や巨石が重なる岩など様々だけど、悪沢岳の岩は鬼の住む世界のような・・・“ワルさ”を醸し出している。

IMG_1131 (640x338)
ザクザクした岩

IMG_1130 (640x480)
貫禄がある

荷物を置いて身軽になり羽が生えたように岩場を越え九十九を登り、あっという間に悪沢岳に着いた。残念ながら山頂ではガスに覆われていたけれど、雰囲気はたっぷり。山頂の向こう側、千枚小屋から登る人が多いこのルート。昨夜の千枚小屋は大混雑だったらしい。どんどん山の向こう側から人がやってくる。

再び中岳避難小屋へ戻り、管理人の山中さんとしばしおしゃべり。トレイルランナーにとても理解があって、ご本人も小屋周りを毎日のように駆け回っているのだそう。山中さんが“走る”超人管理人として、TJARの選手やファンには有名だと後から知った。富士登山競走の話や最近のシューズの話、とにかく色んな話にずいぶんと花が咲き、かれこれ1時間半、いや2時間くらいは居座って、もはや小屋めぐりの旅のようになってきた。

「トレイルランニングが好きならな、赤石岳避難小屋に寄って行くとええよ」

次の目的地が赤石岳というよりもその先の赤石避難小屋になった。

P1280678 (640x480)
中岳避難小屋。次は泊りに来たい。

P1280677 (640x480)
管理人の山中さん

中岳避難小屋を出るとほどなくして網の張り巡らされた柵が見える。網のドアを入ると、なんと今までの悪そうな悪沢岳からは想像のつかないような一面のお花畑!信じられない!

IMG_1142 (640x480)
ドアを開けて入る(鹿避け)

IMG_1145 (640x480)
花の間を歩く

IMG_1150 (640x480)
花、花、花!

IMG_1154 (640x480)
しかも遠くに富士山。晴れてきた!

前後を歩いていたハイカーさんと『花が綺麗すぎて足が進まないですね(笑)』と写真に夢中になるお互いを笑いあいながら、たっぷり時間をかけて斜面を下っていると、その間に徐々に天気も好転。

IMG_1172 (640x480)
赤石岳が見えた!
(お、おおきい!)

IMG_1174 (640x480)
ハイカーのみなさんとしゃべりながら。

IMG_1178 (640x480)
綺麗で大きな荒川小屋

下った先は荒川小屋。荒川小屋でも小屋の方へご挨拶。赤石岳からさらに先へ行くか悩んでいると伝えると「とりあえず走る人なら赤石岳避難小屋へ寄っていくといいですよ。なんでも教えてくれますから。きっと喜んでくれますよ」とまたも薦められた。そんな“うわさ”のおやじさんに会うのが楽しみだ。少しだけ休憩したら、今回のラスボス「赤石岳」へ。

『南アルプスの“南”は、山が大きい』

山で会う人と話をすると、だいたいみんなそんな風に表現する。荒川小屋からは2時間半。ここまでですでに7時間(そのうち2時間は小屋)、荷物は10kg強。心なしか気合が入る。1ヶ月後にTDSを控え、“長い登りに耐えうるメンタルとパワー”にはこういう登りはすごく大事。速くなくとも、一定のペースで、壮大な景色に心躍らせながらズンズンと進んだ。

IMG_1183 (640x287)
長いトラバースの道。ぐるーっと奥までいって、山の斜面の右側を登っていく。ちなみにもちろんあれは赤石岳のピークではない。

IMG_1184 (640x480)
振り返ると、山の斜面を横切るトラバースの道が見える。

IMG_1189 (640x480)
淡々と続く九十九折れ(あれがピークかな?)と思って立ったところは、赤石岳でもなく小赤石岳でもなく“小赤石岳の肩”。そう、2つ前の写真のピークの部分は、赤石岳の手前の小赤石ですら、なかった。そうか、ガスって隠れているところが赤石岳か!

