4月1日から私が運営にかかわっている「スリーピークス八ヶ岳トレイル」のエントリーが開始されました。
スリーピークス八ヶ岳トレイルは、ちょうど10年前に、私が思い立って始めた大会です。
当時29歳。
同系列の会社で働いていた、小山田隆二(道がまっすぐの店長さん)という人にトレイルランニングを教えてもらい、知り、興味を持ちました。
その後、武田の杜トレイルレースで分岐誘導のボランティアをし、私の目の前を走るランナーが、苦しさを見せずに「ありがとうございます」とお礼をしながら通り過ぎる姿に感動したのを昨日のことのように覚えています。
その礼儀正しさと、健康的な姿に感動した私が、これこそ求めてきた田舎が田舎で輝き、この地で生きる子供たちに、本当の意味での「田舎の魅力を伝えること」を伝えられ、それを伝えられなければ、子供がこの地に衣食住を構えたいと思わないはずと思い、考え生み出した大会が「スリーピークス八ヶ岳トレイル」です。
詳しいことは過去ブログをご覧ください。
右も左もわからない、トレラン初心者の、ただの主婦が、「きっと出来る」という根拠のない自信だけで、山梨県内の若手起業家が集まる飲み会でプレゼン資料を持ち込み、話をし「変な子いるなーでも面白そうだなー」と思ってくれた、山梨県内のすばらしい企業の方々が、1つづつ教えてくれて、大会開催まで形にしてくれたました。
そう、今も昔も変わらず、私は思い立ったことを言うだけで、すべては周りに支えられているのです。
スリーピークスのスポンサーのページを見て下されば一目瞭然。
山梨県内の本当にすごい企業の方々だけでなく、トレイルランニングシーンをけん引するアウトドアメーカーの方々がご協賛下さる大会へと成長しました。
スリーピークス八ヶ岳トレイルHPはこちら:https://trail38.com/
エントリー数も毎年右肩上がり。
抽選方式でしたが抽選倍率は上がる一方。(だいたい4倍から5倍ぐらいありました)
多くのメディアにも取り上げていただきました。
でも、第4回大会が終わったぐらいから違和感を感じていました。
第3回大会まで、参加者の多くは私の友人、知人が多く、私がトレイルランニング大会をなぜ開催したいと思ったのか?どんなことをしたいと思って開催したのか?を感じてくれてる方が多かったのですが、第4回大会以降は「はじめまして」の方が多くなり、それはそれで勿論嬉しいことだったのですが、身の丈に合ってない「評判」でエントリーしてくれる方の存在に「このままでいいのかな?」と思うようになりました。
スリーピークスは第1回こそ順調に開催しましたが、その後は毎年いろんな逆境に立ち向かってきた大会です。
それはトレイルランニングというものに対する逆境だったり、環境問題であったり様々ですが、楽に運営できた年はこれまで1回もありません。
準備段階で困難を極めるのに、それに反して順調に増えるエントリー数は、大会を支える運営費(お金の部分)としては大変ありがたかったのは事実です。
おかげで赤字は免れました。それにあちこちから借りていた、コース整備活動に必要な備品や、救護に必要な備品を大会独自で揃えることが出来ました。
それでも毎年悩んだのが、大会主催者が抱える「リスク」についてです。
環境面での「リスク」
安全面での「リスク」
この2つをクリアしなければ、健全な大会にはなりません。
しかしながら、大会の実態を越えた「評判」「評価」により「人気大会」の称号を図らずも得てしまった「スリーピークス八ヶ岳トレイル」にとって、リスクを受け入れ対処するためにどうしたらいいのか?と私なりに悩んでいました。
そういった中で大会準備をしていた際に、海外レースに出場する友人たちが1つのアイデアをくれました。
彼らは「スリーピークスのお手伝いをしたい」というというのが大前提でしたが、コース整備を手伝ってくれた後にある書類にサインを欲しいと言ってきました。
その書類は、海外のトレイルランニングレースにエントリーするためには必要な書類で、海外のトレイルランニングレースは、事前に他のトレイルランニングレースのボランティアワークに従事しないとエントリーすることが出来ず、ボランティアしたことを大会主催者からサインをもらうようにと作られた書類でした。
この書類を始めて見せてくれた人は今はベンチュラに住んでいるジローさん。
次はトモさん。その次はJR田中さんだったかな?
