シアトルの夏の風物詩、White River 50。

こんにちは、藤岡です。

シアトルの夏の風物詩、ホワイト・リバー(White River)50マイルに一昨年、昨年に続いて今年も参加してきました。7時間32分5秒、総合7位で無事ゴールしました。

今年で23回目の開催となるこのレースはChuckanut(50キロ)やCascade Crest(100マイル)と並ぶシアトルのクラシックレース。過去の優勝者もアントン・クルピチカ(Anton krupicka)やセイジ・カナディ(Sage Canadey)、マイク・ウォルフ(Mike Wolfe)、マイケル・ワーディアン(Michael Wardian)などそうそうたる顔ぶれです。

レース・ディレクターのスコット・マコーブリー(Scott McCoubrey)は、シアトルのトレイル・ランニング・シーンの礎を築いた人物と言っても過言ではないでしょう。彼がモントレイルの営業職を離れて1999年に立ち上げたシアトル・ランニング・カンパニー(2010年に閉店)は当時、名だたるランナーが働いていて、お客さんはクリッシー・モール(Krissy Moehl)やハル・コナー(Hal Koerner)からシューズを買ったり、スコット・ジュレク(Scott Jurek)にランニングフォームを分析してもらったり出来たとのこと。

スコット・マコーブレーとハイ・ファイブ。

スコット・マコーブレーとハイ・ファイブ。

さて、レースはシアトルから車でそう遠くないマウント・レーニエ国立公園のすぐそばで行われます。登って、下って、登って、下るというわかりやすいコースレイアウト。

例年であれば途中雄大な景色を望みながら、強い日差しの中を走りますが、今年はレースディレクターのスコットも記憶にないくらい珍しい季節外れの雨。気温も夏にしてはかなり低く、低体温症になるランナーもいたそうです。

例年だとこんな風景を楽しめるのですが…

例年だとこんな風景を楽しめるのですが…

私にとって今回のWhite Riverは、先月のビッグホーン100マイルのあと、UTMBへ向けた調整的な位置づけ。最高のコンディションというわけではありませんでしたが、それでも調子は悪くなくぼちぼち走れる状態でした。

レースは走れるコースなので緩めるところが少なくなかなかタフでしたが、例年になく低い気温も私には好都合で、最後までしっかり走りきって順位・タイムとも去年より良い結果を残せました。

上野朋子さんとここで会うのも三年連続。

上野朋子さんとここで会うのも三年連続。

残念ながらレーニエ山は望めない一日でしたが、雨に映えた草木の緑が美しく、雨のWhite Riverも悪くなかったですよ。


私の参考書〜「トレーニング・バイブル」シリーズ


こんんちは、藤岡です。シアトルは記録的な熱波も一段落。過ごしやすい普段の夏になってきました。

さて、週末はクロストレーニングがてら「Seattle To Portland」というイベントに夫婦で参加してきました。

「Seattle To Portland」は名前が表す通りシアトルからポートランドまでの205マイル(330キロ)を自転車で走る一大イベントです。参加者はなんと一万人。シアトルっ子なら誰でも知っていて、みんな略して「STP」と呼びます。レースではなく、各々のペースで楽しみます。多くの人は途中一泊しますが、一日で全行程を完走する強者もいます。

私がそもそも運動を始めたきっかけは、三十代半ばを過ぎたあたりから代謝が悪くなったせいか、不規則な生活と運動不足でみるみるうちにブクブクと太ってしまったからです。当時すでにロード・バイクを始めていた妻に誘われて、体重を減らすために私も漕ぎ始めました。今ではトレイルランニング中心で自転車に乗る時間は減ってしまいましたが、一時は海外の市民ロードバイクレースに参加するほど、のめり込んでいました。

そんな自転車にはまっていた頃、どう練習したらいいのかを調べているうちに出会ったのが「サイクリスト・トレーニング・バイブル」および「トライアスリート・トレーニング・バイブル」です。いずれも日本語に翻訳されています。著者のジョー・フリール(Joe Friel)はエンデュランス系スポーツのコーチで、特に自転車やトライアスロンではエリート選手をコーチしています。

「サイクリスト・トレーニング・バイブル」や「トライアスリート・トレーニング・バイブル」は、当然それぞれの競技に特化した内容も含まれていますが、トレイルランニングやマラソンなどエンデュランス系スポーツ全般に当てはまる内容も多くて、とりわけこの本で知ったピリオダイゼーション(Periodization)という考え方は、トレイルランニング中心になった今でも、厳密に適用しているわけではないものの、トレーニングを構成していく上でいつも私の頭の片隅においています。