IMG_1198 (640x480)
と思って稜線を目指す

IMG_1200 (640x480)
が、着いたところは小赤石岳だった・・・

IMG_1199 (640x278)
景色は綺麗

結局そこからコースタイムにして約1時間(!)先に赤石岳があった。
IMG_1228 (640x480)
最初のピーク、小赤石岳の肩までの登りが長く、以降は稜線上だけれど、なかなか赤石岳の山頂が見えないだけに、なんども騙されて行けど行けど赤石岳に着かないこのコースにかなり興奮。周りがヒーヒー言うなか、ひとりにやけながら登っていたと思 うと正直相当気持ち悪い。だけど大満足の登りだった。雷鳥の親子が足元を横切るのを眺めつつ、山頂から数百m下の赤石避難小屋へ。

IMG_1236 (640x480)
堂々とトレイルを横切る雷鳥のおかあさん。

IMG_1246 (640x480)
ここがうわさの赤石岳避難小屋!

すいませーん、と小屋を覗くとグレイッシュな髪と髭のダンディな方が「はいよ~」と出てきて、私の足元を見てすぐ、ニカッと笑う。

「お?トレイルランナーか?」
「は、はい!」
「おー!来た!トレイルランナーか!よっしゃ、ちょっと待って、写真撮ろう!」

バタバタと裏に戻っていく。

「オーイ!トレイルランナーだってさ!写真撮ってくれー!」

女性に声を掛けている。その勢いにポカーンとするわたし。

「あ、あのう、こちらでごはん、食べてもいいですか?」
「おお、そうか、じゃあ写真はあとにするかな」

よかった(笑)
トレイルランナーにしちゃ荷物がでかいな。あ、今回はハイクなので。そうか、どこから来た?鳥倉から入って昨夜は高山裏で 。あーおまえさんか、女の子ひとりってーのは。高山裏か、そりゃまたいいとこ泊まったな。わはは。そんな話をしていると、男性が飛び込んでくる。

「ここですか!赤石岳避難小屋は!日本一面白くて楽しい避難小屋だって聞いて、ずっと来たかったんですよ!」

彼曰くネットでこの小屋に来て最高に楽しかったというBlogだかヤマレコだかを読んだのだという。どうやら一部の間ではえらく有名な小屋だったらしい。興奮して話し続ける彼にも圧倒されて、周りのテンションの高さが面白くて仕方なかった。

「今日は小野君が来たよ。知ってるかい?小野君。それから昨日は山田慎也が泊まっていってな。えらく盛り上がったんだよ。ここはTJARの奴らが良く来るからねぇ。 」嬉しそうなおやじさん。トレイルランナーが好きなんだという。TJARのコース上でもあり、練習にくる選手も多いそうだ。 ここでもまたしばらく話を楽しんで、小屋の周りで写真を撮ったりして時間を過ごした。

IMG_1255 (640x480)
初めての山域、聖まで行く可能性も考えて一応ヘルメットを持ってきたけど、使う場所はほとんどなかった

IMG_1262 (640x480)
雲はあったけれど周りの山は良く見えた!

P1280716 (640x480)
赤石岳避難小屋の管理人、榎田さんと。

赤石岳避難小屋で泊まるか散々悩んだ末に、後ろ髪惹かれつつも結局赤石小屋へ降りることに。今日明るいうちに下山したいとい うハイカーの少年(青年?)があまり時間がないというので、赤石小屋まですこし引っ張ってあげることに。

赤石岳避難小屋から赤石小屋までのルートもこれがまたなかなかひと癖あり、足場の悪い崖のようなところを何度も横切りながら標高を下げて行く。なんとか時間を多少巻いて赤石小屋まで到着したものの、道中写真を撮る暇がなくちょっと残念。自転車で登山口まで来たそうで、自転車でまた帰るのだという。青春のようなチャレンジも良いのだけれど、不慣れな感じでちょっと計画性のない感じが心配。無事下山して帰宅したようでよかったけれど、あんまりよくないなぁ。

