レースを目前に控えた複雑な心情
待ち望んでいたレースであるにもかかわらず、気持ちがなかなか高まらなかった。
毎度感じていたような、レース前特有のワクワクやドキドキといった感情は影を潜めていた。
身体は思うように動かず、集中力も散漫であった。わずかな登りでもすぐに歩いてしまい、自身の走力の低下に驚きを隠せなかった。なぜここまで走れないのか――その疑問が頭を離れなかった。
セルフマネジメントの難しさ
トレーニング時間の確保がままならなかったことが、大きな要因である。
仕事の忙しさに加え、自己管理の甘さや精神的な弱さが如実に表れた結果であった。
「強くなりたい」と思い、走り始めたはずだった。
「弱い自分を変えたい」という願いを込めて、走り続けてきた。
しかし、このレースを通じて、自分は何も変わっていなかったことを痛感するに至った。
第5回大会の中止と心の揺れ
2019年11月16日に開催予定であった第5回FunTrails Round秩父&奥武蔵100Kは、台風19号の影響により中止となった。
その知らせを受けたとき、複雑な気持ちが胸を去来した。
残念という思いと同時に、どこかほっとした自分がいた。
苦しまずに済んだ。
惨めな自分を見なくて済んだ――そんな安堵が確かに存在していた。
仮想参戦記を書き綴る理由
後日、運営より届いた参加賞のTシャツやコースマップを手に取ったとき、大会中止の報を受けた瞬間の感情が再び蘇ってきた。
もし大会が予定通り開催されていたら、自分はどう感じていたのだろうか。
どのような展開が待っていたのだろうか。
きっと、惨めな思いを抱いていたに違いない。
そんな想像を膨らませながら、自らの内面を見つめ直すために、この仮想の参戦記を書き記すことにした。