木曽町グレートトラバースウルトラマラソンに参加し、終始降り続いた雨の中14時間37分で何とか完走した。8月末のロード100kmに向けて80日で結果を出すと以前の記事に書いてから、前半は比較的ちゃんと走っていたものの後半40日はそれほど走れていなかったため自信は全くなかったが、前へ進み続ければいつかはゴールに辿り着く、そう信じて進んだのが完走につながった。走るのは自分、途中で止めるのも自分、自分だけの問題であればリタイアするのが楽で安易な選択である。しかし、日頃お世話になっている方々から雨の中いたる所で応援いただいた木曽町の方々まで、たくさんの人の思いをゴールまで運べるのはランナー本人しかいない。走るのは自分なれど、自分一人で走っているのではない。出来る事は全てやったと言えるような走りをする、そう思うと自己申告リタイアなど有り得なかった。
昼から雨が上がるという前日の予報が外れ、しかも断続的に豪雨という厳しいコンディションで山間部の道路はまるで川のようになっていた。それでも天候は言い訳にならない。雨が降っているのは皆同じ。8月末というこの時期は年によっては猛暑の可能性もあるし、ロードとはいえ山の中を走るので急な天候の変化はあり得る。天候のコンディションが良ければ完走できたかも、というのは逆ならばできなかったということであり、単に準備不足、練習不足である。たしかに降り止まない豪雨は想定外と言えるが、長時間に渡るウルトラレース、ずっといい天候が続くと期待する方が間違いである。以前の野辺山ウルトラで雨具を持っていなくて雨に打たれて身体が動かなくなった経験から、とにかく雨が降っていたらすぐにレインウェアを着ようと決めていた。弱くなったと見せかけてまた強く降る雨は非常に厄介で何度となくレインウェアの着脱を繰り返した。
脚は最初の大きな登りである20キロ〜30キロあたりでダメージを受け、早々に売切になった。また、69キロの第二関門にて補給食のクリフバーを食べていたら吞み込めなくて、むしろ逆にそれまでに腹に入れていたものが戻って来てしまうという胃腸ダメージの洗礼も受けた。長いレースなので色々なトラブルが起こる。そのトラブルさえも楽しむだけの心の余裕と、とにかく遅くても前へと進む事が重要である。今回はドロップバッグが残り1/3にしか預けられないというのが悩ましかったが、シャツを着替えて気持ちを切り替えるとともに、シューズも軽いものに履き替えた。軽いシューズの方が一般的に足の力が必要とされているが、ウルトラマラソンのゆっくりペースだとさほど問題ではない。軽いことで上りが楽になった。ただし、履き替えまではダメージを極力避けようとして底がしっかりとしたシューズを履いた。野辺山を以前走ったときと同じ考え方だったが、これはうまく行ったと思う。
ラストの10km下りは日が落ちてしまっており、ライトも持ってなかったため暗闇の中を街灯や進路表示のLEDを頼りに進んだ。制限時間が危うかったので下り坂をかなりプッシュしながら走ったつもりだが95km(約94kmエイド)まで着くのにかなり時間がかかり焦った。しかし、その直後にあと3km、あと2km、と町の人の応援から言われる距離も短くなっていき、国道19号を越えたあたりでようやく完走を確信。ライトアップされた宿場町を通りゴールへと進むコースは戻って来た人へのご褒美である。ゴールするときにはすっかり雨が上がって月が出ていた。無事に帰って来れた事に感謝、ウルトラの苦しくて苦しくて辿り着くゴールには、そこでしか得られない価値がある。