「おかえり~!」

小屋に着くと、これまで何度かすれ違った方々が笑顔で手を振って迎えてくれた。

両親よりも少し上の世代か、でも私を娘のよ うだと気さくに接してくれた。みんなでビールで乾杯して、おつまみをあちらこちらから分けて頂き(笑)、一緒に夕日を見て、山トークに花を咲かし、消灯時間あたりまで楽しんだ。 なかには、長年このあたりの山を登り続けているという推定70・・・80近いおじいさんもいた。この方がまためちゃくちゃいい人で、それぞれの小屋の管理人さんと仲良くて今でも歩荷をしているらしい。一緒に写真を撮っておけばよかった!また会えるかなぁ。覚えていてくれるかなぁ。

IMG_1381 (640x480)
隅っこにテントを張る

IMG_1528 (640x480)
夕食はフリーズドライの鶏鍋とシメにラーメン。

朝、目が覚めて小屋周りで朝陽を見ようと思ったけれど、どうも見晴しはいまいち。そこで、カメラとパンとチャイを持ってプラプラと富士見平へ登る。片道50分を朝のジョグと思って駆け上がる。その甲斐あって、ぎりぎり間に合った。

IMG_1298 (640x480)
徐々に登る朝日

IMG_1321 (640x480)
すでに陽は上がっていたものの、そこには一面に広がる雲海と富士山!今回の縦走でいちばんの景色。

P1280741 (640x480)
赤石岳

P1280742 (640x480)
荒川岳

小屋にもどってのんびり撤収。鳥倉(長野)から入って南下すると、静岡側に下山するしかない。ものすごく不便で、まずは椹島というところに下山して、さらにそこから専用バスで畑薙という一般駐車場とバス停があるところまで下山する。静岡駅まではそこからさらにバス。早く下りても時間を持て余すだけだと、もう誰もいなくなった小屋の前で日向ぼっこしながら、パッキング。小屋から登山口までの下りは、疲れた脚には響くだろう長い長い樹林帯、3時間半の下り。たっぷりごはんを食べた私は、雲のない晴天の中、びっしょり汗をかきながら下山した。

***

実は、赤石小屋で会って仲良くなった方が、バスを乗り継ぎ乗り継ぎ帰るという私を静岡駅まで送ってくれた。本当に多くの出逢いに助けられた3日間。最近もこれまでも、山で様々な事件があるので出会う人を安易に信用してはいけないとは思うけれど、この縦走でなにより心に残ったのは人との出逢い。出会う人々が他の山域とはちょっと違って独特だった。あまりメジャーでないから人も少ない。行動時間も長く、コースも楽じゃない。でもその分、「ここが好きなんだ」というマニアックな人も多い。山の先輩方にいままでとはちょっと違う楽しみ方を教えてもらった気がする。

結局のところわたしを虜にしたのは、山の美しさや大きさはもちろんのこと、多くの時間を過ごした「小屋」なのかもしれない。個性的な小屋の管理人。もう笑えるくらい次から次へと物語のようなキャラクターが登場して、それはもう楽しくて楽しくて。厳しさもあるけれど、優しくて、気さくで、温かい。話をはじめたらあっという間に時間が過ぎていくほど引き込まれる。もっとここにいたい。山小屋ってこんなにおもしろかったのか。なんだか山への想いがまた少し変わった気がする。

南部へ訪れる際にはぜひ各小屋へ寄ってほしい。わたしは必ずそうおすすめしたい。


南アルプスの“南”へ(南アルプス縦走 前篇)

すっかり虜になった。

ここのところ、なにかにつけてこの3日間のことを思い出しては、また会いたい、はやくまた行きたいとそんなことばかり考えている。それは、7月末に行ってきた南アルプスの話。

これまで南アルプスは、鳳凰三山に始まり、甲斐駒ケ岳、仙丈ヶ岳、北岳、間ノ岳、農鳥岳ともっとも人の多い北部の山々を登ってきた。北アルプスも雄大だけれど、南アルプスの雰囲気もスキ、そんな風に想っていたけれど、いまやそれは南アルプスの魅力のほんの一部にしか過ぎなかったような気さえしている。

南アルプスの南部はとにかくアクセスがわるい。塩見岳への登山口『鳥倉』に行くには、伊那大島駅からバスに乗る。登山の時はもっぱら深夜バスのお世話になるけれど、伊那大島に着くのは深夜3時30分。当然真っ暗。伊那大島駅発鳥倉方面へのバス始発は6時45分。3時間外で寒さの中寝て待つのは結構つらい。

