夏の甲子園が終わるころ、ひっそりと始まるステージレース「白山ジオトレイル」に出場してきました。
サハラ砂漠などのレースで、ステージレースをご存知の方も多いかと思います。 食料や寝袋など生活に必要なものを背負い、1週間にわたってレースを繰り返し、250kmを走り抜くという移動式おとなの林間学校です。
毎日、寝泊まりするので、大会という名の旅でもあります。 白山ジオトレイルはそんなスタイルを踏襲した、国内で唯一の本格的なステージレースです。
ほかの砂漠レースなどと同様に、水とテントは大会側に用意してもらえます。 白山ジオトレイルにも、砂漠レースの練習として出場するランナーや砂漠を走った選手もいます。そして、同じ言葉を口にします。
「こんなにキツいと思わなかった」
まるでなにかに騙されたかのようなコメントです。 仮入部のときは和気あいあいとした部活だったのに、いざ入部したら、怒声の飛び交うスパルタ式体育会系だった的な。
なんでこんなところに来ちゃったんだろう、トホホと心が折れかける方も。そんな気配を察するとスタッフが「もう少しだから」「もう1日だけがんばろう」となだめすかしてくれます。なかなかリタイアさせてもらえません。
このへんも部活的です。
なにがキツいのか。それは白山という大会名からも分かる通り、山麓がコースとなっています。最高点は御前峰の標高2,702m。毎日の累積標高は1,000〜3,000mほどで、レース全体では15,000mとなります。
アップダウンの激しいコースを10kg近い(選手によっては10kg超の)荷物を背負って走るため、普段よりも消耗度は大きくなります。さらには、季節はまだ晩夏。山とはいえ低山の気温は30℃超ということもたびたびあります。
白山ジオトレイルに初出場した2年前は、僕も砂漠のトレーニングになればという軽い気持ちでした。走り始めて初日に後悔しました。というのは、砂漠ではあり得ないくらいにアップダウンが厳しく、水中にいるかのごとく湿度が高いのです。
真夏日もあれば、横殴りの雨風が打ち付けてくる日もあり、空模様も一筋縄ではいきません。 ときには風速30m近い稜線を登り、豪雨で川になったトレイルに足を浸し、運動が原則中止という暑さにも関わらず走ります。
しかも、荷物が絶えず肩に食い込みます。また、クマやサルの大群、イノシシなど愉快な仲間たちとも出くわすことがあり、体力だけでなく、精神力も削られます。走るにはわりと過酷です。
コース以上にキツいのが、出場するための時間の確保。大会前日の受付を含めて少なくとも8日は休みがいります。獅子奮迅の仕事ぶり、愛する家族の理解、職場や家庭での巧みなネゴシエーションがなくては出場すらままなりません。
出場した方の話を聞いていると、家族の理解を得るというのが最も難しいハードルのようです。参加費をこっそり振り込んでいる方も。越えなくてはならない大きな山は、一番身近にあるのかもしれません。
長くなりそうなので、本日はこれにて終了です。
P.S. 九州で初のステージレースのエントリーが始まりました。1泊2日で夕食、朝食がつくので白山ジオトレイルよりも出やすいかもです。→ http://universal-field.com/event/saigotrail1877/