コミュニティって素晴らしい 〜 Orcas Island 100

Photo © Glenn Tachiyama


Orcas Island 100の週末の体験は、一週間経った今でもじんわりと心地よく心に残っています。

オルカス島で開催された「Orcas Island 100」は、主催者であるレインシャドウ・ランニングにとって初めての100マイルレースで、今年が第一回でした。

オルカス島はレインシャドウが11年前に初めて50キロのレースを開催した場所。レースディレクターのジェームス・バーナーにとっても思い入れのある地で、彼曰く「今では色々な場所でレースを行うようになっているけれど、100マイルのレースは本当に大丈夫と思える今になってやっと開催できるようになった」とのこと。満を持しての開催です。

一周約40キロのコースを4周するループコースで、私が先日走ったOrcas Island 50kと同様、パワーラインという激坂が最大の難所です。

私は今回はランナーとしてではなく、エイドステーションでのボランティアや日本から来た西城さんのサポート、そして地元やその他各地からやってきたランナーの応援にやって来ました。

普段、自分のレースで感動することはあまりありません。レース前にちゃんと計画・準備し、レース当日には集中して冷静に走ってきっちりゴールに辿り着くことは、言ってみれば自分に課したミッションのようなもので、上手くいけばホッとするし、上手く行かなければ問題点を反省する、といった感じです。

一方、ランナーではない今回は、ランナーの様々な場面での様々な体験を共有し、感情の起伏を勝手に追体験させてもらいました。スタートラインでリラックスする人、集中する人、レースの場面場面で力を温存する人、スピードを上げて追い込む人、エイドステーションで低体温症気味で震える人、痛みを訴える人、リタイアを決断する人、ゴールして厳しいレースから開放される人など。他のランナーを見ている方が心が揺さぶられます。

さて、私の週末を簡単に振り返ると、金曜の朝にレースが始まってからしばらくはトレイルのあちこちに先回りして、先頭集団を走る西城さんや井原さん、その他のランナーの応援をしていました。

夜9時からはレースの最高地点となるコンスティチューション山のエイドステーションでボランティア。

今回のレースでは、全てのエイドステーションがシアトル近辺のトレイルランニングコミュニティによって運営されていました。私がスポンサーを受けるセブンヒルズ・ランニングショップのチームが担当したのは、長い上りのあとにある、ループの中で一番最後のエイドステーション。夜はかなり冷え、ランナーにとっては厳しい区間です。焚き火やハロゲンヒーターのぬくもりと、歌って踊るボランティアがランナーをお迎えしていました。ループコースでは同じランナーに何度か会えるのが良いですね。

私がエイドにいた頃、西城さんは3周目を終えたところで脚の不調でリタイア。良いポジションにつけていたので残念でしたが、来年また是非チャレンジするとのこと。来年は必ず木製のバックルを貰いましょう!

最初のボランティアのシフトが終わったら、スタート・ゴール地点に戻ってランナーをお出迎え。結構きついコースだと思うのですが、トップの二人は20時間を切るタイム。三位に入ったのは井原さんで、これで26回目の100マイル完走。流石の走りです。夜が明けるとチームメイトのジョーダンが女子一位でゴール。まだ一周残すランナーもいて、最後のループへ向けてスタートしていく後ろ姿に声援を送ります。

寝る暇もないくらい色々なことがあって、本当に充実しています。

土曜の昼から再びエイドステーションでボランティア。レース開始時間に遅刻して、30分以上も遅れてスタートしたシアトル在住の近内さんも無事、関門時間内に通過。

最後にやってきたのは地元の友だちビビアン。完走を目指す彼女をみんなで送った後、エイドステーションを撤収してゴールへと向かいました。

日曜日の表彰式は島の映画館で行われました。そこにいる誰もが笑顔だったことが、このレースが大成功に終わったことを物語っていました。

地元のランナーのみならず、アメリカ各地や国外からのランナーも参加したOrcas Island 100は、地域のトレイルランニング・コミュニティと合わさって、走ってない私にとっても本当に素晴らしい体験になりました。


