北海道一周4,000km・49日間の自転車旅日記。
北の大地に広がる豊かな自然、歴史、文化、食との出会いを綴る。
【期間】2023年7月25日〜9月11日(49日間)
DAY9:2023年8月2日(水)
恵山海浜公園キャンプ場 発 → 恵山火口原駐車場 → 日浦洞門 → 汐首岬 → 旧戸井線汐首橋梁跡 → 天使の聖母トラピスチヌ修道院 → 見晴公園 → 五稜郭 → 五稜郭タワー展望台 → 金森赤レンガ倉庫 → 函館市内ビジネスホテル(泊)
DAY9移動距離76km
累積移動距離667km
日の出とともに出発
キャンプ場泊の基本は、4時起床・5時出発。夜9時には眠っているため、夜明け前の鳥のさえずりで自然と目が覚める。
この日も、澄んだ空気の中で日の出を拝み、静かに恵山を目指してペダルを踏み出した。
恵山に向かう道中、昆布漁の船団が沖に並んでいるのが見えた。どうやら、岸から近い場所が漁場のようだ。
人の手で一枚一枚引き上げていくその作業は、見ているだけで大変そう。海と向き合う生活の厳しさと尊さを感じた。
アブの猛攻で恵山登山断念
恵山火口原駐車場までは、およそ500mの標高差を登る坂道。息を切らせながらようやく登りきろうとしていたその時、突然アブの大群に襲われた。防虫スプレーを使って応戦するも、まったく歯が立たない。
自転車を空き地に置き去りにし、パニックになりながら走って逃げる羽目に。アブの執念深さに心が折れかけた。
ようやく駐車場に到着するも、体力も気力もほぼ限界。登山する余力は残っていなかった。
活火山・恵山の荒々しい山肌を写真に収めると、再び自転車の元へ戻ることに。
恐る恐る戻ってみると、あれだけいたアブはいつの間にか姿を消していた。不思議なものだ。
函館中心地まで寄り道ばかり
そこからは、函館市街地へと向かいながら、数々の名所に立ち寄る寄り道三昧の一日が始まった。
「旧戸井線汐首橋梁跡」はまるでローマの水道橋のような美しいアーチを描く鉄道遺構。戦前に建設されながら未完成に終わった幻の鉄路。
「天使の聖母トラピスチヌ修道院」は、日本初の女子観想修道院。赤レンガの壁、半円アーチの窓、小尖塔――まるでヨーロッパ中世を思わせる静謐な美しさ。現在も約60名の修道女が祈りと共に暮らしている。
「名勝旧岩船氏庭園(香雪園)」は秋の紅葉でも名高い庭園。特に園内の「園亭」は、数寄屋造と書院造を融合させた建築美が際立っていた。
明治維新期の遺構 五稜郭
特別史跡「五稜郭」へ。中央には、かつての政庁である「函館奉行所」が忠実に復元されている。
箱館戦争の舞台となったこの地に立つと、明治維新という激動の時代が現実味を帯びて迫ってくる。歴史の重みに、心が高ぶった。
五稜郭は、日本初の西洋式星形要塞。旧幕府軍の本拠地として、戊辰戦争最後の戦い「箱館戦争」の中心地でもある。
タワーから見下ろすと、幾何学的に美しい五角星の稜堡が浮かび上がり、その設計思想に感動すら覚えた。
異国情緒溢れる赤レンガ倉庫
「金森赤レンガ倉庫群」は、明治後期に建てられた石造りの倉庫群。昭和後期にリノベーションされ、現在はベイエリアを代表する観光スポットに。
赤レンガと石畳が織りなす街並みには、どこか異国の港町のような情緒が漂っていた。
函館の街の顔 路面電車
函館の街をゆっくりと走る市電――この路面電車こそ、函館のもう一つの顔だ。どこか懐かしくて、優しい景色。市電がこの街の風景であり続けて欲しいと、心から思った。