今回は先月のヒントを参考に2週間練習(自己の現状の実力の把握)をされてきた人向けの6月の練習方法についてのご紹介です。
(A)まずはハセツネコースを歩いたらフルマラソンのタイムの4倍以上かかった人の練習方法です。いろいろな練習方法があるとは思いますが、私ならこれをするといった内容です。
このような人の共通した問題点は
1.登りが早く息が上がってしまい、平地や下りでかなりだらだらした歩きになっている。
2.下りが苦手で同じ程度の走力の人と比べて時間がかかり、またバランスを崩しやすい。
3.後半それまでに蓄積された疲れの影響でペースが突然極端に遅くなる(マラソンでいう30㎞や35㎞の壁のような状況)。
こんな感じだと思います。
それぞれの対策です。
1については登りを意識してゆっくり歩き、平地や下りは少し無理をする感じがいいと思います。登り、下り、平地の心拍数が同じになるような感じを目指します(実際にはゆっくり登っても登りでは心拍数が上がりますし、下りは逆にかなり頑張っても登りと同じ心拍数にするのは無理だとは思いますが、イメージとしてはこんな感じです)。インターバルトレーニングでトータル10㎞を走るのと、イーブンペースでトータル10㎞は走るのではかかった時間(インターバルの場合はつなぎのジョグを除いた時間)がたとえば50分で同じだとすればインターバルのほうがかなりきついことは実感できると思います。登りで頑張るのはインターバル練習をしているようなもので、練習としては効果的だと思いますが本番の歩き方としては問題がありますし、どうしても疲れます。
2の対策ですが、ともかく1歩で下る高低差を少なくし、また足の滑りやねじれを極力避けます。そのためにはいくつも方法はありますが、技術的に簡単なのは前だけでなく左右をよく見て安定した足場を探してそこに足を置くことです。 どんなに急で足場の悪い所でも左右をよく見れば平らで段差の少ないところが必ずあります。山を歩くときにまずは意識して左右の足場(慣れてきたら後ろのでっぱり等の足場も)を使うようにしてみてください。
それに加えて足は斜面に水平に足裏全体で着地するのではなく、小さい足場でもいいので重力に垂直におくようにしてみてください。斜面に水平ですと足は斜め下にかかる滑る力と重力で真下に落ちる力を食い止める力の2通りの力が加わり、その結果疲れがたまりますし足首を捻って捻挫等もしやすくなります。
他に重要なのは足を垂直に落とすという歩き方がありますが、文章では説明しずらいので 宣伝になってしまいますが、一度蚊取り線香塾の練習会にご参加ください(次回は6月13日夜ー6月14日朝に開催します)。
よくプロランナーの人が下りは落ちていくという表現を使いますが、落ちていく走りは体のコントロールが効かないので危険です。山の中では常に自分の行動がコントロールされていなくてはいけません。
3については1や2の対策をすることでかなり改善されると思います。
ただ自分の経験から言っても、後半にペースが落ちるのは太腿の前の筋肉が疲れてしまい、下りで体重を支えきれずその結果歩幅が必要以上に小さくなったり、下りで極端に慎重になったり、あるいは下りで足の踏ん張りがきかなくなる(膝が笑う)パターンが多いと思います。
それに加え太腿の前の筋肉の疲労により、それまでの歩行で引き起こされる、足だけでなく体全体の極度の疲労も原因のひとつだと思っています。
これはどういうことかというと、本来足首やふくらはぎ、膝、太腿の筋肉など下りの走りや体重の衝撃を和らげるべきものを、長距離になるにつれてそれらの箇所が疲れてきて、本来の衝撃の吸収の働きをしなくなり、結果として腰から上半身までダメージが伝わり、これが全身の倦怠感や動きの劣化につながるのではないかと考えています。
ですからこの対策としては長距離の練習をするのも一つですが、太腿の前の筋肉(衝撃を吸収する筋肉)を鍛えることがトレラン用の練習としては向いていると思います。
具体的には距離が10㎞で傾斜が5%から10%ぐらいの坂道をあまり無理せずに登り、下りはほぼ全力で降りてくる練習です。この練習ですと太腿の前の筋肉に大きな負担がかかり結果的に下りに必要な筋肉が養成されます。また下りを飛ばすとフォームの改善にもつながります。
通常10㎞もの登り坂を探すのは難しいでしょうから、5㎞の坂で2セットとか2㎞の坂で5セットとかでも有益な練習になると思います。
次回はマラソンの3,5倍以内でハセツネコースを歩けた人向けと、いないとは思いますがマラソンを5時間以内で走れない人(私がそうですが完走できました)向けの練習方法を書いてみます。