「LIFE IN A DAY」国際女性デーに公開

Western States Endurance Run​ 2016を走った4人の女性アスリートのドキュメンタリーフィルム。字幕がないので英語がわかりにくいのですが、 Billy Yang Films​の動画は音楽のセンスが良く、カメラマンが走れるのでスピード感と躍動感があり、流してみるだけでも十分価値があると思います。

 

<私的な勝手な見所>

27′40 から  Devon Yanko が自分の悲しい過去を語り始めます。普段聞き慣れない単語が出てくるので、正直、内容を理解できませんでした。彼女の身に何が起こったのかは、彼女のブログ http://www.devonyanko.com/news/(リンク) のDec,17,2016 に書かれています。重いテーマであり、当初はアメリカの影の部分のような印象を受けましたが、これはもしかしたら世界中で起きていることで、声をあげられない女性もいるのではないかと思います。悪い奴は世界中どこにでもいるから。それでもトレイルランニングと出会い、回復していく自分を語るDevonにもらい泣きしてしまいました。走っている最中に、ライバルのMagdaがドロップしたことを知り、カメラマンに Is she OK ? と聞いている彼女に、人としての優しさを垣間見ることができます。

41′15 から Kaci Licteig の魅力

常に笑って走る。小柄で細い腕を大きく振りながら走る様はとても好感が持てます。この時も蛇を踏みそうになって騒いでいる(笑)

48′48  から Anna Mae は71mileでドロップしてしまいましたが、プランしても絶対にその通りにはならない100マイルレースを、女性が期待されるステレオタイプの人生と対比しながら振り返ります。

55′55から 2015の優勝者、Magdalena Bouletもドロップという結果でしたが、彼女も人生に例えて今回の100マイルを振り返ります。おそらくこの4人では年長者(失礼! )であろう彼女の語り口は穏やかで説得力があります。そしてわずか13日後のSPEEDGOAT 50Kで見事表彰台に上がっています。

もし、Billy Yangが日本の女性4人をフィーチャーしたら、誰と誰を選ぶでしょうか。それは貴女かも..

 


Dragon’s Back Race その後…

一昨年にこのブログであるレースの報告会をお知らせしました。

http://mountain-ma.com/kugishima/2015/09/04/dragonback/(ブログへのリンク)

http://www.mtsn.jp/journal/detail.php?id=436(mt.SNへのリンク)

2015年に館野氏が日本人として初めて完走したDragon’s Back Race です。

隔年開催にあたる2017年の今年、日本からTJAR完走者や女性一人を含む4人が挑戦するそうです。報告会の実行委員をさせていただいたこと(実質、呑んだだけのような…)がご縁で壮行会にご一緒させていただきました。

館野氏から地図の説明を受ける挑戦者達@炭や

館野氏から地図の説明を受ける挑戦者達@炭や

 

現在人気の海外レースも最初は必ず日本から挑戦する先駆者がいる。そういう人たちをリスペクトしたい。UTMBやTDGの最初の日本人参加者は誰なのでしょうか?UTMBのリザルトを開催開始の2003年から見ていくと、2005年の13位にやはりこの人、石川弘樹氏の名前がありました。近年になって、Dogs & Caravanのインタビューで当時は13位でゴールしても誰もいなかったというエピソードを話されています。TDGは調べられませんでしたが、イタリア語が読める方なら検索できるでしょう。

Screen Shot 2017-03-02 at 11.19.42 AM

人気レースに落選してもがっかりせず、自分が先駆者となって新しいレースを見つけにいくのもよいかもしれませんね。

 


コンパスの怖い話

IMG_8305いやいや、そんなことって本当にあるんですね。話には聞いていたのですが….