とにかく、こういったものがあるのを知り驚いたと共に、こういった文化が日本にもあればいいのにと思いました。
スリーピークス八ヶ岳トレイルに限らず、日本中の大会はボランティアスタッフの協力によって成り立っています。
それは、山を走るという条件は、マラソン大会のように何万人という人を走らせることはできないし、それなのに事前の整備活動やコースの維持管理、様々な物品の運搬などで費用が掛かる為、健全に大会運営をしている大会なら、どこも運営は「火の車」状態。常に忙しく、人手が足りず、そこを助けてくれるのが「ボランティアスタッフ」の存在です。
ボランティアスタッフがいなければ大会は成り立たないとの思いから、スリーピークス八ヶ岳トレイルでは「ゲストスタッフ」とお呼びしていますが、そう呼ばせていただいてるだけで、それ以上のスペシャリティは何もなく、すべては「ボランティア」で行っていただいています。
ただ、事務局長という役割の私は、年々出場する方々の要望の高さに悩まされていたことも事実です。
「エイドに十分な食料が欲しい」
「コースを迷わず走りたい」
「1㎞ごとに距離表記をしてほしい」
「受付時間を延ばしてほしい」
「エイドの位置を緯度経度で示してほしい」
「エントリーしたけど、走れる自信がなくなったのでキャンセル(返金)してほしい」
「何を準備して走ればいいかわからないのでもっと詳しく教えてほしい」
などなど・・・
また、そういった質問の多くは、24時間以内の回答を求めている方が多く、専任(常駐)スタッフがいないスリーピークスは、返事に3~5日程度かかるのですが「返事が遅い」とお怒りの連絡が次々届きます。
(実際返事が遅いのは事実なので、それは本当に申し訳ありません)
スリーピークス八ヶ岳トレイルでは3か所エイドを設置しており、そのうちの1つ「天の河原」は近くの天女山駐車場から人力で山道を徒歩20分担ぎ上げなければいけません。
そんなエイドに対し、用意できる食料、飲料は限られます。
テントにテーブル、救護グッズ、毛布などなど、安全のために必要なものを削るわけには行きません。
それでも走る人が、参加する選手が困らないようにと、必要数より多くの物を運びます。
その苦労たるや相当なものです。
荷上げしたら、荷下げもするんです。当然ですが。
「軽装で走りたい」為に用意する内容は、想像しているより大きな苦労がかかります。
大会当日のみならず、大会準備の過程で様々な課題はあり、特に自然環境を維持・保護しつつ大会運営を続けることへの課題は年々厳しくなっていきました。
『トレイルランナーは自然破壊をしたいわけではなく、自然と共存し、自然の恵みを喜べるランナーである』
これは私の持論で、それを信じ行政をはじめとする多くの方に伝えてきました。
そして、スリーピークス八ヶ岳トレイルは幸いのことながら、これまで、参加する多くの方が運営側の私たちの気持ちを共有し、実行してくれ、大会後本当にゴミ1つ落ちていない登山道を実現させてくれました。
でも、この先もスリーピークスに参加してくれる方々が、同じ思いで参加してくれるとは限りません。
走る人間が、お金を払い申し込めば当たり前のように走れるのではなく、自然があってこそ成り立つ競技であり、楽しむことが出来るのが「トレイルランニング」なのであれば、それを維持する活動をランナー自身が行わなければ「トレイルランナー」とは呼べないのでは?
そんな思いで、2019年のエントリーから「トレイルワーク」を参加条件に加えることにしました。
山のごみ拾い、枝拾い、清掃活動に参加したり、他大会のボランティアスタッフをしていると、様々な気付きがあります。
大会運営の難しさであったり。
レース中の救護体制を知ることだったり
驚くようなゴミが山に落ちていることだったり。
レイルランニングがあまり好かれていないことだったり。
逆に、好かれていることだったり。
大会に出場している選手という立場だったら気が付けない事が、スタッフやボランティアという立場になり、時を過ごすことによって見えてくる部分は多く、そのどれもが重要だと、私は私自身の経験として感じています。
海外で当たり前のように行われている「トレイルワーク(整備活動)」。
それを日本で初めて導入できるとしたら、どこにもしがらみがない「スリーピークス八ヶ岳トレイル」ぐらいだろうと思い、実行委員会で提案し、第7回大会で見事採用されました。
するとどうでしょう。
なんてことでしょう。(劇的ビフォーアフター風)
あの、あふれるように(実際溢れていた)ロングコースのOne Pack Lineのエントリー数が、ゆっくりのんびりなエントリー状況になりした。代わりに、トレイルランニング初心者の方や、トレイルランニングを気持ちよく走りたいと思っていた方向けに作ったAttack Lineがあっという間に定員に達しました。
Attack Lineは、第5回大会まで定員が埋まらず二次募集をしていたコースです。
やっと身の丈に合った。
やっと見せたい世界が伝わった。
運営費を考えると、正直非常に困った事態なのですが、One Pack Lineが1日でエントリー数に達しなかったことを嘆くことは無くむしろ、ほっとしたのです。
人気レースと呼ばれ、褒められ、大会や私自身が実力以上の評価をいただくことへの違和感からようやく抜け出し、安堵感を得たのです。
トレイルランニングは選手の為だけでなく
選手を支える家族や仲間の為に
選手が走る地域の為に
それでもやっぱり選手が楽しめるために
その三角形が出来る限り正三角形になるようにと思い、生まれたのが「スリーピークス八ヶ岳トレイル」です。
そして、この三角形は今後も崩したくないし、崩しません。
選手が楽しい(それを支える家族や仲間が楽しい)
迎え入れる開催地域が楽しい
トレイルランニングをすることにより豊かな自然環境を維持し、保ち続けることが出来るように。
まだ、理想の大会には程遠いですが、それでも夢の大会実現に向け、毎年多くの方が協力してくださっています。
あまり派手なことも、立派なこともできませんが「スリーピークスは最高だった」と、1人でも多くの方に思ってもらえれば、それが1番幸せです。
相変わらずすごい長い文章で、とりとめのない話なんです。スミマセン。
こんなに長く書いたけど、かいつまんで言うと(笑)
今年のエントリーがクリック合戦にならなくて、正直、ほっとしたっていう話なんです。
出たいと思ってくれた方が、その大会の意図を感じ、お互いの気持ちに寄り添ってエントリーし、受け付けるっていう姿が、自然なのではないかと思いました。
まだまだ足りない部分が多く。本当に多くの方々に支えられています。事前のコース整備や大会当日のゲストスタッフさんにボランティアとしてお願いする業務が多いです。
今年も大会開催が近づいていますが、まだまだ準備が追い付いていない部分が多く、今ドタバタの真っ最中です。
あの崩れた八ヶ岳横断歩道は、現在工事中。
なんとか大会に間に合いそうです。
大会当日、笑顔で皆さんに会えるように、あともうひと踏ん張りします。
参加される皆様、お手伝いいただく皆様。
どうか「最高に楽しかった」と思える大会になりますよう、精一杯頑張りますが、どうかご協力いただきますよう、お願いいたします。