木曽町グレートトラバース分析

先日出走した木曽町グレートトラバースウルトラマラソン100kmに関して、発表されているリザルトを元に分析をした。来年開催されるかは未知数であるが、目標タイム設定のための関門通過時刻目安、他のウルトラとの難易度比較を整理しておくのは有益なことである。

①ゴールタイムと関門通過タイムについて
kiso-1
このグラフは棒がタイム計測ポイント間の所用時間を示しており、ゴールタイム先着順として全出走者が示されている。棒を積み上げるとその人のゴールタイムとなる。また、各関門毎の制限時間を横線にて同じ色で示しているので線と棒を比較すれば関門をどれだけ余裕をもって通過しているかが分かる。ゴールタイムから見た時に各関門ごとのタイムにばらつきはあるが、平均的な曲線が全体傾向として読み取れ、このゴールタイムであれば関門通過はこの程度という目安は予測が可能である。ある関門において平均的な線より棒が下にいればその後盛り返してゴールしたことになるし、上にあるとその後失速ということになる。

完走狙いという観点に着目すると、次のことが言える。第一関門はギリギリでも完走者がいるが、そういう人の大半は緑の棒が存在しておらず、第三関門でアウトとなっていることを意味する。第二関門は概ね一時間以上残した人が完走している。第三関門もギリギリでも完走者がいるが、その上の棒がない人はゴール制限アウトで回収と思われる。結論としては第一関門30分残し、第二関門60分残し、第三関門は通れば後は残りの気力の問題というところか。

一方でサブ10狙いという観点で着目すると、絶対的なサンプル数が少ないが、概ね言えるのはイーブンペースで走っているということである。第一関門(53km)を5時間強、第二関門(69km)を7時間弱、第三関門(85km)を8時間半程度というのが目視でも読み取れ、アップダウンがあるにせよ概ねキロ6分ペースということになる。100kmという長距離では崩れたらずるずる落ちていくので、やはりこのくらいのタイムを走るには安定が求められるということだろう。遅いゴールタイムほど、途中のポイントに同じくらいのゴールタイムの人よりかなり早く辿り着きながら、失速しているケースが散見される。

②ゴールタイム別ばらつきと他レースとの比較
kiso-2
このグラフはゴールタイム30分毎の区切りで見た時に棒がその間に何人ゴールしたか、線はそれまでに何人ゴールしたかを出走者数(384人)に対する割合で示している。例えばサブテンの割合を知りたければ9:30のところ棒が9:30〜10:00の間のゴール人数と10:00までにゴールした合計人数の割合を示しているため、出走者の4.4%がサブテンということになる。また、完走率は70.8%ということになる。以前にもいくつかのレースについてこういうグラフを作ったが、この程度の完走率であればよくある分布形状で、仮にゴール制限無制限として残り1/3の人がこのグラフの右にいるとしたらちょうど山なりの形状となるだろう。

この完走率とサブテン率を他の大会と比較してみる。対象となるのはキツいウルトラの代名詞である野辺山、第一回開催時に累積高低2700mを謳っていた飛騨高山、実際の累積高低差日本一と言われる村岡ダブルフルである。これからの村岡ダブルフルは昨年のデータ、他2大会は今年のデータである。累積高低は公表されている数字が怪しく、比較するのであれば同じ計測器を使うべきであることと、大きな上り下り数回なのか小刻みな上り下りが続くのでキツさは変わるので敢えて触れないこととする。もちろん、100kmよりやや距離が短いとはいえ主催者公称の累積高低3600mが事実であればコースプロフィールとしては最もキツいといえるだろう。

木曽町グレートトラバース 完走率70.8% サブ14率57.3% サブテン率4.4%
野辺山ウルトラマラソン 完走率67.7% サブテン率3.9%
飛騨高山ウルトラマラソン 完走率73.2% サブテン率4.3%
村岡ダブルフルマラソン 完走率74.0% サブテン率3.7%

比較対象とした他の3大会はいずれも制限時間が14時間であるため、それも加味したサブ14率も記載した。サブテン率だけを見ると出走者に対して木曽グレートトラバースが最も高いが、サブ14で比較すると圧倒的に低い。また、今大会が15時間制限であることも加味した完走率で比較すると他の大会も±4%の範囲に収まっている。当然のことながらこれらの数字は出走者の全体的なレベルに影響されるし、天候条件によってコース難度は変わる。また、サブテンは人数が少ないので誤差が出やすい。そういったことも考慮しつつ、今大会の主催者がOSJということでそれを覚悟して出る人が多い?ことも考えるとコース難度の比較としては以下のようになるだろう。

