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わたしはいわゆる“テールエンダー”(最後尾)。
ロングレースになるとだいたいボリュームゾーンかそれより後ろで、関門に追われながら走る。
100mileへの挑戦は、UTMBに外れ、UTMFに外れ、未だ経験のないまま、『100mileにこだわるわけではないけれど、やっぱり見てみたい世界』という想いだったのに、神様は“まだまだ練習足りんわ!”とその機会をくれなかった。
わかりました、とかわりに100km超のレースに出たり、100km近い縦走登山を繰り返してきた。やっと120kmくらいまでの距離が「未知の世界」でなくなり始めて、ますますチャレンジしたいと思うようになった。
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ハセツネ同日、午前中に武蔵五日市へ行った後、夜からT.D.T100mileの応援に行ってきた。
T.D.Tとは、トレイルランニングチームDMJの井原さん(TOMOさん)を中心とした仲間のロング走トレーニング。レースではない。みんなでおおよそ同じペースで100mileを走るというもの。羽田あたりから、多摩川を上流に向かってひた走り、高水山を登って折り返してまた羽田まで走る。ほとんどロードの100mile。
===TOMOさんのBlogより===
T.D.Tって何ですか?えっと、、、愛です!
-Tomokazu Ihara
~T.D.Tイズム~
いい人であれ!人に敬意を払え!何事にも責任感を持て!クールな人であれ!
~T.D.Tをやる3つの理由~
#1 大好きな仲間と一緒に楽しい時間を共有すること。100マイルを一緒に走る。
#2 なんか少しでも良いことをしたい。クリーンアップ活動をする。
#3 自分達より苦しんでいる仲間達を助けてあげたい。ドネーションをする。
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http://tomokazuihara.blogspot.jp/2015/11/28-1-tdt-2016ss-entry.html
T.D.Tは、そのメッセージ性や表現、考え方、雰囲気が素敵だなぁと感じていて、ずっと興味があって。親しい仲間が関わっているし、今年の信越のペーサーがT.D.Tで初100mileに挑戦するというので、間近で応援して恩返ししたい&T.D.Tの雰囲気を体感してみたいと思ったのが発端。
実はもともと、今年のUTMFのエイドをひとりでチャリで回ろうと計画していたけれど、真っ暗で狭い峠を自転車で走るのは危険だと言われ、その部分をうまく迂回する方法が見つからず、さらには信越で故障したことで計画は中止、車に乗せてもらって応援に行くという出来事があった。(あいかわらず馬鹿なことしか思いつかないわたし)
さて、T.D.Tの応援に行きたいけれど、中途半端な時間に行ってもその後の足がない。そして、レースじゃないから人数も少なく、一か所だけに応援で立っていても、皆は通り過ぎていくだけで一瞬でしかない。それに応援が少ない夜にサプライズで登場した方がおもしろい。
そうか、だったらチャリで行って、並走すればいいじゃないか!
ただそれだけの発想で、武蔵五日市から一時帰宅後、お風呂に入ってご飯を食べて準備をして、おもむろに家を出た。出たはいいが、よく見たら30kmくらいだろうと思っていた家から目的地までの距離が45kmもあったのは途中で気付いた。ちなみにクロスバイクなのでたいしたスピードも出ない。
何人かに一緒にチャリでTDTを回らないかと提案してみたけど、さすがに無理だと言われ、あれ?100マイルを走るみんなに並走って面白いと思うんだけどな?なんて思いながら、まぁとりあえず家を出てみよう、夜なら走りやすくて気持ち良さそうなんていう調子で走り出した。
夜の国道は、バスは走っていないし、車も少なく、唯一ロードバイクでかっ飛ばすサラリーマンと競争するくらいで、かなり気持ち良い。風を切って走る爽快感に酔いながらただひたすらに新青梅街道を走る。
でも、調子にのりすぎて25kmを超えたあたりからはいつもと違う筋肉を使ったことで脚が重くなり、ポタリングと化して羽村に着いたのは0時半頃。そこでサポート組が青梅にいると知って、結局青梅まで漕いで45km。やっと合流。
だけどすでにほとんどのメンバーは通過済。あれっ、思っていた以上に速い。今度は引き返して福生まで、福生から多摩川に入るとヘッデンの灯りが見えた。発見!
