ヘッドライト選びのポイント

どのメーカーのなにがいいよというレビューではありません。これまでの100マイルレースと、レース以外のアクティビティの経験から、選ぶポイントをご紹介します。初心者の方のために基本となるポイントと、2台目のエースライトを探したいという方のためにもう少し視点を広げたものです。走歴が長くなり、いろいろなタイプのレースや、レース以外のアクティビティーでもヘッドライトを使うようになると、選ぶポイントや好みが出てきます。自分は何を重視するのか考えてみましょう。

選ぶポイント

①明るさ

まずはとにかく明るいのが欲しくなりますね。レース後半、どよーんとした自分のライトをギンギンなライトのランナーに抜かれると、ガクッとくるわけです。明るさはカタログ上にルーメンという数字で表記されます。ブーストモードでの最大出力が表記されている場合がありますが、とてもバッテリーがもたないので、一番使う Hiモードでの実用点灯時間を参照してください。この実用点灯時間というのは、新品の電池の状態から70%の照度まで落ちた状態です。ただ、これは電池性能にも依るところがあり、実際に使用してみると、うーんそうかなあ? ということもあります。また、年々、LED性能が向上しているせいか、同じメーカー、同じモデル名でも年式によって大きく性能が異なります。私が以前使用していたPetzl MYO XPですが、当時はたしか120ルーメンほど。現在は200ルーメンオーバー、ブーストでは300オーバーとなっています。通販などで買う場合は最新モデルかどうかをチェックしたほうがよいでしょう。特に新製品が出るこの時期は要注意です。

②光域幅

ここらへんから好みというか、用途に応じた考え方が必要になってきます。分散光によって照らす範囲を広げているものと、その逆にレンズで集約することによって、同じLEDからの発光でもルーメン数を上げているもの、あるいはその2つを組み合わせて両方のニーズを満たそうとしているものがあります。集光型のものは、周りとの明暗差がでることで、分岐や道標を見落としやすくなりますが、私の印象ではカタログ上のルーメン数より明るく見えて元気が出るという利点もあります。随分と感覚的、主観的な要素ではありますが、そういったこともロングレースには大切な要素です。

③色

最近はお目にかからなくなりましたが、安モノのLEDライトですと、青白い光を発するものがあり、陰影がでずらく、のっぺり見えてしまうという欠点があります。Gentos、Petzl、Black Diamondの各社間でも多少個性があるようです。明るくても黄色味がある方が陰影がでやすいように思えます。ちなみに、100マイルレースで夜に幻覚を見てしまうのは、この陰影のなさから、脳が勝手にいろんなものを想像してしまうからではないか? と自分は感じています。また、濃霧時の反射を防ぐために(本当に反射でなにも見えなくなります)フォグランプのようにオレンジや黄色のフィルターを自作される方もいらっしいます。自分はそこまで器用ではないので、濃霧時にはハンドライトで下から照らす、ハンドがない時にはヘッドライトを頭から外して手で視線より下から照らす方法をとります。

④防水性

IPXという数値で表されます。Black Diamond のStormはIPX7です。SilvaのTrail Runner2 はIXP6、TJARの選手たちが選択するのもそういう点からだと推測しています。

以下IPXの基準ですのでご参考まで。

IPX 7 防浸形 定められた条件(1M、30分)で水中に没しても有害な影響を生じる量の水の侵入がない。
IPX 6 耐水形 あらゆる方向からのノズルによる強力な噴流水をうけても有害な影響がない。
IPX 5 防噴流形 あらゆる方向からのノズルによる噴流水を受けても有害な影響がない。
IPX 4 防沫形 あらゆる方向からの飛沫を受けても有害な影響がない。
IPX 3 防雨形 鉛直から両側60度の範囲の噴霧した水によって有害な影響がない。

⑤電池タイプ

大きく分けて単三、単四、リチウム電池に大別されます。リチウム電池は軽く、寒さに強く、専用バッテリータイプのものは充電式です。ただし、このタイプはハンドライトの電池との汎用性や、どこでも入手できる手軽さがありません。又、単三、単四電池型のリチウム電池も存在しますが、かなり高価なもので充電式ではありません。乾電池タイプは軽量化を意識してか、単四型が主流になりつつあります。照射時間はリチウム電池、次に単三電池に軍配があがります。信越五岳では照射時間は短いですし、ハセツネでも深夜ゴールの選手であれば、さほど気にすることはありませんが、緯度の高い地域の海外レース、秋のUTMF、ハセツネの後方選手にとっては夜は長くなりますので、自分のスピードでどれぐらいの光量が必要なのかを、実際に体感してみる必要があるでしょう。

⑥重量とバランス

本体重量だけでなくバッテリー込みの重量を比べて下さい。初めてライトおよび予備バッテリー携行義務のあるレースに出る際に、バッテリーの重さに驚くはずです。又、そのバッテリーが後頭部にあるタイプとライト側に内臓されるタイプ、そして最近は少なくなりましたが、コードでつないでザックへ収納するタイプがあります。これは全く好みの問題です。

