去年は分水嶺トレイルBコースに出場していた。
そう、山塊からほっぺた引っ叩かれたようなレースで、将監峠でリタイア。
私の体調不良だったので、私はツェルト内でヌクヌクと休み、白さんとフジフジはツェルトに身を包んでの野営。何もかもが申し訳なかった。
今年こそ!
そう思っていた矢先に靭帯を切った。
分水嶺トレイルを完走するには、とにかく重い荷物を背負って、長い距離を進む訓練が必要だということがわかっていたからこそ、靭帯を切ってすぐに、リベンジを誓っていたチームメイトに、ごめんなさいと連絡した。
ただ、もし分水嶺に出られなかったら、、、
そんなつもりでエントリーしていた大会が。
「おんたけウルトラトレイル」
靭帯を切って、4月までは全く走れなかった。
でも、みんなが出たくて出たくてクリック合戦にまで発展した大人気のレース。
キツくて辛い
そう言いながら大人気なのには何か出た事がある人にしかわからない魅力があるんだろう。
7月のこのおんたけを目指して、がんばって練習しよう。
そう思って出場を決めたのが5月。
スリーピークスは6月開催で、正直5月〜6月は自分の為の時間を作ることは難しい。
なので、毎年4月〜6月はNO RUNNING期間に突入してしまうのに、100kmもあるレースに出れるもんなのか、、、
正直不安しか無かった。
練習といえば、毎週火曜日にやってるグループランと、たまーに10km程度走るぐらいで、違和感が残る靭帯と、すっかり落ちた体力と、忙しさを言い訳にして、長い距離走り続ける訓練を全く出来なかった。
正直出られる自信が全く無かった。
でも
DNSとDNFが大嫌い。
去年分水嶺トレイルを引っ張ってくれたチームリーダーの藤生さんは、それからしばらくして鋸岳で帰らぬ人となってしまった。
藤生さんに「元気だよー。頑張ってるよー!」って本当は分水嶺のコースで伝えたかったけど、それが出来なくなった今、山は違うけど、おんたけで伝えられたら。そう思って、出場をレース3日前に決断した。
私が決意出来ずにいたせいで、お店の臨時休業も直前の発表となり、関係各所の皆様には大変ご迷惑おかけしました、、、スミマセン
初めてのおんたけ。
夜間走るのが好き、深夜12時から朝4時までが1番元気な私にとって、おんたけのスタートか深夜12時のおんたけは自分に向いてるな、、、
そんな妄想に胸膨らませ王滝村へ。
現実が見えてきて、急に怖くなる。
あれ?前に100km完走してた時、もっとずっと真剣に練習してる。。。
そんなこと思い出したら、不安で泣きそうになる。
制限時間いっぱいの20時間でゴールすれば良いな、、、
いやーー20時間も動き続けられる?
20時間かーーーーー
どう考えても泣きそう。
そんな中100mileが20時にスタート。
いつもはサポートする小山田さん。
今回はノンサポートの100mile。
頑張ってね、無事帰ってきてね。
そう言い握手。
でも、どっちかって言うと、無事帰れないのは私だな、、、
見渡せば100mileランナーはみな、練習してきた、走りこんできた、準備し切って来た方ばかり。
御岳という場所柄なのか、スタート前には神主さんのご祈祷があり、いよいよスタート。
暗闇に消えていく、ライトと熊鈴の音。
とにかく、かっこいい。
派手さはない。おしゃれでもない。
男臭いかっこよさ。
甲子園を目指す男子校の野球部みたいな雰囲気。
一気にテンションが上がり、自分がスタートする24時まで出来るだけ寝たいのに、全く寝られない、、、
バタバタしながら、気がつけばスタート時間。
ATC storeの芦川さんから、第1関門までが大変だから、そこまで頑張れ!とアドバイスを貰い、私も暗闇の中スタートします。
今回山梨から一緒に行った五味くんとはスタート位置が違いすぎるので、ここでお別れ。
わたしは後半からゆっくりスタート。
スタートして間もなく、、、
OSJクオリティ満載(笑)
分岐誘導スタッフとか全然いない(笑)
看板のみだし、マーキングもほぼないし、看板も少ない(笑)
20km地点、小エイドまでもう少し。
周りはだんだん明るくなってきて、私もようやくライトを消して、ガレ場の下りを走る。
走りやすい下りなんて一箇所もない。
THE 林道!
