皆さん、こんにちは。
毎年恒例のUTMB完走のためのヒントを書きます。ブログで完走のためのヒントを書くのは今年はこれで最初で最後です。
毎年同じようなことを書いていますが、必要なことが年によって変わることはありませんので、今回もほぼ同じような内容です。
多少違うのは練習をしすぎないようにしましょうということと、体重を落としましょうということぐらいです。
では本題に入ります。
1.この時期になったら練習量を減らすことが大切です。
私は2009年からUTMBの完走のために100㎞前後の山歩きの練習会を数多くやってきており、多くのUTMB参加ランナーを見てきました。
2012年までは無料で行っていたため、結構な数のランナーが参加されました。
その人たちを見てきて気がついたのは、失敗する人の共通点として練習量が多く
(大体の目安として月間300㎞以上)、なおかつ直前までハードな練習をしたり、
トレイルレースで自己ベストを狙った走りをすることです。
この人たちは不思議なほど本番の100㎞前後から急激に失速します。
おそらく普段の疲れが100㎞あたりから出て、それが失速や体調不良につながるのだと思います。
しっかり練習してきて、スピードも持久力もある人たちが突然失速することを考えると,
それ以外の理由は考えにくいのではないかと思います。
100㎞ぐらいまでのレースでは練習量の多い人でも順調にいきますし、ある程度の練習をこなしている人の方が好記録を出していると思われます。
おそらく100kmあたりまででは,体の芯に疲れがあってもそれが悪影響として出ないのだと思っています。
レース1か月前になったらそれまでの2-3割程度の練習で十分ですし、そうすべきだと思っています。
私も以前何回も自分の体で実験しましたが、1か月ぐらい練習を休んでもほとんど走力は落ちず、
その後1週間も練習をすれば間違いなく元のレベルに回復します。
2009年の時の私の場合は、5月にはすでに練習の調整に入り(もともとほとんど練習はしていませんでしたが、
それでも調整に入りました)、野辺山の100㎞では98㎞で時間内でリタイアをしました。
理由は野辺山でUTMBのために試したかったことが98㎞までにすべてできたため、
残り2㎞を走るのは疲れをためるだけでUTMBの完走のためには悪い影響しかないと考えたからです。
まあそのままにしておくのも気持ちが悪いので、翌年は完走しました。
またほかのレースや練習でもごく短時間を除いては全力の練習はしませんでした。
具体的には30分のスロージョグのうち2分だけ全力疾走といった感じです。
よく友達に言っていることがあります。
長距離を走るのが好きだとか、レースでタイムを縮めたりするのが好きな人は
、それは好みの問題でその人が何をしようと周りがどうこう言うことではないと思います。どんどん好きなことを追及されればいいと思っています。
ただUTMBの参加する人がこの時期完走のためにやらなければいけないことは、UTMBを完走したいのであれば、長距離をの練習をすることでもなければ、トレラン大会でタイムを目指すことでもありません。
やらなければいけないのはUTMBを完走するためにすべきことをし、してはいけないことをしないことです。
UTMBの完走のためにはあと40日間は好きなハードな練習や、長距離の練習はやめるべきです。
生きていく中で何か達成したいときには好きなことを少し控えるのは必要ですし、これをご覧になっている皆さんも日常生活の中でそれを実行されていると思います。
それなのに走ることだけはやめずにUTMBを完走したいという人がどうしても減らないのは不思議なことです。
2.体重を減らしましょう。
皆さん荷物を減らしたがりますが、何かあったら大変です。
UTMBの準備の大会(第1回の大会の5年ほど前です)では悪天候のため死者が出ています
2011年以降シャモニは毎年朝晩が暖かく昼間が涼しい(1年だけ暑い年がありました)という絶好の気象条件に恵まれていますが、
通常であれば朝晩はシャモニで3-4度になりますので(最近は7-8度どまりですが、
去年もおととしもレースの翌日から2-3度に気温が低下しました。
またおととしは町中でも短時間ですが昼間に雪も降りました)、装備を削るのは非常にリスクが高い行為です。
体重を減らしても荷物を減らしても体や膝にかかる負担は同じです。
それであれば体重を減らす方が正解だと思います。
またランナーからトレイルに入った人は下りの苦手な人が多く、そのような人は一層膝への負担が大きくなりますので、
今からなら少しだけ努力すれば1㎏程度は減量できると思いますので、強くお勧めします。
あと経験上下りが極端に苦手な人は、スピードがあっても練習を積んでいても失敗する可能性が高いです。
今からですとなかなか改善は難しいですが、山登りをやっている友人がいたら、
一緒に山に行き歩き方をチェックしてもらうといいと思います。
欠点によってはすぐに直せるものもあります。
3.UTMBの特徴をしっかり理解しましょう。
失敗している人に共通しているのがUTMBがどのような性格のレースかを理解していないことです。
UTMBは山を走るレースではありません。ハセツネやキタタンでは力のある選手がコースすべてにわたり
登りはかなりスローペースでも走っていると思われますが、UTMBは170㎞近くあるため
どんなに力がある選手でも走りとおすことは不可能です。
大半のアマチュアランナーにとっては早歩きを続けるレースのはずです。
UTMBのコースを登り降りを60㎞、ほぼ平地を50㎞とすると、降りと平地の110㎞を時速 6㎞で歩けば18時間20分です。残りの登り60㎞を時速2.5㎞で進んでも24時間で合計42時間20分です。
私はいつも2㎞地点のガイヤンの岩場で応援していますが、失敗する人の全員がオーバースピード(全力)で走っています。
例えば10㎞のベストが45分の人が、荷物を背負って残り165㎞あるのに2㎞を10分以内で通過していきます。
スタートののロスが1分とすると、10㎞のベストタイムでのペースで2㎞を通過していることになります。
これでは間違いなく失敗します。
UTMBは170㎞近い比較的歩いたり走ったりしやすいコースを使った山の早歩きの大会だという認識が
正しいと思います。
ですから最初から全力で走らず(31kmの関門が少しきついので、そこまでは平地に限り
キロ7-8分のスロージョグがいいと思います)、平地と下りはひたすら早歩きをして、
登りになったらペースを大幅に落とすことが重要です。
皆さん同意していただけると思いますが、平地で気時速5キロから6キロにペースをあげるのは、
登りで時速2㎞から3㎞にあげるよりずっと楽ですし体にダメージがありません。
たいていの人は全力で登って平地になったところで、息を整えたり足の疲れを休めるためにペースを大幅に落としますが、非常にロスのあるペース配分です。
まあここまでいろいろ書いてきましたが、UTMBは参加資格がある人であれば、
怪我や病気にならなければ基本的に完走できるレースです。
ちなみに私は生まれつき左足の膝から下を自由に動かすことができず(基本的に左足は自分の体重を支えることに使うだけです)、足の長さが2㎝短く(ズボンの長さを調整してもらうときに、右より2㎝短くしてもらうとちょうどいいです)、
サイズも右が26㎝、左は22㎝です(トレランシュースは27㎝のものをはいています)。
足を思うように動かせないので、レース中に多少イライラするいことはありますが、たいして実害はありません。
これをご覧になっている皆さんはおそらく足が自由に動き、月間の走行距離も私の何倍も走られているでしょうから、そろそろ体を休めてレースのことをしっかり分析すればかなりの確率で完走できるはずです。
残すところあと1か月と少しになりましたが、皆さんが無事ゴール出来ますよう祈っています。