おはようございます。昨日ぶりですね。僕です。
昨日は3月11日でした。これまで311についてあまり発言したりはしなかったし、今後もあまり発言しないと思いますが、実際311がRun boys! Run girls!をオープンするきっかけの一つでもあるので、お店のオープンを間近に控えた今、僕がトレラン屋をやる理由と311についてここに記しておこうと思います。真面目か!ってタイプの長い話です。
僕がトレイルランニングに決定的にのめり込んでいった瞬間があります。それは2011年の11月のこと。とある食事の席でトレイルランナーの強さを初めて目の当たりにした時でした。100マイル(160km)の富士山2~3個分の上りのある山道という誰がどう聞いたって過酷なコース、それを過酷さを大前提、その道中の辛さも当たり前に引き受けた上で、それを乗り越えるために考え、努力し、ゴールした後は自分の辛かった経験を笑い飛ばす。そんなトレイルランナーのタフなメンタリティに初めて触れて、あぁ僕もこういう風になりたいなぁと思い、そこから急速にトレイルランニングにのめり込んでいったのでした。
そして、トレイルランナーのコミュニティに触れてみて改めてその思いは強くなりました。何よりも良いなと思ったのは、彼ら彼女らの多くははじめは普通の人だった事です。アスリートや高い身体能力の方もいるけど、ほとんどは僕と変わらない、ロードの5kmをやっと走る所からはじめている普通の人。それを見て、やっぱりトレイルランニングは人を心身共に成長させるスポーツなんだなと確信しました。
ちょっとさかのぼって2011年の初頭、その頃僕は10年間やって来た一つのビジネスが一段落してパートナーに譲り、次の自分がするべき仕事を考えている所でした。26歳の時に立ち上げた前のビジネスは今考えると自己表現が出発地点だったため(それが悪いというわけではないですし、もちろん継続していくうちにちゃんとしたビジネスの形になっていったのですが)次の仕事は、自分よりも他人や世の中に寄与できる物がいいなと思っていました。そんな中2011年3月11日、東日本大震災が起こりました。
僕の住んでいる東京は震度5を記録したものの直接の大きな被害はありませんでした。また、僕の身内にも被災した方はいなかったため、僕が感じた日本におこった辛さや痛みは、直接被災した方や、関係のある方が被災した方の感じたものと比べるとどうしても想像の範囲のものになってしまうとは思うのだけど、それでも日本に東日本に東北に大変な事がおこったという事を痛いほど感じました。
直接の被害を受けなかった僕らですが、311で受けた日本のダメージや露になったいびつな日本の姿、構造を突きつけられ、それらに対して自然とアクションしていきました。チャリティをするもの、現地でボランティアをするもの、原発に対する意思表明をするもの、生活スタイルを変えるもの様々でしたが、僕は経済との関わり方、自分の仕事の仕方で態度の表明と行動をしていくべきだと思いました。
これだけ、大きな被害が生まれて、今後我々が生きていく上での問題も露になった、どうするべきかが痛いほど明確になったはずなのに、何故かそれがなされない。その状況を見ていくにつれ、みんなの本心や良心とは別の部分で根本的なお金の問題が横たわっているのが見えたからです。
詳細は割愛しますが、とにかくお金は確固たる価値の対価でないといけないと思いました。売り手が決めた見せかけの、吹けば飛ぶような後付けの価値ではなくて、それを手にする人が自分にとっての確実な価値と認識するもの。お金がそれ自体に価値があって自己増殖するために存在しているこの状況では、僕たちは本音とは別の「生活のために」という建前でいつまでも生きていかねばならない。その事をとにかく痛感し、社会やシステムを批判、断罪する前に、自分がそのサイクルから外れようと思いました。そして、自分の次の仕事は「確固たる価値を提供するスモールビジネス」にしようと強く決めました。拡大(ゴーイングコンサーンってやつですね)が前提にならないで責任の取れる範囲でやっていきたかったんです。そしてそれが僕にとってはこの先みんながより良く生きていくためのとても遠いけど一番近い一歩だと思いました。
