前回に引き続き、2014年信越五岳で、上宮逸子さんをサポートした記録です。
あくまでも私目線の話なので、あしからず。
<A5>笹ヶ峰高原乙見湖(66.6km地点)
荷物をまとめ、エイドに到着するのと同時に、女子1位の高島さんが到着します。
前のエイドを約5分差で出ていたことを考えると、逸子が何時きても不思議ではない状況です。
A5からはペーサーも合流するので、沢山のペーサーでA5は大盛り上がり。
こんかいペーサー陣が本当に豪華。
トレラン有名人がA5に終結していて、既に大賑わい。
11時半すぎにエイドに到着してしまったため、逸子のペーサーをする小山田さんの準備がドタバタ。
着替えもしなければならない、逸子の荷物だけでなく、小山田さんの荷物もまとめなければならない、
逸子の補給や水分について話をしなければならない、小山田さんの水分も気にしなきゃならない、
もう、完全にこの時点で私の頭はパニック。
そんな私を見かねて、いろんな人が「大丈夫?」とフォローしてくれるも、もう完全に頭が回っていないのでどうにもならない状態。
エイドから車を止めてある駐車場まで、約100m。
階段あり。
それなのに車内に忘れ物あり。。。
発狂しながら、全力ダッシュで取りにいく・・・が、慌ててるからまた忘れる・・・またダッシュ・・・
とりあえず写真を・・・と思って撮ったけど、足元に散乱する荷物が、現場を物語ってますね(笑)
さて・・・
ドタバタドタバタを繰り返していると、ついに逸子が到着するのです。
到着してまず思ったこと。
とにかく顔色が悪い。真っ白。
これはかなり胃腸の調子が悪いよね・・と。
それでもここまで走ってきたことが本当にすごい。
きっと本人に体調のことや、顔色のことを言ったら、パワーダウンしてしまうかもしれない・・・
ここは何も言わず、ひたすら
「いいペースだよ、すごいよ」と励ますのみ。
A5では少し休憩したいと言っていたので、ここで初めて座って休憩。
用意していたもう1足のシューズにもこのタイミングで履き替えをおこないました。
調子悪いと言いつつも、当初このエイドの到着予測は13時10分だったのに対し、今はまだ12時30分。
予定より30分も早いペースであることを伝えると、少し安心した様子。
内臓の調子が悪そうで、とにかく心配だけど、ここからはペーサーもいるから、ペーサーの支えを信じるしかない。
きっと小山田さんなら、逸子をずっと元気付けてくれるはず!
二人で力を合わせて乗り切って!!
祈るような気持ちで、二人のスタートを見送りました。
A5はとにかく遠い。
なので、A6へもとにかく遠い。
しかも3連休のなか日で、戸隠は観光客でごった返していました。
なので、あちこちで渋滞に巻き込まれ、A6到着に1時間以上かかりました。
A6エイドは車が停められないので、その先の駐車場で待機。
選手はこの駐車場から再度トレイルに入ってきます。
A6エイドでいったん車道に出て、またトレイルに入るのですが、
前文に書いたとおり、観光客であふれていたため、選手が車とぶつかったりしないか?とちょっと心配。
でも、舗装路にはきちんとコーンが立ててあり、選手と車がぶつかり合わないための配慮がされていました。
信越五岳はどこのエイドも人が沢山いて盛り上げてくれるし、エイドの食べ物も豊富。
また分岐誘導をするスタッフも多く、選手のことをしっかり考えている大会なんだな・・・と思う部分が多かったです。
この長い距離を、こんなにも沢山のスタッフに支えられているんですから、選手はがんばれるんだな~と。
