こんにちは、藤岡です。いよいよウェスタン・ステイツが近づいてきました。
昨年末の抽選に外れてウェスタンステイツへの出場権がない私は、先週末にワイオミング州のロッキー山系・ビッグホーン山脈で開催されたビッグホーン100マイル(Bighorn 100)を走ってきました。
結果は21時間55分で総合6位、マスターでは1位。もう少し良い結果が残せたかなという思いもあるけれど、まずまず悪くない走りができたと思います。
レースをがっつり満喫できただけでなく、現地でいろいろな人と会うことができ、最高の時間を過ごすことができました。
以下、ビッグホーン100マイルのレースレポートですが、長〜いので、写真をメインに見て雰囲気だけ感じていただいて、文章は飛ばし飛ばし読んでいただければと思います。
ワイオミング州という場所
レースが行われたワイオミング州は、アメリカの中央から少し北西寄りの場所にあります。シアトルからだと車で18時間、飛行機直行便でも2時間ちょっとかかります。
カウボーイ州とも呼ばれるワイオミング州。アメリカで最も人口が少ない州で、日本で最も人口が少ない鳥取県よりも更に少ないとのこと。いったん町を離れると、車でしばらく走っても人はおろか住まいも疎らにしかない、かなりの田舎です。
ちなみに世界最古の国立公園であるイエローストーン国立公園の大部分はこの州にあります。
人気のレース
過去に石川弘樹さん、大内直樹さん、鏑木毅さんなど日本のトップランナーが出場したこともあって、日本でもビッグホーン100マイルというレースの名前を知っている方も多いかも知れません。
私の住むシアトル周辺のトレイルランナーの間でもよく知られたレースで、参加したことのある人に聞くと、みんながキツイけど高原と眺望が美しいレースだと言います。
実際エントリー枠は年末か年明けあたりには100マイルは埋まっていたと思います。遠く日本からの参加も多かったですし、また私が住むパシフィック・ノースウェスト地方も決してワイオミング州から近いとは言えませんが、それでもたくさんのランナーが来ていました。私が知っている顔も多くて、いろいろな人と言葉を交わすことができました。
コース
長い上り下りがありますが、手を使って登ったり下ったりしなければならないような急な斜面はありません。年によっては雪解けの水で道がぐちゃぐちゃにぬかるんでいたり、高い場所では雪が残っていることもあります。夜から明け方にかけて標高の高い場所を走るため、防寒に留意する必要があります。
最も低いスタート地点の標高は約1150メートル、もっとも高い折り返し地点で約2700メートル。76%がシングルトラック、16%がダブルトラックのジープ道、8%が平坦な砂利道です。
私にとってのレースの位置づけ
年初に設定した一年を通じた目標は100マイルのパフォーマンスの向上でした。昨年はじめての100マイルとしてUTMFを、二度目の100マイルとしてUTMBを経験し、いずれのレースもまずまずの結果が残せたものの、50キロや50マイルでの結果と比べるとまだまだ向上の余地があると感じています。
ビッグホーンは今年3つ走る100マイルのひとつで、このレース自体を楽しむのはもちろんのことですが、シーズン全体としてみると、このあと予定しているUTMBへ向けた準備的な意味合いも兼ねていました。
ビッグホーンでのレースでは、以下の三段階の目標を設定していました。
- 第一のゴール:トップテン。
- 第二のゴール:24時間切りして「Rusty Spurs Club」という特別表彰を受ける。
- 最低限の目標:完走してウェスタン・ステイツとハードロックの抽選権を確保。
ちなみに三段階にしているのは、一番の目標が達成できそうにない時でも走るモチベーションを維持しつづけるためです。
レース当日〜スタート前
レースのスタートは金曜午前11時。9時から公園でブリーフィングがあり、顔見知りのランナーと挨拶をしていると、片隅にアンドリュー・ミラー(Andrew Miller)を発見。彼が出場することは知らなかったのでビックリしました。以前ブログで触れましたが、若干19才の物凄く速いランナーで、まともに走られたら私は全く敵いません。
ブリーフィング後は5キロほど離れたスタート地点まで車で移動。スタート地点に到着したころにはすでに日差しが強く、スタート時間まで木陰でじっとして体力を温存します。
