山梨県甲府市の北部。
昇仙峡よりもっと上に『金櫻神社』(かなざくらじんじゃ)という神社があります。
武田家代々の祈願所であり、水晶信仰発祥の地としても知られており、「火の玉、水の玉」という水晶守りやお参りすれば一生お金に困らないというウコンの桜が有名なこの神社。
今回はこの神社の奥宮に行ったお話です。
我が家は毎年初詣には、武田神社ではなく諏訪大社と金櫻神社に行くのが、恒例行事。
あれはたしか6年前。
とある占い師にこう言われます。
「あなたはとても珍しい星のもとに生まれています。
努力すれば天に登る龍となり、努力を怠れば地を這うミミズとなる運命です」
そう、以前もお話ししましたが、このブログタイトルの「地を這う」というのは、私鈍足のトレイルランナーだからという意味もありますが、この「地を這うミミズにはならないように」との願いを込めて、つけました。
さて、その頃からなんとなく「龍」の存在が気になります。
そう、特に選んできたわけではないけれど、
これまでの人生「龍」になんだか縁が深い。
心地よく住み続けている土地の地名に「竜」がついていたり
なんとなく訪れた寺院の天井絵が立派な竜の絵で、そこからなんとなく幸運が続いたり・・・
こればかりは、
信じるも信じないもあなた次第です・・・
というような話で、
特に宗教勧誘や、シックスセンス的な話をしたいわけではなく
なんとなく、これまでの人生で龍に縁があったな・・・と思うようなことがあったのです。
さて、その占い師から「天に昇る龍、地を這うミミズ」の話をされてからしばらくしたのち、お正月の初詣で金櫻神社を訪れます。
それまでは、特に決まって参拝していたわけではないのですが、なぜかその年行ってみたくなったのです。
いつもと変わらず、どこの神社にお参りする時と同じようにお参りをし、
ふと空を見上げると・・・
天に昇る龍が・・・見えたのです。
いや、見えたと言うと少し違う。
見えた気がしたというか、そう感じたというか・・・
いずれにしても、金櫻神社で龍と遭遇したのです。
その後、気になり、境内の案内板や、ネットで調べると、
金櫻神社には、昇龍降龍の彫刻があったりと、なにかしら龍に縁深い神社であることを知ります。
人間思い込みというのはすごいもので
そう思うと、なんだか金櫻神社まで身近な存在に感じてしまい
それ以降、なんだかんだと訪れお参りしていました。
その頃まだ、登山やトレイルランニングをはじめるか、はじめないかという時期だったので、色々と文献を読んでも、頭の中にきちんと整理、記憶できていなかったのですが、先日、ふと金峰山登山を計画した際、いつも行く増富ルートではなく、別のルートで行ってみたいな・・・と思い立ちます。
地図やネットで調べ始めたらなんと、その金櫻神社と深いかかわりがあることを知ります。
なんと、普段お参りに行っていたのは里宮で、奥宮は金峰山山頂にあったというのです。
そして、もともと金峰山へ昇る登山道は現在ある金櫻神社の裏からスタートしていたのです。
室町時代に修験の総本山、和州・金峯山(現在の奈良県)から蔵王権現を分祠し、金峰山へ祀ったそうで、現在の金櫻神社周辺の地域が大いに栄えたと、『甲斐国志』(山梨の歴史が書いてある書籍)にも記載されています。
それによると、金峰山へいたる参詣道は9つも通じ、里宮の金桜神社の門前に、神職の家が70軒、参拝者の宿舎200軒を数えたとの記述があるほどです。
現在も金櫻神社周辺に味のある元旅館風の建物が残っているのですが、現在は営業していません。
登山ルートには、仏坂、御小屋沢、巫子ノ沢、賽ノ磧、御室小屋、勝手明神など、修験道だったことを忍ばせる地名がでてきて、金櫻神社からの表登拝口が、巡礼の道として、古人が山頂を目指し登ったことが、読み取れます。
これは・・・
ぜひ行きたい・・・
そう思い、ネットでいくつか検索するも、その古の道で登山した方のログがいくつか見つかるのですが、みな登山道途中で迷い、地図読みをしてなんとかたどり着いたといったような記録になっていました。
さて、私。
地図読みがとにかく苦手。
何度となくチャレンジしているものの、谷と尾根がぐっちゃぐちゃになってしまったり、谷と尾根に集中しすぎて、方角や標高といった大事な情報を見逃す傾向が高いのです。
これは・・・単独で・・・行けるわけない・・・
しかし行きたい!!!!!
そんな思いで山梨のアウトドアショップ『SUNDAY』へ駆け込みます。
店長の石川さんに、とにかく熱い思いで話をすると、
「ガイドの三上さんがそういうのは得意だよ」
三上浩文さん。
道なき道をどんどん行く、やぶ漕ぎ界のキング。
三上さんのブログはいつ見ても、普通に登山道を歩いていることがない(笑)
しかし、この人ならぜったい古の道経由金峰山行が決行できるはず!
