早いもので第1回伊豆トレイルジャーニー(ITJ)が終わり、早くも一週間経ってしまった。記憶が薄れる前に書き残しておきたい。
伊豆トレイルジャーニーはチーム100マイルに参加して初めての本格的なトレイルレースとなり、多少なりとも自分が成長できているだろうか?それを体感できる事が楽しみであった。そして、自身の所属するチームRODからも10名が参加。ここ最近、チームメンバーのパフォーマンスの躍進が目覚ましくチーム内で日々「走れ走れ」とトレーニングにハッパをかけている立場なので、同じレースに参加して
「自分がどういうランを表現するのか?」
チームメンバーに直接見られる事になるし、そしてチーム100マイル内でもラビットとトータスがあり、トータスのメンバーに大負けする展開になるかもしれない。これまでに無い様々なプレッシャーを感じる大会でもあった。
前日に大渋滞に巻き込まれ、受付に到着したのは夜19時。レギュレーションチェックも無事全員通過。メンバーの1名が腹巻きを防寒着として申請すると豪語していたが、場の空気を察してか腹巻きは出さなかったらしい(笑)やはりレギュレーションチェックは厳しくしっかりとしたものであった。宿に戻ってバタバタと準備を終えたのが22時就寝して起きたのが3時。殆ど仮眠状態で午前4時頃にスタート地点に向かった。
会場付近には大会フラッグが立ち並び、否応なく気分が上がる。港に集結した1300人あまりのランナー達。少し歩けば知り合いやトレイルランニング界隈では有名な人達に出会う。これはもう
「春のハセツネ」
と言ってもいいだろう。
●松崎新港~宝蔵院(WP1) (8.3km)
<午前5時30分 新松崎港スタート>
スタート時に、稜線では風速20mの風が吹いていると鏑木選手からアナウンスがっあった。天気予報では今日は晴れで気温は20度を越えるはずだったが、風速20mはたとえ暑くても体温を一瞬で根こそぎ奪う強烈な風力だ。この先の展開に不安をもちながらのスタートとなった。
「序盤からいきなり高速レース展開」
スタートから3kmのトレイルへ入るまではロードの登りとなる。トップ集団ではないのに登りでもキロ5分台は出ていた。このロード区間である程度人が前後にバラけた事もあり、心配していたトレイルでの渋滞は無かった。ロードを終えてトレイルに入ればペースは落ちるかと思いきや、登りもガンガン走る人ばかり。心拍計を見ながらギリギリのところでペースをセーブしながら進んだ。これまでの自分なら早々に歩きにチェンジしていたが、今回はなんとか走りで付いていけている。チーム100マイルでしごかれた成果だろうか?しかし、それでもチームRODメンバー5,6名が先行している事は認識していた。追いあげられるか?そのまま先行して逃げ切られるか?自分が潰れるか?この段階ではまだ何もわからない。
●宝蔵院(WP1)~黄金橋(AP1)(24.4km)
<午前6時35分 宝蔵院>
宝蔵院でペットボトルの水を受け取る。軽量化の為にチャック付きポリ袋の自作カップ(もちろんレギュレーション通過済)を使う気満々で行ったのでペットボトルがズラりと並んでいて肩すかしをくらう。考えてみれば序盤で人が詰まった状態なのでいちいちカップに注いでいたら渋滞を発生しかねないので正しい対応だろう。(この後、結局自作カップの出番は無かった)
宝蔵院を過ぎると下りの長い林道となると周囲はさらに高速ペースとなって、ロードと変わらないか、むしろ普段のロードの練習でもこんなに飛ばさないぞくらいな速度であった。
「このまま70kmもつわけがない」
冷静になって15km地点くらいからペースを落とし始めた。下りの林道を淡々と進んでいるとチーム100マイルの面々や2009年のUTMB完走者である古茶さんらと前後する展開となる。挨拶を交わすがみんな表情に余裕あり力強さを感じた。
●黄金橋(AP1)~仁科峠(AP2)(45km)
<午前8時25分 黄金橋>
最初のAP(エイドポイント)の黄金橋に到着。かしわ餅とスティックようかん。バナナがあり、バナナとかしわ餅をほおばって直ぐにエイドを出る。今度は林道の長い登りが続く。先行していたRODのコバさん、モッシーが前方を歩いている。ROD内では今回のレースではこの2名がトップ争いをするであろうと言われていたが、序盤にペースを上げ過ぎて脚が終わってしまったらしい。この2人がチーム内でトップなのだろうか?他のメンバーは気がつかずに追い抜いてしまったのだろうか?わからないまま2人を抜いて歩きと走りを混ぜながら、林道登りを進んだ。
二本杉までは登り基調ながら、走れる道と登りが上手く繋がったトレイルになっていてなかなか休めない。走れる登りというのは元気があれば楽しさ極まりないのだが、走れない状態にあれば歩いている自分に負けた感が強く、かえって精神的に負担となる。実はその時の自分は既に「敗北感」を感じていた。やはり序盤のペースが速すぎた影響か、胃腸がムカムカとしてジェルすら受けつけず、エネルギーが切れかけていてハンガ―ノック手前の状態であった。やはり完全にオーバーペースだったようだ。
しばらくして追い抜いたコバさんが見事に復活して追って来てしばらく並走していたが再び追い越され、付いていけない状態となった。AP2は42kmのはずだが、標識は既に42kmを越え、43km,44kmと当初より長い距離表示が出現する。レース直前に70kmが75kmに距離が延びたとアナウンスがあったが、それはこの区間なのだろうか?
どこまで先が延びるのか?諦めかけていた時に急に視界が開け、仁科峠が見渡せる景色が眼下に広がる。木々が無くなったので物凄い突風が吹き荒れていることがここでわかる。ここではRODの応援班が私設エイドを作って待っていてくれている。コースを下るとたくさんのフラッグや応援の声が聞こえてきて気分が上がるも、胃腸の状態は依然最悪だった。
<午前11時02分 仁科峠>
タイムのプレートを踏んで、応援メンバーの誘導で私設エイドに案内される。そこには椅子や飲み物などが用意されている本格的な私設エイドがあった。こうした私設エイド作りはチームでも初めてながら、さすがにハイクやキャンプになれたメンバーが多いだけに初回からいきなり完璧なエイドを作っていた。昨年の信越五岳110kmではフラフラの熱中症になっても意地でもエイドで腰を下ろすということはしなかったのだが、今回はさすがに私設エイドの椅子にドカッと座り込んでしまった。動けない自分に応援メンバーが飲み物を持って来てくれたり、いろいろ手を尽くしてくれて本当にありがたかった。
●仁科峠(AP2)~土肥駐車場(AP3)(56km)
仁科峠の私設エイドには自分を含め、チーム内トップ3名がほぼ同時に並んだ。チーム内トップはコバさんだと思っていたら、竹さんがいた。チーム内で1番に仁科峠に到着したのは竹さんだったのだ。竹さんは最近チームに参加していたので実力がわからなかったが、ここまでこのタイムで来れるというのは相当頑張っている証拠だ。先行していた竹さんが既に支度を終えようかとしていた時に、2番で入ったコバさんが殆ど休まずにすぐにエイドを発った。それを追うようにタケさんが出発。
「静かなるチーム内バトルのスタート」
当初はユルい仲良しチーム的なノリで始まったRODであったが、レースではお互いにライバル心を燃やして切磋琢磨する絵面に、チームとしてのレベルが1段上がった瞬間が見られてとても嬉しくなった。しかし、そんな自分はというと・・・体調が悪さは依然変わらず、私設エイドに腰を下ろし無理やり喉にうどんを流し込んでいた。
(2)へ続く