<A6>大橋(81.0km地点)
ここはサポートできない場所。ただただがんばって走ってる逸子と小山田さんを応援するのみ。
次のA7に車で進入すると、サポート可能なA8に迎えない可能性が出てくるため、
「A8で待ってるよ!」という声をかけと、二人の体調を確認するためだけに待ちます。
ここまでサポートをしていたBOSS齋藤さんも私も、まともな食事は1度も取れていず、私たちもシャリバテしてしまいそうなので
ここではじめての食事。
といっても、お湯を沸かしてカップラーメンを食べるだけだったけど、それでもがんばって走ってる逸子と小山田さんに申し訳ないな・・と思いながら、ラーメンをすすります。
しばらくすると、二人が笑顔で到着。
その前のエイドを青白い顔で出て行った逸子が、笑ってきてくれたことが本当にうれしかったです。
あぁ、小山田さんがなんだかんだ面白い話をして盛り上げてくれたんだな・・と思い、ペーサーを頼んでよかったな・・と実感しました。
どのエイドも、がんばって走ってる選手の姿を見えるのは一瞬で、その一瞬でサポートは次の補給を考えなければいけません。
逸子と小山田さんを見送った後、BOSS齋藤さんは次の補給に必要なジェルをせっせと作っています。
渡すジェルは飽きないように、どのエイドも違う味。
ただジェルを渡すのではなく、バーテンダーのように微妙なブレンドを加えたりと、今回の補給の種類やタイミングについて、すごい勉強になりました。
<A8>戸隠スキー場ゲストハウス岩戸(92.3km地点)
ここがサポートできる最後のエイドになります。
30分以上早いペースで来ているけれど、ゴール予測は19時。
そうなってくると、夜間になっている可能性もあるため、二人にライトを渡すという大事な役目がありました。
また、気温低下の可能性があるため、着替えを行なう、ノースリーブで走っている二人に、シェルやアームを渡すなどやることはてんこ盛り。
特に、ライトは逸子が持つハンドライトと小山田さんが持つハンドライト、そして小山田さんが頭にするヘッドライトの計3つを渡さねばなりません。
A7をパスしたため、速めにA8に到着した私。
さて、サポートエリアで渡すものをまずまとめてから、一休みしよう・・・
あれ・・・
ない・・・
ない・・・
ないーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!
そう、大慌てでA5を出発したため、私は小山田さんから預かった荷物一式をエイドに置き忘れてきたのです。
(上のA5の写真でいうところの、小山田さんの足元に写ってる青い袋がそれです)
時刻は既に14時を回っており、今から取りに言っても往復2時間かかる為絶対に無理・・・
小山田さんから預かった荷物をもう一度思い出して見ます・・・
・ウィンドシェル
・ヘッドライト
・アーム
・念のための着替え
ハンドライト2個はかろうじて忘れずに持ってきていたため、ここはセーフ。
アームも天気がいいからたぶん要らないって言うだろう・・・
ヘッドライトも私のものがあるから、ささっと渡せば分からないはず・・・
ウィンドシェルも代替のものがある・・・
よし、ばれない(笑)これで行くしかない!そう決めてドキドキしながら待ちます。
ただ、頭によぎったのは、信越の準備をする際に小山田さんが度々言っていたこの言葉
「本番で変わったことをすると良くないから、いつもと同じで行こう」
あぁぁぁもぉぉぉぉ!!いつもと違いすぎている!!!
