2015年8月29日午前9時頃、私はコース上における山小屋の入り口で倒れ込み唖然としていた・・・。
2015年8月28日18時にCAHAMONIXをスタート。
天気は晴天でじっとしていても暑いぐらいだった。
スタート5分前から流れた「Conquest of Paradise」の音楽によりこれから始まる長旅へのスイッチが入る。
走り始めは問題なかった。足は軽い呼吸も乱れない順調だ。そして、SAINT-GERVAISへ向かう為に始めの山を登り始める。
そこでまず始めてのアクシデントが発生。
ストックが折れてしまう。
正直少し気持ちは動揺した。しかし、すぐに気持ちを入れ替え、道に端に落ちている木の棒を拾いそれをストック替わりとした。
そこから大きなトラブルなくレースは進む。みんなが大きな木の棒をもって走る私をみて「BRAVO!!」と声を掛けてくれる。
LES CHAPIEUX(49.4km)のエイドにて木の棒をもって走る私に見かねた一人の女性が「私のストックを使いなさい。」とストックを譲りうける。本当に嬉しく感謝した。おかげでそこからのCOL DE LA CHE SEIGNEを難なく通過し、中間点であるCOURMAYEUR(78.8km)へ到着する。
COURMAYEURではしっかり食事を摂取する。そして、後半戦に向けての準備も行う。ここで予備においておいたストックを使用。せっかくもらったストックを最後まで使用したかったが、申し訳ないがここでストックを交換させて頂く。
エイドには小川選手もいた。先行している土井選手はもう出発した後だった。
しっかり補給した後に中盤の山場であるGRAND COL FERRETに向かって走り始める。
ここでも順調。ロード部分を順調にリズムよく走りながら向かう。途中小川選手に再度追いつき先行させて頂く。
登り切ったところから走り易い稜線。前の選手に何人か追いつき追い抜き順中に順位をあげていく。しかし、順調なのはここまでであった。REFUGE BONATTIの吸水場にてコーラを呑み、もらった水を飲みながら走り始めると突然の嘔気からの嘔吐。
「えっ?」なんで??って感じで突然の事で自分自身もびっくりした。
足は動くし痛みもない。胃が痛いとかもないのに突然の嘔吐。疲労か??でもとりあえず、ここからは中盤において最大の難所「GRAND COL FERRET」だ。こんなところでのんびりはしてられないとジェルを無理やり摂取する。
胃のむかつきは残っていたので持参薬の胃薬を内服する。
大丈夫まだ走れているし足も動いている、順位もここから頑張ればさらに上がっていけると自分に言い聞かせて登り続ける。
多きな登りの山頂付近に着くと私の名前を呼ぶ声が聞こえる。
プロカメラマンの藤巻翔君だ。
「大丈夫っすか?辛そうっすね。」と笑顔で言われるので強気に「そうでもないよ。」と笑顔で返事する。
長く孤独な登りが終わったら次は長い下りだ。
昨年はここでペースが上げられず順位を上げきる事が出来なかった。だから今年はここを攻めると決めていた。
私は下りを攻めた。ここまで100km以上走ってきて全身の疲労も感じてきていたが、気にせず走った。
よし!!いける。ここをこのペースで行けば難とかまだ上位を狙えると思ったその時・・・・。
再び嘔吐。まずいここで吐くと体力が奪われる、素早くジェルをとるが再度嘔吐。駄目だ食べられない。ならせめて炎熱サプリをと思い口にいれるが嘔吐。もう吐きすぎて胃に何もないが嘔気が止まらない。正直苦しい。コースの途中でよつんばになりもがくが苦しさが変わらない。そして、焦らずゆっくり呼吸を落ち着かせて水を少し含んでみるが、もう今の胃には何も受け付けない入れたと同時に嘔吐してしまう。
仰向きになり晴れ渡った空をみて「まいったな….」とその時は半ば諦めムードになってしまう。しかし、すぐに冷静になりとりあえず、次の大きなエイドCHAMPEX-LACで待ってくれているサポーターの竹谷さんや芥田さん川田さんへ今の状況を伝え様とするが、連絡先がわからない。とりあえずすぐにわかる某フィットネス雑誌ライターのÙ氏へ連絡を入れるが、「連絡先はわからない!!」と言われる、そして電話を切る際に「大瀬。ここで終えるとか絶対に言うなよ。最後まで自分の足で必ず帰ってこいよ!!」と喝を入れられる。そして電話を切った後、意地でも自分の足で帰ってやると思い、とりあえず日陰で休めそうな場所を探そうと歩いては休みを繰り返しコース途中の山小屋の入り口へ辿りつく。
あーここなら寝れるな、しばらく休もうと、目を閉じて休む。せっかくここまで無難にきていたのに・・・。俺は何しているだろうなっと唖然としていた・・・。