北部に比べて人もまばら、行程も長くエスケープの少ない南部。体力のことを考えて、前夜はバスで飯田駅まで、飯田駅の近くのこじんまりとした旅館に泊まってお風呂&熟睡。翌朝に鈍行で伊那大島へ向かった。

P1280587 (640x480)
飯田駅から伊那大島へはJR飯田線で30分弱

P1280589 (640x480)
伊那大島駅には東屋があってここで駅泊する人もいるみたい

P1280591 (640x480)
鳥倉登山口をスタート

鳥倉からは静かな樹林帯をいく。日本一標高の高い峠「三伏峠」までは4kmで標高790m上昇、コースタイムは約3時間弱。最初の取り付きで標高を上げるのが意外と大変で、塩見小屋が改装中の今年は三伏峠で宿泊の人ばかりだった。

鳥倉から南下して荒川岳に向かうなどという「コースタイムが長く」「エスケープルートがほとんどない」「静岡側に下りるしかない」ルートを選ぶモノ好きは少なく、殆どが塩見岳目的。三伏峠小屋の人は『今日はすごい混雑だよ、夕食は4回転だね』と言っていた。そりゃ大変だ。

P1280615 (640x480)
平日でこの混雑。

あら、なんだかぽつぽつと・・・晴れ予報なんだけどおかしいな? 「ところによって夕方から不安定」の“ところによった”みたいです。小屋の方も驚く、たま~にあるんだよねぇ、という天気の崩れ。もちろん夕立や雷を考えて15時には小屋に着く予定にしていたけど、まだ午前中。

P1280621 (640x480)
あ~あ。

P1280623 (640x480)
あ~あ。

P1280628 (640x480)
あ~・・・あ。

15時~15時半には小屋/テント場に着くというのは山のルール。ましてや天気の悪い時になんて登らず潔く中止にしているけど、うーん、ひさびさに想定外の天気。さて、どうするか。とりあえず最寄の小河内岳避難小屋で雨風の様子をみて、これ以上良くならないのであれば小河内泊にしようと30分ほど待機。小河内岳避難小屋(有人)は小さな小屋だけれどとってもきれいで優しく迎えてくれた。雨が弱まったところで再出発。様子をみて高山裏避難小屋まで行くと伝えると、『じゃあ、無線を入れておいてあげるよ。あなたなら2時間くらいで行けるかもね』と言っていただいて出発。

P1280637 (640x480)
意外ときつい、大日影山から板屋岳の登りを越えるとガレの縁を通る。視界が悪いとすこし注意が必要な場所。樹林帯と開けた場所をいったりきたり。雨風は良くなったもののガスは晴れない。注意しながら進む。景観はなかったけれど足元には花がたくさん咲いていて、とっても素敵な場所。

P1280632 (640x480)
花が美しい夏山

IMG_1072 (640x480)
ザワザワと脚に優しく触れる草

14時半には高山裏避難小屋へ到着。 農鳥小屋のおやじさんとおなじく有名な“おやじさん”がいる。もう80近いという。すいませ~ん、と覗く。

「おう。小河内から聞いてるよ」
「次の中岳避難小屋まで行こうか迷っています」
「どのくらいで来た?」

登山口とコースタイムを聞かれて答えると「いいペースだな」と真顔で言われる。しとしと降る雨と、少しの間。

「まぁ行くのはおまえさんの勝手だから、行きたいなら無線はいれてやる。だけどココまでなんてそりゃ体力ありゃ来れるやつはいるけど、本番はこっからなんだから、まぁ甘くみちゃいかんね、それでも行くんかっていう話だ」

そう言われてすぐに高山裏避難小屋泊に決めた。
真顔だし、ちょっとぶっきらぼうで見た目も怖いと思う人もいるのかもしれない。でもおやじさんの言葉と表情は優しさと気遣いにあふれていて、なんだかとても安心できた。こういう時には、本当にここを知り尽くしている人の言うことを聞いておいて間違いはない。わたしが小屋に着いたときにはまだ誰もおらず、おやじさんと色んな話をした。

