人生初の100マイルレース
ウルトラ・トレイル・マウント・フジ(UTMF)を完走してきました。
この100マイルというとてつもなく長い距離を完走するために、去年のハセツネ後から約半年間、どんな準備をしていいのか想像がつかない部分がありながらも自分なりに考え付くことを行いながら準備を進め、自分の心と身体を強化してきました。
特にメンタル面での強化は日々の生活の中で行ってきました。それは「ちょっと辛い、ちょっと面倒くさいほうを選ぶ」ということ。たとえば信号と歩道橋がある交差点があれば「ちょっと辛い」歩道橋を選ぶ。これは体力アップにつなげるというよりも私の中ではメンタル強化です。こうやって日常の中にある「ちょっと辛い・ちょっと楽」の選択肢の中で「ちょっと辛い」ほうを選んでいくことによって自然とメンタルが養われていきます。ただこれは「ちょっと」がミソで、「だいぶ辛い」とかそういうのばっかり選んでいくと、心も体も疲れてしまうし、続かないです。「ちょっと」がとても大事になります。
そんなかんじで普段のトレーニングとちょっとしたメンタル強化も意識しながら、このUTMFへ向けて思いつくことをやってきました。
スタート前は本当に緊張していて、会う人に「顔が引きつってる」と言われたり、ストックを忘れるという非常事態に動揺したりしましたが、スタート直前には気持ちが吹っ切れたのか自然と落ち着いてきていました。
そして本当に最後尾からゆっくりスタート。これから起こることすべてを受け止める覚悟を決め、またこの河口湖に戻ってくることを誓って走り出しました。
レース中は本当に様々な感情が自分を襲い、それは走り続けることの「苦しみ」や、真っ暗な山の中での「孤独感」だったり、先が果てしないと思う「絶望感」や「もう止めたい」と思う気持ちだったり、たいていは弱い心でした。
それでもそういった負の感情にひとつずつ打ち勝っていくことが、ゴールへ近づくための一歩につながっていく。
辛くなったら「何言ってんの辛いのは当たり前、これは100マイルなんだよ!?」と自分に向かってしゃべったりしました。
今回160㎞、10のエイド、すべてで私を迎えてくれたサポートにはいつも元気をもらいました。
途中から内臓疲労により食べ物を受け付けなくなっても、なんとか私が食べやすいものを用意してくれて、弱気になっても励ましてもらいました。
そしてこのUTMFを支えるスタッフの方々からの熱い応援には、何度も気持ちを立て直してもらいました。
真っ暗で、寒くて、誰もいない山の中でも、スタッフ一人がコース誘導を行っていると、そっちのほうが私なんかよりはるかに大変だと思って、頑張らなきゃと勇気をもらいました。
また、天子山地をおりてきた午前0時過ぎ、民家の前で一人手を叩きながら応援してくれていたおばあちゃん。こんなに夜遅くて寒いのに、ぽつぽつくる選手一人一人を応援していました。その姿に自然と涙が出て思わず抱きついてしまうと、「山を下りてきたんだね~、偉かったね~」と優しく声をかけてくれました。
そして、この大会のシンボルである富士山。
幸い天候に恵まれ、26日午後3時のスタートから1度も雲に隠れることなくその存在感を見せてくれていた美しい山。
夕焼けに染まる山肌や、稜線から満月が顔を出す瞬間、満点の星空、真っ暗闇の中から白くくっきりとたたずむ姿、朝日にキラキラ照らされていたり、真っ青な空をバックにしていたり。
その素晴らしい様相を見るたびに、このレースを走れていることを誇りに思っていました。
こうしたサポートやスタッフの熱意、地元の方々の温かい声援、そしてマウント・フジ。その全てに後押しされながら一歩一歩進んだ160㎞。
最後右足のアキレス腱を負傷してしまい、思うように走れなくなってしまいましたが、気持ちは前を向いていて、28日午前0時18分、富士山のまわり一周を終えてまた河口湖に帰ってくることができました。
タイム33時間13分 女子総合13位
辛くて辛くてどうしようもなかったけど、終わってみるとまた来年のことを考えてしまう。
そしてワクワクしてしまう。
本当に今までにないぐらい素晴らしい経験ができました。
私が完走できたのも、支えてくれた人、応援してくれた人、このレースを成功に導いた全スタッフ、ボランティアの方々、一緒に励ましあった選手、沿道の応援、そして心配しながらも見守ってくれていた家族のおかげです。
本当に言葉では言い尽くせないほどの感謝の気持ちでいっぱいです。
本当に本当にありがとうございました。
2 comments
UTMF実行委員のものです。13位、まずはおめでとうございます。文を見ていてびっくり。天子山塊を降りて来たところの小さな佐折の集落。拍手してくれたおばあちゃんは、伊藤さんかもしれません。「今年は夜だから、誰も集落のみんなは応援できないな〜」とおばあちゃん軍団喋っていたのに、いたんですね!!! 我慢できなかったんだろうな〜。応援していたと聞いて、涙でそうになっちゃったので、思わずメールしました。また是非走ってくださいね。
三好さんこんにちは!三好さんからコメントを頂けるなんて光栄です。実は去年のUTMBのサポートでCHMONIXにいたとき、ノースのショップで三好さんをお見かけして声をかけようかすっごく迷い、結局やめてしまいました(笑)UTMFは本当にお疲れ様でした。三好さんたち実行委員の方々の努力と熱意があったからこそのレースだと思います。ボランティアの方々の対応も本当に気持ちよかったです。今でもUTMFのことを思い出すと胸が熱くなります。天子をおりたときのおばあちゃんの姿を思い浮かべると涙がでます。本当に素晴らしい経験ができました!ありがとうございました!また来年もぜひ挑戦してみたいと思っています。これからもがんばってください!