私が語るのは恐れ多いのですが忘れたくないのと
書くことによって生き続ける気がするので書きます。
私のブログの更新がパタリと止まってしまった原因は、
大会が終わった安堵感とか、色々と続く細かい作業とか、
あれこれあったから・・・なのですが、
大きな原因はそこではなく、7月末に飛び込んできた信じたくない情報が原因です。
相馬剛さんの遭難。
この事実を知ってしばらくの間、寝ても覚めても相馬さんのことばかりを考え、
そして今も、事あるごとに考えます。
私と相馬さん。
接点なんてそう深くありません。
でも相馬さんは、私がトレイルランニングに出会った頃から、憧れの人でした。
色々な大会で姿を拝見しては、
「私ごときが話しかけてはいけない」
と、遠巻きに見つめるだけでした。
なんかいつも相馬さんの周りだけ、オーラの色が違って
レース当日いつも
「あーやばい練習してないよー」と右往左往している私のような雑魚は近寄れない存在でした。
ところがある日きっかけをもらいます。
友人の代田渉くんと飲んだときに、
「松井さん、きっと相馬さんと話をすると良いと思う。相馬さんに会ってみたら?」といわれたのです。
いやいや、恐れ多い、何をおっしゃいますやら・・・と思いつつ、
そうか、一度相馬さんにちゃんと面と向かってアタックしてみよう!そのとき初めて自分から勇気を出してアタックすることを意識しました。
憧れてるとか、尊敬してるとか、応援してるとか
いつまでも遠くから一方的に思っていても仕方ない。
ちゃんと近くで話をしたい!
それからしばらくした、2014年4月28日
「トレイルランニングの未来を考える全国会議」の会場で相馬さんにお会いします。
もちろん私は、相馬さんの存在に気が付きなんとか話をしたいと思いましたが、
プレゼンを担当していた私は、その日もご挨拶程度しか出来ず、相変わらず遠い存在で終わるはずでした。
でも、プレゼンという大役を勤めさせていただき、相馬さんの脳裏にも
松井という人間がまだ認識されているうちにお話をしたい!と思い、帰宅後すぐ相馬さんにメールをしました。
自己紹介をし、ぜひTrailheadのツアーにも参加したいですと。
突然かつ失礼なメールだったと思いますが、相馬さんからの返信は私の予想に反したものでした。
松井さん、今度の甲斐駒ツアー、地元の方ですし、コースも往復なので、今のところサブガイドでお願いできればと思います。
(中略)
もうすぐスリーピークスですね。
色々な方から素晴らしい大会と聞いております。
今年も楽しく盛り上がれると良いですね。
私もテルテル坊主を作って、晴れることを願っています。
こんなうれしいメールを貰えるとは思っていませんでした。
そして、大会当日のFujiTrailheadのfacebookにはこんなことまで。
そんな中でもやっぱり気になるのは“八ヶ岳THREE PEAKS”。
あのメンバーで、あの距離・・・しびれるなぁー。
岩佐さん、ありがとう!
こんなにソワソワ、ワクワクと気になるなら来年は絶対に出場しよう。
大会後、この文章を見たときの興奮は、今でも忘れられません。
実は、相馬さんにぜひ出場して欲しいと思っていました。
でも、きちんとご挨拶もしたことないので、急にお誘いしたら失礼なのではないか?