「ほらよこせ、はやく」

わたしの濡れたレインジャケットやら靴下やらをテキパキと干して乾かしてくれたり、私の持っている飲み物やごはんを興味深そうに覗いては、便利だよなぁ最近はなんて話をしたり。おやじさんのこと、山のこと、TJARのこと(あいつら桃缶とラーメンを飲み物みたいに飲んでいくんだと言っていた。笑)、小屋番をあとどのくらい続けようかとか、とにかく色んな話をした。母方も父方もおじいちゃんを両方亡くして何年もたつ。ちょうどおじいちゃんくらいの年齢のおやじさんとのゆっくりとした時間がすごく楽しかった。たくさん笑って話した気がする。

その後、にぎやかな団体さんがきて、それはもうかなりにぎやかだったけれど(笑)、わたしに気を遣ってかおやじさんの雷も落ちず、少しだけ注意をしていて、そんなところにも優しさが垣間見えた。ノートの端を千切っておやじさんにありがとうの手紙を書き、翌朝3時には小屋を出た。

その後、ほかの小屋に寄る度に定番となったやりとりが笑えた。

「どこに泊まったの?」
「高山裏です」
「・・・おやじさんと話した?」
「ええ、すごく優しくしていただいて、とっても素敵で。
「そりゃあ、すごいね。キミ、気に入られたんだね。ワハハ。」

高山裏から中岳避難小屋までのルートは、この縦走の中でも最も危険と感じた場所で、風も強く、標高差600mの大斜面の登りもきつかった。やっぱりおやじさんに相談して、高山裏で体力温存してしっかり休んでおいてよかったと、より一層感謝した。おやじさんと一緒に写真でも撮ってこればよかった。また会いに行くしかないな。

IMG_1075 (640x480)

(後編につづく)


大人達は平日遊ぶ~HOC at 金峰山~

幼いころ、学校に行くよりも遊びに行きたくて仕方なかった。塾に行くよりも遊んでいたかった。どこか遠くに行きたかった。学校へ行って、塾へ行って、大嫌いな宿題をして。その繰り返しから逃げ出したいと何度も思った。

父親が先生で、小学校2年生から高校生まで塾に通い続けていたわたしは、「家と会社の往復の毎日だ」というような社会人の愚痴みたいなことを小学4年生くらいで思っていました。子供よりもずっと大変な大人の苦労など理解もせずに、早く大人になりたいな~なんて。

その頃のわたしに言ってあげたい。
がんばれ、あと20年くらいしたら平日に雄叫びあげて山ン中駆け回って遊べるから、と。

そんなわけで、スリーピークスの松井さんの声掛けで集まった平日に遊んじゃいたい大人達で金峰山に行ってきました。
IMG_0498
みんなお山大好き、ウルトラランナー!
メンバーには、MMA渋井さんや、スリーピークス松井さん、くだりがこわいらしいけれどめっちゃ速いさいこさんなど、わたし含めMMA Bloggerが4人も。

この日は「山登りだよね?山登りだよね?」という事前確認ではじまったのですが、ウルトラランナーが集って、山登りになるものかしらと思っていたら、そもそもみんなめちゃ走れる恰好じゃないですか。それ、トレランザックっていうんですよ!(笑)

11536033_10152823169281809_1978337765500640885_n
わ、私だけOMM CLASSIC32・・・。(ただトレランザックを玄関に忘れてきただけ)

ルートは、大弛峠~朝日岳~金峰山~瑞牆山麓~富士見平小屋~増富の湯。大弛峠(おおだるみとうげ)は標高2,360m。こんなところに駐車場があるのです。車両が入れる日本最高所の車道峠だそうです。つまりは登山口入ったらすぐに、標高の高い山ならではの樹林帯を歩ける(走れる)わけです。

