「はせん(破線)、すきか?」
初めて女性を山に誘う時に使ってはならないフレーズだ(当たり前)。そう、どん引きされる、普通ならばね。ところがだ、なぜだか私の周りには、草食化した男どもを引きづりまわす破線女子なるツワモノもいる(今これを読んでる貴女?)。そんな草食化した男子に喝を入れつつ、破線女子を目指す貴女のために、このシリーズを何本か書こうと思う。過去の山行記録が中心となりますので、最新の情報は自己責任で調べてください。
破線=地図上のルート表記において、なんらかの理由で熟練者向けと編集者が判断した道。ここで紹介するルートは、旺文社の山地図、吉備人出版の登山詳細図、そして国土地理院の1/25k地形図のいづれかに記載のあるルートを原則とします。これらに記載のないトレイルは、地権者の意向や、なんらかの大人の事情が存在することもあり、ブログという公になる場では控えたいと考えます。逆に、市販の登山地図の範囲ではない里山の場合、国土地理院の地形図に記載がなくても、道標やトレイルヘッド(入り口)に表記があり、地元に登山道として認知されていると判断できる場合はその限りではありません。
破線ルートは危険なのか?(ご注意)
- 分岐を見逃しやすく、道標がない分岐、獣道と判断がつかない分岐もあり、地図で位置確定ができないと、正しい判断はできません。地形図と登山地図の併用が理想ですが、スマホのGPS機能と登山アプリを上手に活用し、バッテリー管理と防水対策を施すことで、まずはその壁を低くすることは可能です。しかしながら、スマホ紛失のリスクヘッジや安全なエスケープルートの確定には、やはり地形図、登山地図での読図力が必要です(GPSを使用する場合であっても)。講習会や、ナビゲーション競技で楽しみながら身につけることをお勧めします。
- できればそのルートの経験者と複数人数で。理由は書くまでもありません。ただ、これは志向(嗜好)の問題でもあります。私自身も以前はソロでの山行も多くその良さも理解できます。リスクを最小化するには、破線をルートを登り方向で使う登山計画を立てることで、下りのスピードによる分岐の見逃しや、滑落、転倒による怪我のリスクを小さくすることは可能です。
- 岩りょうを含むルートはここには記載しません。トレランブログを読んで行くとルートでもないですし(笑)
- 破線ルートは静けさと美しさの裏に、何らかのリスクが伴います。ここに紹介したルートであっても、自己責任でしっかりとした登山計画を立ててお楽しみいただければと思います。
まず、初回はウオーミングアップです。廃道からの復活というめずらしいケースをご紹介します。
破線化する理由は様々だ。人が入らなくなる理由の1つに、並行して林道ができて、あるポイントまで車でのアプローチが可能になった場合、長い年月とは言わず、一気に人の流れが変化する。そして、地図上の破線記載さえなくなり、廃道と呼ばれるものになる。そういう道に限って美しい。
ところがあることをきっかけにこの廃道が破線ルートとして復活しためずらしいケースがある。「あること」とは、トレイルランニングレースだ。下の地図は甲州アルプスオートルートチャレンジのコース概要の一部ですが、赤でマークした部分は、並行して走る林道の便利さから使われなくなった廃道かと思います。下の2014年版の地図には記載がありません。ですので水色のラインは実走でのGPS軌跡です。この廃道がレース実行委員長の小川壮太氏自らが整備を続けることで、素晴らしいトレイルとして蘇り世間にも認知されました。写真ではひたすら美しい尾根道ですが、踏む土の感触ですと、ほとんど人は入っておらず、整備前は倒木、損木が凄まじかったことが容易に想像できます。切り立つような危険な箇所はなく、丸く緩やかな尾根は、ハイク、トレイルランニングに最適です。甲州アルプスオートルートチャレンジのコースは、東側の小金沢山から牛奥ノ雁ヶ腹摺山付近の開けた尾根から見える雄大な富士山がハイライトでもあるのですが、この西側のひっそりとした広葉樹林帯の尾根道も美しく、レースをしていることを忘れてしまうかもしれません。
2018年最新版の山と高原地図には破線として記載されました。
大天狗というピークは、確かに下から見上げると天狗様が出そうな雰囲気があった。そしてこの地図への復帰が無ければ、古部山というありそうでない趣のある山の名前や、三角コンバ(冒頭の写真の箇所)というなんだか楽しそうな名前も、時代とともに忘れ去られるところだったはずだ。この復道(廃道の対義語として、今私が考えたが、実際にはそういう言葉はない)は社会的にも意味のあることだ。
中央本線甲斐大和駅を起点にすれば、景徳院までのバス利用、タクシーでもさほど大きな金額ではないので、ルートはいかようにもプランできるだろう。オートチャレンジのコース全部を塩山起点で日帰りで試走するには、かなりの走力が必要となりますので、景徳院、甲斐大和駅と甲州市塩山駅側を上手に使い分けてプランしてください。
「えんじょい。はせん。」