サブスリー
市民ランナーがフルマラソンで、3時間を切るタイムで走ること。また、そのランナー。
(コトバンク:デジタル大辞泉より)
サブスリー。
「ランナー人口の3%未満」「市民ランナーの憧れ」ともいわれ、多くの市民ランナーが程度の差こそあれ一度は意識する目標ではないかと思います。僕も憧れでした。何より、響きがいいですよね。w
先週にはつくばマラソンが開催され、これから多くの方が本格的なマラソンシーズンを迎えられることと思います。そんな中でサブスリーを目指す方も多いのではないでしょうか。
今日は、これからサブスリーを目指す方の参考になればと思い、今年3月に開催された「古河はなももマラソン」で初フルマラソン・サブスリー(2:59:58)を達成したときに行った事前準備とそのポイントを振り返ってみます。特に、トレイルランニングの走力強化を目的としてマラソンを取り入れる方などは、参考にしていただけるのではないかと思います。
前提:2月時点の走力
まず前提として当時の私自身の走力、状態について簡単に記しておきます。
といっても、当時はまだ定量的なスコア(最大心拍数やVO2MAX、AT値などの基礎指標、FTPなどの出力値含む)を測定していたわけではないので、あくまで大会結果や定性的な情報に留まります。
- 基礎走力
- 100km超のウルトラトレイルレースに上位完走する程度の基礎走力はあり。付近では10月時点のTrans Jeju111kmで総合20位くらい
- 登りには強く、ある程度の基礎脚力と距離耐性はあるものの、AT値付近またはそれを越える高強度の運動負荷耐性が低い。ショート〜ミドルレンジのレースでは足を攣り後半まで足が残らないことが多い
- 特にインターバル走などは弱い。チーム(ダブサバ)の中でも当時は最遅の部類で、付いていくのがやっとのレベル
- 状態
- 10月のTrans Jeju後に腸脛靭帯炎を発症して以降、18年末はほとんど走れず
- 19年始から急造で状態を戻し、1月下旬にハワイで行われたHURT100mileに友人のペーサーとして参加(走行64km)。レースペースでそこそこ走れる状態まで復調
おおよそ上記のような状況でした。あくまで感覚ですが、このタイミングでフルマラソンに臨んだとしたら、3時間20分前後だったのではないかと思います。正直ものすごい焦っていました。(なんなら諦めかけていた苦笑)
課題設定:VO2MAX×AT値の向上
前述のような状態だったため、正直この時点ではなももでのサブスリーは難しいと思っていました。
少なくとも1月以前と同じことをやっていても仕方ないことだけは間違いなさそうだったので、定性情報の寄せ集め&内省から現状の課題を導き出し、克服するための計画を立てていくことに。
あれこれ考えた結果、トレイルランニングで養った基礎脚力と距離耐性に関しては強みがあり、また練習においてはダッシュ系のトレーニングも相対的に強く、物理的なトップスピードも水準としては問題ないと判断。
逆に、下記2点が大きな弱点であり、これを克服しない限りサブスリーは難しいだろうと仮説立てました。
- 無酸素運動レベルの高負荷で数分間以上動くことができない
- AT値前後の負荷で長時間動き続けることができない
上記課題に対して、下記2種類のポイント練習を週1〜2回の頻度で入れていくことに。
- 3:30-40min/kmペースでのインターバル走
- 3:50-4:00min/kmペースでの閾値走
結論としては極めて一般的で王道なアプローチではあるのですが、課題をなんとなくイメージしながら、自分の中で腹落ちする状態をつくることができたので、方向性に関してある程度妥当性を信じた状態で練習に臨むことができました。
結果的に迷いなくきちんと練習も積めたと思います。
※本来はランニングアビリティ測定などを受けて、目標から逆算してGAPを埋めていくアプローチを取った方が確実かつ効果的です。はなもも終了後、私もSSLABで受けました。
練習:2月からの40日間全記録
以下、当時の練習記録をご覧ください。
簡単に、①走行距離、②累積獲得標高(全部0ですね)、③走行時間、④走行ペース、⑤練習内容サマリー、について記録しています。(ウォッチはSuunto Spartan Ultra。)