IMG_0405 (640x480)
苔むした森、大好き~。なんてのんびり撮っていたら、みなさんどんどん行っちゃいます。

最初のピーク、朝日岳の標高は2,579m。つまりたった200m程度で山頂です。おっとな~。(いやそれはなんか違う)
IMG_0408 (640x480)
ちなみに、わたし、森林限界へ抜ける瞬間がすごく好き。ほら、こういう、視界が開ける直前のこの瞬間、すっごくドキドキワクワクする。たまらない。

IMG_0479 (640x480)
「日頃の行いがいいよね~」って言う、山あるある。梅雨の晴れ間の晴天。

IMG_0475 (640x480)
朝日岳山頂付近にて。ちょっと見えてないかな?右奥が金峰山。ちなみにこの日の私のシューズは MERRELLのALL OUT CHARGE。適度なクッションが履き心地良くて好き。GWの高島トレイル(いろいろ含めて約89km)で履いたけど、ぜんぜんへたってない。Tシャツは同じくMMA Blogger 太一さんデザインのもの。

IMG_0418 (640x480)
IMG_0422 (640x480)
朝日岳から金峰山へ向かう道もまた、すごくいい。低山にはない解放感。空が近い。こういう場所にいると空を飛びたくなるのはわたしだけでしょうか。(笑)思わず立ち止まって深呼吸したりなんかして。この日の前日まで、数日間PCに張り付いての作業が続いたので、全身が解放されていく気持ちよさ。頭も身体もスッキリする。なにより、みんなでくだらない話をしたりして全身で笑って過ごすことの楽しさったらもう!大人らしからぬはしゃぎっぷりで、うっひょー!と雄叫びを上げて駈けまわる。

11095662_864098207000791_2196608912703762955_n (640x480)
宇宙人が岩持ってきて積んだんじゃないかっていうくらい不思議な様子の金峰山山頂。

11536134_896162303789360_2656856059386017824_n (640x480)
金峰山の五丈岩。やっぱり登るよね~!ということで、途中まで登ってみました。(左のちっこいの。) 登るのはともかく下りる時も大変なわけで、みなさんに迷惑をかけないように途中まで。怪我したら元も子もないしね。次来た時にしよう。子供のように喜んで登るけど、こういう時は大人な判断で、ね。

IMG_0529 (640x480)
金峰山から小屋への稜線。
「分水嶺トレイル」という縦走型のトレイルレースのコースのひとつ。

分水嶺トレイルとは今年で4年目を迎えた縦走形態のトレイルレース。 奥多摩から4つの百名山(雲取・甲武信・金峰・ 瑞牆)と4つの分水嶺(多摩川・荒川・富士川・ 千曲川)を3日以内で踏破し、清里の獅子岩ま でたどり着く、、登山道95%の大変タフな縦走 レースです。
(引用:TJAR WEBサイト)

いつか出てみたい、分水嶺。こんな景色を見ながらレースの話を聞きつつ歩くと、その憧れがより一層強くなっちゃうな。

IMG_0439 (640x480) IMG_0436 (640x480)
金峰山からは瑞牆へ行かずに、沢沿いのルートへ。ほとんど人が踏み入っていない様子。柔らかいトレイルで、しっとり幻想的な雰囲気がすごく良かった!(ただし女子トーク)

IMG_0448 (640x480)
ちょっとしたマイナールートを経て富士見平小屋へ。とっても綺麗で、小屋の方も明るく優しい。もうおおよそ下山したようなもの、ということで飲み物を買ってひと休み。

IMG_0485 (640x480)
瑞牆山を眺めながら下ることのできる気持ちいい下山ルートを、もちろん、走る!これを走れば、バス停だね!