ピリオダイゼーションという概念を知っている方も多いと思いますが、大雑把に説明すると、一年を大きく「準備フェーズ」「本番フェーズ」「休息フェーズ」の3つに分け(マクロサイクル)、それぞれのフェーズをさらに数週間単位にさらに分割し、準備フェーズでは「準備」、「基礎作り」、「強化」を段階的に行い、本番フェーズでは「調整」と「レース本番」に分け(メソサイクル)、メソサイクルをさらに一週間単位に分割する(マイクロサイクル)ことで、全体の目的を視野に入れながら、その時期に応じたトレーニングを行うアプローチです。

私は今年合計10レースほど走る予定ですが、すべてのレースを同じ重み付けで走っているわけではなく、優先順位が高いレースはせいぜい2〜3レースほど。また十分な調整期間を取るために、重要なレース同士の日程は近すぎないものにしています。
その他のレースも当然それなりに結果を気にして走るものの、優先順位は落として重要なレースへ向けた準備的な位置づけとして走ります。また私の場合、普段の練習では普通20キロ前後、週末長めに走ってもせいぜい30キロほどなので、実際のレースで普段より長い距離を走ることで距離への耐性をつけたいと考えています。

私の今年のスケジュールと各レースの位置づけは以下のような感じです。優先順位が最も高い「A」レースのがUTMB、その次に優先順位が高い「B」レースがChuckanutとBighornとReunionです。これらのレースを視野に入れながら、日々の練習をしたり、「C」レースを走ったりしています。

レース 距離 優先順位 位置づけ
2月 Orcas Island 50km C 休み明け一発目。まだシーズン序盤。この時点でどの程度走れるかを確認。
2月 Hilly Billy 21km D スピードが要求されるChuckanutへむけ、短い距離で練習。結果は気にせず、とにかく怪我しないこと。
3月 Chuckanut 50km B 毎年出場しているレース。昨年以上の結果を目指す。
4月 Yakima 50km C 初めて参加するレース。楽しんで走るのが第一。
5月 Sun Mountain 50マイル C Bighorn100マイルへ向けて、距離の耐性をつける。
6月 Bighorn 100マイル B 結果を気にしつつ、UTMBへ向けた準備も兼ねる。
7月 White River 50マイル C UTMBへむけた最終調整。
8月 UTMB 100マイル A 昨年の結果を上回ることを目標に。
9月 Crystal Mountain 42km D UTMBからの疲労回復次第ではエントリーしない可能性あり。
10月 Reunion 100マイル B シーズン終盤。まずは未知の場所を楽しむこと。疲労の蓄積度合いによって柔軟に目標設定を。
12月 TNFECS 50マイル C アメリカで最もレベルの高い50マイルレース。トップ選手と走る良い機会。疲労の蓄積度合いによって柔軟に目標設定を。

とはいえ必ずしも想定したとおりに物事は進まないもの。体調や状況次第である程度柔軟に対応するようにしています。

次の大きな目標レースまであと一ヶ月ちょっと。レースを満喫できるようにぼちぼち準備していこうと思います。


70歳の肝力

こんにちは、藤岡です。シアトルは熱波です。クーラーがない我が家にはキビシイ。

さて、今年のウェスタン・ステイツ(Western States Endurance Run)をインターネットで追っかけていた方はご存知の通り、フランソワ・デンヌ(François D’haene)をねじ伏せたロブ・クラール(Rob Krar)や、途中でコースミスをしながらもステファニー・ハウ(Stephanie Howe)を破ったマグダレナ・ブーレ(Magdalena Boulet)もさることながら、やはり今年のハイライトは、灼熱の161キロの道のりを制限時間である30時間の6秒前、29時間59分54秒で最後にゴールしたガンヒルド・スワンソンさん(Gunhild Swanson)でしょう。

初の70歳代の女性完走者となった彼女。最後の1マイルは優勝者のロブ・クラールが並走して励まし、その甲斐もあってか最後の1.3マイル(約2キロ)を16分で駆け抜けました。ゴールシーンの映像がこちら。周りのみんなが声援を送り、興奮しました。

ウエスタン・ステイツの直前に、定期購読しているウルトラランニングマガジンの最新号が送られてきたのですが、その特集の一つが三人のベテランランナーに関する記事で、そのうちの一人がちょうどガンヒルド・スワンソンさんでした。読んでみると、彼女が今回最年長での完走記録を打ち立てたのが偶然ではなく、しっかりとした裏付けがあり、彼女だったから成し遂げられたということがわかります。

ちなみに、彼女は私と同じくワシントン州在住で、私も大好きなレインシャドウ・ランニングのレースのファンだそうです。

以下、記事をざっと訳してみました。(いかにも翻訳した感たっぷりな文章ですが、お許しくださいませ。)同記事はウェブでも公開されているので、原文をご覧になりたい方はこちらをどうぞ。