確固たる価値って何だろう?その問いかけが始まりました。まぁあんまり悩んだりしなくて、その一つは意外と近くにありました。「健康」です。と言っても健康ビジネス的なものではなくて、もっと身近な毎日の食事から生まれる健康。丁度震災の3ヶ月前からランをはじめていたので、カロリーや栄養素に関して勉強しはじめた頃だったんですが、一人暮らしで外食に頼りがちな生活ではなかなか実践が難しい。(自炊しろよって話なんですが)じゃあ、母ちゃんや奥さんの代わりになって、カロリーや栄養バランスを考えて献立を組んでくれる定食屋を作ろうと。それで通ってくれる人が体調が良く(体重が軽くなったり、健康診断の数値が良くなったりっていう具体的な数値にあらわれる様な)なれば、それって超具体的な価値じゃんと。スタッフもシステマチックじゃなくて、人の健康とか健全な食事に完全コミットしてるおばちゃんおいて…みたいに色々アイデアが膨らんでいきました。
話はそれるけど、新しいビジネスはマニュアルの完全に反対の属人的なものにしたかった。人間の持ってる凸凹の凸(長所ね)の部分がずばっとはまる場を作りたかったし、そう言う仕事場が多い方が世の中も住みやすいんじゃないの?ってマジで思います。ここでもFLAT IS BORINGですね。
そんなこんなで、人間的にもビジネス的にも最大に信頼できる親友にこの話をしたら、彼も大いに賛同してくれ「じゃあ、一緒にやろう。」と準備をしていたところで、冒頭のトレイルランナーとの出会いがあり、僕はトレランとの深い恋愛関係に落ちてしまいました。そこでもやはり具体的な価値がありました。それは先にも述べた「タフさ」や「成長」。これは走る距離くらいでしか数値化できないんですが、トレランコミュニティに属してみて、また自分も本気でトレランに取り組んでみて、確実にその確固たる価値がこのトレランというスポーツに内在していると実感しました。そしてその「タフさ」や個人の「成長」は今の日本、これからの日本に一番求められているものだとも思いました。ここで、パズルのピースがビターッ!とはまり、トレランと言うスポーツをサポート、普及させることで、日本をなんて大げさな事は言わないけど、少なくとも自分の周りに少しでもタフで困難を乗り越えて笑い飛ばせるメンタリティの人を増やしたいなと思いました。実際に被災された方の本当にタフな状況とスポーツとしてのトレランのタフな状況は比べられるものでは無いと思いますが、世の中に対してそう言う貢献の仕方をしたいなと真剣に思いました。そうして僕は定食屋をやろうとしていた親友に「ごめん、ちょっと待って。」といい、トレラン屋さんをはじめる決意をしました。正直僕の売るものも資本の論理で動いているもの達なわけで、そこにジレンマが無いわけではありませんが、今の自分の選択としてはこれで良いと思っています。
もちろんトレラン屋さんをやる理由はそれだけではなくて、表面的なきっかけとして、カッコいいギアや情報を得られる自分が行きたいトレラン屋さんを作りたいって所から始まってるんですけど、背後に自分の納得の行くそういうビジョンがあったからこそ、短期間で出店を決意できたんだと思います。
後、一瞬で話が消えた定食屋さんですけど、全然諦めてなくて、Run boys! Run girls!が軌道に乗ったら次の取り組みとして真剣に考えています。もちろんトレランもおじいちゃんになるまで続けるつもり。
長くなりましたが、以上が僕がトレラン屋をやる理由です。最後まで読んで頂きありがとうございました。熱くて重い思いですし極めて個人的なものですから、お客さんにこれを押し付けたりはしませんので、皆さん怖がらないで下さいね。 お店に来てくれる方とは、ギアやレースや海外のランナーの事等、トレランの色々な話を気軽に楽しくしたいです。内装工事が少し長引きそうですが、3月中にはお店をOPENできる予定です。
最後になりますが、東日本大震災で亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げるとともに、被災し復興に向けての長い道のりを歩まれている方々に少しでも早く平穏な日々が訪れることを心より願っております。
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[…] この辺りの経緯は桑原さん自身がMMA blogに詳しく綴っています […]