さて、エイドってどうやって運営するの?
ぼくはなんだかんだと初回からUTMFに関わってきた。2012年はSTY、2013年はUTMF、2014はSTYに出場(結果は聞かないでください)。
2015年に再度STYにエントリーしたものの落選。とはいえ、現地に行きたいなーというのと、いつもレースで精神的に支えてくれているエイドスタッフさんたちの立場になってみたいと思い、仕事で繋がりのあったUMTF事務局に「手伝わせてください」とお願いしてみたところ、精進湖エイド運営サポートや、二十曲峠、富士小エイドのお手伝いをさせていただき、貴重な体験となった。
翌年の2016年、光栄なことに二十曲峠のエイド運営のご依頼をいただく。悩んだものの、とあることからやらせていただくことにした(理由は後述)。ただ、その年は荒天のためレースは途中で中断となり、ぼくらのエイドが稼働することはなかった。
一年空けて、2018年が実質のエイド初稼働。多くのラン友と過ごしたUTMFウィークの二十曲峠エイドでの時間は、石川弘樹さんが手伝いに来ていただいたこともあり、忘れられない思い出となった。
2019年のUTMFは、2018年末にかかってきた事務局からの一本の電話から始まった。「次回も二十曲峠をMMAで担当していただけますか?」。今回は即答で「YES」。
そこからメンバー集めが始まるのだが、その前に大切な話。
ぼくはエイド運営には
・レースの中でエイドを機能させる
・エイド内の運営をスムースに行う
という2つの側面があると思っている。特にUTMFは大きな大会で参加人数も多いので、どちらかが欠けても、エイドがうまく回らなくなってしまう。
それをひとりでやるのは大変である。というか、ぼくには無理。ではなぜ引き受けたかというと、近くに参謀がいたから。
2016年にエイド運営の声をかけていただいた時に、まっさきに連絡したのが古くからのラン友の純さんだった。過去に百名を超えるスタッフが参加する大きな大会の運営に携わっていて経験値が高い。
つまり、先に書いたエイドに必要な2つの側面を、ぼくと純さんの二人で両輪を回す。ニコイチ作戦。
また、エイドスタッフとして手をあげてくれたラン友たちも、他の大会でスタッフ経験が豊富にある。自分ひとりではできないけど、(ありふれた言葉ですが)力を合わせることでエイドが成り立つ。共通するのはトレイルランニング愛。
写真はUTMF2019 @二十曲峠にて。選手として参加していたTrippersの朝長さんと、TEAM Trippersとりまとめのくまちゃん。
今年は参加選手が倍以上に増え、小さい二十曲峠エイドの混雑度が高まることが予想されるので、エイドスタッフも増やし、きちんと対応できるように準備したい。
そこで、立川のTrippersさんのお力も借りてスタッフを募集。TEAM Trippersのメンバーが大挙参加してくれて、最終的には必要十分な人数が集まった。
これが2月くらいまでの話。スタッフがほぼ決まった時点で、ぼくと純さん、朝長さんとくまちゃんで顔合わせ兼打ち合わせを行い、詳細を詰めていく。
主にエイドスタッフとはSNSのグループを通じて情報共有。初めて参加する方もいるので、事前にお伝えできることはお伝えして、当日に備えて疑問点や不安をなるべく解消しておく。
3月には本部と打ち合わせ。昨年の経験を踏まえて、改善点について話しあう。二十曲峠でいえば、レイアウトを変更した。エイドにテントを2張増設し、さらに救護室も2張追加。選手の動線を考慮して、仮設トイレの場所も変更した。
さらに事務局スタッフさんの「外国人選手も多く、仮設トイレを洋式にしたい」との一言で、なんと今年の仮設トイレはすべて洋式に!(多分会場全部)
現場重視なのか、本部は柔軟にぼくらの意見を受け入れてくれる。みんな「よい大会にしたい」という気持ちは共通なのだ。
そして当日。レースはすでにスタートしていて、集合は27日午前0時30分。ぼくはスイーパー任務終了後、日帰り温泉に入り食事をしてから、二十曲峠に向かう。山の中だから真っ暗で怖いw
事前にテントなどは業者さんが設営済み。ぼくらスタッフは選手を迎え入れられるように、事前に決めたレイアウトに沿って机などをセッティング。補給食やドリンクなどは選手の動線をイメージして、現地でパパっと配置を決めていく。このあたりはスタッフたちの経験値が活きる。
そして、まだ暗い4時前にトップ選手が到着。本格的にぼくらの任務がスタートする。
二十曲峠エイドが位置するのは140k地点。レース後半のエイドなので、稼働時間も長い。予定していたのは翌28日の明け方まで。
今年は悪天候で(クリンナッパーさん除き)早めに終わったが、それだけの長時間の拘束時間を承知しつつ、「レースのために」「選手を応援したい」という気持ちで二十曲峠に集ってくれたスタッフのみんなには、本当に感謝。みんなの機敏な対応とポジティブな気持ちのおかげで、大変な天候だったにも関わらず、大きなトラブルもなく無事に終えることができました。
ぼくが考えるエイド運営に必要な心構えは、まずは「選手のため」。シンプルだけど、笑顔で迎え、声をかける。もし自分がランナーでエイドにへとへとになってたどり着いて、なんだか雰囲気が暗かったら元気も出ないけど、エイドスタッフのテンションが高ければ前進する気持ちも高まる。ぼくらはトレイルランナーだから、自分たちがやってほしいことをやればいいのだ。そのように「選手のため」と考えていると、ぼくらも選手たちから元気と勇気をいただける。
そして、ロングトレイルレースと一緒で、トラブルは必ず起こると思っておくこと。そうすれば、いざ何かが起こった際に、余裕を持って対応できる。トラブルすら楽しむメンタルを持っていたい。
トレイルランナーとして、レースに出るのは楽しい。でも、スタッフとしての参加は、また違った喜びをぼくたちに与えてくれる。自分が走るよりも多面的で、奥深い喜び。
もし、スタッフに興味があるという方がいらっしゃったら、ぜひ、一度でいいので経験してみてください。もしかしたら、もっともっとトレイルランが好きになるかも。
(終わり)