生ける伝説、登場 〜 Yakima Skyline 50k

こんにちは、藤岡です。

Zion 100を走った翌週の4月16日、レインシャドウ・ランニングが主催するレースYakima Skyline 50kのエイドステーション・ボランティアに行ってきました。

レースが行われたのはヤキマ渓谷はカスケード山脈の東に位置し、私が住む場所から車で南東に2時間半くらいののところにあります。乾燥していて気温もシアトルより高め。シアトル周辺の緑豊かで苔生すトレイルとは趣が全く異なります。

昨年はランナーとして参加しましたが、このレースは相当タフです。レースディレクターのジェームス・ヴァーナーがHardrock 100の練習場所を探すなかで出会ったトレイルだそうで、多くの人がこの辺りで最もきつい50キロレースと言います。

Photo © Glenn Tachiyama (tachifoto.net)

昨年走りましたが、暑くてタフなレースでした。 Photo © Glenn Tachiyama (tachifoto.net)


今日もたくさんの知っている顔が来ています。ゲイリー・ロビンス(Gary Robbins)も、奥さんがレースに出場するということで、お子さんと一緒に来ていました。先日惜しくも完走ならなかった世界一過酷なレース、バークレー・マラソンズ(Barkley Marathons)の感想を聞いたら、「想像してたよりキツかったよ」との返事。ちなみに、ゲイリーの奥さんは昨年、お腹に赤ちゃんがいる中、Yakima Skylineの25キロの部を無事完走しています。

午前8時にスタートしたランナーを見送った後、ランナーのドロップバックを積んでエイドステーションに向けて出発。

私が担当するのは、レースの折り返し地点にあるエイドステーション。このエイドステーションは、私がスポンサーを受けるセブンヒルズ・ランニングショップの有志が担当。更地の現地に到着したら、テントを立て、机を並べ、果物を切り、スナックや飲み物を机の上に準備し、ドロップバックを並べて、さくっと準備完了。

机の上のポテトチップスをつまみながら、先頭のランナーが来るのを待ちます。

10時半。レースが始まって2時間半くらい。先頭のランナーがやって来ました。後続のランナーもぼちぼちやってきます。余裕がありそうな人もあれば、若干お疲れ気味の人も。去年ほどではないとはいえ走るのには暑いので、みんなしっかり水分を補給していきます。

その後もどんどんとランナーは続き、中にはここで力尽きドロップする人も。12時半の関門時間も刻々と近づいてきました。

そして関門時間ギリギリに現れたのが、生ける伝説ともいうべきこの方。

昨年のウェスタン・ステイツで初の70歳代の女性完走者となったガンヒルド・スワンソンさん(Gunhild Swanson)です。

関門ギリギリに来たランナーの中ではダントツに元気で余裕もありそう。この時間に到着したのは予定通りという感じでしょうか。ガッシリとした体格にシャキッとした姿勢。ちゃんとした裏付けがあってはじめて、この年でもこのきついレースを走れるのですね。

ちなみに上の写真はハイドレーションパックの口が開かず、ボランティア総出で開けている様子。ちょっと手間取りましたが何とか無事に開けることに成功し、水を補給して出発していきました。その後、ガンヒルドさんは無事完走。素晴らしいの一言です。

スイーパーが通過して、もうエイドステーションに向かってくるランナーがいないことを確認したうえで、エイドステーションを撤収。ゴール地点へと戻ります。

ゴール地点でちょっと遅い昼ごはん。レインシャドウのレースでは、ランナーに加えてボランティアも提供される食べ物は無料で食べられます。私も今、焼き上がったばっかりのピザをいただきます。旨い!

ゴールの直ぐ脇には川が流れており、暑い中ゴールしたランナーは足を冷やします。

ゲイリーの奥さんリンダさん、ゲイリーとお子さんと一緒に、無事にゴール。レースディレクターのジェームスとハイタッチ。

いい天気の中、ボランティアをして、ゴールでのパーティーを楽しんで、有意義な土曜日でした。


激走ザイオン 〜 Zion 100

こんにちは、藤岡です。

私が住んでいるワシントン州をちょっと離れてユタ州に遠征し、4月8日に行われた100マイルレース「Zion 100」を走ってきました。

ザイオン国立公園の直ぐそばで開催されたこのレース。私の結果はというと、なんと17時間36分50秒のタイムで総合優勝しました!