気を抜いた瞬間に、つまづいて転ぶ。
転んだ瞬間に両足のふくらはぎが攣り、江頭2:50のようにピーンと突っ張ったまま飛び、ゴロゴロ転がる。
見ず知らずの方が
「大丈夫ですか?」
と。声をかけてくれるので、
「大丈夫じゃないです!」
と訴え、攣りが治るストレッチをしてもらう。
あの時のあの方ありがとうございます。本当にありがとう。誰だったんだろう。是非会ってハグしたい。
完全に攣りが治らないけど進むしかないので、攣ったまま進み、だましだまし走る。
だましだまし。
ようやく小エイドに到着。
エイドも水と塩しかない(笑)
全然キロ表示も違うし、エイドの場所もあってない。
でも、自己責任のスポーツ。そんなのに文句言っちゃいけない?こんな山の中に水があるだけでありがたい。
みたいな感じで、とにかく第一関門目指して進みます。
でもその第一関門が、全く現れる気配がない(笑)
何回カーブを曲がっても出てこない(笑)
仕方ない、これはOSJだから、、、そう言い聞かせても、全然たどり着かない(笑)
第一関門への道のりに嫌気がさした頃、
「グンモーニン、グンモーニン」
という、怪しい声。
振り返ると小山田さん。
おんたけは100mileと100kmが1部同じコースを進むので、タイミングが合えば100mileの選手に会えるよ〜とは聞いていたものの、ここで会うと思ってなかったので、驚いたし、疲れていた時間だったので、会って話ができて、気持ちが軽くなって、パワーもらえました。
100mileの第2ループを回ってきた小山田さん。
すでに距離は70km越え。
そんなのも感じさせない、走りと元気。
「関門もうすぐだからがんばれ」
そう言われて、一緒に第一関門間で向かいます。
32km関門制限時間6時。
私が到着したのは5時10分頃。
たぶん、37kmぐらいの所に関門があったよね(笑)
いやー厳しい。
ギリギリじゃん。
トイレに行きたいけど、恐ろしい渋滞で並ぶ気がしない、、、
私の計算上5時30分には関門を出なければ、次72kmの関門に間に合わない、、、だって関門はきっと72kmじゃないから、、、
そう思って、トイレも、ゆっくり休憩も諦めて進みます。
基本ジェルのみで進んでいるので、補給は動きながらする事に。
眠気もなく、割と順調かもーー
と、いい気になってたら、雨。。。
雨のレースは嫌いじゃないので、レインを着て進みます。
雨は降ったり止んだりを繰り返していて、
しかし、トイレ、、、
コースが林道だから、ちょっとお花摘みに、、、みたいな行為が一切出来ない。
かなりいいペースで進んできたけど、諦めて次の小エイドでトイレ休憩をする事に。
これが間違ってた、、、
30分。
完全に30分トイレ待ち。
止まってる間に雨だからどんどん体は冷えて、足も痛みが出てくる。
ようやくトイレを済ませて、リスタートするも
足が動かないし、やたら眠くなるし、
とりあえず「止まらない、動き続ける」と念仏のように唱えて、1歩1歩カメさんなみのスピードで進む。
そう、夜は得意だけど朝が苦手。。。
眠すぎる。。。
すごい、抜かれる。
ふらふら登り、平坦なところもふらふら歩いてるから、どんどん抜かれる。
とにかくすごい眠い。
そして、すごい土砂降り。
土砂降りだってなんだって、眠いもんは眠い。
早く、ドロップバックを預けてある第2関門に到着したいと心から思っているのに、
やっぱり来ない(笑)
72kmじゃない(笑)
第2関門には最低でも11時には到着して、いろいろ食べたり休んだりしたいのに、
全然たどり着かない・・・
ふらっふらのへろっへろになりながら、第2関門のドロップポイントに到着したのは
11時15分ごろになっていた。