コンパスの針が南北逆を指す。ロゲの一斉スタートでチーム内のひとりだけ逆を向いて走り出すとか。それなら笑い話だ。ソロ山行でコンパスを使用しようとした時に南北が逆だったら….怖いですね。

オリエンに出てみましょ、って方がいらしたので、ロゲに出ていた頃のコンパスを引っ張りだしてきた。それでもって皇居で整置((地図上の北とコンパスの北を合わせて地図の向きを整えること))してみましょう、と整置すると、あれ?お堀が逆だわwww

こういう現象は百均のコンパスとかで発生するものかと思いきや、この方のコンパスは有名S社製、高い安いは全く関係ないそうだ。磁気を帯びたもの、例えば電化製品などの近くに保管しておき、それを動かした時に針の上を磁気方向が動くと、南北が入れかわってしまうそうだ。なるほど。ちなみに、微妙に狂うというのはないそうです。磁気が弱くて不安定になるということはあるかもしれませんが。

直し方は以下のリンクで。その方のコンパスも直りました。

 

もうひとつ。コンパス内の気泡の話…高い標高や低い気温になると、オイルの中に気泡が入ってしまうケースがある。ある程度は仕方のないことらしい。ただ、その気泡のせいで針が変な方向で止まっていないか注意をする必要があり、それがストレスになるようであれば、もう1つ買おう、ということになる。ナビゲーション競技をされる方なら必ず予備コンパスは持っているだろうから、そちらを予備にするとか。ちなみに私のモスクワコンパスは標高あげたり、気温が1桁になると気泡がコロコロしています。普段は上の写真のように何もない状態ですけれど。

皆さんのコンパスも一度チェックしてみてください。

追記: この写真を撮ろうとスマホを近づけると針が動きますね。当たり前なんでしょうけど。


それでもカレーは食べたいよねという話

SNSでJADA(日本アンチドーピング機構)による使用禁止物質の追加例(ヒゲナミン)が一部の方たちで話題となりました。ヒゲナミンは丁子に含まれることがあり、丁子の英名はクローブです。「ん?じゃあ、のど飴やカレーも食えないのか??」 私自身も含めてミスリードも多く、SNSでのリテラシーの必要性を再認識するとともに、このようなドーピング規定が話題となる違和感と必要性の両方を感じました。興味のある方は下記JADAによるサイトを参照することで正しい理解を深められることと思いますが、今回のヒゲナミンに関しては、香辛料として用いるのであれば検出されないレベルなのか、熱分解されるのか、全てNGなのか、私自身は理解できておりません。お叱りを受けるかもしれませんが、ドーピングという観点ではなく、食事と身体の事には興味があるから後日分かったら教えてくださいというレベルです。

JADAアスリート向けサイト PLAY TRUTH(リンク)

自分のようなドーピング検査対象には成り得ないランナーは自分の倫理観に照らし合わせて決めれば良いと思っています。ただ、この倫理観というものは、主観ですから、規則をつくる側からすれば正しい知識とは言えないわけです。例えば、筋肉痛を和らげるためにロキソニンを服用して走るランナーもいます。東京マラソンの制限時間に近いランナーがそういう話を普通にしていることに驚いたことがあります。自分の感覚では薬であるロキソニンの服用はドーピングという意識ですが、実際には使用可能な一般薬のリストとしてJADAのサイトにはあります。まあ、副作用のデメリットが大きいのであえて使用する必要もないわけですが。カフェインの錠剤はドーピングという意識がありますが、コーヒーは食品という意識です。同じ成分なのに矛盾していますね。日本のプロ野球界で公言されていた、にんにく注射と言われるビタミン剤の点滴も、疲労回復目的では医療行為以外の静脈への注入になり、使用禁止物質でなくともドーピング行為にあたります。また、我々が普段食品(サプリメントを含む)として食べたり飲んだりしているものが、国によってはその成分が薬として販売されているケースもあり、私が倫理的な基準としているもの、薬か食品かといったものは、あくまでも私個人の感覚であり、自分が走る上で自分が満足するだけのためのものなのです。自分だけの事であれば、それでいいと思っています。ましてや他人に押し付けるものでもありません。

トレイルランニングが普及、発展するにあたって、幾つかの方向性、選択肢があるとすれば、競技としての商業化、選手のプロ化というのもその一つ。様々な財源から競技の普及、発展が促進されること。そこには職業としてのトレイルランナーが集まることになり、個人の倫理観を超えた国際的な透明性と公平性が担保されることが絶対条件となるわけですから、他のスポーツ競技と同等のドーピング規定と検査が求められるのは当然のことだと思います。このあたりはITRAが意図するものと一致しており、ITRAの公認レースで上位入賞を意識する人であれば、当然、個人の倫理観をこえたテクニカルな検査の枠組みの中に取り込まれることになる覚悟が必要なはずです。ご本人が意識されていなくても、そのレベルにある方が自分の周囲には結構いらっしゃいます。そして将来、それを目指すユース世代には正しい知識と倫理観の育成が必要なはずです。