口が裂けても
「前のエイドに忘れちゃった★てへ」
なんて言えない・・・
私がそんなことに右往左往している中、次々とランナーが到着します。
ペーサーと言葉を交わし、エイドの食料を食べ、ゴールへと向っていきます。
どの選手も「やっとここまできた」といったような安堵感はなく、
むしろ「よし、やってやる!」といった挑戦者の顔でした。
それもそのはず。
ここまで90km走って来たのに、今からむかうのは瑪瑙山。
コース上で一番標高の高い山であり、A8からの高低差は500m。
みんなここが正念場だと確信している顔つきでした。
15:30すぎ。
逸子&小山田ペアがエイドに到着します。
到着すると、逸子はこれ以上体を冷やさないよう、着替えをはじめます。
顔色はA5出発時より良くなっているものの、まだ体調不良は続いている様子。
この人、体調不良を訴えてから40km以上も走り続けてるんだ・・・
ペースも自分が思っていたようなペースではないかもしれなくて、
痛みや不調を抱えながら、それでも前に進む姿にサポートも力がはいります。
そして、小山田さんに言われます。
「俺のアームとライトちょうだい」
あーー、アームいるってこの人言った・・・言ったよね・・今・・・
「うーん、ない!!で、ライトは、コレ!!」
「え?なんでないの?でもって、これ俺のライトじゃないけど?」
あーーライトも気が付いたーーーさすがーーー
(いや、普通気が付くよね・・・)
私:「とりあえず、何も聞かずにこのライトつけて、アームは必要ないから大丈夫」
小山田:「なんで?」
私:「いいから」
小山田:「え?不安にさせるなよ、何なんだよ」
私:「色々あるんだって!」
小山田:「だからなんだよ」
私:「忘れたの!ぜーんぶA5に忘れたの!!」
小山田:「え・・・・・」
その後、小山田さん、なれない私のヘッドライトをつけ、言葉少なげに出発の支度・・・
そんな小山田さんを、コースマーキング作業をしていたSUUNTO竹谷さんがフォロー。
エイドスタッフの半田くんまで「大丈夫!」と後押し・・・
そんなドタバタ劇を行ないつつ、最後のエイドを二人は笑顔で出発。
「がんばれ、待ってるからね、まだまだ行けるよ!」
そんな言葉で送り出します。
最後のエイドで、選手を支えるペーサーを不安にさせる・・・
もっともやってはいけないミスです。。。
そして私は、ゴール待機を齋藤さんと竹谷さんに託し、とにかく遠いA5まで忘れ物を引き取りに行きます。
逸子と小山田さんはゴールを目指してがんばってる!
私は、車で往復2時間半を2時間以内で戻らないと、ゴールに間に合わない・・・
もうとにかく猛スピード(笑)
もう鬼の形相で運転してるから、大概の車がどいてくれる(笑)
結果1時間40分という好タイムで往復完了しました。。。
ゴール地点はもう夕暮れ。
ライトが必要な時間帯に突入していました。
すでに女子1位はゴールしていて、逸子の優勝はなくなってしまったけど、
順位とかじゃなくて、とにかくゴールまで来て欲しい。
祈るような気持ちで待ちます。
実はレース前に逸子から
なかなか思うように走れないこと、体調がなかなか優れない日が続いていることを相談されていて
大会直前も
「私、はしれるかな?」
と不安な気持ちをずっとメールや電話で話していました。
私がいつも練習不足で
「あーもー完走できないよ、これ」
なんていう愚痴とはちがって、いろんな不安があったと思います。
上宮逸子という女子トレイルランナーはあまりにも有名で、レースに出れば必ず表彰台。
本人は一言もそんなこと言わないけれど、応援している仲間や、チームメイト、スタッフのことを考えれば
きっと大きなプレッシャーに押しつぶされそうになるときもあると思うのに、会場ではいっつも明るくてニコニコしてて
一緒にいるほうが元気もらえる、そんな人。
すっごい天然で、この日も何を着るかでずっと悩んでたけど(笑)
1人のかわいい女性が110kmもの壮大なレースに毎年チャレンジして、結果を出し続けるってどれだけ大変なんだろう・・・
逸子って本当にすごいなぁ、だからこそがんばって欲しい。
そんな気持ちでゴールで待っていました。
しばらくすると、ハンドライトの灯が2つ。
1つのライトはぐるぐると大きく円を描いて、帰ってきたことをお知らせしてくれているみたい。
「いつこーー!!」
大きな声で呼ぶと、逸子は泣きながら小山田さんと手をつないでゴール!
その姿に私も思わず泣いてしまって、ゴール後二人で抱き合って泣いてしまいました。
女子二人大泣きのなか「チーム逸子」で記念写真。
まったくたいしたサポートは出来なかったけど、私の信越五岳サポートが終わりました。
信越五岳はエントリーするのも大変な大会。
その大会に少し触れることが出来て、なんでこの大会がこんなにも人気があるのか良く分かるような気がしました。
すべてのスタッフがこの大会を愛していて、参加者もこの大会出場できることを誇りに感じていて、
隅々までトレイルランニングに対する愛が詰まっているんだな・・・と感じました。
私も・・いつか・・・
いや、やっぱりサポートが良いかな。
今度サポートするときはもっときっとうまく出来るはず。
忘れ物はもう絶対しないでおこう。