シーズン開幕!〜Orcas Island 50k

こんにちは。藤岡です。

2月6日、レインシャドウ・ランニングのが主催する数々の人気レースの中でも最も歴史があり、レインシャドウの象徴とも言えるOrcas Island 50kを走ってきました。二年連続の出場です。私にとって今年最初のレース。結果は、自分の想定を上回る優勝(!)でした。以下、レースレポートです。

オルカス島
オルカス島(Orcas Island)はアメリカの左上の隅、シアトルから北北西に150キロほどの場所に位置し、カナダとの国境もすぐ近くです。サンファン諸島を構成する大小さまざまな島々の一つで、苔生す美しい原生林と、コンスティチューション山から望む島々とピュージェット湾が印象的です。

レースの魅力
50キロのレースの一週間前に開催されるOrcas Island 25kは、アメリカの雑誌「Competitor Magazine」が選定する「最も景色が素晴らしいレース」の一つに選ばれています。

したがって当然ながら自然も美しいのですが、それ以上にこのレースを素晴らしいものにしているのは、トレイルランニング・コミュニティがつくりだす雰囲気です。ワシントン州からはもちろんのこと、隣接するオレゴン州やカナダ・ブリティッシュコロンビア州、遠くはアメリカ国外からも、シーズンの幕開けを楽しみに待っていたトレイルランニング好きが、フェリーに乗って島に集まってきます。

コース
コースは、スタートから5マイル(8キロ地点)までの長い舗装路の上りのあと、湖沿いや原生林の中でさほど大きくない上り下りを繰り返します。21マイル(34キロ地点)から始まる悪名高い激坂パワーライン・トレイルが最大の難所。そのあと更に島の最高地点コンスティチューション山まで上ったあと、4マイル(6.5キロ)を下ってゴールします。

概ね走れるコースですが、例外はパワーライン・トレイル。基本ハイクで上ることになります。ちょっと雨が降っただけで道は泥でツルツルになり、四肢を使わないと前に進めなくなります。(以下の動画の5分27秒くらいからがパワーライン・トレイルです。)

有力選手
今年は海外で活躍する程のエリートの出場はなかったものの、パシフィック・ノースウェストの実力派選手が出場していました。特に注目は以下の二人。

  • ネイト・ジャカ(Nate Jaqua)…ポートランド在住で、元はメジャー・リーグ・サッカー(MLS)シアトル・サウンダースのプロサッカー選手。昨年はオレゴンの人気レースPine to Palmで優勝、私も走ったbighorn 100とOrcas Islandでどちらも2位。レース中盤以降にどんどん順位を上げていくスタイルで、常に安定して上位に入ってきます。
  • マックスウェル・ファーガソン(Maxwell Ferguson)…ワシントン州の最優秀トレイルランナーに選ばれたこともある、ツボにはまると手がつけられない韋駄天。Orcas Island 50kのコースレコード保持者。

私にとってのレースの位置づけ
私にとっては休養明けの初めてのレース。日々のトレーニングもまだまだ基礎を作っている段階ということもあり、今回のレースの目的は前回のブログで書いたとおり今の調子を確認すること。調子を図る目安としては昨年と同じくらいのタイム(4時間49分49秒)で走れれば良いと考えていました。先に上げた二人の選手は過去の実績からみて私より実力が上で、正直、先着するのは難しいかなと思っていました。

レース展開
雨季なのでレース前日までは雨が続いていましたが、当日は晴れ間ものぞく天気。走りやすい路面コンディションになりました。朝の気温は4度ほど。

レーススタート後、ハナを切る選手がおらず、自然と私が先頭に立ってしまいました。のっけから若干想定外の展開ですが、そのまましばらく舗装路の上り道を先頭で進みます。4〜5キロ上ったくらいのところで、それまで私の後ろについていた馴染みのない二人のランナーが抜いて行きました。まだまだ序盤で無理するところではないので、無理に追いませんでした。現在三番手。

舗装路を終え、原生林のトレイルに入って行くと、次第に先頭が見えなくなりましたが、自分のペースを守って三番手を進みました。

Photo © Glenn Tachiyama


中盤くらいで先行していたランナーの一人が失速し、私が二番手に。途中でマウンテンバイクの男性から「先頭と3分差くらい」と教えてもらいました。

その後、後ろから馴染みのない別のランナーが追いついてきて、私と並走。難所パワーラインの手前、20マイル(32キロ)地点のエイドステーションに一緒に入ります。エイドのボランティアによれば「先頭と1分差」とのこと。先頭のランナーはペースダウンしているようなので、どうやら捕まえられそう。あとは今、並走している人とのレースになりそうな気配です。