一方、トレイルランニングは競技ではなく、自然の山を走るアクティビティーであることを原点と考えれば、そう言った競技化、商業化が本当に必要なのかと疑問を持つ方、あるいは違和感を感じる方もいらっしゃるでしょう。自分もその一人です。従来の陸上競技としてのランニングに対してのカウンターカルチャーとして成熟してきたトレイルランニングコミュニティーに対して、この「競技感、統一感の押し付け」は如何なものかと。伝統的な北米レースや、日本でも一部のレースコミュニティーが熟慮の上、ITRAポイントの申請を取りやめているのも理解できます。

私の意見はさておき、これまで発展してきたアウトドアスポーツを考えると、両方のアプローチが必要なのかもしれません。競技人口が増加したパターンを考えると、統一ルール下での競技化、プロ化、そしてワールドカップの転戦によるメディアへの露出が有効である一方で、そこに露出されるアスリートたちが、本来のアウトドアスポーツとしての視点から、レース競技以外の魅力を伝えることで、両輪の輪のように発展していく可能性も感じています。スノーボードはオリンピック種目にあるような競技に特化した側面を持ちますが、一方でバックカントリーという素晴らしいアクティビティーがあります。クライミングも人工壁での競技は次の東京でオリンピック種目化されますが、同じクライマーが外岩を登り、本来のクライミングの魅力を伝えていくことで理想的な発展を遂げていくことになると期待しています。素敵な動画を見つけたのでリンクを貼っておきます。

小難しいことを書いたら腹が減りました。カレーでも食べますか…


春夏秋冬 2016

ブログに掲載していなかったベストショットで今年の振り返り。皆様にとって2017年が良い年になりますように。

Happy Holidays !!

春 -1

TDT SS16 100マイル最後のランナーが残り10マイル地点に到達した。正直に言うと、制限時間に合わないのではないかと私は思った。でも、この方は諦めるなどということは微塵とも考えていなかったのだ。間に合わないなどという計算は私の勝手な推測の押し付けであって、限界は必ずその先にあるものだ。

TDT SS16 100マイル最後のランナーが残り10マイル地点に到達した。正直に言うと、制限時間に合わないのではないかと私は思った。でも、この方は諦めるなどということは微塵とも考えていなかったのだ。私の計算など私の勝手な推測の押し付けであって、人の限界は必ずその先にあるものだ。photo by O-show the ripper

春 -2

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雪が解けた新緑の季節に、踏み跡の薄いトレイルを歩くのは、野生動物と地図読みを学んだ私たちの特権だ。分水嶺トレイル信州平付近にて。Photo by Kenji Yamaki aka King

夏 -1

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トレイル脇や山頂に岩があるとすぐフリーソロで登りたくなる。少しの高さでもそこに全く違った風景が広がっていることがあるから。甲斐駒ケ岳山頂にて。 Photo by emma

夏-2

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山を走っていると一年の中で、幾度か不思議な気象現象に出会う。写真は風が強くなり始めた宝永火口付近から富士山山頂を撮影したもの。

夏-3

海外のトレイルに出かけると、今までの自分の経験とか、勝手に思い込んでいた想像みたいなものを簡単に凌駕する光景に出くわす。ワシントン州セントヘレンズ火山北側のトレイルから。

夏-4

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トレイルランニングは旅だ。縦走をしながら幕営をするのもいいが、麓に下りるとその土地の伝統風習や人の優しさにふれることがある。長野県千曲市上山田温泉にて。

秋-1

紅葉の名所が真っ赤に染まった光景も美しいのだが、自分は雑木林の中で自然に染まった赤、黄色、緑が織りなす光のコントラストが好きだ。

紅葉の名所が真っ赤に染まった光景も美しいのだが、自分は雑木林の中で自然に染まった赤、黄色、緑が織りなす光のコントラストが好きだ。奥多摩三条の湯にて。

冬-1

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不思議な気象現象をもう1つ。寒気というものは、なにか塊のようなものなのだろうか?山頂付近から、霧氷現象が見られる樹林帯と、ある高さから凍っていない木々がはっきりと分かれていた。風の流れなのか、数十mでこんなにも違うのだろうか?ここは今頃スキーで賑わっているはず。菅平高原スキー場にて。

