ランナーに寄り添う〜Western States 100

6月24日に開催されたウェスタン・ステイツ100マイルに、西城克俊さんのペーサーとして参加してきました。

西城さんがすでにブログを上げているので、ランナー側からの視点は是非そちらを読んでみて下さい。

ウェスタン・ステイツでのペーサーは3年前の原良和さん以来。西城さんのペーサーは2年前のGorge Waterfalls 100k以来です。

アメリカにおけるペーサー
アメリカでは主に100マイル以上のレースで、途中からペーサーをつけることが認められています。昼夜に渡って人里離れたトレイルを走るランナーの安全を確保するのが主な目的です。

レースによって若干ルールは異なりますが、通常ペーサーは一緒に走って、言葉をかけて励ましたり、ペースを作ったりすることだけが認められています。ランナーの持ち物を代わりに持ち運んだり、食べ物や飲み物を渡したりすること(「ミューリング」と言います)は禁止されています。また緊急時を除き、ランナーに医療・治療行為をすることも認められていません。

今回ペーサーとなったきっかけ
ここ数年、西城さんが春にパシフィック・ノースウェストのレースに遠征に来るたびにサポートをお願いされていて、それが縁で今回ペーサーの依頼がありました。

多くのランナーが憧れるウェスタン・ステイツの舞台。当然西城さんにとっても大切なレースなのは想像に難くありません。ペーサーを引き受けたからには、私自身ウェスタン・ステイツの雰囲気を楽しみつつも、それなりの責任感をもって事に当たらないといけません。

ウェスタンステイツ当日
私がペーサーをするのは、ペーサーをつけることが認められている62マイル地点のフットヒルからゴールまでの全区間、38マイル(61キロ)です。

レース前日まで普通に仕事があったため、スタート地点となるスコー・バレーで西城さんとクルーに合流したのはレース開始3時間前の午前2時。ペーサーとはいえそれなりの距離を走るので、短い間ですが仮眠を取ったあと、午前5時にスタートするランナー達を見送りました。

30マイル(48キロ)地点のロビンソン・フラットでクルーと共に西城さんのサポートをしたあと、ペーサーを始めるフットヒルに到着したのが正午前。西城さんの事前の到着目標時刻は午後3時頃でしたが、序盤の標高が高い地点に残る雪と、おそらく日中は30度台後半という例年以上の気温の高さの影響もあり、レースは全体的にスローペース。実際に西城さんが到着したのは午後5時過ぎになりました。それでも他のランナーとくらべると比較的元気そう。

ここから、次にクルーからのサポートが受けられる80マイル(129キロ)地点のグリーン・ゲイトまでは約20マイル。日が長い時期とはいえ、当初の予定より遅れていることもあって、念のため私はヘッドランプを持って一緒に走り始めました。

5時を過ぎても気温は30度を超え、まだ相当暑い。

前を走るか、後ろを走るか
ペーサーが前を走ってペースを作るか、後ろについてランナー自身がペースを作るかは、ランナーの好みがありますが、以前すでに西城さんのペーサーをしたことがあり、西城さんが先を走りたいことは分かっていました。経験があるランナーなので、ペースを邪魔しないよう、私は後ろからついていきました。

ペーサーが後ろを走る一番のメリットは、ランナーの動きがみえることです。長い間水やジェルを口にしていないときに補給を促したり、歩調がおかしいときに大丈夫なのか確認できます。

炎天下の中、徐々に疲労が蓄積する
次のエイドステーションまでの距離や先々の起伏の具合を確認するためにコース・プロフィールを印刷して持ってきていたのですが、フットヒルを出てすぐに落とした模様。記憶をたよりに西城さんにコースの説明をしながら進みます。

フットヒルから間もなく、まだ西城さんの足取りが良いあいだは比較的多めに声をかけていました。しかし、炎天下を進むにつれて西城さんの疲労が蓄積しはじめているように見えました。疲れてくると話すことも面倒になるだろうと思い、走りに集中してもらうために必要以上に話しかけないようにしました。

クルーが待つグリーン・ゲイト目前で一気に日が暮れ始めました。西城さんはヘッドランプをこのエイドステーションで受け取る予定だったので持っていませんでしたが、私は念のためにと思って持っていたので事なきを得ました。

遠く険しい残り20マイル
クルーからの手厚いサポートを受けてグリーン・ゲイトを出ると、ゴールまで残り約20マイル。しかしここから西城さんのペースは目に見えて落ち始め、歩いたり立ち止まる回数が増ていきます。それでも、西城さんは再び走り始め、ときに嗚咽にも似た声を上げながら前進します。

おそらく西城さんも、なかなか前に進まない、エイドステーションまでの距離が長い、と感じているんだろうと想像しました。私は、あまりしゃべらないようにしながら、それでも時々、次のエイドステーションまで一つずつ区間をこなしていこうと声をかけながら後ろを走ります。

前へ進み続けて、ノー・ハンズ・ブリッジに到着。ついに残りあと5マイル(8キロ)を切りました。西城さんの足はほとんど終わっていたと思いますが、ここからゴールまでなら多少無理をさせても最後まで持つだろうと、ずっと後ろをついていた私は、並走し、そして西城さんの前へと出ました。「あと3マイル」「あと3キロ」と励まし、手を叩いて鼓舞すると、西城さんも苦しみ、呻きながらも、なんとかついてきてくれます。

ゴールまで1.6マイル。最後のエイドステーションであるロビーポイントを過ぎると、ここまでサポートしてくれたクルーのみなさんが待っていてくれていました。相変わらずきつそうな西城さんですが、一方でゴールに近づいて安堵の色も見えます。

トラックに入り、最後は西城さんが午前2時39分にゴールラインをまたぐのを後ろから見届けました。

今年のウェスタン・ステイツは厳しいコンディションで、優勝タイムも例年より遅く、完走率も低かった中、流石に経験豊富な西城さんは力強く完走しました。

私もペーサーとして無事にミッションを遂げられてほっと一安心。もしかしたら自分がランナーとして一人で走っているときのほうが気が楽かもしれません。他のランナーのために役割をこなすという点で、ちょっと違った達成感でした。めでたし、めでたし。


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