暑すぎた夏が終わり秋らしい季節の到来と共にこの壮大なレースがやってくる。
信越五岳トレイルランニングレース。
昨年のコース短縮から1年、この日を待ちわびた人はたくさんいるかと思います。
ボクもその中の1人。100mileを重ねていく目標の中で絶対に外せないレース。それ以上に純粋に走り切りたいレースでもあります。
今回もサポートは松井さん。ペーサーはノーサーで臨みます。
9月15日、19時30分。石川弘樹さんの選手を後押しする激励と共にレースはスタートしました。
先ずは24k先の1Aバンフを目指します。序盤だからいろんな知り合いの方や声をかけてくれる方がたくさんいてお互いに頑張ろという気持ちをぶつけ合いました。
走り出しの気候は丁度良く、んー、走るとちょっと暑いくらい。なので水分も思いの外多く摂る状況に。
斑尾山を越え下りへ。斑尾山の下りはなかなか滑ります。途中弘樹さんがいてくれて目の前で滑ると言う、、、
1Aバンフ手前、全身ノースフェイスの方が。鏑木さんです。病み上がりで辛そうでしたがやっぱりオーラがある。エイドまで話しながら行きました。
1Aバンフ到着。リューさんこっち!!松井さんです。
急いでジェルボトルとドリンクボトルの入れ替えをする。
そして渡されたジェルに違和感を感じる。
量が少ない。
ジェル少なくない??
すると松井さんが、計算してるから大丈夫!
次のサポートエイドまでは1つエイドを挟むから30kちょいある。ボクの感覚だと明らかに少ない。
30kあるよ、これで大丈夫?
大丈夫!大丈夫!足りるから大丈夫!私を信じて!
わかった!行くわ!
次は56k地点の3Aアパリゾートで会おう!
とりあえず2Aの赤池を目指す。
バンフの後は走りやすいルートだけど少しずつぬかるみも出てきた。
滑りやすいから集中して走っていると右手のアームスリーブを下ろしてる辺りから激痛が。
痛っっっーー!!!
なになに!?!?えーー!?
右手を見ると、、なんと蜂がとまってる。
ベスパダイレクト。
そんなことを言ってる場合じゃない。
痛かったけどそのまま走り続けた。するとその先に蜂に刺されたと思われる人達がポイズンリムーバーで毒抜きをしてた。
ボクもこのままじゃマズイかなと思い途中でザックを降ろし毒抜きをした。
結構しつこくやったので大丈夫だろうとポイズンリムーバーを収納、ザックを背負った。
ヨイショ。。
……
イテーーー!!!!!!!!
背中の左側にまたまた激痛が。
また蜂だ!!
ザックについてたのか、シャツについてたのかわからないけどとにかく痛い!
ベスパダイレクトーー!!&生ベスパーー!!今度のベスパダイレクトは生ベスパも登場でちょっと怒り気味に、そしてザックを投げた。
マジかー、、、イテーー、、
それでも進まなければならない。気を取り直して走り出す。
2A赤池到着。
水分をボトルに足し赤池を後にする。
長めの林道を走り続けてる時に気づき始める。
ジェルが足りない。
確かに予定よりも時間がかかってはいる。がしかし、がしかし、やっぱり少ない。
とにかくここを打開することを考える。
答えはひとつしかない。
少しずつ摂る。
スコッチを楽しむようにボクはジェルを少しずつ摂り始めた。前後の人達はもしかしたらボクにスコッチとあだ名をつけられてるかもしれない。
少し町っぽいところからもうひと山越えてアパだ。もう少し。
ボクはスコッチ、いや、ジェルを摂り続ける。
なんとかなりそうだ。けど予定時間よりもだいぶオーバーしてる。また松井さんを待たせ申し訳ない気持ちに。
3Aアパリゾート到着。
菅野くんをはじめとする厚木大学の皆さんもいた。