⑦その他機能

調光機能

遠くを見る時は明るく、近くを見る時は光量が落ちます。バッテリーを節約できますし、見やすさという点では、トレイルランニングからナイトロゲイニング、クライミングまで対応できるとても優れた機能です。

赤色モード

トレランレースで使うことはまずないでしょう。山岳縦走の際、テント場に近づくとき、トイレに行く時、早立ちでテント撤収する際に周りに迷惑をかけないように、いわゆるマナーモードです。そもそもヘッドライトを夜に使用するのはトレイルランナーだけで、一般的な山の世界では、ヘッドライトは早朝日の出前行動に使用するものであり、我々が特殊な世界の人間であることを忘れてはなりません。

点滅機能

緊急時に自分の居場所を知らせるのに役立ちます。機種によってはSOS信号になっているものもあります。緊急時以外は誤解を招くので使用は避けましょう。

それでは具体的に上記のポイントがどのような違いとなって現れるかを見てみましょう。(撮影協力: 原チャリキロホンダたんなかコーチ)

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まずは調光機能のある Petzl NAO1 です。数年前のNAOの初期型とはいえ、十分な光量と光域幅、リチウム電池の寒冷地での強さ、そして調光機能によるバッテリー持続時間など、とても完成度が高いヘッドライトです。ただしバッテリーは専用リチウム(乾電池でも対応は可能)を使用していますので、ハンドライトとの電池併用ができないこと、そして190g前後とヘッドライトとしてはヘビー級であることは考慮しなければなりません。下りのスピードを重視するハセツネや、ペーサーに荷物を持たせることのできる信越五岳、デポが周回ごとにあり全体のパッキング重量を抑えることのできるKOUMI100などに向いていると思います。それと忘れてはならないのが、他のヘッドライトが5つぐらい購入できるほど高価なものであること。大人はお金で解決か? ?

 

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次にGentosの160ルーメンクラスの写真です。典型的な集光タイプです。モデルによっては、レンズの調整機能があり光域幅を調整できるものもありますが、基本的なコンセプトは変わりません。試走を何度もしてコースをおぼえており、しかも赤色灯マーカーがきちんとあり、分岐を見落とすことはまず考えにくいハセツネに向いていると思います。パキっと照らしてくれるので元気がでます。

 

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次に今年の春にモデルチェンジされたBlack DiamondのSPOTです。名前の通り集光型の200ルーメンですが、Hiモードにした時に2つ目のLEDが灯り、光域の幅をある程度確保しています。200ルーメンというのは集約された中心部分の明るい部分の明るさのことでしょう。

 

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次に集光型と分散型のLED・レンズを両方搭載した例、SILVA Trail Runner2 160ルーメンの写真(上)です。照らす場所が変わってしまったので、比較のために同じ場所をもういちどBlack DiamondのSPOT(下)で照らしました。SILVA(上)は光域が広く、分岐や道標を見落とすリスクを小さくしてくれます。ただし光量が今ひとつとも感じられ、下りでスピードが要求されるレースには、集光型のハンドライトとの併用がよいでしょう。写真ですと、200ルーメンのSPOTより明るく見えますが、狭い部屋を照らしているため、分散光が壁で反射して全体的に明るくなっているのではないかと思います。また、SPOT(下)の集光された中心部分はやはり明るく見えています。又、SILVA Trail Runner2 はウエイトが軽く、IPXの数値が高いため、山岳縦走やTJARの選手達に向いているのではないかと思います。

一般的なウエイトですが、明るさ+実用時間重視ですと単三型になり190g前後、160ルーメンクラスの単四電池ですと120g前後、SPOTは100gを切っていました。自分としてはTrail Runner2かSPOTをメインとし(レースタイプやアクティビティによっての使い分け)集光型のハンドライトで補うという考えです。ライト2つが必須装備になっていなくても、夜間走が前提であればサブライトを必ず持つのは絶対条件です。

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SILVA Trail Runner2

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Black Diamond SPOT この春でのモデルチェンジで200ルーメンへ光量がアップした。購入の際には旧モデルか新モデルかを確認しましょう。

 番外編

7年前のモンブランでの鏑木選手のヘッドライトはとてつもなく大きい。ナイトラン講習で実物を見たが、夜の鎌倉で街中に出た時は、対向車がバイクと勘違いして止まるほど明るかった。輸入規制があり、日本では販売されていないもので、プロ選手の装備に驚いた記憶がある。確か5-6万円したとかしないとか。今はLED性能が進歩し、トップ選手と変わらないモデルを一般市民ランナーが入手できる時代でもある。

7年前のモンブランでの鏑木選手のヘッドライトはとてつもなく大きい。LED何個入っているんだ? 電球併用のモデル?ナイトラン講習で実物を見たが、夜の鎌倉で街中に出た時は、対向車がバイクと勘違いして止まるほど明るかった。輸入規制があり、日本では販売されていないもので、プロ選手の装備に驚いた記憶がある。確か5-6万円したとかしないとか。今はLED性能が進歩し、軽量化とコストダウンが進み、トップ選手と変わらないモデルを一般市民ランナーが入手できる時代となったわけである。