黄色く網がけしている行がポイント練習に当たります。月8回(週2回)のポイント練を確実に積めていることがわかります。
練習内容は、前半にインターバル、後半に閾値走を多めにするよう意図的に組みました。
練習を積む中で一つブレークスルーだったのが、2/24に行った30km走(4:30min/km)。
実は、前週にチームメンバーと共にチャレンジしているのですが、あえなく撃沈し(笑)、20km走に短縮していました。
その後休息を取り、ある程度照準を合わせてリベンジした結果なのですが、この日は一人で、しかも黙々と代々木公園を周回するというシンプルかつどMなコースレイアウト。この環境で30kmをきちんと4:30minで走りきれたことは大きな自信になりました。
この時点で、「もしかしたらワンチャンスあるかも・・・」と思い始めるように。
尚、月間走行距離自体は196kmとそこまで距離を踏めていないのですが、距離耐性は自身の課題でないと割り切っていたので、それに対して過度に焦りを感じることもなく、充実した精神状態で3月を迎えることができました。
また、トレーニング管理に関しては、トライアスリートを中心にFTPやTSSを管理する手法が一般化しつつありますよね。さらに上のレベルを目指すのであれば、より科学的なアプローチを取り入れていく必要がありそうです。
直前期:いかに疲労を抜くかがポイント
今回自分の中で最もうまくいったと思うのが、直前期の過ごし方。
ポイントは、「負荷を落とさず量を減らし」「きちんと疲労を抜くこと」かなと思います。
青色の棒グラフは1日あたりの平均走行距離(≒量)、赤色が平均走行時間(≒量)、黄色が平均走行ペース(=強度)を示しています。左側が2月、右側が3月。
このグラフを見ると、走行距離と走行時間が大きく減少(走行距離前月比-72.9%、走行時間前月比-43%)しているのに対し、走行ペースはほとんど変わっていません(前月比+2.5%)。
また練習記録を振り返っても、レース前9日中に走ったのは3回のみで、10kmを越える走行は一度もしていません。
当時の記憶を呼び起すと、2月に練習を積めた分、3/1時点で少し疲労感を感じていました。実際に、本番1週間前の3/2には当初ポイント練習を入れる予定でしたが、疲労感を鑑みてジョグに切り替えています。
直前期に高強度のポイント練習はせず、また身体の状態を見ながら微調整することで、きちんと疲労を抜けたこと。その中でも、一回一回のジョグをだらっとやるのではなく、ピリッと短時間で切り上げるようにしたこと。これがすごく効果的だったと思います。
当日:最後まで諦めない!
もう、これに尽きます。(笑)
当日はダブルサバイバーのチームメンバー10名ほどと一緒に参戦し、同ペースで5人のパックをつくって走っていたのですが、32km地点あたりで足がガクッと重くなり、集団から置いていかれるという展開に。
この時点ではある程度余裕があるペースだったのですが、ここからの10kmは本当に苦しかった・・・
ただ、ここでやらないでいつやるんだ!と自分を奮い立たせて、心を無にしてとにかく前へ前へ足を運ぶことに集中して、なんとか走り切りました。
まとめ
実は元々ロードの練習が大嫌いで、山を走ることにしか興味がない性分だったのですが、今回マラソンに初めてチャレンジしてみて、ロードならではの面白さというのがなんとなく分かったような気がします。
トレイルランニングよりも変数が少ないので、仮説を立て、施策に落とし、それを実行していくというサイクルをきちんと回していけば、パフォーマンスにダイレクトに跳ね返ってくる。この短期間でもそのサイクルを一巡させられたので、これを繰り返していけばもっと成長できるでしょうし、それが実感できるのがロードならではの面白さなのだろうなと思います。仕事にも通ずるところが多いですね。
今回は天候も良く、コースもフラットで、仲間と一緒に途中まで行けたりと、好条件に好条件が重なり、運も味方しての結果で、正直言ってラッキーだったと思っています。
今度出るときには、「今度こそ自分の実力だ!」と自信を持って言えるような結果・プロセスにできるといいなあ。
とにかくも、チームメンバーに感謝です!!