そしてここでもう100mileレースの名物にもなりつつある松井さんのシャトランが始まる。その昔アメリカ横断ウルトラクイズのばら撒きクイズのようにハズレが出ては封筒を取りに走るクイズの解答者のようだ。
厚木大学が全精力を上げ松井さんのサポートを始めたのもこのエイドからプラスα、100mileに参加している山梨の最上級マンションに住む赤嶋さんことアカシさんのペーサーの出来る男岡本くんがガッチリサポートしてくれてる。
トランプさんを超える取巻きの多さ。
皆さんと握手を交わし出発。もう少しで朝が来る。まだまだ先は長い。
A4 妙高青少年自然の家に向かって走り出す。
ここの区間はロードや林道が多く町に下りてきた感が強い。特徴は川沿いに続く長い林道。
ボクは100mileを走る時に決めてることがある。速いランナーなら当たり前なことかもしれないけど「歩き倒さない」というところ。信越五岳は走れるコースと言われてます。だけどもちろん全部走れるわけではない。自分を押す為でも歩きと走りを繰り返す。信越ではこれを諦めず出来たかなと思います。遅いけど笑
A4妙高青少年自然の家に到着。
松井さんのサポートのサポートは更に厳重になっていた。防弾チョッキでも着てるような雰囲気。
厚木大学の皆さんが何があってもいいように中腰、そして踵を上げその場で細かいステップを踏みながらスタンバイしている。
ここのエイドでちゃんぷさんが寝てた。1人で寝てんじゃねーぞ!byAKT風に心で叫びながらエイドを後にするがその前にサングラスを忘れ松井さんが走る。このまま行くと彼女100mileぐらいの距離に到達してしまう。
次の赤倉で会おう!握手を交わし出発する。
この区間は昨年50mile付近で誘導をしていた大ちゃんがいた区間。
「お前を待ってたぞーー!!!!」
またあの魂の応援を聞きたかった。
誰もいない50mileを過ぎた。
赤倉エイドの手間の激登りからの激下り、通称モンスターボックスに差し掛かる。池谷直樹なら軽々越えて行くだろうこのモンスターボックス、モンスターボックスと勝手に呼んでるけど流行らしたいと思いながら登る。登りきり下る。開ける予定の景色は真っ白だったけど来たなーーという気持ちになった。
赤倉エイド到着。
89k地点。厚木大学のサクちゃんのペーサーをする菅野くんがもうゼッケンを付けスタンバイしている。ペーサー合流地点は次の黒姫エイドだ。
早い。準備が早い。でも気持ちの表れということなのかもしれない。いや単にボクにツッコまれたいだけなのかもしれない。いずれにせよここまでたくさんの元気を貰ってる。ありがとう。
よし!黒姫へ!クロシメへ!シメオネへ!元アルゼンチン代表!
赤倉を後にした。
昨年コース短縮のゴールにもなった黒姫。越えたい。黒姫を越えたい。そんな気持ちで突き進む。
体が動き始めたと感じたのもここらへんからだった。
黒姫到着。
ペーサーポイントでもあるのでここは人が多かった。たくさんの人と話をした。そして厚木大学の皆さんともここで最後。ふざけながらもエールを交わす。
めんどくさいセカマスさんにも捕まってしまった。暇そうだった。
松井さんとももう一度気合いを入れ直す。
MUJIN100でもどの100mileレースでもいっしょ。100mileはここから。そしてここからがおもしろい。
苦しいのは当たり前、痛いのも当たり前。言葉に出してもいいと思う。けど楽しいともおもしろいとも思えなければダメ。自分の置かれてる状況をいかに楽しめるか。どれだけチャレンジできるか。
岡本くんがこの先のコースの状況を教えてくれる。高低図を見ると5kほど登り続けた後に1箇所崖のような落ち込みがあった。
ここなんだろう?
