2014年8月18日、霊峰として名高い御嶽山(おんたけさん)に登ってきた。
その雄大な山容と、随所に見られる信仰の痕跡、そして火山としての圧倒的な存在感に、終始、心を打たれる登山となった。
独立峰としての威容と魅力
御嶽山は標高3,067m。日本国内で14番目の高さを誇り、独立峰としては富士山に次ぐ規模を持つ。
5つの峰と5つの火口湖を有し、見る者を圧倒する美しいシルエットが特徴である。
7月に開催された「OSJおんたけウルトラトレイル100K」へ出場した際、御嶽山の威容に感銘を受け、「次は自分の足で登頂したい」と思い、今回の山行を計画した。
当日は前線の影響で不安定な天気が続いていたが、「午後には晴れる」との予報を信じ、登山を決行した。
登山ルート概要とデータ
ルートは、田の原登山口から御嶽山の主峰・剣ヶ峰への最短ルートに、池巡り(火口湖めぐり)を加えた縦走プランとした。
ルート詳細:
田の原 ~ 金剛童子 ~ 王滝奥の院 ~ 王滝頂上 ~ 剣ヶ峰 ~ お鉢巡り ~ 二ノ池 ~ 摩利支天山 ~ 継子岳 ~ 四ノ池 ~ 三ノ池 ~ 二ノ池(再通過) ~ 王滝頂上 ~ 金剛童子 ~ 田の原
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総距離:17.3km
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累積標高:1,578m
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コースタイム(山と高原地図参考):11時間30分
信仰の山・御嶽山を歩く
田の原(標高2,180m)は、王滝口登山道の登山口。立派な鳥居が出迎えるこの地から、厳かな気持ちで登山を開始した。
当初は小雨が降っていたが、金剛童子(標高2,475m)を過ぎた辺りから森林限界となり、視界が開ける。
ハイマツ帯を抜ける頃には空の明るさも感じ始めた。
標高が上がるにつれ、呼吸が浅くなり、心拍数も高くなる。九合目付近では、ゆっくりと呼吸を整えながら一歩ずつ前へ。
途中、8月24日に開催される「OSJおんたけスカイレース」の試走をしていたトレイルランナーとすれ違う。天候の悪化で四ノ池まで行かず、二ノ池で引き返したとのことだった。
王滝奥の院の横にある地獄谷展望台からは、現在も活動中の火山の荒々しい地形を見下ろすことができる。硫黄の匂いが立ちこめ、足元から伝わる生きた山の息吹を感じる瞬間であった。
剣ヶ峰と火口湖群「池巡り」
剣ヶ峰山頂はガスに包まれており、残念ながら眺望は得られなかった。しばしガスが晴れるのを待つことも考えたが、今回は先を急ぐことにした。
その後、一ノ池の外輪山をお鉢巡りし、標高2,905mに位置する二ノ池へと到達。ここは日本最高所の湖であり、木曽川の源流でもある。エメラルドグリーンの湖面と、青い屋根の山小屋(二ノ池本館)の対比が美しかった。
二ノ池からは賽の河原を経て、摩利支天山(2,959m)へ登る。ここでは、立ち上る雲と太陽が織りなす雄大な空の表情を堪能できた。心地よい風に吹かれ、時間を忘れるひとときであった。
続いて、飛騨頂上を経由し、縦走の中間地点に位置する継子岳(2,859m)へ。
そこから折り返す形で四ノ池へ向かう。池から流れ出る小川の水は冷たく、裸足になって足を浸すと、疲労が一気に和らいだ。
この小川の先には「まぼろしの滝」と呼ばれる、落差90mの日本最高所の滝がある。残念ながら滝そのものは上からは見えなかったが、轟音が谷間に響いていた。
終盤、信仰の道を下る
四ノ池から三ノ池へ。ここは水深13.3mと、日本で最も深い高山湖。三ノ池乗越からは、今しがた歩いてきた縦走路が一望でき、その光景に胸が満たされた。
その後、再び二ノ池・賽の河原を経て、まごころの塔で剣ヶ峰を振り返る。王滝頂上からは足早に下山し、無事に田の原へと戻ることができた。
霊峰・御嶽山を歩いて
御嶽山は、今なお白装束で修行を行う人々が訪れる、信仰の山である。
登山道の至る所に見られる地蔵や碑、祠などが、その歴史の深さを物語っていた。
火山としての迫力、霊場としての荘厳さ、そして自然の美しさ。これらが共存するこの山は、まさに「霊峰」という呼び名にふさわしい存在である。
「御嶽山、ありがとうございました。」
レースと重なった偶然
今回の登山ルートは、偶然にも「OSJおんたけスカイレース」の中核部分と一致していた。
この壮大な景色の中を駆け抜けるレースは、きっと参加者にとっても特別なものになるだろう。
全選手が無事に完走できるよう、心より祈っている。