 

 

 


MERU [ メルー] 試写会にて

自分は山岳やトレイル物の映画、小説、ドキュメンタリーというものがあまり好きではない。多くの場合、登山 = 孤独、そこへステレオタイプのネガティブ人生とかを盛り込んだり…そんな気持ちで、山登ってねーし、走ってねーよ、というものが実に多いのだ。なのであまり期待せずに、MERU[メルー]の試写会に足を運んだ。   img_7788   この映画はそんなレベルのものとは違っていた。一瞬でも疑ったことに「すいません」と素直に謝りたい。Jimmiy Chinはアルパインクライマーであるとともに、National Geographic誌の山岳Photographerでもある。その映像が美しくないわけがない。ヨセミテのような垂壁、ポータリッジでの宙吊り生活を淡々と映し出していく。そして全編に渡って、使われた単語で最も多かったものは、riskteammentor(師)そしてfamilyだと感じた。(数えたわけではないが…) これは、共同監督のエリザベス・チャイ・バサヒリィの影響だろう。アルパインクライミングがわからない人にも楽しめるエッセンスが全編に流れている。それは、極端な誇張や、ヒューマニズムに偏りすぎることなく、程よいバランスを持って展開されていく。

自分には無理ですな。早く温泉に入りたいってもんです。

自分には無理ですな。早く温泉に入りたいってもんです。

山で遊ぶ者としての視点から考えてみる。エクスペディション(遠征)は2回に渡っている。つまり1回目は撤退しているということだ。自分は1回目、残り100mを残しての撤退を最大限にリスペクトしたい。4日間のポータリッジでの停滞の後、食料が不足しているにも関わらず、下りずに登っていく。これは節約することで計算できること、その経験値が3人のうち2人にはあること。そして撤退ラインが明確に決まっているからこそできることであり、プロであれば次につなげるデータが必要で、登れる高さまで登るのも納得できる。つまりコントロールできるリスクだ。一方、残り100mであっても、日没後の1ビバークは、気温次第では死を意味するものであり、とってはいけないリスクとなる。山に行かない人にはなぜ?と思えたかもしれないが、当然の判断だったと思う。そして、2回目の遠征の前に、チームはある重大な決断をする。映画を見ている時は、「その判断はちょっと…」と自分は思った。実際に賛否両論があるはずだ。でもよく考えると、あの1回目の撤退判断ができるチームであれば、それもありかなと思えてきた。自分の過去を振り返ると、どんな山や岩を登ったかも大切だけれども、誰と登ったか、その景色を誰と共有できたかはとても大切なもの。そのための準備、行程、すべてが登山であり、ピークに立てたか、立てなかったか、登れたか、登れなかったかは、その要素の一部にしか過ぎないということ。そんなことをふと思った。そしてその重大な判断とは…それは大晦日の公開で映画をご覧になってください。

Jimmy ChinとTNFのアルパインクライマーが花を添える。なぜか、フリークライマーの平山ユージが。ジャンル違うじゃないか?と思ったが、ヨセミテでのプロジェクトの際に、Jimmyに撮影を依頼した縁があるそうです。

Jimmy ChinとTNFのアルパインクライマーが花を添える。なぜか、フリークライマーの平山ユージが。ジャンル違うじゃないか?と思ったが、ヨセミテでのプロジェクトの際に、Jimmyに撮影を依頼した縁があるそうです。

自分は人工登攀、アルパインクライミングはやっていません。クライミングはやりますが、自然の外岩でのロープクライミングでもフリークライミングまでです。(違いがわからない人はググってみてね)自分が向き合えるリスクはそこまでだと思うからです。それは決して恥ずべきことではなく、その範囲でのチャレンジとそのプロセスを楽しめばいいことだと思っています。アウトドアアクティビティーにリスクはつきものです。アバランチ(雪崩)という計算できないリスクも存在します。ちょっと寒いですが、自分が向き合えうことのできるリスクの範囲で、最大限チャレンジしようよ、もっと山に行こうよ、というのが、私がこの映画に付け加えたいメッセージです。

MERU[メルー]オフィシャルトレイラーはこちら(リンク)


八ヶ岳スリーピークス登山道整備

登山道整備作業 ( Trail works )、 多くの北米100mileレースではエントリー資格にしっかりと明記されている。なぜなのか?レースボランティアではだめのか?