次の笹ヶ峰を目指した。
スキー場を抜け林道が始まる。どうやら5k登りはひたすら林道のようだ。
ここがひとつのポイントになったかもしれない。歩きと走りをひたすら続けた。歩き倒さない。少しでも走る。
林道のあと送電線巡視路を通り下りのトレイルへ。このトレイルを下りながら途中で気づく、ここがあの落ち込みか、、なぜなら急な角度、更に木の根や段差でとにかくテクニカル。落ちるように下る。でも楽しかった。
下り切ると吊り橋登場。この橋は歩いて1人しか渡れないので順番待ち。4人目ぐらいだったのでちょっと息抜きなった。
落ち込みからの登り返しは水力発電の鉄管の巡視路。つづら折りのなかなかの登り。なるほど。
そして笹ヶ峰到着。牧場のような場所。
ここは110kのペーサーポイント。ここで113k。疲労も徐々にのしかかるがまだまだゴールは先。
次のサポートポイントは30k先の最終エイド戸隠スキー場。なので補給類を念入りにチェックする。100k越えてからエイドの補給は少し固形を入れ始めた。底力が欲しかった。
よし!行くぞ!
戸隠スキー場で会おう!松井さんとガッチリ握手をした。
進む。高原風な場所からトレイルに入る。ここのトレイルは短い。開けた景色は見覚えのある場所だった。
乙見湖。元笹ヶ峰エイドの場所。今はダム工事でこの場所は使えないらしい。ボクは過去2回ペーサーをしている。ELKの中込真太郎と女子トップランナーながらかなりのスットコドッコイ上宮逸子。この場所に来てあらためてその時のことを思い出し懐かしく思えた。
また一段と楽しくなってきた。
走りやすいトレイルを過ぎ林道を走る。
突き当たりに西登山道入口WSが見えた。
ここで笹ヶ峰手前の吊り橋が40分待ちという会話が聞こえた。
マジか、、、みんなは大丈夫なのか、、
ヘッドライトをここで装着。ヘッドライト迷子だったボクは今回マイルストーンのトレイルマスターというライトを使用。夜のお供うなぎパイ以上に夜の心強いアイテムとなりました。
西登山道入口から登りが始まる。
しばらく登っていると後方から「イエーーーイ!!☆%○〒さーーーん!!」
凄いノリのいい感じで名前を呼ぶ人がいる。更に言うとその人だと確信した呼び方。
声の先っぽは明らかにボクの背中に刺さってる。ただ呼び名は聞き取れないがボクの名前ではないことはわかった。
振り向く。
そこにはお揃いのド派手なウェアを着た見知らぬ2人がいた。
辺りは薄暗くなってはきてたが明らかにボクは知らない2人だった。てことはその2人もボクのことを知らないということになる。
2人は後退りしてるようにも見えた。
トレイルが下りの林道に変わる。ひたすら下る。ちょっとガスっぽい。
突き当たりが大橋林道エイド。131k地点。
お粥と梅干しを食べ水分をボトルに足し先を進む。
林道からまたシングルに入り戸隠奥社を通過し更に進む。草原だったりキャンプ場の脇だったりおもしろいルートだなと思いながら走る。有刺鉄線沿いに走るルートは大仁田厚ならどうなんだろう?大仁田厚ならば。行くのか?
大仁田厚コースを過ぎしばらくするとロードへ出た。
「左ヘーー」誘導員さんが誘導する。左へ曲がりロードを下る。
進むと遠くに誘導灯の灯りが見える。
右に流してる。右に入れということだね。
「右に入ってくださーい。トレイルに入りますー。」
思った通りの流れ。
トレイル入口付近、正面から車が来たのがわかったが気にせずトレイルに入る。
ありがとうございますーと一言。
少し進むと。後ろから「キミオさーーん!キミオさーーん!!頑張ってー!!キミオさーーん!!」
力強いエールが飛んで来た。ボクの前には選手はいない。
キミオさんが後ろから来たのねーーーな感じで振り向くと誰もいない。
そしてさっき来た車から2人ぐらいで叫んでる。
「キミオさーーん!!キミオさーーん!!」
オレだな、オレをキミオさんと間違ってるな。
熱烈な叫びはボクがキミオさんじゃなければいけないくらいの勢いがある。
見かねた誘導員の女性が車に近づき話し始めた。「あの人はキミオさんではないです。キミオさんはその先のエイドを出てます。」
えーー!?あなたもキミオさん推し?推しというがキミオさんを知ってるのですか?