と思い、お声がけすらできなかったのです。
相馬さんにそんな風に思ってもらえる大会でよかった。
来年は絶対!そう心に誓いました。
結局、甲斐駒ツアーは全力でサブガイドを拒否し(当然です(笑)無理です)
スリーピークスのコース担当である小山田さんに託したのですが
松井さんもぜひという言葉に甘えて参加。
しかし・・・というか、やっぱりというか予想通り何の役にも立たず、
相馬さんに「松井さんはまったく・・・」と呆れられつつも、
相馬さんという憧れの存在に近づけたことがとても幸せでした。
そして、7月15日。
相馬さんがスイスに旅立つ前日に、地図読みのツアーに参加します。
地図もコンパスも苦手な女子3名。
座学のときから、はちゃめちゃなことばかり言う私たち。
西と東が分からないとか、尾根だと思ってたら谷だったりと、笑いっぱなし。
樹海でのフィールドワーク。
コンパス進行を学んだのに、「はい、スタート」という相馬さんの掛け声と共に、
全員バラバラの方向に突き進んで(笑)しかも全員誰にも合わせず(笑)
どんどん好きな方に散らばるから、何度も相馬さんに
「コンパスの北合ってます?」と心配される始末。
どんなテントがいいのか、ツェルトのたて方から寝袋や防寒具の相談まで、
11月末のOMM参戦を目指す無鉄砲な私たちを、本当に楽しく指導してくれました。
走らないって言ったのに、走れるところは全部走らされたし、
急斜面も登らされて、あれ?話が違います・・・と言う余地もなし(笑)
藪こぎも「これは初級です」って言って、ガシガシ進むからついていくのが必死。
みんなが言っているとおり、相馬さんのセミナーは楽しむためのものではなく
今の状態よりレベルアップするためのもので、そのために必要な厳しさを
相馬さんからでるオーラで「怠けたこと言ってる場合じゃない・・・」と意識させられるのですが、
なんだかそれが心地いい、素敵な時間です。
予定より1時間以上遅れて終了した地図読みセミナー。
明日からスイスに旅立つ相馬さんに、
「スイスから帰ってきたら、もう一回地図読みセミナーやってください」
と、お願いすると
「もういいでしょ、1回で覚えてください」
と、相馬さんらしい即答。
「そこをなんとか・・・」
「なんでわかんないの?」
「えっと・・・」
という押し問答を繰り返し(笑)
「スイス頑張ってください、応援してます。お気をつけて」
最後まで笑いながらセミナーは終了しました。
それから10日後、遭難の話を聞きます。
そして、まだ相馬さんは日本に帰ってきていません。
日本中のトレイルランナーが相馬さんを待っています。
相馬さんについて書くとき、とても緊張します。
それは相馬さんの存在だけでなく、相馬さんの書く文章の力に圧倒されるからです。
相馬さんの選ぶ言葉1つ1つが、とっても素敵で、力があって、艶やかで、
それが、経験や体験に紐づいているものであり、付け焼刃の人間では選び出せない言葉だと
誰もが感じるからだと思います。
それに対し、全てにおいて陳腐な言葉しか選べない私。。。
でも、自分らしい言葉で書かせてもらいました。
(お前ごときが相馬さんを語るなと思う方もいるでしょうがごめんなさい。)
奥様を始め、関係者の方々、
落ち着かない日々と、日常生活を滞りなくすごす日々は
自分が思っている以上に疲労が抜けにくくなります。
また、残暑は思いのほか体力を削りますので、
お体には十分お気をつけてください。
相馬さん。
私は相馬さんとの約束を果たさねばなりません。
相馬さんに「夏までにヘタレは卒業」と約束したから、
いつ相馬さんが帰ってきても良いように、
帰ってきた時に「ヘタレ克服しましたね」って言ってもらえるように。
でも
「松井さん、いい加減にしてください」
って、笑ってもらうのもいいかな?(笑)なんて・・・
2 コメント
初めまして。 相馬さんの菩提寺、興徳寺の住職で 松永泰然 と申します。 ご家族が帰国されて 一度 お寺のイベントに参加してもらいましたが、 本日 自宅を訪ねて ゆっくりと 奥様やお子さんとお話しをしてきました。 家族3人で 今日、山を走って来たそうです。 子どもたちのフォームが 剛さんそっくりで ビックリしたと・・・ 「家族でトレイルランを続けて行こうと思います、それが お世話になった方々への恩返しであり、何よりも剛さんが喜ぶことだと思うから」 とのお話を伺い 感激いたしました。 どうぞ ご家族のこと、見守ってあげてください。
松永様
貴重なお話本当にありがとうございました。信越五岳から戻ってきたばかりでこのコメントを拝見し、また目頭が熱くなりました。
相馬さんが1日でも早く帰ってきてくれることを願いつつ、相馬さんのお子さんが走ってる姿を想像して、待ちたいと思います。
ありがとうございました。