顔が見えるということ – Orcas Island 100 -

3週間前に行ったオーカス島に、今度は昨年に引き続き100マイルレースのボランティアとクルーをしに行ってきました。

シアトルから車で一時間半の場所にあるアナコルテスから車ごとフェリーに乗り込みオーカス島へ向かいます。

島に到着したら、さっそくレース前日のブリーフィングが行われるキャンプ・モラン(Camp Moran)へ。

今年の参加者は60人ほど。昨年からのリピーターや他の100マイルレースで見た顔、地元のレースでよく会う面々やレインシャドウ・ランニングのスタッフなどが賑やかに集い、和気あいあいとした雰囲気です。

アメリカのトレイルランニング・イベントは、しばしば「ロー・キー」(控えめな・慎ましい)と形容されます。エントリー可能なランナーの数は多くても300人前後。ごく少数のスタッフとボランティアで十分に運営可能な身の丈にあった規模で、自然に対するインパクトもある程度限定されます。

レース主催団体であるレインシャドウ・ランニングのオーナーで、レースディレクターでもあるジェームス・ヴァーナー(James Varner)が作るイベントは、ちょうどよい規模感でいつも居心地が良く、心から楽しいと思わせてくれます。

オーカス島は2006年にレインシャドウ・ランニングが初めてレース(Orcas Island 50k)を開催した場所。ジェームスが満を持して彼にとって初めての100マイルを開催したのが昨年で、今年は第二回のOrcas Island 100でした。

一周25マイル(40キロ)の周回コース。雨が多いこの地域ならではの、苔に覆われた神秘的な原生林の中を駆けめぐります。

レース開始後、私もトレーニングがてら軽くコースの一部を走ってみました。

普通シアトル周辺は緯度の割には冬もさほど気温は下がらず雪も少ないのですが、今年は例年と比べて低温で雪の日が多く、レースがあった週末も少し標高が上がっただけでトレイルを雪が覆い始めます。

たまにすれ違うランナーに「その調子!」と声をかけながら、うっすらと粉砂糖をまぶしたようなトレイルを進みます。

コース上で一番標高が高いコンスティテューション山でも730メートルほど。それでも登るにつれて雪の量が増していきます。

コンスティテューション山の頂上には約15メートルの高さの石の塔があります。塔の上からは、天気次第で周辺の島や、カナダやアメリカの町、カスケード山脈などが見渡せます。

この塔は公式なコースには入っていないのですが、登った人にはおまけが付いてきます。

ループごとに一回、計四回塔を登って頂上に置いてあるトランプを四枚すべて集めると「タワー・クラブ」のメンバーになることができます。クラブ・メンバーはカスタムTシャツが貰えます。

登りたくない人は登らなくてよいのですが、今回完走した45人のランナーのうち実に38人がタワー・クラブの会員になりました。

この塔がある山頂に設置されたエイド・ステーションは、私を含むセブンヒルズ・ランニングショップ関係者の有志がボランティアで運営していました。

中には初めからエイドステーションの閉鎖時間までいずっぱりの人も。かなり寒いので、飲んだくれながら自分たちも楽しんでやるのがこちら流。

ランナーが来たら声をかけ様子を見ながら対応します。ループコースではエイドステーションをランナーが何度も通るので、レースが進むに連れてボランティアとの一体感も増していきます。

どのエイドステーションもレース中は当然休まず運営。ボランティアの皆さん、お疲れ様。

妻もランナーのサポートで複数のエイドステーションを行き来していたので、休む暇も寝る間もほとんどナシ。ホントにお疲れ様でした。

二日目を迎えてレースも終盤へ。まだ走り続けるランナーの中には腰を痛めて上半身が完全に傾いた状態で走っている人も。それでも歩みを止める素振りは全くありません。強い。

レースを終えた人やその仲間たちは、ゴール地点で最高の生演奏の中、最高のピザと最高のビールをやりながらランナーを迎えます。宴は最後のランナーがゴールした後も続きました。

2日続いたレースの翌日は表彰式。会場となる町の映画館には「ウェルカム、オーカス島100マイルのランナー達」の文字が。

表彰式では、ジェームスが壇上に完走したランナーをひとりひとり迎え、各々にコメントを送って完走バックルを授与していました。

実はジェームスはこの表彰式で各ランナーに言葉を送るために、レース中寝ずにエイドステーションなどでランナーを迎えて話した内容や気づいたことをメモにとっていました。

この規模のレースならではの、それぞれのランナーを特別に扱う配慮に感心させられます。こんなのを見せられたら、わたしも走りたくなってしまいます。

楽しい週末も終わり、帰りのフェリーへと乗り込みます。

フェリーで座っていると、トレイルランニングの風景を撮り続けるカメラマン、グレン・タチヤマさんが私達の席にやってきたので、ちょっとおしゃべり。

お気に入りのレースは?という話になった時にグレンが挙げたのは、このオーカス島100マイル。その理由を聞かれたグレンの答えに、その席にいた誰もがその通りだと思ったはずです。

「小さいこのレースは、みんなの顔が見えるから。」


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