注目のランナー
ワシントン州やオレゴン州以外のランナーは誰が速いかわからなかったのですが、私の知っている範囲では、アンドリュー・ミラー(Andrew Miller/オレゴン州)とネイト・ジャッカ(Nate Jaqua/オレゴン州)は先頭争いをするだろうと踏んでいました。
ネイト・ジャッカは元プロ・サッカー選手でメジャー・リーグ・サッカーのシアトル・サウンダースでもプレーしていました。私は今年彼と二度同じレースを走っていますが、いずれも彼が先着しています。上背があり足が長く、前半はゆっくり入って後半追い上げてくるタイプ。坂で強みがあります。本当にナイスガイで、気さくに話してくれます。
その他では私が所属するチーム・セブンヒルズのチームメイト、ジョン・ロス(John Wros/ワシントン州)も、去年リードヴィル(Leadville 100)でトップテン入りしており、若くてポテンシャルがあるランナーです。
それからもちろん、日本から来た山屋さんもトップ集団に入ってくると予想していました。
スタート〜折り返し
さあレースはスタート。先は長いので、私はまずはゆっくりと、できればトップ集団から遅れることなく様子を見ながら始められればいいなぁと考えていました。
スタート後に数キロ走ると、さっそく登りが始まります。案の定アンドリューが先頭を走っていますが、比較的ゆっくりしたペース。その後に数人挟んだあとに私がついていく展開。序盤は順位の入れ替わりもあり、山屋さんも序盤に一時先頭を走っていました。
最初の山も中頃まで行くと徐々に隊列がととのってきて、アンドリューが先頭、ジョンが二番手、三番手のランナーを挟んで四番目に私がついていく展開。じわりじわりと先頭との差が開き始めるものの、まだまだ先頭が見渡せる状況でした。
13.4マイル地点のドライ・フォーク・リッジ(Dry Fork Ridge)のエイドを過ぎてしばらく行ったあたりからアンドリューがペースを上げ始めます。それを追走したジョンがやがて失速し始め、後退。私はアンドリュー、もう一人のランナーに続いて三番手に上がります。
アンドリューはその後ぐんぐん飛ばしたのか、私からは全く見えなくなりました。私はしばらくは二番手のランナーを追走していましたが、30マイル地点のフットブリッジ(Footbridge)のエイドステーションあたりからじわりと差をつけられはじめ、一方でネイトに追いつかれます。
30マイルのエイドを過ぎると長い登りが始まります。折り返し地点となる山頂につくのは予定通りに進んだとして8時過ぎ。日没は9時頃なので、念のために上着と予備のヘッドランプを入れたハイドレーションパックを背負ってから進みます。
ネイトの走力はわかっているので無理に追走せず、脚を温存すべく無理のないペースで進みます。私はこの時点で四番手へと下がります。
そこからはひたすら上りが続き、エイドステーションの間隔も長く、標高も上がってきたので多少きつかったですが、自分のペースで進んだおかげで脚色は確かで、余力十分で折り返し地点となる山頂のジョウズ(Jaws)のエイドステーションに入りました。
折り返し〜ゴール
しばらくは孤独に走ってきましたが、折り返し地点付近になると応援に来ている人やボランティアで賑やかになってきます。私の顔色や走りを見て「本当に調子良さそうだ!」「いい走りだ!」と声をかけてくれます。私自身、無理せずここまでうまくレースを運べてきた感触がありました。
エイドステーションでは、念のために背負ってきたハイドレーションパックをおろしたあと、妻から夜用の上着とヘッドランプを入れたハイドレーションパックを受け取り、メディカルチェックをうけたあと、しっかり補給をして後半へと向かいました。
折り返しのエイドステーションを過ぎると、「前を行く3人のうち2人は結構疲れているよ、その調子だったら追いつけるよ!」と声を掛けられました。自分の感触も良かったので、長い下りでは先頭は無理でも三番手のランナーくらいなら捕まえられるかなと欲を出し、良いペースで下り始めました。