ガンヒルド・スワンソンの胆力

61回目の誕生日の一週間前、ガンヒルド・スワンソンは2005年のウェスタン・ステイツを25時間40分で完走し、60歳以上女子の最速記録を打ち立てた。彼女にとって二度目のウェスタンステイツ、五度目の100マイルレースだった。夫のジャックは由緒あるこのレースで彼女のペーサーをしたかったに違いない。しかし彼は直前に白血病と診断され、それは叶わなかった。

それから10年、70歳になったスワンソンはJavelina Jundredを27時間24分で完走した。おそらく100マイルレースを完走した最高齢の女性となっただけでなく、彼女は再びウェスタン・ステイツの出場資格を満たしたのだ。2008年に他界してしまったジャックが生きていたら、きっと興奮していたに違いない。

「走るようになってしばらくしてはじめて、自分に能力があることに気づいたわ。」スワンソンは、微笑みながらそう言う。彼女の人柄は、彼女の走りそのものだ。いつもは物静かだが、一度話を向けると、彼女の話は、その走りのように、いつまでも止まない。趣味の話になったかと思えば、レースの話になり、家族の話題に、というように。ドイツ出身、ワシントン州スポケーンに住んで数十年。快活でエネルギッシュで、いつも笑顔を絶やさず、何事も決して諦めない。いつもショートカットで、明るい色のランニングウェアが好き。ランニング以外の趣味は、編み物や孫のトゥーランについて冗談をいうこと。

実はスワンソンの2015年のウェスタン・ステイツ出場は一度主催者から却下されていたが、その数週間後に特別に出場が認められた。その知らせを聞いて俄然やる気になった彼女は、さっそくコーチを雇ったほどだ。高校や大学で走ってなかった彼女にとって、70歳にして初めてのコーチを受けることになったのだ。

スワンソンのお気に入りのレースは、人気のレインシャドウが主催する50キロのレースとクール・ダレンヌ・マラソン。それからジャックがブルームスデイ・ロード・ランナーズ・クラブの役員を務めていたこともあって、ブルームス・デイ・ランは39年間で走らなかったのはたった2回だけ。ヤキマ・リバー・キャニオン・マラソンも彼女のお気に入りだ。

そのヤキマ・リバー・キャニオン・マラソンの前夜祭で2014年に講演したのは、キャサリン・スイッザーだった。当時女性が走ることが認められていなかった1967年のボストン・マラソンを走っていたスイッザーは、途中でレースディレクターから止められそうになったのだが、ボーイフレンドのトム・ミラーがレースディレクターを押しのけてくれたおかげで、ゴールできたのだった。その時の様子を収めた写真は当時またたく間に世界に知れ渡り、50年近くたった今でも、スワンソンを含む多くの長距離ランナーに影響を与えているのだ。

その2014年のヤキマ・リバー・キャニオン・マラソンのあと、レースディレクターのレノール・ドルフィンは、スイッザーがボストン・マラソンでつけていたゼッケン261番を2015年ヤキマ・リバー・キャニオン・マラソンのゼッケンとして提供することをスワンソンに提案した。261番を提案したのには、もう一つの理由があった。2015年のレースまでにスワンソンがマラソンやウルトラレースを含め通算で260のレースを完走する予定だったからだ。たが69歳の時点で247のレースを完走したものの、あと1年で13のレースを完走するのはなかなか厳しいものだった。レノールともうひとりの友達リサ・ブリスがキャサリン・スイッザーにスワンソンの計画とこれまでの功績について話し、それを受けてスイッザーがボストン・マラソンでつけた261番のゼッケンのレプリカの後ろにメッセージを添えて、ブレスレットと一緒に2015年ヤキマ・リバー・キャニオン・マラソンでスワンソンに送ったのは、スワンソンにとってサプライズだった。

2007年のバッドウォーターに優勝し、バッドウォーターの殿堂入りメンバーでもあるリサ・ブリスはスワンソンについてこう言う。「ほとんどの人は知らないかもしれないけれど、彼女は怪我や挫折から何度も復活してきた人なの。普通、歳を取るごとに復活するのはどんどん難しくなってくるというのに。復活するのに時間がかかることもあるけれど、彼女は言い訳せず復活してくるの。そして常にベストを尽くして、結果を残すの。」そしてこう続ける。「それでいて彼女は走りながら、小さな野花を見たり、鳥のさえずりに耳を済ませたり、場合によっては立ち止まって、落ちているコインを拾ったりするの。彼女は勝負師だけれど、勝負することが彼女を駆り立てるのではなく、彼女の生き様が、彼女を勝負に駆り立てるのね。つまり、彼女には勝者のメンタリティーが生まれつき備わっているの。そのうえで、たまたま彼女はすばらいランナーとしての才能も持っていただけなの。」

2015年のウェスタン・ステイツは世界中のエリートランナー、記録保持者、年代別の強者ランナーが集う大会になる。でも、そんな中で、すでに年代別の記録をもち新たに年代別の記録を狙うガンヒルド・スワンソンは、おそらくもっとも肝のすわったランナーに違いない。