すぐさま三上さんにガイドを依頼し、古の道へ向かったのです。
さて・・・
スタートは金櫻神社から。
おもむろに、境内で三上さんが「奥秩父」を出します。
奥秩父とは・・・
原全教が書いた、奥秩父周辺の登山記録。
戦前に奥秩父の山々を踏破し、その魅力を伝えた登山家、原全教による秩父登山記録です。
登山記として貴重であるだけでなく、奥秩父に暮らす人々の証言記録、古跡の記述、記録写真などが豊富に収められ、民俗資料としても貴重な書籍となっています。
まさか、登山の当日にこの本を、見るとは思わなかった・・・
日本に数多くガイドさんはいらっしゃると思いますが、
なかなか歴史書持ち込みで始める人は少ないと思います。
きちんと歴史を紐解いて、登山開始する三上さんスタイルがしょっぱなから気持ちよく、もうワクワクが止まらない状態。
本来は金櫻神社裏手から登山道が伸びていますが、今回は若干ワープして黒平からスタートすることにしました。
猫坂や燕岩といった金峰山へと向かう巡礼の道の一部を車で通過し、いよいよ佛坂からスタートします。
9:15登山開始。
金峰山登山道を示す看板がありますので、そこから入ります。
登り始めてからしばらくの間、とにかく歩きにくい道を進みます。
マーキングはところどころありますが、三上さんに地図読みを教えてもらいながら進んでいきます。
倒れてる木をくぐったり、またいだりしていると
本当に美しい大木が次々に現れ、その木々からのパワーがまた本当に心地よく、その空気に癒されます。
ここからしばらく、地図読みが苦手な我々のために
実践式読図講習。
三角点目指して突き進みます。
コンパス直進でゴリゴリ行きましたが、本来は距離や地形をしっかり見ていかなきゃだめだな・・・と反省・・・
でも無事に三角点を見つけることができました。
12:00お昼ご飯
1/25000の地図で見ると、林道とつながってそうな気持ちの良い草原的なところでお昼ごはん。
たしか樽峠だったと思うのですが・・・記憶が・・・あいまい・・・。
唐松峠ではないはず・・・。
まだまだ先は長いのです。
そこからまた、しばらくマーキングがあるような内容な道を進みます。
緩やかな上り坂がずっと続くエリア。
マーキングはほとんどありませんが、昔林業をしていた人が残していったと思われる、太いケーブルが巻き付いた木などが出てきます。
もう使われることのないケーブルですが、いつまでも木に巻き付いているのは、なんだか苦しそうで重そうでかわいそうに思えます。
さて、13:11
甲府市森林浴広場付近に到着。
10月の第2週目のその日は、とっても紅葉がきれいでした。
この付近から造林記念碑を経て進むルートは
ピンクテープだらけ。
せっかく美しい林が続いているのに、5mも感覚を開けずに、ピンクテープがたくさん。
ピンクテープがあるのは、道迷いしなくていいけど
なんとなくセンスないな・・・と感じてしまう・・・
美しい森が台無しって思うほどのピンクテープ祭りでした。
ピンクテープが少なくなってきたあたりで「御子ノ沢」へ到着します。
これまた進むと「水晶峠」に到着。
水晶峠では昔本当に水晶がとれたようで、それを知ってかいまだに盗掘にくる人がいる様子。付近には「盗掘禁止!」と書かれた、比較的新しい看板があったり、
水晶を探すために掘った大きな穴があったりします。
実際、水晶の原石とおもわれるようなきれいな石が転がっているような気がしましたが、水晶かどうかは定かではありません。
水晶峠を過ぎると、「賽の河原」に到着。
賽の河原は水はなく枯れ沢です。
その枯れ沢沿いを進むと、本日のテント泊ポイント「御室小屋」へ到着です。
15:30 御室小屋到着
御室小屋には蔵王権現があるはずなのですが、見当たらず。
いまはボロボロに壊れた御室小屋が残されているのみ。
御室小屋付近には水場があります。
このルート川沿いを行くので、沢の水を飲んでも平気という方は
比較的水には困りません。
御室小屋のすぐそばの沢は、雨量によって水量は変わるようですが、枯れることはないようです。
とにかくゆっくりのんびりペースなので、スタートから6時間もかかりましたが、
ファストハイクならあと2時間は短縮できると思います。
本日はここでテント泊し、翌日金峰山山頂をめざします。
まずは暗くなる前にテントを立ててます。
私が持って行ったのはモンベルの1人用テントですが、
一緒に行った人は、MSRの2人用、Six moon Designの1人用、Hyperlite Mountain Gearの1人用。ガイドの三上さんはシュラフ。
色も形もサイズもバラバラでなんか面白い。
テントを立てたらお夕飯の準備を。
おのおの食べたいものを持ち寄り、もちろんお酒も持ち寄り、宴会のスタートです。
私はビールとワインとおつまみを少々。
お夕飯用に焼きそばをつくりました。
三上さんは、みんなのためにビール、ウィスキーを持ってきてくれただけでなく
坦坦スープを作ってくれました。
勿論、ゴボウも、ネギも、ひき肉も、豆板醤もたっぷりはいったやつです。
ほんと体があったまって、死ぬほどおいしかったです。
それに炊きたてのご飯!
アルファ米ではなく炊きたてご飯は、本当に美味しかったー!
そのほかにも、焼き鳥や、チーズなどみんなで宴会は8時ごろまで続き、この日は就寝。
久々のテント泊。
久々の寝袋。
山の中で過ごす夜は、とっても楽しくて、やっぱり贅沢な時間です。
普段のトレイルランニングスタイルでは味わえない時間。
荷物は12kgもあって重たいけれど、だからこそゆっくり登り
ご飯を作り、テントで寝る。
いかに早く移動するか?ではなく、山ですごす時間を体の隅々まで味わう登山。
読図はまだまだイマイチですが、
電気も携帯も通じない山奥で過ごした一晩は
いつもよりも時間がゆっくり流れているように感じました。
さて、次回は、御室小屋から金峰山頂上を目指すお話。
相変わらずの長文ですが、
皆様もうしばらくお付き合いください