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その答えは実際にやってみることでよくわかりました。これまで気づかなかったことや、頭では理解していたが、それを実体験として感じられたことが多くあります。

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最初はランナー目線で危険な箇所のチェックや笹薮の刈り込みをしていくわけですが、標高によって木々の植生が変化していくのに気づきます。それにつれて土壌の質も変化していくのもよくわかります。植生だけでなく、積雪に覆われている時間の長短でも土壌の安定度が変化していることが直感的にわかる。そこへ下ってくる登山者(ランナー含む)の踏み込む位置を見ていると、登山道の土壌侵食のメカニズムがとてもよくわかるのです。時としてトレイルランニングが批判されてしまう点に土壌侵食が加速するという点がありますが、これはランナー、登山者に差異はなく、単純に人数と普段の登山道整備にも大きく関係していることでもあると自分は考えています。登山道が拡がってしまったり、複線化してしまうことはもちろん避けなければならないことですが、その逆に笹が雪の重みや、その後の成長で内側へ張り出して、本来の登山道の幅が見えなくなっている箇所も多くありました。こういった箇所では、トレイルの中央に踏み込む位置が集中し、そこから崩れ、その後の降雨で侵食が進むように見受けられます。いわゆる掘れた状態です。笹山のトレイルが多い箱根外輪山などに多いですね。笹薮を刈り、本来の登山道の幅を回復することで、無理な踏み込みや、1つの箇所への集中は防げます。一方、すでに侵食が進んでしまっているトレイルに対しては、木の梯子で崩れることを防ぐといった対処療法のみならず、専門家と管理者の指導のもと、迂回経路を整備して、侵食が進んでしまったトレイルを休ませ、植生回復を図る措置がとられる場合もあります。高尾〜陣場間の主稜線や、雲取山山頂付近で見たことがある方も多いでしょう。

箱根外輪山でよく見受けられる「水切り」

箱根外輪山でよく見受けられる「水切り」

 

今回、自分がお手伝いした八ヶ岳スリーピークスのコース整備は、毎年複数回行われており、レースが続く限り必要なものです。もちろん、今年のレースのためにという目的があるわけですが、これから数年、もしかしたら数十年単位で考えていく必要がある整備活動もプランされており、主催者が地元や管理者とよく話し合われていることがわかります。一部のレースで見受けられる、賛成・反対の単純構図から生まれるものではなく、トレイルを共有し、活用していくということは、メリットの享受とともに、実際に発生が避けられないインパクトを理解し、策を講じていくことが必要なのだと思います。以前は定員が400名だったOne Pack Line 38Kの定員が、250名になったことも、残念ではあるけれども、現状では受け入れるべき内容であると思っています。今年もあと複数回の活動があるようですので、興味のある方は 八ヶ岳スリーピークスのオフィシャルサイト(リンク)をご参照ください。

今回の整備活動終了後に、とてもよい講演を拝聴させていただきました。青年小屋のご主人であり、エベレストサミッター、国際山岳ガイド、北杜警察署山岳救助隊長である竹内敬一さんのお話しは、八ヶ岳連峰が形成される歴史や、現在の植生、そしてご自身の体験であるエベレスト登頂や救助活動の事例をユーモアを交えた語り口で、時間が過ぎるのがあっという間でした。この続きは日本一標高の高い居酒屋「遠い飲み屋」(知らない人はググってください)で、ということですな。

 

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編笠山の植生についてのお話し。山容が思い浮かぶ。

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亜高山帯の損枝、朝鮮五葉、オオシラビソ、コメツガ。どれがどれ ? 柑橘系の香りを放つのはどれでしょう? おわかりになる方は少ないかも。

 


