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汗キツ系男子、走る

17秒の思い出2

written by 若岡 拓也 May 24, 2017

ハワイでのレース終了から3日目で、ようやく足首の腫れが引いてきました。大事をとって足を休めているのですが、早く走りたいなあ。続ハワイの話です。

固く尖った溶岩を踏んで走るので、みんな足はボロボロ

固く尖った溶岩を踏んで走るので、みんな足はボロボロ

足を草むらに叩き付ける。そして繰り返す。ドラムを打つように、慎重に、精確に一歩ずつ時間を刻む。ほとんど音のないドラムンベースに、背の高い草を切り裂く音が時折ノイズのように耳に入ってくる。

わずかな時間差をめぐって、スタートからずっとイタリアの大男と競り合っている。ロングステージ後につかの間の休息を味わい、6日目のコースは47kmだ。スタートから20kmにわたり草地のダウンヒルが続く。

地形によってリズムは気まぐれに変わっていく。傾斜が緩やかになれば必然的にテンポも遅くなる。目の前の地面が一瞬消えた。急傾斜に切り替わり、ビートが早まる。そして、背後でも同じようにリズムが刻まれていた。変化に欠けるコースレイアウトは、長い距離を双子のように同じタイムで走ってきた僕たちのペースを狂わせる決定打にはならなかった。

その間も足には着々とダメージが蓄積されていく。宙を浮いた体を一本の足で支え、また蹴り出す。その着地の瞬間に、地面と接した足は大きな衝撃を絶えず受けている。このレースでは荷物の重さが加算されるので、もちろん普段よりも大きなダメージを被ることになる。

ロングステージでのダメージもあり、ルイージについていくのが苦しくなる。両足首とふくらはぎが痛み、距離とともに痛みが増していく。足首の動きは柔らかさがなくなり、地面からのインパクトを吸収しきれていない。可動域が狭まり、きしむ音が聞こえてきそうだ。ふくらはぎもれんが造りの壁がボロボロと崩落するかのように力強さを失っていく。

にも関わらず、時計に目を落とすと、まだ2時間もたっていない。先の見えない作業を延々と繰り返しているうちに、時間の進み具合が特別遅くなったと勘ぐりたくなるほどだった。

足首でも膝やスネでも構わない。早く壊れてしまえばいいのに。そうすれば楽にペースを落とすことができる。あわよくばリタイアも。ひどい誘惑が脳裏をかすめる。しかし、自分の意志で止まりたくはない。そこに理由があれば、話は別だ。言い訳を探しながら、その都度、ろくでもない誘惑を後方に置き去りにして一歩先に進み続ける。

同じ脚の痛みであれば、長い距離を走っているうちにコントロールできるようになる。コントロールというと語弊があるのかもしれない。ドーパミンやアドレナリンが脳内に放出され、脱水症状で頭がゆだってくると、気にならなくなるだけで、痛みの原因となる筋肉の損傷は悪化していく。一時的に痛みが麻痺していても、どこかで揺り戻しがくる。

それが標高差1700mのダウンヒル終盤だった。痛みと筋肉の強ばりでスピードを保ちきれなくなり、ルイージから50mほど遅れてしまう。追いすがろうとするもじわじわと差が開いていく。頭ではペースを上げたいのに体がついてこない。疲労とダメージが体の反応を重く鈍くする。肉体的な変調は心までも弱気に変えてくる。

ダメかもしれない。前年にアフリカで感じていた諦めが頭をよぎる。そして、悔しさも。転がり落ちそうな走る意志を支えてくれたのが、苦い思い出だった。また同じことを繰り返すのか。限界を超えられないまま、終わってしまうのか。

違う、情けない気持ちを再び抱くために、ハワイに来たわけじゃない。結果を変えるために来たんだ。そのためなら、後のことは考えなくてもいい。足が折れるまで、筋肉が断裂するまで走ればいい。なにかが変わった。

痛みが和らいだわけでも、体力が回復したわけでもない。なのに差が縮まっていく。強烈な意志が肉体を突き動かす。変わったのは自分なのかもしれない。ダウンヒルからフラットな市街地を通り、牧場に続くゲートを駆け抜けた。

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若岡 拓也

若岡 拓也

極地好きランナー

2014年に新聞社を退職して走り始める。1週間で250km前後を走るステージレースを中心に、ジャングルや砂漠、山などのレースにチャレンジしている。
好きな柑橘類は温州みかん、いよかん。

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