前夜祭と打ち上げが1度にやって来た。
「SAIGO Trail」の初日を走り終えたランナーは、宿舎となった鹿川地区交流センター「つりがね」でしばし休息。そして日が沈みきる前に夜のステージへと移行する。地元のお姉さんたちが腕によりをかけて作ったごちそうが並んでいた。
これでもかというくらいに大皿に盛られた料理が、あっという間に減っていく。
少なくなる料理に反比例して、選手が元気になり、楽しそうな声があちこちから聞こえてくる。その手には、黄金色に輝くビール。あっちにビール、こっちにビール、向かうには焼酎。なんと地元の方から差し入れの焼酎も。
アルコールが入って、エンジンが温まってきたのか、初日のレースを振り返り、キツかった、楽しかった、明日もあるのか。などなど宴もたけなわ、最高潮を迎える。
1日だけの大会だと、終わってから見ず知らずのランナー同士で宴席を囲むという機会はあまりない。層考えると、その日の走りを振り返って話し合い、同じ体験を共有するというのは珍しいのかもしれない。共通の体験でつながるので、話もしやすいし、打ち解けやすいのは間違いない。同時に次の日もまたゴールを目指す仲間であり、ライバルになるというのは不思議な関係性で面白い。
上位でゴールした選手のひとりが「新しいトレイルランの楽しみ方を見つけにきた」と出場した目的を語っていた。自由に楽しめるのがトレイルのはずなのに、大会でのタイムや順位ばかりを目指すことに、息苦しさを感じるようになったのだという。
その選手も料理を楽しみながら、新しい仲間と笑顔で話し込んでいた。すでに見つけて実践しているのだから、楽しみ方が見つかったのかをあえて尋ねることはなかった。