50年前の概念図

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クライミングジムで昭和42年初刊のアルパインクライミング関連の古書に涸沢、穂高、ジャン周辺の概念図を見つけた。概念図とは尾根谷を略図化したものです。先日、自分も穂高連峰のDVDのファンであるハチプロダクションの「ぼちぼちいこか」(リンク)のブログで、春の穂高に来る軽率な登山者への批判が綴られていたのだけれど、そこへの色々なコメントを読むと、なんだかこちらも疲れてしまった。人への怒りとか批判はエネルギーを奪いますね。ブログ著者の方は生死を分ける現場にいらっしゃるわけで、それは怒るのも仕方ないとは思います。登山人口が増えれば、一定の割合でおかしな輩はいるだろうし、昔もいたんじゃないかなと。ただ、怒られ、諭され、段階を踏んで山を理解して行くところを、今は雑誌でのきれいな特集とかSNSでいい結果だけが表面にあると、そうなっちゃうよなぁと。最近は情報の少ない外国人ツアー客も多そうです。閑話休題。当たり前ですが、この概念図は半世紀近く経った今でも何一つ変わりません。尾根と谷、地形が変わることもあるけれど、それは数百年、数千年単位。色々な環境が当時と変わっているのかもしれないけれど、変わらないものには、変わらないもの、変えてはいけないものをもう一度確認するしかない。「自然への畏敬の念」自分は今一度心に留めたいと思います。

追記 : お気づきの方も多いと思いますが、このブログのカバー写真はジャンダルムのトップから北穂高、槍ヶ岳方向を写した写真です。天候に恵まれとても楽しい山行でした。まずは夏山シーズンであっても、きちんとした装備と計画での山行ですね。


ヘッドライト選びのポイント

どのメーカーのなにがいいよというレビューではありません。これまでの100マイルレースと、レース以外のアクティビティの経験から、選ぶポイントをご紹介します。初心者の方のために基本となるポイントと、2台目のエースライトを探したいという方のためにもう少し視点を広げたものです。走歴が長くなり、いろいろなタイプのレースや、レース以外のアクティビティーでもヘッドライトを使うようになると、選ぶポイントや好みが出てきます。自分は何を重視するのか考えてみましょう。

選ぶポイント

①明るさ

まずはとにかく明るいのが欲しくなりますね。レース後半、どよーんとした自分のライトをギンギンなライトのランナーに抜かれると、ガクッとくるわけです。明るさはカタログ上にルーメンという数字で表記されます。ブーストモードでの最大出力が表記されている場合がありますが、とてもバッテリーがもたないので、一番使う Hiモードでの実用点灯時間を参照してください。この実用点灯時間というのは、新品の電池の状態から70%の照度まで落ちた状態です。ただ、これは電池性能にも依るところがあり、実際に使用してみると、うーんそうかなあ? ということもあります。また、年々、LED性能が向上しているせいか、同じメーカー、同じモデル名でも年式によって大きく性能が異なります。私が以前使用していたPetzl MYO XPですが、当時はたしか120ルーメンほど。現在は200ルーメンオーバー、ブーストでは300オーバーとなっています。通販などで買う場合は最新モデルかどうかをチェックしたほうがよいでしょう。特に新製品が出るこの時期は要注意です。

②光域幅

ここらへんから好みというか、用途に応じた考え方が必要になってきます。分散光によって照らす範囲を広げているものと、その逆にレンズで集約することによって、同じLEDからの発光でもルーメン数を上げているもの、あるいはその2つを組み合わせて両方のニーズを満たそうとしているものがあります。集光型のものは、周りとの明暗差がでることで、分岐や道標を見落としやすくなりますが、私の印象ではカタログ上のルーメン数より明るく見えて元気が出るという利点もあります。随分と感覚的、主観的な要素ではありますが、そういったこともロングレースには大切な要素です。

③色

最近はお目にかからなくなりましたが、安モノのLEDライトですと、青白い光を発するものがあり、陰影がでずらく、のっぺり見えてしまうという欠点があります。Gentos、Petzl、Black Diamondの各社間でも多少個性があるようです。明るくても黄色味がある方が陰影がでやすいように思えます。ちなみに、100マイルレースで夜に幻覚を見てしまうのは、この陰影のなさから、脳が勝手にいろんなものを想像してしまうからではないか? と自分は感じています。また、濃霧時の反射を防ぐために(本当に反射でなにも見えなくなります)フォグランプのようにオレンジや黄色のフィルターを自作される方もいらっしいます。自分はそこまで器用ではないので、濃霧時にはハンドライトで下から照らす、ハンドがない時にはヘッドライトを頭から外して手で視線より下から照らす方法をとります。

