七時雨(ななしぐれ)プロジェクトでは、
今年6月に岩手県八幡平市の七時雨山を中心としたエリアで開催されたトレイルランニングレース、「カルデラ・トレイル23km」の舞台裏を紹介!大会プランニングや運営に関する出来事をキーワードに沿って不定期に紹介していきます。
今回のキーワードは「開催日」。
「第二回のトレラン開催日を早めに決めましょうー!」
今年6月に第一回の開催を無事に終え、地元の七時雨マウンテントレイルフェス実行委員会で声が上がったのは9月。喧々諤々、第ニ回大会は2014年6月15日に決定しました。
岩手県内でトレイルランニングの大会はほとんど開催されていませんでした。地元では八幡平エリアの国定公園を避けた小規模エリアを使用したコースや滝沢村の鞍掛山など、地元のローカル大会が継続して行われていたようだが、全国へ募集告知を行い全国からの参加者を募る様な大会、レースは無かった。
”ローカル”という言葉は少々ネガティブな印象を与えてしまうことがありますが、私が知る限りでは地元有志が集まり、独自の楽しみ方で開催、コースなどにも変化を加えて小規模ではあるがしっかり走りごたえのあるレースであり、こういったローカルレースこそ走り手をワクワクさせる要素を詰め込んだ、楽しめるトレイルランニングの原点だと私自身は思っています。
トレイルランニングのフィールドとしては、名峰八幡平(裏八幡平~岩手山、秋田の乳頭山~秋田駒ヶ岳へ抜ける縦走ルートなど)を中心としたエリアが有名だが、標高も比較的高く、景観や眺望は最高であり優良なコースと言えるだろう。八幡平山頂までのアクセスはよく、岩手山までの20km超の縦走、いわゆる裏八幡平コースは岩手を代表するフィールドとしてガイドブックなどにも紹介されています。
何度も周辺のエリアへ足を運んだが、まだまだ八幡平市には「トレイルランニング」というスポーツは浸透していなかった様に感じました。地元の大手スポーツ店に出向いても、関東近郊に見られるトレイルランニングブームに応える商品ブースやコーナー展開などはされていません。東北では宮城や福島での大会、レースが地元に根付き継続的に開催されているが、冬が長い北東北では開催されていなかったのが現状です。
七時雨(ななしぐれ)というフィールドに出会ったのは2012年7月。(・・大会開催までは約11か月)5月GWまでは1000mほどの山頂には残雪が残り、6月初旬が山開き。まさに新緑に包まれた七時雨山、田代山を有する田代平高原に魅了されてしまいました。放牧で育てられる短角牛が作りあげる広大な牧草地、カルデラ地形特有の緩やかな傾斜面、歴史の伝承を物語るシングルトラックに変貌した鹿角街道など、走るフィールドとしての条件が揃っていました。
2012年10月に八幡平市と地域振興事業で関わっていたコンサルタント会社の協力を得て、レース開催を目指す発起人3名を中心に地元説明会を開催。(・・地元説明会から大会開催までは約8か月である)
(地元説明会には10名ほどの参加者)
説明会では”開催日”という話の前段階、いや前々段階だっただろう。
イベント(・・この時はトレランレースを中心とした七時雨を広く伝えるためのイベントを想定)開催に関する協力体制、いわゆる”実行委員会”を発足するためのステップでした。トレイルランニングの話をすると、参加者のほとんどがまったく見たことも聞いたこともないという現実。
ただただ確信していたのは七時雨山を中心としたエリアが、とてもトレイルランニングに適しているということ。夏にはプロのトレイルランナーにコースチェックを依頼、エリアの全体像を把握、10月には地元説明会とあわせて地元の山岳レース上位入賞者や一般ランナーなどを集めて幅広い意見を集約するための試走会を開催。
地元の様々な人と話し歴史の街道や文化について勉強する中で、この七時雨山やカルデラ地形の牧草地を愛し、子供のころからここで生活している人々にはランナーに見てもらいたい、走ってもらいたい場所や名所がたくさんありました。そういった思いをコースにバランスよくちりばめる、そのために市民ランナーにも走ってもらうこととあわせて、私自身が何度も何度も山に入りました。目指すのはトップランナーにも満足して頂ける、初めて走るランナーにも気に入って頂ける、そんなレースにしたいという欲張りな話を真剣に考えていました(笑)。
その後、地元説明会に参加してくれた半分程度の方が実行委員会に加わる結果となり、「レースやトレランのことは分からないが、そこまで言うなら・・・」という印象でしたが、地域を盛り上げる起爆剤になればと若手の有志を中心とした方々が声を掛け合い、”七時雨マウンテントレイルフェス実行委員会”が無事に発足。(・・繰り返しになりますが、実行員会が発足した2012年10月から大会までは約8か月)
(2012年10月の試走会、5名のランナーが参加)
ここでテーマである「開催日」に話を戻します。
第一回の開催日は七時雨山の山開きの翌週であった6月9日に決定しました。
「山開きの翌週がいい・・」
「残雪は大丈夫?・・」
「牧場にいる牛の放牧期間を確認しないと・・」
「地元の消防訓練は?」
「毎年この日は天気が良いはずだ・・」
「マラソン大会とぶつかるなあ・・・」
といった具合に決定要素は様々。
開催日を決定するための要素は、地域の事情や関連するイベントなど様々ですが、今回のプランニングでは地元の協力が100%必要なことと、レースの前日に前夜祭や関連イベントをつなげる2日間のイベントに決定していた為、人手が確保できることと、天候や山のコンディションが良い日程に優先され、また八幡平市で開催される年間イベントスケジュールも候補日を決定する要因となった。秋(9月~10月)は間違いなく良いコンディションだったが、できれば春に開催したいという意見が多く、雪解けのGWを待ち、山開きの翌週である6月第一週末が候補日として確定した。
大会やレースは最高のコンディションである時期に開催することが理想なのかもしれません。
ただその延長線上には、そのフィールドや地域を年間通して訪れる楽しみ、例えばおいしい季節の旬、温泉や名所名跡などに代表される地域の観光資源などと連動させたツアーなどを提案したいと考えています。大会やレースだけではない楽しみ方をトレイルランナーへ伝えていくこと、これは地域振興にも必ずつながっていくでしょう。
日本には四季があり、春のトレイルと秋のトレイルでは表情が全く変化します。
そんな自然の移り変わりもトレイルランナーには感じてほしい、、
大会やレースの”開催日”にはそんな思いを込めていきたいですね・・・
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