今回は装備について考えてみます。
よくトレイルランナーの方は装備について話題にしているようですが、普段トレランをしている人なら、UTMBのために新たにそろえる必要な装備は特にないと思っています。靴と雨具と防寒具だけしっかりしていればあとはなんでも大丈夫です。
私のトレランの時の装備は以下のような感じです。
・帽子(モンベル、首の後ろが隠れるもの)
・目出し帽(モンベル、薄手)
・半そでTシャツ(速乾性のもの。トレランの大会で参加賞としてもらったもの)
・長袖の下着(モンベル、登山用の薄手の下着)
・セーター(薄手のセーター)
・雨具上下(モンベル)
・ランニング用半ズボン(Nike)
・ランニング用長ズボン (メーカー不明)
・バックパック(マラソン大会でもらったナップサック)
・靴下(ユニクロ3足990円のもの。替え1足)
・トレランシューズ(モントレイル、コンチネンタルデバイド)
・ヘッドライト(ブラックダイアモンド)
・ストック(ランブラーさん制作のもの)
・イマ-ジェンシーブランケット(メーカー不明)
・手袋(モンベル、フリースの薄手)
この中で慎重に選ばないといけないのは靴だけです。使い方が重要なのは雨具、セーター(防寒具)、ライト、そして靴下です。
靴は自分の足にフィットするかどうかが一番の問題です。これだけは周りの人の評判がいいからといって自分に合うかどうかはわかりません。最近は試し履きなどもできる機会もあるようなので、妥協せずに納得がいくまで選んだほうがいいと思います。
また私のように時間いっぱいかけて完走するタイプのランナーの場合は、少し硬めで重めの靴がいいような気がします。私はどんなに使いにくくてもまた買った後に何か問題に気づこうと、装備はすべて壊れるまで使うタイプなのですが、靴に関してはだめだと思ったら人にあげてしまいます。幸い靴の場合は私に合わなくても他の人にはジャストフィットという場合も多いので全くの無駄になってしまうことはありません。
雨具とセーターの使い方ですが、雨具は防寒のためにも使います。風がなく寒いだけならセーターを、風が強いときにはそれほど寒く無くても雨具を着用します。風があってなおかつ寒い時にはセーターと雨具の両方を着用します。一番寒い時は山用の薄手の下着、昼間着ていたTシャツ、セーター、雨具を下から順に着込みます。頭は目だし帽出で保護します。
よくダウンジャケットを防寒に使う人がいますが、運動中にはマイナスの意味しかありません。ダウンは汗や周りの湿気を吸うとペタンコになって保温性はゼロです。どうしても上に書いた体類だけでは足りないと思う人は化繊の防寒具を選ぶべきです。化繊のジャケットなら汗や雨でもダウンほど保温性は落ちません。実際に街中で実験してみればわかりますが最近は化繊のジャケットでもダウン同様の保温性が高い物もたくさんあります。
靴下は手袋の予備にもなります。強風で飛ばされた時には予備の靴下を手袋の代わりに使います。手袋と靴下の予備両方をもっていくのは少し無駄な感じがしますので、私は両方の役割を果たすことのできる靴下を持っていきます。
また雨具の上ですが、ジッパーを下から20㎝ぐらい閉めておき、着るときにはセーターのように頭からかぶります。風があって寒い時に雨具のジッパーを閉めるのは結構大変です。手がかじかんでうまく閉められずイライラしているうちに2分3分はすぐ立ってしまいます。これで怖いのは急激な対応の低下です。山では雨具(防風目的の衣類)はすぐに着ることができるようにしておくのが鉄則です。
ライトですが、ぼんやり見えるぐらいのものがベストです。明るさは電池の残量で調整します。道がはっきりしないところでは、明るければ明るいほど道を間違えるリスクが高まります。なぜならばライトが照らしているところだけしか見えなくなってしまうからです。暗いライトならば全体をぼんやりとみることができます。
私と夜間に山を歩いた人なら、私がライトなしで踏み跡や時には道のない山の中を正確に目的地に向かって進んでいき、明るいライトを持った友人が道を探せずに(私はライトをつけないので居場所がわからないため)右往左往してしまうことは経験済みだと思います。
ほかの装備は本当に何でもいいと思います。あまりメーカーの宣伝に踊らされないほうがいいのではないでしょうか。
20年ほど前に、シャモニのキャンプ場で吉尾弘さんという昭和30〜40年代の日本のトップアルピニストと10日間ほど隣のテントになり、いろいろお話を聞く機会がありました。
吉尾さんは、「今の若い人はいい装備を使いたがるけど、山の装備っていい(高価な)装備かどうかでなく、どのように使うかなんですよ」と言っていたのを覚えています。
そして両手両足を見せてくれて、「ほら僕の指全部ついているでしょう。でも手袋は100円ショップで買った軍手ですよ。これで冬の一ノ倉を登ってますよ。みんな5千円も1万円もする最高級の手袋を使っているけど指が全部残っている人がどれだけいますか?みんな凍傷で指を落としているでしょう」という言葉が印象的でした。
私もその通りだと思います。いい装備を正しく使えばそれがベストでしょうけれど、UTMBの完走のためなら100円ショップやユニクロやスーパーマーケットで売っている商品でもうまく(正しく)利用すれば、十分完走の助けになってくれると思います。
次回は練習方法について考えてみます。来年には実際にみなさんにお会いする機会もあると思います。よいお年をお迎えください。