④防水性

IPXという数値で表されます。Black Diamond のStormはIPX7です。SilvaのTrail Runner2 はIXP6、TJARの選手たちが選択するのもそういう点からだと推測しています。

以下IPXの基準ですのでご参考まで。

IPX 7 防浸形 定められた条件(1M、30分)で水中に没しても有害な影響を生じる量の水の侵入がない。
IPX 6 耐水形 あらゆる方向からのノズルによる強力な噴流水をうけても有害な影響がない。
IPX 5 防噴流形 あらゆる方向からのノズルによる噴流水を受けても有害な影響がない。
IPX 4 防沫形 あらゆる方向からの飛沫を受けても有害な影響がない。
IPX 3 防雨形 鉛直から両側60度の範囲の噴霧した水によって有害な影響がない。

⑤電池タイプ

大きく分けて単三、単四、リチウム電池に大別されます。リチウム電池は軽く、寒さに強く、専用バッテリータイプのものは充電式です。ただし、このタイプはハンドライトの電池との汎用性や、どこでも入手できる手軽さがありません。又、単三、単四電池型のリチウム電池も存在しますが、かなり高価なもので充電式ではありません。乾電池タイプは軽量化を意識してか、単四型が主流になりつつあります。照射時間はリチウム電池、次に単三電池に軍配があがります。信越五岳では照射時間は短いですし、ハセツネでも深夜ゴールの選手であれば、さほど気にすることはありませんが、緯度の高い地域の海外レース、秋のUTMF、ハセツネの後方選手にとっては夜は長くなりますので、自分のスピードでどれぐらいの光量が必要なのかを、実際に体感してみる必要があるでしょう。

⑥重量とバランス

本体重量だけでなくバッテリー込みの重量を比べて下さい。初めてライトおよび予備バッテリー携行義務のあるレースに出る際に、バッテリーの重さに驚くはずです。又、そのバッテリーが後頭部にあるタイプとライト側に内臓されるタイプ、そして最近は少なくなりましたが、コードでつないでザックへ収納するタイプがあります。これは全く好みの問題です。

⑦その他機能

調光機能

遠くを見る時は明るく、近くを見る時は光量が落ちます。バッテリーを節約できますし、見やすさという点では、トレイルランニングからナイトロゲイニング、クライミングまで対応できるとても優れた機能です。

赤色モード

トレランレースで使うことはまずないでしょう。山岳縦走の際、テント場に近づくとき、トイレに行く時、早立ちでテント撤収する際に周りに迷惑をかけないように、いわゆるマナーモードです。そもそもヘッドライトを夜に使用するのはトレイルランナーだけで、一般的な山の世界では、ヘッドライトは早朝日の出前行動に使用するものであり、我々が特殊な世界の人間であることを忘れてはなりません。

点滅機能

緊急時に自分の居場所を知らせるのに役立ちます。機種によってはSOS信号になっているものもあります。緊急時以外は誤解を招くので使用は避けましょう。

それでは具体的に上記のポイントがどのような違いとなって現れるかを見てみましょう。(撮影協力: 原チャリキロホンダたんなかコーチ)

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まずは調光機能のある Petzl NAO1 です。数年前のNAOの初期型とはいえ、十分な光量と光域幅、リチウム電池の寒冷地での強さ、そして調光機能によるバッテリー持続時間など、とても完成度が高いヘッドライトです。ただしバッテリーは専用リチウム(乾電池でも対応は可能)を使用していますので、ハンドライトとの電池併用ができないこと、そして190g前後とヘッドライトとしてはヘビー級であることは考慮しなければなりません。下りのスピードを重視するハセツネや、ペーサーに荷物を持たせることのできる信越五岳、デポが周回ごとにあり全体のパッキング重量を抑えることのできるKOUMI100などに向いていると思います。それと忘れてはならないのが、他のヘッドライトが5つぐらい購入できるほど高価なものであること。大人はお金で解決か? ?

