野反湖から目指す、静かなる二百名山・白砂山
2014年10月某日、上信越国立公園内にある野反湖(のぞりこ)を訪れ、群馬・長野・新潟三県にまたがる名峰・白砂山(しらすなやま)に登ってきた。
野反湖は標高1,513m、周囲12kmの人造湖であり、周囲を2,000m級の山々に囲まれている。かつては湿原だったため、高山植物が豊富で、シラネアオイ、レンゲツツジ、ノゾリキスゲなどの群落を楽しむことができる。10年ほど前にはアウトドア雑誌『BE-Pal』で「最も気持ちいいキャンプ場」として日本一に選ばれたこともある野反湖キャンプ場もある。自然に身を委ねるには申し分のない、心癒される場所である。
今回目指す白砂山は、日本二百名山のひとつ。標高は2,140m。野反湖からは前衛の山々に遮られてその姿は見えず、古くは登山者の少ない秘峰であった。登山道が整備された今もなお、静けさと奥深さを感じさせる存在である。
八間山から稜線を辿り、白砂山へ
当初の計画では、野反湖を取り囲む山々をぐるりと一周する周回コースを歩く予定であった。具体的には、野反峠を起点とし、
八間山 → 白砂山 → 堂岩山 → 地蔵山 → 野反湖ビジターセンター → 三壁山 → 高沢山 → エビ山 → 弁天山
と進み、野反峠へ戻るというロングルート。しかし、後半は体調との相談の末、野反湖西側の遊歩道にショートカットすることにした。
結果、行程は距離18.5km、所要時間5時間(ラン&ウォーク)であった。
霧から始まり、雲海、そして大展望へ
深夜に出発し、車中で仮眠を取りつつ早朝に野反峠へ到着。辺りは一面の霧に包まれ、視界はゼロ。思わず「引き返すべきか」と迷うも、せっかく来たのだからと、期待せずに八間山登山口へ向かう。
登り始めて徐々に高度を上げると、振り返る先に幻想的な雲海に浮かぶ山々が現れる。左手には浅間山、右手には草津白根山。思わず足が止まり、息を呑む絶景。
八間山を越え、開放的な笹原の稜線へ。トレイルは非常に歩きやすく、心地よい風の中を進む。もちろん、走れるところは軽快に走る。やがて、白砂山の堂々たる姿が前方に現れる。さすがは二百名山、存在感が違う。
白砂山登頂と、その先の静かな稜線歩き
堂岩山の分岐を経て白砂山へと向かう。途中、小さなピーク(猟師ノ沢ノ頭など)をいくつか越えながら、展望の良い稜線をたどる。終盤の急登は体力を削るが、「ようやく山頂か?」と思えばニセピーク。これを三度繰り返し、ようやく白砂山の山頂(2,140m)に立った。
頂上は360度の大展望。上信越国境の山並みを一望でき、苦労が報われる瞬間である。
その後は来た道を引き返し、堂岩山から地蔵峠を経て樹林帯のトレイルを下り、白砂山登山口へ。舗装路を歩いて野反湖ビジターセンターに到着。
ここから本来は再び稜線に登り返すつもりだったが、紅葉のピークが過ぎていたこと、また疲労もあり、無理はせず、野反湖西側の遊歩道へショートカットすることにした。
この遊歩道は、6月に開催された「SPA TRAIL」のコースでもあり、懐かしさとともに湖畔の風景を楽しみながら野反峠へと戻った。
紅葉は終わっても、天空の稜線は美しかった
残念ながら、紅葉のピークはすでに過ぎてしまっていた。しかし、稜線から眺める雄大なスカイビューは言葉では言い表せないほど美しく、印象深い山行となった。
次は、7月のノゾリキスゲが咲き誇る頃に、再び野反湖を訪れたいと強く思った。