2000年8月27日、灼熱の西武球場で開催されたPRIDE.10。
ぼくは百瀬さんのご厚意で大会後のパーティーに入れていただいた。
その大会にはヘンゾ、ハイアン、ケンシャム、ボブチャンチン、アイブル、グッドリッジ、ヴィトー(なんと第一試合!)などが出場していて、そのうちどの選手がパーティーに来ていたのかは覚えていないのだが、第二試合でガイ・メッツァーをKOで下したヴァンダレイが、壁際の椅子に座ってペレと一緒に食事していたのを覚えている。
ヴァンダレイが桜庭選手に勝って知名度を一気にあげるのは翌年の2001年3月。PRIDE.10ではまだ三回目の来日で、ブラジルから来た少しコワモテのファイターに声をかける格闘技ファンはいなかった。ぼくは当時からマイナー選手好きの格闘技オタクだったので、勇気を出して「一緒に写真を撮って」とお願いすると、ヴァンダレイもペレも食事中にもかかわらず笑顔で応じてくれた。その笑顔がすごく印象的だったのだ。
前述のように、翌年桜庭選手を倒したヴァンダレイは知名度を上げ、本来なら日本のヒーローを倒した憎き敵として認識されてもおかしくない立場なのに、ど迫力の真っ向勝負というファイティングスタイルと明るく気さくなキャラクターで、外国人ながらPRIDEのエースと呼べる存在になった。
2013年3月3日、さいたまスーパーアリーナ。UFC JAPAN。
そのヴァンダレイが日本に帰ってきた。PRIDE崩壊後はUFCに参戦。決して特筆すべき戦歴というわけではないが、レジェンドとしてだけではなく、ファンに支持されるファイトスタイルはPRIDE時代そのままに現役として闘い続けている。
日本大会での対戦相手はブランアン・スタン。UFC好き以外にはあまり知られていないと思うが、日本の横田基地で生まれた元海軍兵。いまやUFCを席巻するベンヘンやジョゼと同じ元WEC勢のライトヘビー級チャンピオンで、レーベンやサンチアゴをKOで破っている実力者だ。
正直なところぼくは、ヴァンダレイは日本大会の顔見せ的な存在で、UFC最前線で闘うスタンに勝つのは難しいだろうと思っていた。
しかし、そんなあたまでっかちマニアの考えなど吹き飛ばすような素晴らしい試合!
全力で相手を倒す。細かい技術論やポイント勝負などが介在する余地のない漢と漢の勝負! 殴り、そして殴り返す、まさに格闘技の原点!!
どちらも倒し倒され、最後はヴァンダレイがパウンドアウトで勝利した。試合後のインタビューでヴァンダレイは日本を気遣うコメントをして、(進化しているとはいえ)ファイトスタイルも性格も変わっていないことを日本の格闘技ファンに見せてくれた。
そして、敗北したブランアン・スタンにも会場から大きな拍手が贈られた。今日会場に足を運んだ格闘技ファンは、ヴァンダレイとの真っ向勝負を選択したスタンの勇気と男気を忘れないだろう。
長く格闘技ファンでいるけど、いつの時代でも新しい発見や感動を与えてくれる。だから見続けることを止められないのだ。日本でファイトしてくれたすべてのUFCファイターと、今年も日本大会を開催してくれたUFCに感謝しつつ、来年も是非開催して欲しいと願う。