私は蚊取り線香塾として登山ツアーや安全講習会をおこなったり、海外のレースに参戦のためのツアーを行っていますが、以前から多少不愉快に感じていることがあり、今日はそのことについて書くことにします。
それはごく一部の人からなのですが(多少なりとも面識がある人です。さすがに面識のない方からはありません)、無料あるいはディスカウント料金で蚊取り線香塾の行事やツアーに参加させてほしいと言われることです。
例えばUTMBツアーにツアー料金の半額で参加させてほしいとか、登山ツアーに無料で参加させてほしいといった類のことです(ちなみに要求がなくても、塾生割引、リピーター割引、シルバー割引、家族割引、飲み友達割引等の割引は毎回自発的に行っています)。
その値段でも利益が出ると考えて、一人でも参加者が多いほうがいいだろうと、私のことを考えて善意で言ってくれているようなのですが、蚊取り線香ツアーは他社にはない充実した内容の高品質ツアーをモットーにしており、また他社と同等の内容のツアーの場合は他社の価格の70パーセント以下(通常30-50パーセントのことが多いです)にしているため利益はほとんどありません(UTMBツアーだけは蚊取り線香ツアーでは例外的に利益があることが多いです)。大半のツアーが赤字です。
また自分はそこそこ山登りの実力があると考えていて、登山ツアーに入っても面倒を見てもらわなくても大丈夫だと考えている人も多いようですが、私から見るとど素人のレベルで、山の中ではその人の一挙手一投足に神経を使います。そしてもしその人に遭難事故が起こった時には、ガイドには重い刑事、民事の責任がかかってきます。
日本人は情報や形のないものはタダだと思っている人が多いようですが、ツアーを企画するにも登山講習会を開講するにも、少し大げさにいいえば私の過去50年にわたる登山経験なり海外経験なり人間関係があって初めてできるもので、当然ながらそれらの構築のためにはコストや時間がかかっています。
形のある物を販売する人に大幅に安くしてくれとか無料にしてくれという人はまずいないと思います。例えばマンションを販売する会社勤務の友人にただで高級マンションをくれとか、建設資材のコストだけで売ってくれとかは言わないと思いますし、マンションを販売するためには材料費以外にも設計料や、大工さんの人件費、宣伝広告費その他もろもろの費用がかかっていて、もし建設資材の費用が1千万円だとして、そのマンションを1千万円で売ったらものすごい赤字であろうことは少し考えればわかることです。
同様にレース参加ツアーや登山ツアーの計画や情報の入手にも費用は発生しています。
他にもツアー参加者のための優遇措置(例えば抽選なしでレースに出られるとか、エントリー料が割引になるとかいったこと)に関してツアーに入らずに優遇措置だけを要求するとか、全く知らない人から海外レースや海外の山についての情報の要求といったこともあります。
私はツアーやいくつかの海外の大会のアンバサダーをやっているので、お問い合わせを受ければ原則無料でお答えしますが、わたしがアンバサダーではない大会に関してツアーに入るつもりがないのに、自分で直接調べたり主催者に聞いたりするより楽だとか言葉の問題が無いからという理由で問い合わせを受けると、やはり「なんだかな」と思ってしまいます。
またいちばん困るのは、ツアーに参加する気持ちは全くないのに、情報を取る目的でツアーに参加するからと言ってメールで質問責めにしてくる人が時々いることです。そういう人の共通点は1日に10回も20回も質問がくるのと、ツアー参加者が知っても意味のないこと(例えば宿泊先施設のオーナーの名前とメールアドレスなどです。自分で連絡するのが目的のようです。そこのオーナーから予約依頼があったがどうしよう?との連絡が来るのでわかります)を聞いてくることです。
今後ツアーのアレンジや情報のお問い合わせのときは必要な費用も聞いていただきたいと思います。
たいていの場合は「ただでいいですよ」という回答になるとは思いますが、場合によっては高額と感じる(決してそのようなことはないのですが、自分でやらない方は時間やコストを簡単に考えすぎる傾向があると思います)、お見積もりを出すことになります。
私が優先枠をもらったり、エントリーの締め切り日を過ぎても受け入れてもらったりできるのも、長年人間関係を築いたり、そのレースの宣伝を費用をかけて行ったり、関係者を日本の大会に招いたり、あるいはその人の国の言葉が通じない海外の大会で、レース参加のお世話をしたりなどといったことをやっていることの結果であり、時間もコストもかけずに優遇措置をいただいているわけではありません。
もし時間もコストも情熱もかけずにできるのであれば、皆さんも優遇措置をとってもらえるはずで、私に依頼する必要もないはずです。
今書いてきたことは、私だけなくフリーランスで形のないサービスを提供している人が共通して感じていることのようなので(先日フリーランスの仕事をしている友人と会った時に、奇しくも私と同じようなことを言っていました)あえて書いてみました。
少し熱くなりすぎましたでしょうか。ご理解いただれば幸いです。