二人でパワーライン・トレイルをハイクで登り始めると、案の定、トップを走っていたランナーが見えてきました。ぐんぐんと差を縮め、上りの途中でそのまま追い抜きました。後ろから別のランナーが追いついてくる雰囲気はなく、あとはさきほどから並走しているランナーとの一騎打ちです。

パワーラインの上りで、並走しているランナーの様子を観察していると、上るに連れて疲れてきているように見えました。自分のペースを守って走ってきた私はまだ余力があったので、パワーラインを上りきった23マイル(37キロ)地点で、ここが勝負どころと一気にスパート。振り向かずに出来る限りのスピードで距離を離しにかかると、奏功。あっという間に差を作ることに成功しました。このあたりで優勝を強く意識しました。

とはいえ力を抜けば後続が追いついてくるので力を抜かずにプッシュし続け、またせっかくのリードが台無しにならないようにコースロストに気をつけて走り続けました。

Photo © Glenn Tachiyama


最後はふくらはぎが攣りそうになりながらも、後続に追いつかれることなく1位でゴール。やりました!加えて、ゴール後に初めて知ったのですが、4時間22分という記録はコースレコードまであと19秒に迫る好タイム。

Jumping finish! (Photo © Jeff Barber)


2位はパワーラインの頂上まで並走していたデイヴ(David Bresnahan)。

3位にはやはりネイトが入ってきました。ゴールラインで話していてわかったことなのですが、実はデイヴも昨年私やネイトが走ったBighornを走っていたとのこと。実はトップ3全員が既に同じレースを走っていたのでした。

あまり景色を見る余裕はなかったですが、思う存分レースを楽しめました。うまいレース運びができ、会心のレースになりました。またOrcas Island 50kという人気レースでの優勝は本当に嬉しい!

レースの全結果はこちら

勝因
順位的にもタイム的にも当初の目標を大幅に上回る結果になりましたが、考えられる主な要因を上げると以下の3つあたりでしょうか。

  • コースの知識…私は昨年既に同レースを走っており、後半のタフさを知っていたのに対し、レース序盤で先頭を走りながらもパワーラインで失速したランナーや、2位に入ったデイヴにとっては今回が初めてのOrcas Island 50k。私のほうが力の掛けどころ、抜きどころがわかっていたことが間違いなく結果に影響しました。
  • フレッシュな体調…昨年は数多くのレースをこなし、12月のレースでは疲労が完全に抜けない中でのレースになってしまいました。その後、数週間は完全にトレーニングを休み、12月後半からじっくり体を作ってきたので、疲労も抜けてよいコンディションでレースに望めたことが良い結果につながった可能性があります。
  • コア・トレーニングの導入…今年の10月には45歳。やはり若い人にくらべると筋肉が落ちやすいということもあり、今年初めからコア・トレーニングを取り入れました。結果として、筋肉系の怪我の予防と、バランス感覚の強化につながった可能性があります。

レースの後のお楽しみ
レースは終わりましたが、お楽しみはここから。

島内のブリュワリーIsland Hoppin’ Breweryのビールを飲みながら、一緒に走ったランナーやその家族とおしゃべりしたり、ゴールする選手に拍手を送ったり。レースは忙しかったのですが、レースの後はのんびりと時間が過ぎていくのでした。


今年のレーススケジュール

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こんにちは。藤岡です。

まだまだシアトル界隈は冷たい雨の季節の真っ只中。12月のサンフランシスコのレースの後はシーズンオフで、しばらくは疲労回復と基礎トレーニングをして過ごしていました。2月に入り、いよいよ今週末から今シーズンの開幕です。