びしょびしょのウェアを着替えたいけど、女性が着替えられるようなスペースはないし、相変わらずトイレは混んでるし、愚痴を言い出せばきっときりがない。
でも、進まなきゃゴールできないし、
進めばゴールできるし、
もうここまで来れば、体なんてどこが痛いかわかんないぐらいみんな痛いし、
走力なんてものはそもそもないわけで、あとは根性でしょ。
そう気持ちを切り替えて、第2関門を11時30に出発。
そのあとは基本的に下りがメインで、下りが好きな私にとって、ラッキーなコース設定。
登りはもうベッタベタに遅いけど、下りなら走れるし、下りは走りきりたいし。
そう思って、重力に逆らわず、下る。
第3関門でそうめんを食べて、でも長く休むといやになるから1分ぐらいで再出発。
このあたりから、距離表示がどこもかしこもバラバラで、自分が一体あと何キロ地点にいるのかさっぱりわからなくなる。
たぶん、あと20kmぐらいなんだろうけど・・・
とにかく進めばゴールは見えると思ってひたすら長い長い長いガレ場の下り道。
長い下りだけど、
この間行った黒戸尾根と比べれば、走りやすいし、距離も短いな。
そう思って、下る。
膝が時折痛くなるし、股関節も痛いけど、
90kmぐらいになれば、みんなどこもかしこも痛いし、
TDTの時は、こういうのを「熟成した」って言ったなー。
熟成しきったら、今度は何になるんだろう?
とか、とにかくネガティブにならないように、考えて走った。
それに、もちろん藤生さんのことをすごい思い出した。
今フジフジだったらなんて言って励ましてくれるだろう?
「松井さん、足動いてますよ、すごいですよ」って、全然動いてない足だとしてもほめてくれるだろうな・・・。
フジフジはもういないけど、
私は変わらず生きてるし、
生きてる人は、いない人の分まで走らなきゃな。
分水嶺はダメだったけど、
おんたけはぜったいあきらめない。
そう強く思い、進む。
とにかく長い下りがやっと終わり、
久々の舗装路、そしてやっと待ちに待った最後のエイド(小エイド)。
このエイドにはもう1つ矢印が付いていて、
100mileはここから最後のループへ行くコースだという事がわかる。
小山田さんはきっと行ったんだろうなーと漠然と思う。
きっと彼は絶対リタイアしないし、関門もパスするだろうな・・・と。
もうあと10km。
最後の小エイドを出たとき、この間サポートに行ったスパトレイルを思い出す。
仲間の池ちゃんが、関門ギリギリで最後のエイドを出て、
絶対完走したい!という思いで、全力出し切って、走り切ってゴールした姿。
私も絶対に走り切ってゴールしたい!
今から頑張って走れば17時までにゴールできるかも。
そう思い、16時頃最後のエイドを出発。
走り切りたい、全力出し切る!
そう、念仏のように心の中で唱えて、とにかく進む。
最後の1kmは猛ダッシュ。
その甲斐あって16時間55分でゴールしました。
ゴールを100mileを1位でゴールした大瀬が撮ってくれた。
ボロボロな私。
いや、ほんと、のろいし、
走ってないし、
途中「あれ?ハイキング?ずっと私歩いてるよ」と思うことは何度もあったけど、
今この状況で100km走れてよかった。
長い時間、自分自身に向き合えて、
余計なことなんて一切考えずに、
約17時間走れる(歩ける)ってなんて贅沢な時間だろう。
コースはあんまり好きじゃないけど(笑)
楽しかったなー。
そう、素直に思えた「おんたけウルトラトレイル」だった。
今回はまぐれの完走で、こんな練習量でレースに出るなんて、どうかしてる。
でも、靭帯が切れてから、全然動けない日々を経て、ようやく走れたことは素直にうれしい。
今年も夏山へ行こう。
いろんな山で遊ぼう。
でも、その前に、日ごろの練習ちゃんとやろう。
練習はやっぱり裏切らないから。