年内最後のUFCが終わったので、今年を振り返ります。
MMAはMMAでもMixed Martial Arts。
MMAベストマッチ
1. UFC158(2013.3.16)ウェルター級3R
○ジョニー・ヘンドリックス vs ●カーロス・コンディット
UFC167で行われたウェルター級タイトルマッチで判定負けを喫したものの、完璧王者GSP相手に強さを見せつけたジョニヘン。不可解、最悪の判定という声も多く聞かれ、GSPの休養に伴いジョニヘンが最もUFCウェルター級タイトルに近い選手であることは間違いない。そのタイトル戦への挑戦権をかけた試合が、さかのぼること6ヶ月前のカーロス・コンディット戦だった。
試合はジョニヘンがレスリング力でコンディットからテイクダウンを取り続け、3-0の判定勝ち。もともとコンディットは下から仕掛けるせいか、テイクダウンをとられやすく、すぐに立とうとしない。結果的に我慢の展開が続き、3Rには打撃で攻勢に出るも時すでに遅し。
しかし、3Rに見せたジョニヘンの表情は、相手を1RKOしてきた時には見せなかった弱気なものだった。コンディットの恐さはレスリング競技でトップを獲ったアスリートには得体の知れないものだったのかもしれない。
上記のようにジョニヘンはGSP戦で強さを見せたものの、闘いを見せることはなくタイトルに手が届かなかった。ぼくが思うに、それは判定が問題なのではなく、おそらくジョニヘンの意識に問題があったのではないだろうか。前進し続ける相手を倒す気概がなければ、タイトルが手元から逃げることもある。最後まで相手を倒す気持ちはコンディットが見せていたはずだ。
2. UFC Fight Night33(2013.12.6)ヘビー級5R
○マーク・ハント vs ●アントニオ・“ペイザォン”・シウバ
UFCヘビー級もいまやヴェラスケスやドス・サントスに代表されるスピード&テクニックの時代。その中でハントとペイザォンはモンスターの雰囲気を残したファイターである。
その二人のモンスターが5R闘った試合は、死力を尽くしたまさに死闘。両者流血というど迫力ファイトの末、UFCには珍しいドロー判定だった。
個人的には殴り合うことがよい試合とは思わない。いまや世界最高峰のMMAであるUFCで、ケンカのような殴り合いを観たくはない。ハントとペイザォンの試合は相手に勝つために丁寧に闘い、出す手を尽くした結果として、最終的な選択が相手を倒すために拳を振るい続けることだったのだ。
後日、ペイザォンは薬物検査で失格になったが、それでもこの試合の感動は薄れることはない。
3. VTJ2(2013.6.22)フェザー級5R
○堀口恭司 vs ●石渡伸太郎
修斗とパンクラスの王者対決。それだけではなく、堀口選手と石渡選手の試合だからこそ期待感が持てるカード。世界を目標とすることを公言する二人の王者の試合は、まさに気持ちと技術がスウィングする素晴らしい試合だった。
試合の流れをつかんでいたのは石渡選手だったように思う。丁寧にテイクダウンを奪い、しかし、堀口選手は背中をつけない。お互いに強みである打撃とテイクダウン、攻守交代が激しく、緊張感の途切れない展開。その削り合いの流れの中で、最終的には堀口選手の打撃が試合を決めた。
ユニファイドルールのVTJで石渡選手が見せた闘いは、世界標準スタイルだった。苦戦しながらも最後には自分のフィールドである打撃で勝利を奪ってみせた堀口選手は、さすがの勝負強さだった。勝者も敗者も強みがあり、足りない点もあった。それが見えた試合だからこそ、今後の二選手の世界での活躍が楽しみになった。
MMA ベストファイター
ケイン・ヴェラスケス
ジュニオール・ドス・サントスはヴェラスケスとの二度目の闘いに破れタイトルを失った。それはドス・サントスにとって初めてのMMAでの敗北であり、三度目の対決には期するものがあったに違いない。
元K1ファイターのハントをスタンドでKOするドス・サントスは穴のない強さを持っているように見えた。少なくともヴェラスケスとの試合前には。しかし、ヴェラスケスはそのドス・サントスに何もさせないまま5Rに渡り攻め続け、KOした。
フィジカル、テクニック、パワー、スピードを兼ね備えたヘビー級王者。なによりもレスリングで培われた突進力はヴェラスケスの最大の武器である。最強のチャレンジャー、ドス・サントスに圧勝したヴェラスケスを誰が止めるのであろうか。
クリス・ウェイドマン
無敵王者アンデウソン・シウバに二度勝利したウェイドマン。最初のタイトルマッチでの勝利は「アンドウソンの油断」「アンデウソンが自分に負けた」などと言われたが、その前に仕掛けたテイクダウンとヒールホールドがアンデウソンから余裕を奪った必然の勝利だった。それを証明してみせた二度目の対決。重い打撃と鋭いタックル。なんといっても攻める気持ちの強さ。
今回も「アンデウソンの自爆」と考えている人がいたら、この二度の闘いを見直してほしい。ウェイドマンはもともとレスリングオールアメリカンであり、柔術家であり、それでもアンデウソンとスタンドで渡り合えるのだ。いまだMMA無敗の若き王者である。