と、思ったら最後の最後で事件発生。来るはずのバスの時間は休日ダイヤだったようで、なんと、もうバスがない。

「ここから温泉まで何キロだっけ」
「8km~」
「よし、行くか~」

みなさんにとってたいした事件ではなかったようです。誰一人動揺せずスマートに判断を下すところがまた大人・・・。大人の背中を追いかけるわたし。(いや、わたしも年齢的にはじゅうぶん大人。)
IMG_0459 (640x480)
さらりと事件らしき出来事はみなさんによって過ぎ去り、山を縦走してきた後の残り8kmの林道をさらりと走る。そして、ささっと温泉に入って、各々帰路へ。そして、翌日は仕事に出かけていく。遊んで暮らせたらなぁなんて思うけど、忙しい日々、大変な仕事、そういうのがあってこその、楽しみ。平日に遊ぶことがかっこいい、ということではないけれど、普段休めないような日に休んで遊んじゃうからこその特別感もあるのかも。会社勤め時代を思い出し、自分の迷走する働き方をちょっと考えちゃったりして。

贅沢な大人の平日。
うん、これだ。これだ、きっと。幼いころわたしが憧れていたもの。わたしが憧れていた大人。日頃仕事をバリバリこなし、だけど遊びも知っていて、いつだってフランクで、健康的で、さりげなくて、笑顔が素敵な大人。そんなみなさんと一緒過ごせて、刺激的で最高の1日でした。よし、もっと仕事がんばろう。

あ~、大人になってよかったな。

IMG_0423 (640x480)
みんな、全員年齢不詳すぎで、キュートでかっこいい。
わたしもこんなふうになりたい。


旅へ-western Japan mountain trip-

明日からしばらく、旅にでます。
約2週間。毎年かならず1度はやろうと決めている、

『会いたい人に会いに行く旅』
『 “いつか” を “いま” にする旅』

なかなか仕事が大変なタイミングで前後が結構苦しいのですが、仲間に誘われた山旅をきっかけに思い切って長期休みにしました。わたしは基本的に自分でも能天気でマイペースだと思っていますが、ここ最近いまの自分の選択がこの先の人生左右するなぁと悶々とするようなことがありました。だれにでもたまには、そういう、ちょっぴり息が詰まるような気分の波がくるような時もありますよね。でも、そういう時こそ流されて「なぁなぁ」にしてしまわないように環境を変えてじっくり考える時間をつくるというのはとっても大事なことだと思っています。心洗われる、とよく言いますが、人間の理屈理論では説明できないような自然の広大な景色こそ、心洗うにはぴったり。悩んでるとか言いながらそんなのんびりしたことを言ってるからつまりそれがマイペースなんでしょうかね(笑)

さて。明日、東京から南下して関西、中四国地方の山をぐるぐるりっとする予定です。東京~京都~滋賀~香川~鳥取〜香川~徳島~愛媛~滋賀~京都~(沼津)~東京。 「ファストパッカー」だなんてちゃっかり雑誌で紹介していただいたりもしたけど、正直ファストパッキングの定義などよくわからず(?)、たいして速くもないので、「ファストパッキングっぽい装備でスルーハイク」といったところでしょうか。天気が崩れればいっきに予定変更になり行ける山も少なくなるけれど、もうそれはてるてる坊主を作って祈るしかない。これだけの行程となると、昔リュックひとつで海外へバックパックトリップに行っていたのを思い出します。県をまたぐ移動はもちろん、文明の利器をフル活用します(笑) リッチだねぇ、と言われることもありますが、ほとんどバス移動の貧乏旅、まさにバックパッカーのようなものです。寝床は実家に滞在したり、おうちに泊めていただいたり、野営したり。どこでも寝れるが特技です。

日本が大好きなわたし。今回のロングトリップは何かしら次に繋がるものにしたいと思っていて、文章を書いたり、絵を書いたり、写真を撮ったりしながら、記録しつつ旅をしょうと思っています。この目で見て、体験して、日本の素敵なトレイルをもっと知りたい。今年は、日本の色んな山へ足を運びたい。わたしが奥武蔵や秩父が好きなように、それぞれの地方の自慢の山を、見てみたい。

里山から百名山まで、どんな景色が待ってるかな。


off the gridって?