66マイル地点のフットブリッジへと向かう長い下りは、調子が良かったこともあってテンションも高く、すれ違う後続選手みんなと挨拶を交わしていました。たまに「10分差だ、追いつけるよ」と次のランナーまでの差を教えてくれるランナーもいて、いつ追いつくかとおもっていたら、次第に「15分差だ」「20分差だ」と、教えてくれるタイム差が広がってきました。そうこうしているうちに脚に疲れを感じ始め、フットブリッジのエイドに着いた頃には脚をかなり使ってしまいました。
66マイル地点からの登りはフラフラになりながらなんとか歩いて登り切りましたが、登りきったところにある69.5マイル地点のベア・キャンプ(Bear Camp)のエイドステーションではついに後続の一人に抜かれて5番手に交代。
そこからなんとか我慢して、ドライ・フォーク・リッジのエイド(82.5マイル地点)で一旦4番手に再浮上するも、その先のセクションで2人に抜かれて6番手に交代。最後の平坦な5マイルは、本当に長く感じました。
レースの振り返り
折り返し地点まではほぼ予定通りに進められていましたが、折り返し地点での自分の感覚の良さと周りの声に惑わされて、ペースを上げてしまったのが後半に響いてしまいました。昨年のUTMFやUTMBでも途中のペースが速くて、後半に脚が失くなってしまったのですが、似たような失敗をしてしまったのは大きな反省点です。100マイルではとにかく我慢が重要だと再認識しました。
もう一つの反省点はシューズとソックスをこまめに買えなかったこと。スタートからゴールまで同じシューズ、同じソックスで走ったのですが、途中ぬかるみや水場で足が濡れた状態で走り続けた結果、足裏の皮がぶよぶよにふやけ、肉刺もひどい状態になっていました。
加えて石を何度も蹴ったせいで、左足の爪は4本が剥がれ、足先に大きなダメージを負って終盤を走らざるを得なくなってしまいました。足首より上は比較的ダメージが少なかったので、シューズとソックスの交換を怠らなければもう少し楽に終盤を迎えられたかもしれません。
パシフィック・ノースウェスト勢強し
優勝したのはやはりアンドリュー・ミラーでした。タイムは大会新。やはり調子に問題がなければピカイチに速いです。2位にもネイトが入り、パシフィック・ノースウェスト勢のワン・ツーフィニッシュです。私も40代では一位だったので、エイジグループでは10代、30代、40代のみっつのエイジグループでパシフィック・ノースウェスト勢が1位だったことになります。
レースの後の最高のひととき
レース後ゴールする選手を迎えつつピクニックをしながらのんびり過ごすのは、ワイオミングでもパシフィック・ノースウェストでもおんなじ風景です。健闘を称え合ったり、寝っ転がって休んだり、おしゃべりしたり、ビール飲んだり、ハンバーガーを食べたりと、各々いろいろな形で楽しみます。素晴らしい陽気に、レースを終わった満足感も混じって、最高のひとときです。
アワードセレモニー
レースの翌日は、青空の下パンケーキの朝食を食べながら100マイルの表彰式です。
24時間を切ったランナーを表彰したあと、1位から順番にバックルと完走ジャケット、加えてエイジグループ入賞者には「石」が授与されました。
24時間を切ったランナーは、クリスマスころに何かが送られてくるとのこと。今から楽しみです。
頂いた「石」ですが飛行機に持ち込むのには微妙なサイズ。かと言って預け入れ荷物で追加料金を取られるのもなんなので、試しに持ち込んでみたところ、案の定ひっかかりました。でも空港の人もレースのことを知っていて「100マイルを走るなんて信じられないわよ」といいながら、なんとか通してもらえました。
そんな「石」ですが、さっそくウチの猫の背もたれになっています。
3 コメント
[…] 一方私のコンディションはというと、2月からはじまった長いシーズンでBighornを含む数多くのレースをこなしたうえに、直近では8月にはUTMB、10月にはディアゴナル・デ・フとタフな1 […]
[…] た。ゴールラインで話していてわかったことなのですが、実はデイヴも昨年私やネイトが走ったBighornを走っていたとのこと。実はトップ3全員が既に同じレースを走っていたのでした。 […]
[…] 【個人的な位置づけ】 2015年以来二度目の出場。前回は途中の長い下りで気持ちよく走りすぎて終盤にあっぷあっぷになったので、今回はうまくレースを組み立て、終盤でもうすこ […]