 

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次にGentosの160ルーメンクラスの写真です。典型的な集光タイプです。モデルによっては、レンズの調整機能があり光域幅を調整できるものもありますが、基本的なコンセプトは変わりません。試走を何度もしてコースをおぼえており、しかも赤色灯マーカーがきちんとあり、分岐を見落とすことはまず考えにくいハセツネに向いていると思います。パキっと照らしてくれるので元気がでます。

 

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次に今年の春にモデルチェンジされたBlack DiamondのSPOTです。名前の通り集光型の200ルーメンですが、Hiモードにした時に2つ目のLEDが灯り、光域の幅をある程度確保しています。200ルーメンというのは集約された中心部分の明るい部分の明るさのことでしょう。

 

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次に集光型と分散型のLED・レンズを両方搭載した例、SILVA Trail Runner2 160ルーメンの写真(上)です。照らす場所が変わってしまったので、比較のために同じ場所をもういちどBlack DiamondのSPOT(下)で照らしました。SILVA(上)は光域が広く、分岐や道標を見落とすリスクを小さくしてくれます。ただし光量が今ひとつとも感じられ、下りでスピードが要求されるレースには、集光型のハンドライトとの併用がよいでしょう。写真ですと、200ルーメンのSPOTより明るく見えますが、狭い部屋を照らしているため、分散光が壁で反射して全体的に明るくなっているのではないかと思います。また、SPOT(下)の集光された中心部分はやはり明るく見えています。又、SILVA Trail Runner2 はウエイトが軽く、IPXの数値が高いため、山岳縦走やTJARの選手達に向いているのではないかと思います。

一般的なウエイトですが、明るさ+実用時間重視ですと単三型になり190g前後、160ルーメンクラスの単四電池ですと120g前後、SPOTは100gを切っていました。自分としてはTrail Runner2かSPOTをメインとし(レースタイプやアクティビティによっての使い分け)集光型のハンドライトで補うという考えです。ライト2つが必須装備になっていなくても、夜間走が前提であればサブライトを必ず持つのは絶対条件です。

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SILVA Trail Runner2

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Black Diamond SPOT この春でのモデルチェンジで200ルーメンへ光量がアップした。購入の際には旧モデルか新モデルかを確認しましょう。

 番外編

7年前のモンブランでの鏑木選手のヘッドライトはとてつもなく大きい。ナイトラン講習で実物を見たが、夜の鎌倉で街中に出た時は、対向車がバイクと勘違いして止まるほど明るかった。輸入規制があり、日本では販売されていないもので、プロ選手の装備に驚いた記憶がある。確か5-6万円したとかしないとか。今はLED性能が進歩し、トップ選手と変わらないモデルを一般市民ランナーが入手できる時代でもある。

7年前のモンブランでの鏑木選手のヘッドライトはとてつもなく大きい。LED何個入っているんだ? 電球併用のモデル?ナイトラン講習で実物を見たが、夜の鎌倉で街中に出た時は、対向車がバイクと勘違いして止まるほど明るかった。輸入規制があり、日本では販売されていないもので、プロ選手の装備に驚いた記憶がある。確か5-6万円したとかしないとか。今はLED性能が進歩し、軽量化とコストダウンが進み、トップ選手と変わらないモデルを一般市民ランナーが入手できる時代となったわけである。

 

 

 

 

 


小川壮太プロの本

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この類の本を初めて購入しました。8年ほど前に自分が山を走り始めた頃は、こういった本はなかったように思う。ランニング雑誌にはトレラン特集なるものが組まれていたりするものの、ロードランニングへの効果が主な視点であり、ランニング以前に認識すべき、「山に入る」という基本的な概念が欠けているものが多かったように思える。一通りの装備は紹介されているが、その使い方や意味、そしてマナー問題に関してもページスペースの割り方は少ないものでした。以前から自分のブログでも指摘していたのですが、安全に対する考え方や、昨今のマナー問題の一端に、主要ロード系ランニング雑誌の責任もあると自分は思っています。それらに比べ、この本では、山でのアクティビティーとしてのトレイルランニング、スカイランニングがまず根底にあり、そこが基軸となっているので、1つのテーマを掘り下げたり、多方面に話題を振ってもブレや矛盾がなく、小川壮太プロの山岳アスリートとしての一貫した哲学が見受けられます。特に、ページ下部欄で小さくコラム風に書かれている内容は、「あー、それそれ」と、他の入門書や雑誌にも書かれていないけれど、知っておくととても有意義なことが説明されています。これ以上はネタバレになりますので、あとは密林通販、全国有名書店でどうぞ。

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