真夜中なのに、参加者は皆スピードに乗っていて、自転車でゆるゆる走って同じ速度。100kmも走ってきたとは思えないほど。途中で明るいトンネルで一時停滞して仮エイドもやってみた。案の定驚かれ(そりゃ夜中のトンネルに突然人がいたら驚くか)、でもたいしたものを持ってこれなかったから役立ったのかはよくわからない。
ザックに忍ばせてきたレッドブルやお味噌汁。
その後は走る参加者の前後を走ったり話し掛けたりして並走。T.D.Tは、100mileを24時間以内に走ることを目指していて、参加している人の多くがベテランランナーや俊足ランナー。瞼の裏を見ていても(眠くても)、足が熟成していても(足が痛くても)、すこし休んで、そして走り出すと、そのペースは速い。
ベースとなる走力がてんで違う。抜きつ抜かれつで皆でゆるくまとまりながら走っているけれど、各々のメンタルの強さで遅れてもいつの間にか追い付いてくる。こちらは自転車で走っているというのに、ちょっと休んでいるとものの数分で追いつかれる。
夜が明けていく中、ただただ真っ直ぐ海に向かう多摩川の河川敷を走り続ける。表情には決してネガティブさはなく、勇敢で、力強く、それでいてどこか楽しそう。昨日の朝から走り続けているというのに、楽しそうだから不思議。
カッコいい立ち姿。勇者、いや、猛者か。
みんな一体どんな雰囲気で走ってるんだろうと思って来たものの、ひとことで表すと「ただ黙々と走り続ける」。まっすぐ続く多摩川の単調な河川敷を、ただただ足を止めることなく走り続ける。高水山を除けば、山のようにアップダウンがあるわけでもなく、景色が大きく変わるわけでもなく、特段変化があるわけではないその道をただただ走り続ける、それが凄い。なんてこった~、こりゃキツイ。メンタル、メンタル、メンタル。
夜が明けていく
ほとんどが舗装路
砂利道も楽じゃない
明るくなると周りには散歩やジョギングする人が増えてくる。すれ違う人は一見すれば、みんなのことを普通のご近所ランナーだと思うかもしれないけれど、もうすでに100km以上走っているなんてきっと誰も想像すらできないはず。太陽の光と共に、なんとなく全体的にペースが上がり始めるからすごい。集中力が増していくのが伝わってくる人もいた。
それからおもしろかったのは、おそらく早朝に自宅を出て応援に来た仲間が、RPGのように次々に彼らの通る道に現れたこと。その手にはいろんな復活のアイテムが握られている。参加者も楽しかったに違いない。
エディさんが現れた
マサシさんが現れた
石井さんが現れた
ドミンゴさんが現れた
キドゥンが現れた
トモヤくんが現れた
ゴリさんが現れた
ももこさんとやいちゃんが現れた
そのほかにも私の初対面の人がたくさん突如として河川敷に現れて、飲み物や食べものをふるまって、ランナー達をねぎらう。もちろんあくまでボランティアなのだけど、レースのようなその愛されっぷりは「T.D.T」に賛同する人達の人徳そのものだ。
明るくなってもまだまだ道は続き、わたしのおしりも次第に熟成しはじめた。前夜22:30に自宅を出発して以来もう100kmを越えていて、無計画に飛び出した私はサイクリングタイツなど履いてなかったのがちょっと失敗だった。でも、すでに150kmちかく走り続けているランナーに比べれば、なんてことはない。
わたしが前後をうろちょろしていて迷惑でないだろうかと思いつつ、最後まで見届けたい思いでなんだかんだ結局並走を続けた。
長い旅もあと数キロ。ランブラーさん、いい顔!
もう150km走っていると思えない笑顔
多摩川沿いのサイクリングロード、たまリバーもここまで
最後は、次々と戻ってくる仲間をすでに100mile走り終えたTOMOさんが大きく手を広げて迎え、ひとりひとり抱きしめる。黙々と走り続けていたみんなが、ここでやっと涙を浮かべたり、全身で喜ぶ姿になんだかホッとした。
だめだ、もらい泣きしそう
100mileという途方に暮れるような距離。
たいてい何かが起きるという。速い人、ゆっくりな人、前半型、後半型、体調不良の人、故障を抱える人、途中で止めるという英断をする人。160km、24時間という長い距離と時間の中でそれぞれに身体や気持ちのアップダウンやトラブルがある。ベテランの人もいれば、初めての100mileの人もいる。
約半分を、通して並走してみて見えてきたのは、速い遅いがあるはずなのに、思った以上にその時々に一緒に走っている人が入れ替わっていて、ごく自然に互いに引っ張り合い、得意不得意も補いあって、支えあっていたこと。なんだかうまく表現できないけれど、それがすごく印象的だった。
あくまでFun Runの集いなのだけど、目標を同じくするみんなで挑戦するが故の「連帯感」と「支え合い」。仲間に共通するマインドみたいなものが、ひとりでは乗り越えられない壁、無謀だと諦めがちな壁を越えようという強い気持ちを生んでいるのかもしれない。みんな望んでこのチャレンジをして、それを共感し合っているからこその、「愛」だ。それから、そんな風にみんなを夢中にするTOMOさんの魅力もやっぱり素敵だった。
そして、100マイラーの走る背中からは、普段の努力や強い気持ちが滲み出ていて、自分の甘さに恥ずかしくなった。
すっかり刺激を受けたわたしは、羽田から自宅までの30kmを再びチャリに乗って都内を大横断。途中でこれでは150kmで終わることに気づき、せっかくならと10km遠回りをして、“100mile RIDE”にして帰宅した。
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はじめて100km越えをしたとき、100mileなんて到底むりだと思った。だけど、わたしもやっぱり挑戦したい。鈍足なわたしだけど、無謀かもしれないけれど、こんなにもみんなを魅了する100mileとやらを仲間と一緒に越えてみたい。
神様はわたしに、よしそれならやってみろ、と言ってくれた。
2016年4月、初の100mileにチャレンジできることになった。
これは最高のチャンスだと思う。さて、いっぱい練習しよう。みんなと一緒に楽しみたいから。
T.D.T 2016SS
(今回の完走者による推薦→抽選する方式で、春のT.D.Tを走る27人のうちの1人となった)
http://tomokazuihara.blogspot.jp/2015/11/28-3-tdt-2016ss-entrants-waiting-list.html
photo by. Yuki Kurokawa
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[…] TDT(参考)の時に出会った新潟在住の大樹さんのチーム。 […]