3連休、それも初日の土曜日午後~夜に史上最大級とも言われる台風19号がやってきて関東を直撃した。
東京近辺には想定されていた最悪のシナリオ(洪水ハザードマップの通りの状況)にこそなっていないものの、自分の近くでは、多摩川のよく知っている場所で氾濫したこともあり、エリアメールが警戒レベルが上がる毎に届いた。翌日、冠水してから水がはけた後の河川敷の水たまりでは川から取り残されたメダカがたくさんいて近所の親子が家に持ち帰るために一生懸命掬っていた。堤防沿いの柵の支柱や河川敷の標識や看板には上流から流れてきた葦などの草が絡みつき、場所によっては看板をなぎ倒しており水流の勢いを物語っている。川の堤防の頂部から1m程度のところに漂着物が帯をなしており、水かさがそこまであったことがわかる。いかに瀬戸際のところで堤防が持ちこたえたか、あと1mで越流、さらにそれよりも水かさが上がれば決壊が起きていてもおかしくなかった。なお、氾濫したといわれている場所である田園都市線高架下は堤防がなく、越水は起こるべくして起きている。
が、それは主観論なのでデータで客観的に。
多摩川のハザードの想定は48h雨量で588mmであるが、今回、上流の小河内で556mm(12日)+50mm(11日)と超えてしまっている。特に24hの短時間でほぼ同等の雨が降っている。平野部に出てきた八王子で392.5mm/24h、府中で289mm/24h、大手町で210mm/24hである。平野に来るにつれ雨量は少ない。ただし、24時間あたりの雨量として府中まではハザードの想定を上回っている。その状況を考えれば、紙一重でよく持ちこたえたな、という状況である。箱根の雨量をニュースで見たときに、多摩川も今回は本当に危ないという気がした。
荒川 →ハザード想定 632mm/72h ⇒545mm/24h(三峰)、572mm/24h(ときがわ)
相模川→ハザード想定 567mm/48h ⇒595mm/24h(相模湖)
利根川→ハザード想定 491mm/72h ⇒433mm/24h(神流)、250mm/24h(草津)、150mm/h(水上)、481mm(奥日光)
千曲川→ハザード想定 396mm/48h ⇒395.5mm/24h(北相木)
まず、降雨量については、箱根⇒奥多摩⇒秩父⇒西上州と海に対して手前に近いところの山間部ほどよく雨が降っており、山が高い奥日光もかなり降ったことがわかる。いずれにしても各河川の上流には24hあたりに置き換えてみるとハザードマップの想定以上の降雨が計測されているのが現実であるし、48hや72hの想定とほぼ同等かそれ以上の雨が24hで降っている。実際に決壊したのは千曲川や荒川上流の都幾川であるが、他の河川についても決して余裕があったわけではないし、むしろ決壊が生じていたとしてもおかしくない。シミュレーションとは、ある条件のもとに何が起こるのか、未来を予想することである。条件が正しくなければそこから導かれる結果も現実とは異なるものになる。今回の教訓として見直すべきは以下だろうか。
①流域すべてに等しく降雨されている想定であるが、山間部と平野部では降雨量が違うのは当然
②24時間で上流部には48時間または72時間の想定降雨と同等の降雨が現実にあった
③降雨想定がそもそもわかりにくい、1000年に一度の雨とは?
①,②は信頼性の高い情報とするために粛々と見直せばよいとして、問題は③である。今回もニュースなどで散々と言われていた50年に一度の雨やら風やら、わかりやすい表現とするのが急務である。50年に一度、を毎年どこかで聞くような気がするかもしれないが、こんな表現は10回に1回は東京マラソン当たる、と同程度の意味の表現でしかない。つまり、連続で当たる人もいれば、第1回から外れ続けている人もいる。50年に一度の統計上のものだって、現実には連続で起こることもある。知るべきは、〇〇年に一度、ではなくて、いついつどこの大雨の何倍くらい、といった数値として感覚でわかるべき情報である。そういう意味では、今回の台風19号は今後の基準となり得るものではあった。正しく予測することと、それを正しく伝えることがエンジニアリングとして重要である。そして、日頃から自分の住んでいる場所について、ハザードマップを調べておくことが絶対的に重要である。
と、専門外のことをまるで知ってるかのように書いたが、以上のような降雨状況から察するに関東から信越、東北にかけての山は今回の台風で軒並み何らか影響を受けたと考えて差支えない。倒木から崩落まで、被害の大小は場所により異なるとは思うが。山に行くときには最新の情報収集が必須であるし、トレラン大会どころではないので今年いっぱいは中止が相次ぐのもやむを得ないだろう。