かなり前回(1)から時間が空いてしまいましたが続きを書きます。今回はクールマイユールからシャンぺ湖までの中盤まで。昨日ちょうどUTMB2014の各レースのエントリーが開始されたので、エントリーされた方は写真を見て妄想にふけってもらえれば光栄です。
【12】REFUGE BERTONE ~82,4 km
標高1192mのクールマイユールの街を抜けて800m UPの標高1979mにあるベルトーネ小屋を目指す。イメージとしては北丹沢の第二CPから姫次に登るのに似ている。単調なつづら折れの登りをひたすら登っていくが、まだ朝10時くらいで快晴なこともあって既に日差しが強い。この先のUTMB最高地点にあるグランコルフェレに到着する頃には日差しが最も強い時間帯になる事が想像できて気が重かった。途中途中でクールマイユールの街を見下ろせるポイントがありとても綺麗だった。
頂上付近にあるベルトーネ小屋でコーラを飲んで直ぐに出発。そして少し上がるとイタリア側から見たモンブラン(モンテ・ビアンコ )が見えて来た。
刺すような日差しによる暑さと疲労とで写真を撮る気になれなかったが、もう二度と来る事は無いかもしれないので立ち止まってモンテ・ビアンコの写真を撮った。4年前CCCに出る為に作ったこのストック。今回のUTMBに向けて新作を作って為す予定もあったが製作時間がとれなかった事もあり、結局4年前のストックをそのまま持って来た。
このストックの名前はRS-98という名前で、98はCCCの98kmを指すもので、当初は100マイルの強度には耐えられないと思っていたが、これまで八ヶ岳スーパー、UTMFと100マイルレースで使用してき強度は充分とわかっていたので持ってきた。
とはいえ、まだ完走したわけではない。完走して初めて証明できる。既にあって当たり前の空気のような存在ではあるが、自分がゴールを目指すモチベーションはこのストックの存在が大きい。
【13】REFUGE BONATTI ~89,8 km
ベルトーネ小屋からボナッティ小屋まで続く約15kmのフラットなコースは、モンテ・ビアンコからグランドジョラスまで3000m級の断崖をズドーンと見通せる景色は圧巻。しかもほぼ平坦でトレイルランナーにとっては楽園そのものだ。しかし、今は景色を見る余裕など無く、コース上の自然の沢を見つけると頭から水をかけ、熱中症と戦いながら進んでいる。
実はクールマイユールを越えればCCCと同じコースだし、コースを知っているので自分には有利だと奢りの気持ちがあったが、人間4年前の山道を憶えているか?というと憶えているわけが無い。昨日走ったトレイルでさえ、記憶しているようで実はしていないものだ。むしろ過去の曖昧な記憶とリアルとの誤差による脳内の補完作業のおかげで余計に疲れたように思う。今ほど走力が無かった4年前のCCCの時の方がはるかに全てが新鮮で気持ち良く走れていた。 10km程このトレイルの楽園とも言えるなだらかなトレイルを進むとボナッティ小屋に到着。時間は午前11時40分くらい。日差しの厳しさがは増すばかりだった。ボナッティ小屋でコーラを飲んで、次のエイドのARNUVAを目指す。
【14】ARNUVA ~95,0km
正午になるが相変わらず良い天気で雲ひとつない。この暑さはクールマイユールを出る時点で想定していたのでUTMBのオフィシャルショップで売っていた300mlの空のフラスクをデポから持って来ていて、これに自然の沢の超冷たい水を入れて氷嚢のようにして首にあてて走ることで熱中症をある程度抑え込むことができた。
【15】GRAND COL FERRET ~99,5 km
写真の通りわかってはいたが、全く日光を遮るものがない。氷河から吹いて来る冷たい風があるだけマシだが、日光が容赦なく照りつける。グランコルフェレの頂上を見上げると頂上付近に米粒程の人が歩いているのが見える。見上げる事で「あそこまで行くのか!」という絶望感をより一層大きくするので、今回はレース全体を通して折角の景観なのに3回しか上を見上げ無かった事をしっかり憶えている。グランコルフェレから見降ろす谷の景色はUTMBでも最も美しい場所の一つであることは間違いない。
4年前のCCCの時もコルフェレで日光にやられて熱中症気味になって、頂上まで1時間40分で通過しているが、今回は登り切るのにちょうど2時間かかっている。休んだつもりもないし、体感的にはCCCより調子良く進めた気がしていたのだが・・・やはりここまで20時間、約100kmの道のりを不眠で進んでいるとペースはこれだけ落ちるのだろう。ここで時間は14時半。まだゴールまで36時間を切れるペースで進んでいる。
標高2500mのコルフェレ峠を過ぎると、ここから次のエイドであるラ・フリまで約10kmの長く緩い下りが続く。元気があれば声をあげて走りたくなる極上トレイルなのだが、そんな気力も体力も無くただ淡々とゆっくり下ることしかできない。5kmを過ぎるとトレイルの途中では何人も日影で寝転がって休んでいる選手がいた。みんな暑さと眠気にやられているようだった。そして長い長い下りを終える舗装路に出てると地元の人達からの多くの声援を受けてエイドのラ・フリに到着した。時間は16時半。下りで10kmなのに2時間ほどかかった。
ラ・フリのエイド内は疲労を隠せない選手達が並んだテーブルにまばらに座って、ボーっとしている。自分もその中の1人だった。反対に応援の人達はやけに元気だった。食事がのどを通らず、UTMFの苦い思い出が蘇り初めていて、このレースで初めて「リタイアしたい」という気持ちの方が大きくなっていた。時間を見ると36時間台のペースで進んでいたが、もうこのペースを維持できないとわかっていて下方修正せざるを得なかった。しかし、ここに長く居てもしょうがないので、休むなら次のシャンぺ湖で休もうと思い気持ちを奮い立たせてエイドを出た。エイドを出ると夕方の光に変わっていて、気温も若干下がっていてなんとか行けそうな状態になった。ここからも川沿いに約10kmの長い長い下りの林道が続いて下り切った後、約5kmで600m UPの登りを上りきると大エイドのシャンぺ湖に到着する。
林道を下り切って、シャンぺ湖に向かう上りがスタート。気温が急に落ちてきて体が冷えてたせいか、今度は今まで味わった事が無い強い眠気に悩まされた。2009年に参加した日本人の多くがこのシャンぺ湖の前後でコース上で寝ていた為に強制リタイアとなった事例があったので、寝たいのを何度も我慢してフラフラになってきて、5分で進めるところを10分くらいかけて進むような状態になった。あと少し、あと少しと念仏を唱えながらシャンぺ湖を目指した。
【17】CHAMPEX-LAC ~123,6 km
時間は夜の19時。なんとかフラフラになりながらシャンぺ湖に到着。moto君に迎えられた瞬間、「とにかく20分眠る!」と言って、仮眠室へ直行。仮眠室には人が沢山いると思ったら割と空きがあった。10cm程のマットレスに薄い毛布が敷かれていて、とにかくそのまま眠るも、眠たいのになかなか寝付けない状態だった。そのため20分が40分になり、ようやく10分くらいだけ眠れて結局仮眠室に1時間程滞在してしまった。その後に食事をしたのでトータルで約1時間半ほど滞在してしまった。ゴール目標を38時間に再設定して20時40分にシャンぺ湖を出発!
UTMB 2013 (3) Champex – Chamonix へ続く・・・(年内には書きあげます!)