木曽>野辺山>飛騨高山=村岡

村岡はそもそも走った事無いし、72kmしか出ていない高山も、100kmをギリギリ完走した野辺山も出走当時と今の走力が異なるために走った感想としてのキツさを比較することはできないが、客観的な数字だけを見た評価である。給水も含め、エイド数が他のウルトラと比べ少ないところも今大会をキツくしている要因といえよう。今大会の場合、その日のうちに公共交通機関で東京に帰るには14時間くらいでゴールもしくは回収車で到着しないといけないため、ゴール制限を14時間にしてもいいのではないだろうか、そしてそうすれば日本一キツいロード100kmを名乗れるだろう、というのが結論である。


木曽町グレートトラバースウルトラ100km

20150830-DSC_6844
木曽町グレートトラバースウルトラマラソンに参加し、終始降り続いた雨の中14時間37分で何とか完走した。8月末のロード100kmに向けて80日で結果を出すと以前の記事に書いてから、前半は比較的ちゃんと走っていたものの後半40日はそれほど走れていなかったため自信は全くなかったが、前へ進み続ければいつかはゴールに辿り着く、そう信じて進んだのが完走につながった。走るのは自分、途中で止めるのも自分、自分だけの問題であればリタイアするのが楽で安易な選択である。しかし、日頃お世話になっている方々から雨の中いたる所で応援いただいた木曽町の方々まで、たくさんの人の思いをゴールまで運べるのはランナー本人しかいない。走るのは自分なれど、自分一人で走っているのではない。出来る事は全てやったと言えるような走りをする、そう思うと自己申告リタイアなど有り得なかった。

20150830-DSC_6836
昼から雨が上がるという前日の予報が外れ、しかも断続的に豪雨という厳しいコンディションで山間部の道路はまるで川のようになっていた。それでも天候は言い訳にならない。雨が降っているのは皆同じ。8月末というこの時期は年によっては猛暑の可能性もあるし、ロードとはいえ山の中を走るので急な天候の変化はあり得る。天候のコンディションが良ければ完走できたかも、というのは逆ならばできなかったということであり、単に準備不足、練習不足である。たしかに降り止まない豪雨は想定外と言えるが、長時間に渡るウルトラレース、ずっといい天候が続くと期待する方が間違いである。以前の野辺山ウルトラで雨具を持っていなくて雨に打たれて身体が動かなくなった経験から、とにかく雨が降っていたらすぐにレインウェアを着ようと決めていた。弱くなったと見せかけてまた強く降る雨は非常に厄介で何度となくレインウェアの着脱を繰り返した。

20150830-DSC_6840
脚は最初の大きな登りである20キロ〜30キロあたりでダメージを受け、早々に売切になった。また、69キロの第二関門にて補給食のクリフバーを食べていたら吞み込めなくて、むしろ逆にそれまでに腹に入れていたものが戻って来てしまうという胃腸ダメージの洗礼も受けた。長いレースなので色々なトラブルが起こる。そのトラブルさえも楽しむだけの心の余裕と、とにかく遅くても前へと進む事が重要である。今回はドロップバッグが残り1/3にしか預けられないというのが悩ましかったが、シャツを着替えて気持ちを切り替えるとともに、シューズも軽いものに履き替えた。軽いシューズの方が一般的に足の力が必要とされているが、ウルトラマラソンのゆっくりペースだとさほど問題ではない。軽いことで上りが楽になった。ただし、履き替えまではダメージを極力避けようとして底がしっかりとしたシューズを履いた。野辺山を以前走ったときと同じ考え方だったが、これはうまく行ったと思う。

20150830-DSC_6845
ラストの10km下りは日が落ちてしまっており、ライトも持ってなかったため暗闇の中を街灯や進路表示のLEDを頼りに進んだ。制限時間が危うかったので下り坂をかなりプッシュしながら走ったつもりだが95km(約94kmエイド)まで着くのにかなり時間がかかり焦った。しかし、その直後にあと3km、あと2km、と町の人の応援から言われる距離も短くなっていき、国道19号を越えたあたりでようやく完走を確信。ライトアップされた宿場町を通りゴールへと進むコースは戻って来た人へのご褒美である。ゴールするときにはすっかり雨が上がって月が出ていた。無事に帰って来れた事に感謝、ウルトラの苦しくて苦しくて辿り着くゴールには、そこでしか得られない価値がある。

20150829-DSC_6824