ここまで来るとボクがキミオさんでないことが恥ずかしくなってきた。
もしや西登山道の2人もキミオさんと呼んだのかも。
そして最終エイドの戸隠スキー場143k地点に到着。
松井さんとお互いに労う。
来たねー、来ましたねー。
いつも100mileレースにはお世話になるニューハレ芥田さんが足を触り言ってくれた。「まったく問題ない!」
最後ザックのセッティングをしてエイドを出る。
松井さん、そして岡本くんと握手を交わし再び暗闇に突入する。
区間に入るや足元のぬかるみがハンパなかった。ハンパないけどこれもトレイルレース、楽しみながらかわして行く。
残り十数キロ。いつもシビれる。終わりたい気持ち、終わりたくない気持ち。進んで来た時間や出来事を思い出す。距離がいってるのにはじめの方がキツかったり、本当に100mileは不思議だ。
樹林帯を登り一度開ける。
誘導員の方が大声で叫ぶ。
「ナイスラーーーン!!!あと少しーー!!」
誘導灯を左へ回し方向を促す。
ありがとうございますー
通り過ぎる瞬間、暗闇ながら目があった。
「もうちょっとです!!がんばっ、、、あーっ!キミオさんじゃないっすか!!!」
まさかの本日3回目のキミオさん登場。
かなりの至近距離でキミオさんと間違えられた、、というかキミオさんはボクよりも先に進んでると言ってた。てことは本物のキミオさんには気づかなかったってことか。
キミオさんよりボクの方がキミオさんぽいのか?
もしかしたらボクが元々キミオさん生まれのリュージ育ち?
キミオさんが頭の中をグルグル回る。
ここから100mileの旅がキミオさん探しの旅に変わりました。
瑪瑙山を越えゲレンデ風な坂を下る。
もうひと山越えて最後7kの林道となる。
その最後の山で超絶フラフラしてる、両サイドの木にぶつかってるのではないか、メトロノームにしか見えない。
ハードロッカーのソーケンだった。
毎回思うけど睡魔に襲われ過ぎてるソーケンはちょっとかわいい。何かボクに伝えようとしてるが全然聞き取れない。
はいよ!最後まで行こう!
一般的なまとめ方をして先へ進む。
登りを登り切り、最後の長い下りを下る。
キミオさんらしき人はいない。
林道へ出た。最後のWS。おいしいコンソメスープを戴いた。
後はひたすら走るだけ。
過去2回のペーサーでシンタローも逸子もこの林道引っ張ったなー、キツかっただろうなー、そんな思い出がある。そして信越五岳はこの林道がすべて。最後キッチリ走れるか。
キミオさん探しもまだまだ続いてる。どちらが本当のキミオさんか白黒つけなくてはならない。
走りと歩きを続けながら徐々に走りオンリーになる。
そして最後の2kは体感はキロキミオで行ったと思います。
ゴール手前、KTFのツヨポンと会い一緒にゴールへ向かう。
ゴール。
松井さん、岡本くん、ポルシェ、シオミくん、シマツさん、足を負傷してしまったミツモリくんがいてくれた。
やはり信越五岳はタフで壮大なレースだった。石川弘樹さんの魂みたいなものを感じた。レースは準備は大変だけど後片付けはもっと大変。
こんな素晴らしい舞台を用意してくれた弘樹さんをはじめ関係者の皆様には本当に感謝です。すべての矢印、すべての注意喚起しっかりと見ました。
本当にありがとうございました。
そしてキミオさんは後に新潟のリキオさんと判明。なんならボクも会ったことがある方でした。
18本目の100mileはすぐ目の前。積み重ねてくのと一緒に楽しさも膨らんで来た。
またまだ先は長い。