前回のつづき。
それにしても今日ほどコケた日は記憶にない。
今までのトレイルランニング歴の、5年分まとめてコケたんじゃないだろか。後半に脚が終わった状態で、しかも普段どおりに膝が曲がらないので、とっさの踏ん張りが効かない。少しでもつまずいたり、ステップを間違えたりすると、簡単にひっくりかえる。滑る、コケるなんて生やさしい感じではなく、完全に天を仰ぐ。すでに肉が露出してしまっている手のひらがさらにえぐれる。その新しい血でまた気合が入る。集中!
渓谷の雄大さ、景観は超がつくほど素晴らしい。でも、今日ばかりは絶景に目をやるのは危険すぎる。十メートル先を見るのだっておぼつかない。視線は足元、意識集中。せっかくの自分好みの火山トレイルなのに泣けてくる。
優勝や表彰台を争っている展開であれば、もしかしたら苦しみも多少は耐えやすいのかもしれない。でも中途半端な順位、さして速くもないタイムのなかで「少しでも先へ」と耐え続けるのはなかなにキツい。
最後のくだりは、膝の状態を差し引いてもとんでもなく難易度の高いダウンヒルだった。
走れる林道区間も増える。もし元気だったら「なんて意地が悪い」と感じそうなレイアウト。でも、ジョグなら続けられるから、今の自分にはまだマシかもしれない。
もはやフラットな林道でも、ちょっとした石に躓いただけで派手に転がってしまう。一瞬も気が抜けないな。そうこうしているうちにラスト10km。5km。3km。
するとまずいことにだんだんと目の焦点が合わなくなってくる。あわててジェルを流し込む。水分を補給する。でも、チカチカが止まらない。度の強すぎるメガネをかけているような感じ。レース前、ラン仲間には「いまある100パーセントを出し尽くす」「ゴールでぶっ倒れるのが理想」などとうそぶいてみたけれど、こりゃあ本当にゴールまでたどり着けないかもしれない。
背筋を冷たいものが走った。
つづく。
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