以下、レースレポートです。

場所と気候
ラスベガスから車で2時間半ほどの場所にあるザイオン国立公園(Zion National Park)は、グランド・サークルと呼ばれる、グランド・キャニオンやブライス・キャニオンなどを含む大自然の密集地帯にあります。

川の流れによって侵食されてできた渓谷がザイオンの独特な景観を生み出しています。

気候は乾燥していて、朝晩と昼ではかなりの寒暖差があります。レースが行われる4月は、30度を超える暑さになったり雨だったりと、日によって天候が変わるとのことです。一方、夏は夕立はあるものの概ね晴れた日が多く、日中の最高気温が40度を超えることも珍しくありません。

私達の拠点
はじめて訪れるザイオン。せっかくならレースだけでなくレース前後にも自然を満喫しようということで、私とサポート担当の妻はシアトルから空路ラスベガス入りしたあと、キャンプ用バンを借りてザイオンへ移動し、ザイオン国立公園内のキャンプ場に滞在しました。

バンの後部座席はベッドになる仕様で、私達二人が寝るのには十分なスペースが確保されています。また冷蔵庫、食器、洗面台、コンロなど必要最低限のものは備え付けられていますし、(私たちは寝袋を持参しましたが)布団や枕もあるので、機動力を保ちつつ快適に過ごすことができました。

レースについて
レース会場は国立公園の外。とは言え、周辺一帯も大自然です。「メサ」(スペイン語でテーブル・机という意味)と呼ばれる、侵食によって出来たテーブル状の台地を繋いで走る100マイルレースのコースは累積標高3230メートルほど。幾つかの急な上り下りを除くと比較的走れるコースですが、細かな起伏も多く楽なコースではありません。

レースを主催するウルトラ・アドベンチャーズ(ULTRA ADVENTURES)は、グランド・サークル内で多くのレースを主催しています。いずれのレースも観光地のすぐそばで開催されるということもあって人気があります。

今回のザイオンでは、100マイルのほか、100キロ、55キロ、ハーフのレースも開催されました。距離の選択肢に幅があるので、観光がてらにちょっとトレランという人にも参加しやすく、実際にアメリカ国内だけでなく海外、とくに中南米から参加された方々が少なからずいたようです。

私にとってのレースの位置づけ
年初に計画したとおり、夏にある今年最大の目標レースに向けて、春先に一本長いレースをきっちり走りきることが一つの目標でした。加えて、2月のOrcas Island 50kと3月のChuckanut 50kを経て、体も出来てくる頃なので、ある程度結果も求めたいなと思っていました。

レースの振り返り
100マイルは100キロと一緒に朝6時にスタート。35.5マイル(約57キロ)地点まではコースも一緒です。走る距離によってゼッケンの色に違いはあるものの、後ろから各ランナーのゼッケンを確認することは出来ないので、前の人がどちらの距離を走っているのかわかりません。

途中、折り返しで先行ランナーとすれ違うときにゼッケンを観察したり、エイドステーションでボランティアの方々に質問した結果、私の前にいる3〜4人のランナーのうち100マイルを走っているのは一人だけの模様。先行するランナー数人は視界に入る位置にいます。

直近の二つの50キロレースに比べると、長丁場ということもあって当然ながらだいぶ楽なペース。あまり無理せず最初のメサをこなした頃には夜も明けていました。

ふたつ目のメサでは台地の縁(ふち)を走りました。コースのすぐ脇は数百メートルの落差で落ち窪んでいます。高所恐怖症の方には結構厳しいでしょうが、眺めは絶景です。

約26.5マイル地点、ふたつ目のメサを下りはじめるあたりで追いついた100マイルのリーダーに、「パタゴニアのジェフ・ブラウニング(Jeff Browning)が2014年に作ったコースレコードを上回るペースだよ」と声を掛けられて、ちょっとペースが早過ぎるのかなぁとも思いましたが、自分としてはさほど無理なペースという感覚はありませんでした。

まだまだ余裕で、下りですれ違う後続の選手に「グッジョブ!」と声をかけあいつつ、楽しんで坂を駆け下りました。

30マイル付近で私が先頭に立ってからは、後ろを振り返らずに淡々と走りました。しばらく平坦なジープ道が続いた後、32〜33マイルあたりで登場する3つめのメサは、垂れ下がった紐を使って登らないといけないほど急な区間もあります。平坦な場所ではちょっと差があった100キロの部の先頭を走るランナーに、この上り坂で追いついてしまいました。

