夢の死にゆく場所

2016年と2017年にゲイリー・ロビンス(Gary Robbins)がバークレイ・マラソンズ(Barkley Marathons)に挑んだ時のドキュメンタリーが完成し、先週からカナダ・アメリカ各地で上映会が行われています。初日のバンクーバー公演、そして私が行った二日目のシアトル公演ともに満員札止めの盛況ぶり。

名目上の距離は100マイル(実際にはそれ以上)、獲得標高差は16000メートル(エベレストの倍)のコースを60時間以内に走るバークレイ・マラソンズ。ここ数年メディアへの露出も増え、トレイルランナーならずとも注目するイベントになってきています。

以前のブログでレースの概要を書いたので詳しくはそちらを参照いただくとして、簡単にレースを説明すると、GPSの使用を禁止されたランナーは、道標のない山の中を地図を頼りにナビゲーションスキルを駆使して一周20マイル(?)のコースを5周します。コースを回った証拠として、コース上に置かれた13冊の本の中から自分のゼッケンと同じページを切り取ってスタート地点まで戻ってくる必要があります。

秘密のエントリープロセスをヘて(幸か不幸か)参加する資格を得た40人のうち、完走できるのは例年一人いるかいないか。スタート後すぐに迷子になり、一日近くかけて一周もできずにやっとゴールまで戻ってくる人もいます。

さて、ドキュメンタリーのタイトルは「Where Dreams Go To Die」(夢の死にゆく場所)。

タイトルの通り、ゲイリー・ロビンスの挑戦は、一度ならず二度、完走まであと少しというところまで手を伸ばしながらゴール出来ずに終わります。2016年は極度の睡眠不足で幻覚が激しくなり自らリタイア、2017年はあとゴールまで3キロというところでコースを間違え、制限時間となる60時間を6秒過ぎてゴールに辿り着きます。

私が印象に残ったのは、エイドステーションでゲイリー・ロビンスがサポートクルーに対して自分が必要なことを非常に明確に要求しているところ。以前、彼の別のドキュメンタリー「Wonderland」を見たときにも感じたのですが、疲労の中これだけはっきりと周りに伝えられることに感心させられるとともに勉強になります。

さて気になるゲイリー・ロビンスの来年ですが、やはりバークレイ・マラソンズにチャレンジするとのこと。ナビゲーションスキル、走力とも十分に完走できると力強い言葉を聞きました。

こちらのページで上映スケジュールが公開されています。機会がある方はぜひ。


Bear 100 〜 四十半ばにして惑う

ユタ州とアイダホ州を跨いで開催される100マイルレース、Bear 100を走ってきました。いつもの通り、妻がサポートです。

コースの平均標高2300メートル、トータルの標高差は6700メートル。制限時間は36時間。テクニカルな路面はそれほど多くないものの、一つの上り・下りが長く、アメリカでも難しい部類の100マイルです。

昼夜の温度差が激しくなる秋口の天候は「インディアン・サマー」と呼ばれます。今年は温かい時間帯で20度近く、夜の山中では氷点下まで気温が下がりました。この寒暖の差がワサッチ山脈の山々を美しく色づかせますが、一方レースを難しいものにします。

紅葉が美しい。


レースのスタートは、ソルトレイクシティから車で一時間強の場所にあるローガン。決して大きな街ではありませんが全米でも治安が良い町として知られ、チェーン系のホテルやお店も数多くあり、滞在には困りません。

飾りっ気なく、良くも悪くも適当な雰囲気のレースが多いアメリカですが、Bear 100はその中でも輪をかけてざっくりとした感じ。レース前日のブリーフィングも実にあっさりとしていて、コースの状況や注意点なども手短に終了。どちらかというとランナー同士の顔合わせの場という感じ。まあこのざっくりとした感じが一つの魅力で、コアなトレイルランナーを引きつけます。

町の公園で和やかに前日ブリーフィング。


例年エリートランナーも少なからず参加するレースで、今年もWestern Statesで3位だったマーク・ハモンド(Mark Hammond)や4位のジェフ・ブロウニング(Jeff Browning)、ティモシ・オルソン(Timothy Olson)など、なかなかの顔ぶれが揃いました。

モルモン教徒の多いユタ州は日曜日は休息の日ということで、Bear 100は金曜日から土曜日にかけて行われます。スタートは朝6時。日の出まではまだ一時間以上あるため、ヘッドランプが必要です。

スタートは夜明け前。


私の目標は、ストレッチ・ゴールが5位以内、現実的な目標は10位以内。最低でも24時間以内でゴールしたいところ。

レース後しばらくは先頭集団で走り、中間地点となるTony Groveのエイド・ステーションまではティム・オルソンと前後しながら5番手あたりと、いい位置につけて走っていました。

コーラをガブ飲み。


ティムとは昨年のDirty 30というレースでも一緒になりましたが、急な上りでは呼吸も荒く非常につらそうなのですが、下りや平坦な場所では速くて簡単には追いつけません。

ティムは50マイル地点から女性のペーサーをつけてペースアップ。


50マイルをすぎたあたりから前後との差が開き始め、自分一人でコースマーキングをたどる必要がでてくると、マーキング間の距離が長かったり、見つけづらかったりで、正しく進んでいるのか不安になります。

とにかく牛が多い。夜中に出会い頭でお互いびっくりなんてことも。


そして日没を迎えると、その不安が問題として顕在化してしまいました。長い急な下りを降りきったあとのT字路で、マーキングが見つからない。焦りながら探すけどやっぱり見当たらない。

周りに誰もおらず、やむなく最後にマーキングがあった位置を目指して、延々といま来た下りを逆行します。大きなタイムロス。かなり登ったところで、下ってくる後続のランナーと遭遇。いわく、おそらくコースはあっているだろうとのこと。再び同じ道を下ってさっきのT字路にやってきたものの、やっぱりマーキングが見つからない…あった、小さな反射板がぽつぽつと2つ光っている。そしてそのそばにピンクのリボンが暗闇の中に薄っすらと確認できる。

暗くなってからはそんなことの連続。しばらく先を進んでみたものの、リボンも反射板も見つからずに来た道を戻ると、後続のランナーに会う。こっちで正しいのかを確かめると「リボンを見たのでこっちで正しいと思うよ」との返事。いままで夜はBlack Diamond Icon一つでほとんど問題がなかったのに、今回はとことんコースマーキングが見えていない。ペーサーをつけていたらこんなこともなかったか。携帯にGPSデータをダウンロードしてたら良かったのか。そもそも眼鏡を新調したほうが良いのかもしれない。

雪が残る夜の山道。かなりぬかるんでいる場所も。


無駄に時間と足を浪費し、意気消沈。途中からはやむなく目標を下方修正し、最低限の目標である24時間以内のゴールを目指すしかなくなってしまいました。

最後までとにかく自分が正しいコースを進んでいるのか確信を持てず、何度も立ち止まって確認することの繰り返しになってしまいました。

ゴール地点はベア・レイクの畔。


うまく走れている間は楽しかったけど、途中からガックリのレース。悔しいので、近々もう一度走りますよ。

フィニッシュ・タイムによってゲットできるバックルは異なる。