今回は山の歩き方について考えてみます。
山の歩き方で需要なのは、
1.何よりも安全第一で怪我をしない
2.直線的に歩かない
3.一歩で大きな高低差を稼がない
4.歩くペースを一定に保たない
5.比較的平坦なところは思い切り早歩きを続ける
の5つと、それに加え100㎞ぐらいより長い場合は
6.極力筋肉に負担をかけない
の合計6つです。
それではひとつひとつ考えてみます。
まず1の「安全第一」ですが、これはいかなる時でも最優先で、怪我をしたらレースを完走できないだけでなく周りの人にも大きな迷惑をかけてしまいます。
私はトレランの時に簡単だけれども滑ったら怪我をする可能性の高いルートと、技術的に難しかったり体力が必要だが落ちても怪我の可能性が少ないルートの二つがあるときは後者を選んでいます。距離が長くなればなるほど軽い怪我でもDNFの可能性が高まります。
2の「直線的に歩かない」ですが、山道は人間の歩きに都合のよいようにはできていないので前だけでなく左右、場合によっては後ろを探すと安定した足場が見つかることがあります。安定した足場とは重力に対して垂直に体重を乗せることのできる平らな足場 であり、また滑りにくく、もし滑ったとしてもリカバリーのききやすい足場を言います。安定した足場を拾って歩き続ければUTMBのような超長距離のレースの場合の疲労度は各段に少なくなります。
3「一歩で大きな高低差を稼がない」も2と似ています。一歩で大きな高度を稼ごうとすると、バランスを崩して滑ったり、筋肉に余計な負担をかけてしまいます。前だけでなく左右や時には後ろを含めてよく足場を見ればどんなに段差がある登りでも、細かいけれどもしっかり立つことのできる足場があるものです。超長距離のトレイルでは足に負担をかけないよう細心の注意を払うべきだと思います。
4ですが日本山岳耐久レース、いわゆるハセツネ(私は生前の長谷川さんと多少面識があったのでこの呼び方には抵抗がありますが、今後ブログでは便宜上使用します)でほかの参加者をみていますと、かなり多くのランナーが息をハーハーゼーゼーさせて登っていき、平坦な場所や下りで息を整えるような、スピードが一定な歩き方です。心肺の負担で考えてみるとインターバルトレーニングをしている感じです。10㎞走るにもインターバルで走るよりイーブンペースで走ったほうが所要時間が短いのは誰でもが理解していることです。ゴールタイムを早くしたいならなるべくイーブンペースが好ましいでしょう。
ただ山の場合イーブンペースですと登りで心肺に大きな負担がかかります。ですから山では脈拍のイーブンペースを保つのが良いと思います。すなわち登りはゆっくりで平地と下りはかなりの早歩きで、例えば脈拍を130前後で一定させるといった歩き方です。個人的には脈拍が130未満ですと短い休憩を入れることで長時間の歩きが可能で、150を超えると休んでも回復できない感じがします。
5の「比較的平坦なところでは思い切り早歩きを続ける」ですが、一般的な日本人トレイルランナーは平地での歩きが欧米人に比べてかなり遅いと思います。登りで時速1㎞アップするのはかなり大変ですが、平地であればたとえば時速5㎞から6㎞に上げるのはほんの少しの頑張りで可能なはずです。平地ならば負担をあまり高めずにスピードを上げることができるのですから、歩きではほぼ限界に近いぐらいの速度で進むのが効率的です。
6の「極力筋肉に負担をかけない」ですが、筋肉は長時間の過度の負担には耐えられません。負担をかけ続ければパフォーマンスが大きく落ちます。ですから、筋力で歩くのではなく体全体のバランスを使って歩くのがいいと思います。
具体的にはランニングのように足で地面をけらない(足は歩く時のように平らな足場に上から下に重力に垂直に置く)、歩幅を狭くして太ももの筋肉に負担をかけない、一歩あたりで稼ぐ高さを10-15㎝ぐらいにするといったところだと思います。一気に30㎝も稼ごうとするとバランスを崩し、バランスをとるために自然と足の筋肉に負担をかけます。よく急斜面で両手の手のひら膝に置いて登る人がいますが。これは筋肉の動きを止めて負担をかけないことで同じ原理です。ただ長距離の場合はずっと膝に手を置いているわけにもいかないため、歩き方でカバーすることが必要です。
また私は登りの時は上半身のバランスを少しだけ意識して崩し、その崩れたバランスを利用して足の力を使わずに前に進むようにしています。これだけではどのようにバランスを崩すかは理解いただけないと思いますが、体を右に動かしたいときは上半身の力を利用して右側にバランスを崩すことを意識して歩いていればある時突然理解できるようになると思います。UTMBのような超長距離の場合は、足への負担を軽くするため足以外も利用して前に進むことも大切です。
ここまで書いてきて 2,3,4は実際に歩き方を見ていただかないと理解できないだろうなと思います。近いうちにそのような機会を作りたいと思っていますので、またその時にはこのブログでも告知しようと思います。
次回は装備の使い方について考えてみます。