今年もピリオダイゼーションの考え方をベースに以下の通りスケジュールを組みました。最大の目標レースは、まだ出場できるか確定してませんが、あのレースです。

  • Orcas Island(50キロ/2月6日/重要度C)
    • シアトル近郊のオルカス島は、ちょっとした週末の遠足にもってこいの場所。多くの地元ランナーがここでシーズン開幕を迎えます。昨年に続き二年連続で出場。
    • 定性的なゴール…まだまだ基礎体力を作っている中でのシーズンはじめのレースなので、まずはコンディションのチェックとトレーニングの進捗具合の確認が主目的。
    • 定量的なゴール…昨年のタイム(4時間49分40秒)と比較してプラスマイナス5分以内。
  • Chuckanut(50キロ/3月19日/重要度C)
    • シアトルから車で北に1時間ほどのところにあるチャカナット山で行われる、アメリカでもかなりハイレベルな部類のレース。レース・ディレクターはあのクリッシー・モール(Krissy Moehl)。超エリートランナーはこの辺りからシーズンを開始します。現時点で既にデビッド・レイニー(David Laney)、セイジ・カナディ(Sage Canaday)、エリー・グリーンウッド(Ellie Greenwood)などが参戦予定。私は今年で5年連続5回目の出場。
    • 定性的なゴール…このレースもコンディションの確認が主目的。
    • 定量的なゴール…昨年のタイム(4時間07分31秒)と比較してプラスマイナス5分以内。
  • Zion(100マイル/4月8日/重要度B)
    • ユタ州のザイオン国立公園のすぐ側で行われるレース。なにしろ景色が見どころです。初出場。
    • 定性的なゴール…夏へ向けてこのあたりで長いのを一本。スピードではなく、如何に効率的に走るかにフォーカスすること。後半でのペースダウンを最小限にする。そして、まだ行ったことのないザイオンを楽しむ!
    • 定量的なゴール…走ったことがないのでタイムはよくわからないけど、トップ5くらいでゴールしたい。
  • Dirty 30(50キロ/6月4日/重要度C)
    • コロラド州のレース。コロラドの人にとってはこの頃からやっとシーズンが始まるみたい。初出場。
    • 定性的なゴール…ハードロックへ向けての準備。高地のレースを経験しておく。
    • 定量的なゴール…走ったことがないので現時点では未定だけど、あまり高いゴール設定をせずに無理せずじっくり走る。
  • 【未確定】Hardrock(100マイル/7月15日/重要度A)
    • 当然、最大の目標レース。まだウェイトリストに名前がある段階で、出場を取りやめる人が何人か出てこないと出場できません。出場できるかどうかがわかるのはレース直前になりそうですが、走れようが走れまいがとにかく現地に飛びます。
    • 定性的なゴール…とにかく楽しむ!
    • 定量的なゴール…トップ20。
  • UTMB(170キロ/8月26日/重要度C)
    • 言わずと知れたUTMB。今年で3年連続3回目。
    • 定性的なゴール…万が一、ハードロックを走れなかったときは、こちらが最重要レースになります。ハードロックを走れたら、こちらはゆっくり楽しみます。
    • 定量的なゴール…ハードロックを走った場合は、特に目標設定なく楽しむ。万が一ハードロックを走れなかった時は、100位以内、30時間以内で完走が目標。
  • The North Face Endurance Challenge Championship(50マイル/12月3日/重要度B?)
    • アメリカのみならず、世界的に見ても最高レベルの超高速50マイルレース。サンフランシスコからゴールデンゲートブリッジを渡ってすぐのところで行われます。今年で6回連続6回目の出場。
    • 定性的なゴール…昨年の同レースはシーズン終盤ということもあって結構疲れが溜まった状態だった。今年もコンディション次第だけど、状態なりにベストを尽くす。
    • 定量的なゴール…状態がそこそこなら昨年(7時間29分00秒)以上のタイムが目標。

今年の定性的な大目標は、100マイルレースを昨年以上に上手く走ること。昨年はビッグホーン、UTMB、レユニオンの3つの100マイルレースを走り、全て無事に完走したものの、まだまだ向上の余地があると感じています。今年の10月には45歳になるので、単純なスピードの向上を望むことは難しいのですが、技術や経験の部分はまだ改善できると踏んでいます。

ということで、今年もそれぞれのレースをしっかり楽しんでいきたいと思います。