今年も見応えがあったUTMB!
トレイルランニングの盛り上がりと比例するようにトップランナーの層は厚くなり、毎年新しいヒーローが生まれるUTMB。昨年は100マイルレース初参戦のグザビエ・テベナールが大会記録を更新して優勝した。
そのディフェンディングチャンピオンのグザビエは今年はTDSに参加し、CCC、UTMB、TDSで連続優勝という快挙を達成。
しかし、UTMBには今年のUTMFの覇者フランソワ・デンヌ、2011年UTMB2位入賞(キリアン編隊の一人)で昨年のTor des Geantsを制したイケル・カレラ、昨年上位でフィニッシュしたアメリカンランナーのマイク・フート、ウエスタンステイツのレコード保持者ティモシー・オルソン、若手のジョー・ダコタ、日本からは2013年のUTMF優勝者の原さん、そして我らがトニーことアントン・クルピチカと役者は充分。まさに100マイルトレイルランレースの世界選手権!
レースは小雨が降る中、日本時間12時30分にスタート。デンヌがハイペースでトップ集団を引っ張る。トニーは30番手くらい。昨年もスタートは15番手くらいだったが、さすがに出遅れた感がある。トップから10分差。気温が低く、調子が悪いのか。
夜中の3時くらいまで見て一眠り。ちなみにLive TrailとWEB TVとTwitterとFacebookでレースの状況を追う。トレイルランレースは「観戦できないレース」と言われるけど、UTMBは日本からでも充分に状況を追えるところが素晴らしい。
そして翌朝起きてみたら、トップグループはクールマイユール(Courmayeur/77k)を過ぎていた。そして、なんとトニーが5位に浮上しているではないか!
タイムを見てみるとトップとは7分差。トニーがタイムアップしたというよりは、デンヌのハイペースについていけないランナー達が脱落したいったようだ。つまり、トニーはトップグループと同じペースで進んでいるのだ!アレー!アレー!
その後、トップグループはデンヌ、イケル、トフォルのsalomon3人組をトニーが追う展開。ぼくが注目していたフートやオルソン、ダコタら実力派アメリカンランナーは徐々に後退しリタイア。順調に進んでいたように見えた原さんもアルヌーバ(Arnuva/95k)でリタイアと、実力を持ちながら結果につなげられない難しさがUTMBに棲む魔物なのか。
その魔物がついにトニーに襲いかかる!
クールマイユール以降、補給が取れなくなったトニーは徐々に失速。ついにトリエント(Trient/140k)で足が止まる。トリエントは昨年トニーがリタイアした鬼門でもある。
さらに追加情報が入る。トニーはトリエントでオフィシャルの抜き打ち装備チェックに合い、なんと予備ライトがなく15分のペナルティ!現地情報(※)によると、やる気がなくなったとの噂も!(映像を見たが、「なんだよ〜」感アリアリだったw)
(※)ニューハレ芥田さんとATC芦川さんが現地からたまにレポートしてくれていた。
そうこうしているうちに、デンヌがスパートをかけて二番手以降を一気に引き離す。昨年のグザビエの記録をさらに20分以上短縮して20時間11分44秒でブッチきりの優勝!
昨年のレ・ユニオン、今年のUTMF、UTMBと世界メジャー100マイルレースを連続して制する快挙!まさに新100マイルの帝王。「キリアンが出たらどうなるんだろう」「グザビエとのガチレースを見てみたい」などなど、来年以降への妄想が膨らむ。
そして2位と3位はイケルとトフォル。手をつないでのゴールだった。ここまではチームsalomon。トフォルは昨年のCCC覇者で、今年はUTMB入賞と高い実力を見せた。イケルは終盤はところどころでトフォルを待っていたとの話も。速く、絆も強い。
その頃、トニーがついに復活し、Trientを出発!トップを追うトニーもいいけど、レースをあきらめないトニーもかっこいいよ!
復活後も決して速いペースではなかった。でもしっかりと走る。26時間30分、47位でシャモニーのフィニッシュラインを超えた。多くの観客がトニーを拍手で迎えていた。
女子は今年もローリー・ボジオが優勝。近所を走るようなピンクのUネックシャツとサックスブルーのランスカスタイル。速くてオシャレでかわいくてフォトジェニック。シャモニーのみならず、ぼくがチェックしていたトレイルラン専門サイトでも人気抜群である。
トニーにしてもローリーにしても、スタイルの発想が自由。ぼくがアメリカンランナーに惹かれるのはそんなところにも理由があるのかも。
こうして多くのドラマがあったUTMBのトップランナー達。しかし、トップランナーがフィニッシュする頃、まだまだ多くの市民ランナー達はゴールを目指しているのである。
(続く)