メサの上は波打った岩場が続きコースが不明瞭なため、コースマーキングはかなりしっかりしているものの、注意しないとルートを見失いかねません。慎重にコースマークを探しながら進みました。

辛かったのは中盤。45マイルくらいのところで100キロの部のランナーについていくのをやめて単独走になり、自分でペースを維持して走り続ける必要がありました。平坦なセクションが多いため走らざるをえず、休める区間があまりありません。サボテンの棘が足に刺さったり、バックパックの肩紐で鎖骨あたりが擦れて痛い思いをしながら、75マイルまでペースを落とさないよう我慢の走りを続けました。

75マイル地点のエイドステーションに到着すると、そこから4マイル、6マイル、7マイルの異なる3つのループを、一周回っては同じエイドステーションに戻る、また次のループを回っては戻ってくる、というのを繰り返します。

一周目のループの途中で、短いとはいえ急な雨があり、粘土質の路面は一瞬にして粘着質のドロドロのぬかるみに。シューズの底に重い泥がまとわりつき、グリップも全くなくなってしまいました。

40分かけてエイドステーションに戻ると、後続のランナーはまだ誰も着ていないとのこと。つまりこの時点で最低でも一回目のループの分(4マイル、40分)は差がついていることになります。この辺りでかなり優勝を意識しました。ここまでエイドステーションでは立ったまま、必要な補給だけしてすぐに出発してきましたが、ここで初めて椅子に座って落ち着いてシューズを交換し、濡れたシャツを交換しました。

ふたつ目のループの途中で日がくれました。コースロストや不注意な転倒など大きなミスがないよう、確実な走りを心がけました。

最後のループも無難にこなして、ゴールまであと8マイルほど残した地点で二位との差は1時間以上。ほぼ確実に勝てると思ってゴールへと向かう最後のセクションを進むと、途中から全くコースマーキングが見当たりません。どう考えても今走っている道以外には道がないはずなのですが。既に夜の闇の中なので万が一コースを見落としていたらマズイ!かなり焦りました。いま来た道を引き返し、同じコースを進む100キロのランナー数人を待ち、コースを確認し合いました。他に道はなかったし、やはりどう考えてもこのコース以外にないということでとりあえず前へと進み、しばらくしてやっとマークを見つけた時には本当に安堵しました。少なくとも10分は失ったと思いますが、まだまだ十分な差があります。

ゴール前の数マイルは流石に思ったようにペースが上がらず長く感じましたが、無事ゴール。100マイルレース初優勝です!

2位にはAltraからのスポンサーを受けるSam Reedがペーサーと一緒にゴールに入ってきました。私が最後のセクションで手こずる間に20〜30分ほど詰めてきていたようです。

私がゴールした後、夜半すぎからふたたび雨脚が強くなったためにコースが短縮され、多くのランナーが影響を受けたようです。(影響を受けた方の映像がこちら。)オリジナルの100マイルを完走したのは62人。77人は短縮されたコースでのゴールとなりました。大会の結果はこちら

レースを終えて
メサからの景色が素晴らしく、楽しいレースでした。滞在期間が短く、レース後もザイオン公園以外はどこも回ることが出来なかったので、こんどはグランド・キャニオンやブライス・キャニオンを訪れに、ぜひまた来たいと思います。

80マイルくらいまではコースレコードペース、最終的には歴代3位のタイムと、速いペースでのレースになりましたが、最後までなんとか我慢できました。補給もしっかり摂り、天候の変化や日の出・日没にあわせてギアの交換もでき、また毎度のことですが妻のサポートもあり、上手くレースマネージメントが出来たと思います。

50キロや50マイルのレース比べて苦手意識があった100マイルでしたが、今回結果が出て自信になりました。

反省点は、細かい話ですが、足の爪を切り忘れたままレースをした結果、5枚爪を剥がしてしまいました。それからバックパックで鎖骨が擦れるというのも、以前のレースで既に経験済み。レース中に不快な部分を出来るだけ減らすためにもこのあたりの対策はしっかり取っておかないといけません。

一旦リカバリーをとって、夏の大目標へ向けてまた仕上げていきたいと思います。