はじめに:KOUMI100という過酷な挑戦
2016年10月9日〜10日、長野県小海町にて「OSJ KOUMI100」が開催された。
このレースは、32kmの周回コースを5周(合計100マイル)するという形式で、累積標高差は実に8,945mにも達する。制限時間は36時間。周回形式という特殊性に加え、過酷な累積標高と気象条件が揃い、国内屈指の難易度を誇るウルトラトレイルである。
今回の完走率は35%(出走206名、完走72名)。その数字が、いかに完走が困難かを物語っている。
レース結果:3周目・96km地点でDNF
筆者の結果はDNF(途中棄権)であった。3周目を終えた時点、つまり96km地点で走ることを止めた。
周回ごとのラップは以下のとおりである。
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1周目:5時間18分53秒(116位)
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2周目:6時間11分14秒(106位)
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3周目:8時間20分23秒(110位)
合計19時間50分30秒。このタイムは、前年の自分の記録よりも1時間12分59秒も速いペースであった。
しかし3周目、胃腸の不調が始まり、吐き気を伴って補給ができなくなった。胃薬を服用するも回復せず、心身ともに疲弊した状態でスタート/フィニッシュ地点に辿り着いたが、もはや4周目に挑む気力はなかった。もはや自分の中に復活の兆しは見出せず、自らDNFを選んだ。
あまりにも情けなく、悪夢のような結末であった。
昨年の完走、そして再挑戦の理由
1年前、このレースで私は初めての100マイルレースを完走し、「100マイラー」の夢を叶えた。ぺーサーと共に、全力を振り絞ってゴールへ辿り着いた。
その完走体験は、苦しみを超えた先にある歓喜、人生の中でも稀有な充実感を味わわせてくれた。だからこそ、今年は再びこのコースに戻ってきた。そして今回は、ぺーサーに頼らず、完全に自分自身の力だけでの完走を目指した。己の限界を、自ら試したかったのだ。
3周目の壁:孤独と絶望
2回目の挑戦でも、やはり3周目が大きな壁となった。大多数のランナーが、初日の夕方から深夜にかけて3周目に突入する。日が落ち、気温が下がり、寒さが骨身に染みてくる時間帯である。前後のランナーもほとんど見えなくなり、濃霧の中、自分自身との対話が始まる。
この周回は、精神的に最も過酷であると感じる。今回も例に漏れず、胃腸の不調がメンタルに影を落とし、ついに「完走できる」という信念を最後まで持ち続けることができなかった。
自分の弱さ、それこそが最大の敗因であった。
完走者と未完走者を分けたもの
では、完走者と未完走者を分けたものは何だったのか?
それは「絶対に完走する」という揺るぎない意志を、どこまで保ち続けられたかに尽きると感じている。
胃腸が悪くても、足が痛くても、気温が下がっても、「絶対にゴールに立つんだ」という意志があれば、最後の一歩を踏み出せたはずだ。
今の私には、それがなかった。ただそれだけのことだ。
失意の中で
現在、私は失意の底にある。目標を見失い、ぽっかりと心に穴が空いたような感覚に苛まれている。
「これまでの努力はなんだったのか?」「自分は何者なのか?」「次は何を目指すべきか?」
そう自問する日々である。
仲間の存在と感謝
今回のレースには多くのチームメイトやラン仲間が出場していた。東京から応援に駆けつけてくれた仲間もいた。レース中、彼らの存在と声援はとても心強く、力となった。
にもかかわらず、今回、それを完走という結果に結びつけることができなかった。申し訳ないという気持ちでいっぱいである。期待に応えることができず、本当にすまない。
再挑戦へ向けて
次にこのレースへ挑む時がいつ来るのかは分からない。しかし、その時は今回以上に自分を鍛え直し、確かな準備と強い覚悟を持って臨みたいと思っている。