4/18〜4/19に京王フローラルガーデン アンジェで行われたoff the gridANSWER4ブースのお手伝いで2日間参加してきました。
2015_04_22_11_32_34.jpg
前日まではなんか手伝えることでもあれば~てな感じでお手伝い予定したが、初日から入場に約100人の行列、2日間で来場者数3000人超!というまさに “日本最大級” のアウトドアスタイルの展示会となりました。あまりに人が多くて、ブースに3人いてもなかなか大変な忙しさでした。でもそれはつまりとっても良い機会で、ANSWER4含めまだまだ新しいガレージブランドにとって素晴らしいイベントだったのだろうと思います。

off the gridって何?なんだかみんな行ってたけど何のイベントだったの?という方も多いと思います。MMAの記事にも書いてありますが、一般向けの展示会&販売会といった感じでしょうか。とはいえ、『展示会』という言葉が耳慣れない人もいると思います。

off the gridは、
1)一般の方が実物を手に取って見る、試すことができる
2)場合によってはその場でオーダーができる
3)一部商品をブース内で売っていたりもする
というものです。

有名ブランドでも卸し先が少なくてなかなか大手アウトドアショップで見かけなかったり、インターネットでしか販売してない・受注生産しかしてないガレージブランドの商品だったりと、そういった “なんか気になるけどなかなか買う一歩が踏み出せない” モノを同時に同じ場所で見比べ試すことができるのはとても貴重な機会ですよね。注目のブランドの商品がこんなにたくさんあるお店など全国どこを探してもありません。

私はEC小売業界が長いですが、ネット通販が当たり前の今でもやはり、色味やサイズ感などは越えられない問題であり、ブランドにとっても「なんか思ってたのと違った」と返品交換うんぬんになるよりは、体感して買っていただいた方がいいわけです。ブースに立っていても、『注文する前に背負ってみておいてよかったー!』『気になってたけど、買わずにいた、これなら買う!』という方もいらっしゃいました。

ANSWER4は昨年末にスタートしたばかりにもかかわらず、レースでも少しずつ見かけるようになってきました。いかにも平面的な思考の私に比べ、立体的な脳ミソと柔軟な発想を持ち合わせたコバさんのつくるプロダクトは、一見シンプルな顔でありながら、ひとつひとつのディテールはとても考えられていて、ファッショナブルだけれど機能的。他のブランドの方も興味深く見ていかれていました。

今回は約4Lのトレイルランニングバックパック「FOCUS Ultra」に加え、ウエストパッグ「NO LIMIT」、今後発売予定の「FOCUS R」と「FOCUS」を展示。トレイルランナーはもちろん、ハイカー、調布にお住まいのふらりと来たご婦人まで(笑)色々な方が背負って体験されていました。個人的にはFOCUS Rが欲しいけれど、とりあえず今後のレースを考えてNO LIMITをオーダー予定。(まわしもんではありませんw)

2015_04_22_11_32_09.jpg
ANSWER4 中の人

2015_04_22_11_32_38.jpg
こんな感じで一部商品は販売も。

2015_04_22_11_32_18.jpg
SAUNTER PACK

11012806_819821951418462_6524113333895801871_o.jpg
「FOCUS R」/「FOCUS」

off the grid出展者はジャンルレスで、ざっくりとアウトドアという括りはあるものの、自転車もあり、街用バッグもあれば、釣り具もあったりととてもユニークでした。もちろん、キャンプ、ハイク、トレイルランニング関連も、MMAを見ている方々にはきっと親しみ深いブランドやショップが出展していました。

もともと私は野外フェス&オートキャンプの友人が多く、そこに加えてロードランニングの仲間が増え、さらに加えてハイクの仲間とトレイルランニングの仲間が増えたという変遷があり、それぞれの時代の友人が遊びに来ていて、まるで同窓会のようでした。

“一堂に会する”とはまさにこのこと。6年間くらいのそれぞれ別々だったコミュニティがこうやって繋がるのはなんだか不思議で嬉しいようなムズかゆいような感覚。友達100人どころじゃない。ものすごく大きな輪のような渦のような中で包まれるようにして今の自分があるんだと、改めて素敵な仲間に囲まれている幸せを感じました。自分から流れを生み出す人達に刺激を受けた週末。わたしはもうすこし、その渦の流れに身をまかせても良いでしょうか(笑)いちエンドユーザーとして、これからの様々なアウトドアスタイル・アウトドアシーンがより一層楽しみです。

次回に期待!
お会いしたみなさま、ありがとうございました。