 

 

 

 

 


78歳の100マイラー

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photo by Hiroshi Taketani

 

自分が78歳になった時に、こんな風に輝いていたいと思う。レジェンド月岡さんのTDT100マイル、最初の10マイルを伴走させていただきました。

笑う
話す
ネガティブなことを言わない(言わないだけでなく、考えてもいないのではないだろうか? )
準備する

希望
あきらめない
楽しむ
仕事もきちんとする
謙虚
思いやり
寛容
そして健康

背中がとても大きく見えました。

PS : Special thanks to Hiroshi Taketani


厳しくも寛容でありたい。ハセツネ30Kに思うこと。

ハセツネ30Kの失格騒動ですが、たくさんのFBやブログで語られており、多くは、意図的なルール違反をしている選手への非難、あいまいな競技規則表現とチェック方法への疑問、あるいは自己責任論と必要装備品規定という矛盾するカンターバランスをどう考えるのかという根本的な話しであったり、また、そこから少し派生した意見として、ハセツネ入門用として発足したはずの30Kという大会が、事実上の秋のハセツネの予選となり、トップ選手でなくとも、中盤の選手にとっても、本戦と同様にスピード競技化していることへの嘆き、といったところだろうか。そんな中で少し違った視点の記事が目に付いた。DogsorCaravanでの岩佐氏による記述である。

http://dogsorcaravan.com/2016/04/04/2016hasetsune30k-results/(リンク)

前半は事実を客観的に伝えており、内容は他のFaceBookやブログでも知るところが多い。ただ、最後のパラグラフの「安易に違反者を排除しない」という岩佐氏の視点は、これまで世界のトレイルランニングコミュニティーを見てきた彼の成熟した考えだろう。ゆるふわやるね。最近なぜかキレてる?(記事の末尾にある謝辞にそのヒントが隠されている?)これからも、お二人の御多幸とトレイルランニング界でのご活躍をお祈りしております。

ーーー以下 DogsorCaravan.com より抜粋 ーーーー

「安易に違反者を排除しない」

ルール違反を起こした選手にも違反の内容にはよりますが、再び競技に戻る道は認められるべきでしょう。トレイルランニングが自然を愛し、その中で走ることを楽しむスポーツであるなら、その価値観を共有しようとする人に対しては常に寛容であるべきではないかと、当サイトは考えます。かつてなら小さいコミュニティの中で閉じていたルールや規範への背馳への非難が社会全体で行われる事例を最近よく見かけます。そうした非難により救われる人も多いでしょうが、しばしば非難は過熱しがちで、後になってみれば原因に対して過剰に思えることも少なくありません。背馳した規則はなぜ設けられているのか考えてみることで、どこかでそうした過剰に対する違和感を持てるのではないでしょうか。

———- ©DogsorCaravan.com —————–

岩佐氏の意見を読んで思い出したのが、2012年のキリアンのSpeed Goat50でのスイッチバックでの違反事件。今回の意図的なものと異なり、欧州と米国の慣習の違いという背景からくるもので、同一線上で語られるべきものではないかもしれませんが、この時はレースディレクターのあっぱれな判断とコミュニティーの寛容さを学びたいと私は思いました。今回の失格者2名も、トレイルランニング界の現状とこれからを理解した上で、競技に戻ってきてほしいと思う。そして主催者も、私たちもそれを暖かく受け入れるべきだと思うのです。

http://dogsorcaravan.com/2012/08/01/race-speedgoat-50k-decision-by-rd-karl-meltzer/(リンク)

最後に….

失格騒動で、トーンは落ちていますが、やはりあの名物の渋滞はどうにかならないものだろうか。SNSにアップされる画像を見ると、自分だったら、そのままUターンしてビール呑みに行きますよ。それでも関門通過を意識して頑張る選手たちの気持ちを考えると胸が痛みます。それも全部含めてハセツネなのだろうか?それが競技の公平性?今後の主催者の工夫を期待したいと思います。

自分の最後のハセツネのゴール写真。終盤に失速して14時間ほどかかってのゴールでしたが、出し切った感があり、このゴールを最後にハセツネは卒業している。順位は当時の出走者の上位25%でしたが、このタイムでは昨年ならば上位3割に食い込むこともできない。全体のレベルがあがり、スピード競技化が進んでいる。そのスピードに見合った山岳スポーツとしての成熟を我々は成し遂げているのだろうか?

自分の最後のハセツネのゴール写真。終盤に失速して14時間ほどかかってのゴールでしたが、出し切った感があり、このゴールを最後にハセツネは卒業している。順位は当時の出走者の上位25%でしたが、このタイムでは昨年ならば上位3割に食い込むこともできない。全体のレベルがあがり、スピード競技化が進んでいる。そのスピードに見合った山岳スポーツとしての成熟を我々は成し遂げているのだろうか?