先日4年ぶりのトレイルレースで完走したことを書きましたが、
実はその3週間前にはスイスの24㎞のレースに参加していました。
このレースではちょっとしたミスでコースを逆走してしまいました。
会場となったZermattに偶然何人かの知り合いがいたため、みんなから「どうしたら逆走できるの?」という質問も多かったので、今日はこのレースについて書きます。
レースはMatterhorn Ultraks(http://matterhorn.ultraks.ch/en/) と言い、スイスの名峰マッターホルンのふもとの観光地である
Zermattを舞台に開催され、49㎞、32㎞、24㎞、19km、2.3㎞のカテゴリーがあります。
このレースの売りは何と言ってもマッターホルンやモンテローザをはじめとする
ヴァリスアルプスの雄大な山々を眺めながら走れることだと思います。
私はヨーロッパでUTMBやTor Des Geantsにも参加したことがありますが、
山々の雄大さは比べ物にならず、またその美しさも格段に上です。
理由の一つにはUTMBやTor des Geantsが主に3千メーター級の山々を見ながら走るのに比べ、このレースは多くの4千メーター級の山々の裾野を走り、
なおかつ山のスケールがUTMBなどと比べると格段に大きく、そして開けた地形のため、
それぞれの山々を麓から頂上まで見ることができることがあげられると思います。
今回は最初UTMBツアーの前に久しぶりにZermatt周辺でハイキングでもしようと考えていたのですが、それならばレースに参加した方が1日で長い距離を歩けると思い、以前から少しだけ気になっていたこのレースにエントリーしました。
この4年ぐらい膝の炎症がひどく痛みほとんど練習をしていないことと、出るレースすべてコースミス等で完走来ていないのでカテゴリーは何となく楽そうな24㎞にしました。
ところが実はこれが大きな間違いで、4つのカテゴリーの中でも24㎞が一番厳しいとのことで、レジスターしてから数週間後に事務局から
「参加者の実力を安全面から審査するスタッフの登攀ガイドが、あなたの経験では
参加すること自体が危険で無理なので返金するから参加を取り消すか、
ほかのカテゴリーにすることを強く勧めると言っているので検討してほしい。
どうしても25㎞に出たいのならガイドを説得するだけの登山歴を送るように」
とのメールが来ました。
ここで少し冷静に考えれば良かったのですが、深く考えることもなく
「49㎞は長いしなー。32㎞も疲れそうで嫌だなー」と思い、
Zermatt周辺での登山歴を送ることにしました。
私の山の実力は大したことはないのですが、そうはいってもマッターホルンもモンテローザも、ブライトホルンも、そしてZermatt周辺のほかの山々もたくさん登っているだけでなく、ガイド経験もあるので、そのあたりのことを書くと、ある意味当然ですがOKが出てしまいました。
その後レースの1-2週間前になってコースや関門を見たところ最初の関門(約4㎞ぐらい)の制限時間である90分がどう考えても95分かかることが判明しました。
私は初めての山でも地図さえ見れば何分かかるかを最大でも誤差2-3%で分かるという特技があるのですが、誤差を最大の3%としても、95× 0.97 =92.15分と、
最速で行っても第1関門すら通過は不可能であることがわかりました。
そのような訳で、レース当日は第一まず間違いなく関門でひっかっかるが、
もしかしたらコースが予想以上に歩きやすくて、ぎりぎり通過できる可能性も考え、
最初から全力で飛ばしました。
どのくらい全力かというと、街中を500mほど走って登りに入るところではもちろん最下位でしたが、前の選手と5mほどの差で(通常のレースではありえないほどの小さな差です)、
その後も10-20mの間の差で35分ほどは進みました。
ところが35分ぐらいたった時に、10-20m先の選手も、50-60mほど前に5-6人いた選手も突然見えなくなってしまいました。
私は関門時間ギリギリなので、皆さん早くも第一関門に向けてスパートをかけているのだなと考え、自分も頑張らないとと思い、心臓が口から飛び出すぐらい、そして目がぼやけて目の前もぼんやりとしてよく見えなくなるほど気合を入れて歩きました。
そんなに頑張っても前の選手に追いつかないというか、それらしき人たちが全くみあたらず、
少し変だなと思いながらも全力で歩き続けたのですが、スタート後100分後に
さすがにもう距離的にも時間的にも関門がないとおかしい、またどちらにしても関門でアウトだと思い、道端に座って地図を見ると、「2㎞地点ぐらいからコースを逆走していた」ことが判明しました。
ここで少し休んで、仕方がないので来た道を折り返しました。
戻る途中に間違えた分岐を見てみると、大会の地図では左に曲がることになっているのですが、実際には正しいコースは左に曲がった後すぐにまた左に曲がっており、
1度しか左折しなかった私は、コースの最後の2㎞ぐらいのところから逆走をしてしまった訳です。
集団の中にいれば間違えることもなかったのでしょうが、前の選手から10-20mほど離れていたことと、マーキングが5種目すべて同じ色でなおかつ間違えたコースを進むマーキングの方が数が多くそのうえずっと目立ち、分岐にもスタッフがいないことで、地図の通り1度曲がってその後直進してしまったのが間違えた原因です。
海外のレースでは迷いやすいところや分岐でも基本スタッフはないので、注意が必要です。
そのことは理解していたのですが、今回はスタート直後から全力で走り過ぎたため、
そのことが頭から抜けていました。
左に曲がる分岐で突然前のランナーが見えなくなった時におかしいと思い、前後左右を確認すれば間違うことはなかったはずですが、そういった余裕は全くなく、なんか少し変だと思いながらもレース後半のコースを逆走してしまいました。
また運の悪いことに正しいルートは樹林帯、私が進んだコースは見晴らしのいいハイキングコースで、前のランナーが突然いなくなったと思ったのも、樹林帯の中を進んでいたため気が付かなかった次第です。
まあどちらにしても第一関門でひかっかるはずでしたが、それでもやはり残念で、
翌日から1泊2日でこのレースの5つのカテゴリーのコースでまだ歩いたことのないコースを歩きに行きました。
Zermattでは谷の東側に人気のハイキングコースが集中しており私も何度か歩いたことがあるため、今回は西側を中心に歩いたのですが、東側に比べて格段に山々が雄大で、なおかつハイカーがほとんどいないという素晴らしいコースでした。
そしてそうはいってもところどころに山小屋もあり、決して不便ではありませんでした。
また山小屋の食事もおいしいだけでなくお替りも自由で非常に良かったです。
このような素晴らしいコースを走らせてくれる大会ですので、来年は49㎞か32㎞に参加して必ず完走しようと思っています。
またまたこれだけ素晴らしい景色を見ることができるにもかかわらず日本人の参加者が少なく(24㎞には高村貴子さんと上田瑠偉さんと私の3人のエントリーだけでした。また上田さんは故障でDNSでした)、多くの人にも走ってもらいたく、蚊取り線香ツアーも企画しようと考えています。
あと、膝の調子がだいぶ良くなったこともあり、今月はネパールで60㎞、そして来月は中国で31㎞のレースに申し込んでいます。この二つのレースではコースミスをしないでなんとしても完走したいと思っています。