今年6月に開催された第1回八幡平・七時雨マウンテントレイルフェス。
岩手県初の公式トレイルランニングレースと言われましたが、至ってアットホームなローカルレース。若干222名のランナーが全長22kmの「カルデラトレイル」を駆け抜けました・・
今回のテーマは「コースレイアウト」。
とはいってもテクニカルなお話ではなく、私たちが目指すところ、といったお話です。
いまやほとんどの大会、レースではプロのランナーや大会でも好成績をおさめる有名な選手がコースの選定やレイアウトを含めたコースセッティングを行っていると思います。そのことを大会そのものの売りにしたりPRしたり様々です。
それは「走る楽しさ」や「トレイルランニングの醍醐味」を熟知しているランナーであり、誰もが満足することができ、かつ安全で適正なコースセッティングが行われているという実績があるからだと思います。私も今まで参加したレースでコースに疑問や不満を感じたことはないのが正直なところです。
中には少々ハード過ぎたり、逆に物足りなかったり・・・といった意見が出ることもあるかもしれません。
しかしロードランニングとは異質の環境を舞台にした、大自然の中で走っていることの喜びや環境変化に自分の身体が順応していく、さらにどんなコースでも攻略していこうというようなポジティブな意識が走る我々には働くのではないでしょうか?
出場するランナーのレベル(走力)もまちまちだし、楽しみ方の指標もバラバラ。そんな中でいかに大会の特徴やコース設定で魅力を出していくのか?ということには100%の正解は無いのかもしれません。
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岩手県八幡平市、七時雨エリアの景観は日本有数の「カルデラ地形」。
22万年前に形成され日本では熊本県の阿蘇に次ぐ規模のカルデラ湖を有していたそうです。このカルデラ地形に囲まれた田代平高原の牧草地をはじめ、七時雨山に続く登山道。また古くから人や物、情報の交流の舞台になってきた「歴史の道」と呼ばれている「鹿角街道」を辿るトレイルが本大会のコースレイアウトを考える上で中心となりました。
昨年の8月以降、このカルデラ内の牧草地を含め、「走る楽しみ」を味わうことができるルートであることをポイントに、プロのランナーはもちろん地元のトレイルランナー、はじめてトレイルを走るランナーまで、様々なレベルのランナーにコースを走ってもらうことにより様々な意見を集約してレイアウトを検討していくことになりました。
もちろん既存の地図には掲載されていないような古道やヤブこき必死のルート開拓もあり、数か月を掛けて比較的小さなエリア内に20km~30km程度のラウンドルートの開拓に至り、周囲を囲む林道を含めたコース設定ではおよそ40km~60km程度のコース設定も可能なことが分かってきました。
このエリアでまずインパクトがあったのは緩やかな傾斜面、雪のない季節に牛(短角牛)が放牧されている「牧草地」でした。
もちろん裸足で走りたくなるような牧草地のど真ん中を走るルートを組むこともできますが、放牧されている牛(短角牛)を避けるようにひかれている牧草地脇の登山道もとても魅力がありランニングに適したコースでした。
大会コースでは二つのピークを目指します。
カルデラ地形を形成する田代山と七時雨山を目指す登山道は緩やかな登りと急登を繰り返す高低差400~500mほどの比較的ハードなコースと言えるでしょう。
「距離や累積標高差では表現できない魅力あるコースレイアウト・・・」
コースレイアウトを考える中で、大会やレースのコンセプトとの関連性は重要なポイントなのかもしれません。
例えば「誰でも走れるような初級者向けレース」であれば標高差が少なく、距離もショートレンジの短い設定にすればいい。ただし実際は初心者にはとても走れるようなコースではなかった、などという声も聞こえたりします。
結局、個々のレベル指標はまちまちで明確に基準化されていないこのスポーツでは、詳細なレベル設定や表現は困難であり、あくまでも参加者にとっては目安でしかないのでしょう。
また多くのトレイルランナーにとって、大会やレースに求める”魅力”みたいなところが距離や強度といったレベル指標では無くなってきているということも言えるのではないでしょうか?
「距離なんて関係ない!」というのは言い過ぎですが、
もっと違うところにそれぞれのレースの魅力や楽しさを感じているのでしょう。
逆に言えば、
そういった魅力の部分を感じてもらえることが主催者側や運営サイドとしてはとても嬉しいことであります。まさにこのことがプランニングの醍醐味であり、全国にもっともっと魅力的で楽しめる大会やレースが拡がっていく一つのポイントとなることは間違いないでしょう。
トレイルランナーには、ロングレースや人気レースだけではなく、もっと魅力あるローカルレースに目を向けていきたいですね。。
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