そして目を閉じてしばらくして犬を連れて登山をしている老夫婦が近づいてくる。フランス語と英語交じり様な声かけをしてくれ。どうやら心配してくれているみたいだ。だから私も英語で「有り難う。大丈夫。ただ胃の調子が悪いんだよ。」と伝える。そして、それを聞いた老夫婦の妻が私の胸に手を置き何かぶつぶつとおまじない?の様な事を小声でつぶやいている。そして、すべて唱え終えたのか、私に「SAY YES」と言ってきたので、「YES」と返すと、「もう大丈夫、あなたは走れる。頑張りなさい。」と言ってくれた。
その後どのくらいの時間がたったのだろうか。目を覚まし周りを見るまだ明るく、そこまで時間がたった感じはない。起きてみるが動ける。水を恐る恐る飲んでみるが飲める。よし復活だ。
休んだのがよかったのか、老夫婦のおまじないが効いたのかわからないが、とりあえず動ける、今はとりあえず頑張ってLA FOULY(110㎞)まで行こうと進んでいると後ろから、「大瀬 和文!!」と聞いた事のある声が聞こえてくる。振り返るとそこには野本選手が走ってきた。
どうやら野本選手も体調を崩しもう限界にきているらしく次のエイドで止めようとしているとのことだが、私がどんなにあがいててでも最後まで行くと伝えると「よし俺も行く」と言ってくれたのでここでTEAM 大瀬&野本が結成される。
正直この選択は間違いでなかった。
私より少し体力や状態が回復している野本さんに引っ張られて走るのは正直きつかったが、私からやる気をみなぎらせてくれる。そして、お互い声を掛け合う事で良いペースで進む事ができた。
CHAMPEX-LAC(124km)に到着。正直予定到着タイムより5時間ぐらいおくれている。もうサポーターは待っていないと考えていた。しかし、エイドに着いた私達二人を竹谷さん、川田さん芥田さんは笑顔で待っていてくれた。
正直この時の感動は何んとも言えなかった。何時間も待たせてしまったのにそれを気にする事なく「頑張った」と労いの言葉を頂いた瞬間にこれまで張りつめていたものが弾けた様な感じがして、恥ずかしい事に泣いてしまった。でもこれがあったから更に完走しようと心に決めた。そして、野本さんと話し合いこのサポートしてくれる人達をこれ以上またして駄目だと。単なる消化試合にするのではなく今日中(30時間以内)に帰って来ようと!!目標を決めて歩み始める。
ここからはもう何かを吹っ切った様に走り始めた。正直昨年22位に入った時より速いペース後半の40㎞を走った。最後COL DES MONTETSを行く際には午前中に電話し喝を入れてくれたÙ氏が(上田)瑠偉選手を連れて応援にきてくれていた。みんなが後押しをしてくれた最後の山はアッと言う間に登りそしてあっと言う間に下れた。
最後の下りに際に、30時間以内でゴールするのは正直厳しいと踏んだ野本さんはかなりのペースアップをする。まるでトラックレース並みのペースだ。正直もう無理です!!と弱音を吐くと、野本さんは「いける!!着いてこい」と言う。正直この時、この人は鬼だ!!と思ったがこの様なやり取りを昨年信越五岳でやったなぁと思い少し楽しかった。あの時の(山田)琢也さんも同じ様に感じていたのだろうか・・・W
そして、あっと言う間にCHAMONIXの街に帰ってきた。しかし、ここは野本さんまるでマラソンのラストスパートの様にペースは上がる一方。街の人々が手を出してくるのでハイタッチをするもんなら、もうビンタに近い音が「バチーン」鳴り響く。
そしてやっとゴールゲートのある直進に進み歓喜のゴールとなる。
長かった様なアッと言う間の今年のUTMBは29時間54分の99位で終えた。
課題はたくさんある。さぁ来年に向けてのまた歩み始めるかな・・・・。
4 コメント
大瀬選手、お疲れ様でした。UTMB直前にambit2を紛失し、ambit3に切り替えて臨みました。また、シューズもS-.LAB XTを新調し、気合いは十分でした。大瀬選手のアドバイスにより、装備はバッチリでした。しかし、慣れない水と食事と、海外レース初参加と言うことで、すっかり体調をくずして、しぶり腹と睡魔にやられました。クールマイヨールをなんとか通過して、ボナッティの手前90Kで我慢も限界となり、離脱しました。
次は、ハセツネ、東京マラソンがあります。気持ちを切り替えてリスタートしました。
アドバイスありがとうございました。2016UTMBでのリベンジ期待してます‼
ところで、たいへん失礼かとも思いますが、大瀬選手のような看護師さんでも、体調をくずしてしまうことがあるのですね。原因はなんだったのか、後で教えてください。
田島さん
ご無沙汰しております。UTMBは残念でしたが、その後は如何ですか?
また是非色々とお話など出来ればと思いますでのお時間ありましたらお店にも遊びに来てください!!(吉祥寺)
読んでてすごく感動しました
ナイスランです
おつかれさまでした
だいぶ返信が遅くなってしまい申し訳ありません。
有難うございます!!
これからもっと楽しんでいきますので宜しくお願いいたします!!